福祉避難所の基本と課題を知って円滑な運営を目指そう!

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避難所と聞くとなんとなく「誰が行っても良い場所」と思う人も多いのではないでしょうか?福祉避難所は、対象者が限られています。

国は、福祉避難所の利用がスムーズにいくようにガイドラインの改正もおこないましたが、まだ現場には課題があります。

今回は、その課題解決に向けた最初の一歩となるべく、福祉避難所の基本についてお伝えします。

目次

福祉避難所を利用できる人は限られている 

福祉避難所は2次避難所とも呼ばれており、一般の避難所とは区別されています。大きな違いは、福祉避難所の利用は特定の人に限定されていることです。 

はじめに、この福祉避難所の対象者についてお伝えします。 

福祉避難所を利用できるのは要配慮者だけ 

要配慮者とは「災害時に特別の配慮を要する人」のことです。身体に不自由があり避難に時間がかかる、災害をまだ理解できない小さなお子さんがいる、など避難所生活にも困難を抱える人たちです。

要配慮者について明記している法律には、高齢者、障害者、乳幼児、外国人、妊産婦や傷病者などが示されています。

 要配慮者については、こちらの記事でご紹介していますので、ご覧ください。 ※防災新聞 https://bousai.nishinippon.co.jp/644/

妊産婦等福祉避難所

福祉避難所に指定されているのは、圧倒的に高齢者施設や障害者施設が多いのですが、母子センターなど妊産婦、乳幼児のいる人に向けた施設も、福祉避難所への指定が可能です。

妊娠がわかって間もない妊娠初期の頃は、周囲から妊婦だとわかりにくいため、災害時に必要な支援が受けにくいことも考えられます。

妊産婦さんや乳幼児のいる人は、地域に妊産婦、乳幼児を対象とした福祉避難所があるかどうか、普段からチェックしておくことも大切です。

 京都市では、妊産婦の人に向けたポスターを作成し、その周知に努めています。

※京都市 「妊産婦等福祉避難所とは」 https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000204/204653/ninsanputouhukushihinannsyosetumei.pdf

外国人専用福祉避難所

日本語がよくわからない人も要配慮者として、福祉避難所の対象者となります。

避難所利用の注意事項は、日本語で書かれていることがほとんどです。そのため、外国の人には理解できず、意図せず日本人とのトラブルをまねいてしまう可能性もあります。 

奈良県では、外国の人への観光案内、交流、宿泊の場としている施設を、外国人専用の福祉避難所として指定しています。               ※奈良県  http://www.pref.nara.jp/48777.htm

普段から、外国人を受け入れている施設であれば、日本と外国の文化の違いも理解しているでしょう。日頃のサービスの延長上に、災害時の支援があるというのは、利用する人にとっても安心ですね。 

一般の避難所と違うのは安全面、スペース、支援相談体制

要配慮者を受け入れる避難所であるがゆえに、一般の避難所とは異なる設備や機能が求めれます。自治体ごとに、具体的な項目が定められます。 

ここでは、内閣府が公表している 内閣府『福祉避難所の確保・運営ガイドラインから、主要と思われる部分を取り上げます。 

要配慮者の安全面

原則は、バリアフリー化されていることです。しかし、そうでない場合には、障害者用トイレやスロープ等の設置を前提としています。

 要配慮者の避難スペース

要配慮者のなかには、車イスでの移動や医療機器の設置などにより、通常よりもスペースを必要とする人がいます。そのため、「避難生活に必要なスペースを確保していること」が求められています。

 一般の避難所でも、一人分のスペースの狭さは課題として取り上げられますね。要配慮者の人にとっては、なおさら重要となってきます。

 要配慮者が相談できる体制が整っている

住み慣れた自宅を離れての避難生活は、被災者にとっては肉体的にも精神的にも影響を及ぼします。

要配慮者にとっては、それが命の危険につながる場合もあります。持病の悪化、精神的な不調、さらに胎児への影響といったことも考えられます。

そのため、福祉避難所には避難者が相談できる体制が必要とされています。必要に応じて助言や支援をおこなうことが求められています。

 福祉避難所の課題はガイドラインの改定でどうなる? 

福祉避難所の運営にはさまざまな課題があります。ここでは、そのなかの一部をご紹介します。さらに、国がガイドラインの改定で新たに示した方向性についてお伝えします。

施設職員が被災し更に人手不足

2016年に発生した熊本地震において、指定福祉避難所として開設した高齢者施設では約10名、施設によっては20名近くの職員が被災したといいます。

熊本地震における福祉避難所の実態調査

 人手不足が叫ばれている介護業界ですが、災害時にはそれ以上の状況になってしまったのです。

事前にボランティアを確保しておく

このような事態をあらかじめ想定し、事前に大学等と協定を結んでいる自治体もあります。また、日頃から地域住民や大学生などボランティアを受け入れ、顔の見える関係づくりをしておくことも、災害時への活動に役立つでしょう。

入所者数を超える住民の避難

 福祉避難所の多くは、高齢者施設など既存の施設等が指定されます。

つまり、福祉避難所として開設すると、通常の入所者等が利用している施設に、要配慮者の人たちが避難してくるのです。

熊本地震では、施設の入所者数を上回る人たちが避難して来ました。人手不足のなかで、職員の負担、運営への支障も大きなものとなることが容易に想像できます。

自治体が、事前に避難する必要のある要配慮者数を把握、振り分けすることができていれば、このような事態は防げるでしょう。

要配慮者ではない住民が避難してくる

しかも、避難してきた住民のほとんどが、要配慮者ではなかったといいます。

「人手不足のなか、入所者数を越える、利用対象外の避難者」の対応に、施設職員は追われることになってしまったのです。

国は課題解決に向けて、福祉避難所のガイドラインを改定した

内閣府は、令和3年5月に『福祉避難所の確保・運営ガイドライン』を改定しました。その中の一つが「対象者を特定したうえで、自治体は該当の施設を、福祉避難所として指定することができる」というものです。

たとえば「この施設は、妊産婦および乳幼児のみを受け入れる福祉避難所です」という条件をつけて、指定することができます。

これにより、国は「対象ではない避難者が来る」という施設側の懸念を解消し、福祉避難所の指定を促進したいと考えています。

 自治体は直接避難にまだ消極的

ガイドラインの改定によって、福祉避難所へ直接、避難することができるようになりました。それまでは、一度、一般の避難所に行き、必要と判断された場合にのみ、福祉避難所が開設されていたのです。

このような仕組みにすることで、要配慮者が日頃、利用している施設に避難できるように、制度上はなりました。

しかし、読売新聞がおこなった調査によると、「直接避難がよい」とした市区町村は全体の1割しかいなかったのです。さらに、「どちらともいえない」と、従来どおり「一般の避難所を経由」するとした数が、ほぼ同数でもありました。

読売新聞オンライン 「福祉避難所に「直接避難がよい」1割どまり…読売調査104市区」

 この調査は、3月から5月にかけて実施されており、自治体側もまだ手探り状態と見ることもできますが、福祉避難所の直接避難に課題を感じている状況が見える結果ともいえるでしょう。

まとめ

福祉避難所は、要配慮者の人が利用できる避難所です。しかし、その運営には課題も多く、国は福祉避難所の利用促進にむけて、ガイドラインの改定をおこないました。しかし、施設側も自治体側もまだ消極的な状況が見えます。

 災害後の一時的な生活拠点となる避難所。福祉避難所はもちろん、一般の避難所についても質も向上を図ることが求められています。

課題をとりだしていくことは、ともすれば気分も重くなりがちです。ですが、その現状を知ることは課題解決のスタートラインになるのではないでしょうか。

 

 【引用サイト】

京都市「妊産婦等福祉避難所とは」 https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000204/204653/ninsanputouhukushihinannsyosetumei.pdf

奈良県 http://www.pref.nara.jp/48777.htm

内閣府 https://www.ja-care.net/_files/jimurenraku_210609_3.pdf

「熊本地震における福祉避難所の実態調査」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejsp/74/2/74_I_131/_pdf/

 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/national/20210612-OYT1T50408/ 

【参考文献】

西日本新聞 「福祉避難所」 確保すすまず 九州、対象者数未把握の県も https://www.nishinippon.co.jp/item/n/721670/

ぎょうせいオンライン 「自治体の防災マネジメント」 https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat01/0000021272

介護経営ポータルサイト「福祉避難所の現状と福祉施設の役割」 https://tasu-care.net/83737-2

北海道民医連「札幌市が福祉避難所名を公表」 https://dominiren.gr.jp/newspaper/movement/507/

(以上)

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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