これまで「石川県ではなぜ地震が多いのか?」、そして「地震は冬に多いのか?」についてお伝えしました。
これらを調べるなかで、宮城県と福島県にならび「茨城県」も地震の多い県であることがわかりました。
福島県と隣接しているため地震が多いのは何となく想像できるものの、関東地方であるため首都直下型地震の影響も気になります。
そこで今回は「茨城県で地震が多い背景」、そして茨城県が公表している資料から「茨城県で特に気をつけたい3つの地震」についてお伝えします。
地震という災害リスクについて知り、備えに生かしていきましょう。
なぜ茨城県では地震が多い?
はじめに、なぜ茨城県では地震が多いのか確認しましょう。
茨城県沖はプレート同士がぶつかり合う海域
茨城県で地震が多いのは、茨城県沖が「プレート同士がぶつかり合う海域にある」ことと関係しています。
プレートとは地球の表面をおおっている固い岩盤のことで、地球上には10数枚あり少しずつ動いているとされているのです。
そもそも日本列島は4つのプレートの影響をうける位置にあるため、世界でも地震が多い国の1つになっています。
そして、茨城県沖は「2つの海洋プレート(=太平洋プレート・フィリピン海プレート)」がぶつかりあい、かつ「大陸プレート(=北米プレート)と2つの海洋プレート」が接する海域なのです。
大きな地震をひきおこす可能性がある日本海溝
海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む境界を「海溝」といいますが、茨城県沖は日本海溝付近に位置しています。
日本海溝は襟裳岬(えりもみさき:北海道)から房総半島(ぼうそうはんとう:千葉県)沖までつづいており、大きな地震をひきおこす可能性が指摘されているのです。
事実、茨城県ではこの日本海溝付近を震源地とする地震の影響をうけています。
これまで茨城県で発生したマグニチュード7.0以上の地震
ではいったい、どのくらいの地震が茨城県ではおきているのでしょう。
水戸地方気象台のサイトには、1960(昭和35)年以降に茨城県で発生した地震が記されています。
ここではその中から、マグニチュード7.0以上のものをピックアップしてみます。
発生日 | 震源地 | 津波 | マグニチュード | 最大震度(茨城県内) |
昭和35(1960)年5月23日 | チリ | 有 | 8.5 | – |
昭和47(1972)年2月29日 | 八丈島東方沖 | 有 | 7.0 | 4 |
昭和53(1978)6月12日 | 宮城県沖 | 有 | 7.4 | 4 |
昭和57(1982)年7月23日 | 茨城県沖 | 有 | 7.0 | 4 |
平成20(2008)年5月8日 | 茨城県沖 | – | 7.0 | 5弱 |
平成22(2010)年2月28日 | チリ中部沿岸 | 有 | 8.6 | – |
平成23(2011)年3月11日 | 三陸沖、他(東北地方太平洋沖地震) | 有 | 9.0 | 6強 |
平成23(2011)年4月11日 | 福島県浜通り | – | 7.0 | 6弱 |
平成24(2012)年12月7日 | 三陸沖 | 有 | 7.3 | 5弱 |
平成26(2014)年4月3日 | チリ北部沿岸 | 有 | 8.2 | – |
平成27(2015)年9月17日 | チリ中部沖 | 有 | 8.3 | – |
平成28(2016)年11月22日 | 福島県沖 | 有 | 7.4 | 5弱 |
令和3(2021)年2月13日 | 福島県沖 | – | 7.3 | 5弱 |
ご覧のとおり、三陸沖や福島県沖といった日本海溝付近を震源地とする地震が、数多く発生していることがわかります(※表の太字部分)。
しかも、そのほとんどで津波が発生しているのです。したがって、茨城県で地震に備えるときには沿岸部を中心に津波対策も念頭におく必要があるでしょう。
ですが、茨城県において備えておくべき地震は、この限りではないのです。
茨城県でとくに気をつけたい3つの地震
ここからは、茨城県が公表しているデータにもとづいてお伝えします。
茨城県では県内に『大きな被害をもたらすおそれのある7つの想定地震』を発表しています。
【参考文献】茨城県「茨城県地震被害想定」
そして、その中で特に大きな被害が想定される3つの地震をあげているのです。ひとつずつ解説します。
茨城県沖周辺で発生する地震
1つ目は、先述したとおり『茨城県沖から房総半島沖にかけての地震』です。
茨城県が公表している資料によると、この地震では主に次のような被害が予想されています(※冬深夜・夏12時発生の場合)。
【参考文献】茨城県「5. 地震別の被害想定結果 5.4 茨城県沖から房総半島沖にかけての地震 」
■地震の規模
■避難者数
とくに、避難所には1万9千人の要配慮者が避難すると想定されており、たとえば『単身高齢者で3,600人、乳幼児で4,500人』と見込まれているのです。要配慮者とは「災害時に特に配慮を必要とする人」であり、上記のほかにも外国人や傷病者なども含まれます。
要配慮者だけが対象となる避難所を「福祉避難所」と言いますが、過去の災害時には要配慮者ではない人たちが避難してきたためスタッフが対応に苦慮した、といった事例なども報告されています。
ご自身あるいはご家族に該当する方がいる場合には、避難先の確認や避難生活に必要な物を準備・チェックしておくなど、災害への備えを進めておきましょう。
首都直下型地震の影響(茨城県南部の地震)
茨城県に大きな被害が想定される2つ目の地震は「首都直下型地震」です。
茨城県では39の市町村が、首都直下型地震において震度6弱以上などの著しい災害のおそれがある地域(=首都直下地震緊急対策区域)」に指定されています。
茨城県における主な被害想定は次のとおりです(※冬18時の場合)。
【参考文献】茨城県「5.地震別の被害想定結果 5.2 茨城県南部の地震」
■地震の規模
■避難者数
この地震でも多くの物資が不足すると見込まれており、主なものは次のとおりです。
■物資不足 ※3日間合計
災害への備蓄というと、まずは食料が必要と感じる方も多いと思いますが、携帯・簡易トイレも欠かすことができないものです。災害時には停電や断水も起こりえるためトイレの水は流せず、トイレは使用不可もしくは非常に衛生状態がよくない場所となってしまいます。
外出先での被災に備えて携帯トイレを持ち歩く、自宅に簡易トイレを準備するなどの対策をおこないましょう。
断層がもたらす地震
最後は断層の動きによって起こる地震※の影響です。※『F1断層、北方陸域の断層、塩ノ平地震断層の連動による地震』
茨城県内に明らかな活断層は知られていないものの、発生すると被害が大きいとして対象になっています。
主な被害想定は次のとおりです(※冬深夜の場合)。
【参考文献】茨城県「地震別の被害想定結果 5.3 F1断層、北方陸域の断層、塩ノ平地震断層の連動による地震」
■地震規模
この地震による人的被害は、ほとんどが建物の倒壊によるものと想定されています。
■人的被害
地震への備えでは建物の耐震化を図るとともに、寝室には倒れてくる危険な家具は置かないといった家具の配置を見直す必要もあります。
耐震診断をうけたり、場合によっては耐震シェルターの購入を検討してもよいでしょう。
ここまで、茨城県が公表している「大きな被害が想定されている3つの地震」についてお伝えしました。
まとめ|茨城県の防災・危機管理ポータルサイト
地震には大きく分けて「プレート」の動きが関係しているものと「断層」によるものがあります。
まず、茨城県では茨城県沖がプレート同士の接する海域になっているため多くの地震が発生します。
◆茨城県沖の特徴
- 2つの海洋プレート(=「太平洋プレート」と「フィリピン海プレート」)が接する海域。
- 大陸プレート(=北米プレート)と2つの海洋プレートが接する海域。
さらに、茨城県は「首都直下型地震の影響」をうけるため、茨城県南部において大きな被害が想定されています。
そして、茨城県には明らかな活断層は知られていないものの、発生すると被害が大きい地震として「断層による地震」が位置づけられています。
このように、さまざまな要因によって茨城県には地震がもたらされるのです。
茨城県の防災情報はここでチェック!
茨城県では『茨城県 防災・危機管理ポータルサイト』を開設しています。
ここでは、今回お伝えした地震による被害想定のほか、防災情報や気象情報そして被災者支援情報などについても掲載されています。
また、災害時には県内に発表されている避難情報が地図上で確認でき、ひと目で現状をチェックすることができるでしょう。
このようなサイトも活用しながら、地震への備えを進めていただけると幸いです。
【参考文献】
*茨城県「茨城県地震被害想定」
*e-GOV|首都直下地震対策特別措置法
(以上)