大雨被害は下水を逆流させる!そのメカニズムを防災士が詳しく解説

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マンホールから雨水が噴き出している映像を、テレビでよく見かけます。実際に目の前で体験した方も大勢いるはずですが、どうして大雨が降るとマンホールから噴き出すのでしょうか。

酷い時にはまるで噴水のように、何十メートルもの高さまで噴き出しています。

噴き出した雨水が家にかかったりすれば、それ自体が大雨被害といってよいでしょう。さらに、このような状況になると家庭内に下水が逆流してきて、正に大雨被害につながるのです。

今回は下水による大雨被害のメカニズムについて、詳しく解説します。

目次

雨水が噴き出す原因は「エアピストン現象」にある

ゲリラ豪雨などの大雨の際、下水道の蓋が飛び、雨水が噴き出す仕組みは「エアピストン」と呼ばれる現象によって、もたらされます。

出典:ウェザーニュース https://weathernews.jp/s/topics/201809/180245/

エアピストン現象が起こるメカニズム

晴天時の下水管の中は、ほとんど水は流れていません。通常の雨でも下水管の約半分くらいでしょう。ところがゲリラ豪雨など大雨時の下水管は、100%雨水で埋まってしまいます。

その勢いが強ければ強いほど、下水管の中にあった空気が圧縮されて、鉄製の蓋を吹き飛ばしてしまうのです。これが、エアピストン現象のメカニズムとなります。

たまった圧力によって雨水が噴水のように噴き出す

下水道の蓋が開いてしまえば、いっぱいになった雨水の逃げ道ができてしまいます。なので、たまった圧力によってマンホールから激しく噴き出してしまうのです。

【POINT】

・エアピストン現象にて雨水が噴き出す

・下水管の中は普段は少量しか流れていない

・ゲリラ豪雨など大雨時には管路がいっぱいになる

・下水管の中に圧力がかかる

・その圧力によってマンホールのふたが飛ぶ

・雨水の逃げ道ができるのでそこから噴き出す

なぜ激しく噴き出すのか?下水道の構造を理解しよう

では、どうしてあんなに激しく噴き出すのでしょう。それには、下水道の構造を理解しておく必要がありますので、ここで解説しておきましょう。

噴き出す下水管の口径は約30cmから40cmと細い

下水管の口径(直径)は、管路に応じてさまざまですが雨水が噴き出している下水管は概ね、約30cmから40cmと意外に細いのです。管径が細いということは、それだけ圧を受けやすく、溜った雨水が勢いよく噴き出します。

家庭での水やり用のホースを、イメージしてください。ホースが細いほど水は勢いがよくなるので、どんどん細くなっていて最近では外形が11mm、内径が7mmの細さになっています。

これは、蛇口から同じ量の水を流した時に、水を勢いよく飛ばすためなのです。

下水管も同じことがいえるので、管径が細いほど噴き出す勢いは強くなると考えてよいでしょう。

下水から噴き出した雨水は汚くないの!?

大雨時に下水から雨水が噴き出す原因がわかったところで、単純な疑問が生じます。それは、「噴き出している雨水は汚くないのか?」ということです。

もし汚水と一緒に噴き出しているのなら・・考えたくないですね。ここでは、その疑問にお答えしましょう。

下水のシステムは分流式と合流式の2種類が存在する

先ず、下水が流れるシステムとしては「分流式」と「合流式」の2種類に分類されます。

分流式とは雨水と汚水を別々の管路で流すシステムのことで、合流式とは雨水と汚水を一緒に流すシステムのことです。

分流式の場合は雨水のみが噴き出している

分流式は雨水と汚水の管路が別々なので、汚水管路に雨水が流れ込むことはありません。ですから、分流式の管路で噴き出している場合は雨水のみが噴き出しています。

合流式は汚水と一緒に噴き出している

一方で合流式の場合はあまりイメージしたくないですが、管路が1つなので噴き出しているのは汚水も一緒となってしまいます。

衛生的に考えると、雨水だけの場合より汚い水になってしまうのは事実なのです。

噴き出す汚水は数百倍以上に希釈されている

合流式の場合は、噴き出す雨水には汚水も含まれてしまします。ですが、雨水と汚水の比率で考えると、数百倍以上に汚水は希釈されているので、ダイレクトに汚水を被ってしまう訳ではありません。

ただ、合流式で噴き出した雨水が家のベランダなどにかかった場合は、消毒した方がよいでしょう。

消毒の方法や対応方法について心配な方は、近くの保健所に相談することをおススメします。

【POINT】

・分流式の場合、噴き出しているのは雨水のみ

・合流式の場合、噴き出しているのは汚水も混ざっている

・噴き出す汚水は数百倍以上に希釈されている

・家にかかったりしたのなら消毒した方がよい

・心配な場合は近くの保健所に相談しよう

汚水の噴出しより怖い!家庭内への下水の逆流

 

ここまで、エアピストン現象による下水の噴き出しについて解説しましたが、それより怖いのが「家庭内への下水の逆流」なのです。一体どういうことなのか、わかりやすく解説しましょう。

大雨時に下水管がいっぱいになると逆流が起きる

出典:東京下水道局 

http://www.gesuijoho.metro.tokyo.jp/semiswebsystem/html/SemisWebSystem/web/info/index.html

上の図面を見てもらうとおわかりのように、家庭からの排水は直接下水管に接続されています。

基本的に、下水管上部に取り付けられているのですが、この状態で下水管が雨水でいっぱいになるとどうなるでしょう。

【POINT】

1:家庭からの排水が下水管の中には流れない

2:いっぱいになった下水管から雨水が取付管に流れ込む

3:汚水ますに一旦、雨水が溜まる

4:汚水ますや排水管の中の汚水と一緒に雨水が逆流してくる

5:家庭内のあらゆる排水口から汚水が溢れてくる

このような、最悪な状態になってしまうのです。

トイレから、洗面台や台所のシンクからも溢れてくる

このような状態になったら、もはや手の付けようがありません。トイレはもちろん洗面台や台所のシンクからも、汚水が溢れてきてしまうのです。

下水が逆流する大雨被害には「水嚢」で対応できる!

大雨時の下水の逆流は正に、大雨被害と呼んでいいでしょう。なにせ、この状態になったら下水管の雨水がひくまで、手の付けようがありません。ただ、有効な手段はあります。

それは、水嚢(すいのう)を作って、家中の排水口を水嚢で塞ぐのです。

水嚢はゴミ袋に水を入れるだけで作ることができる

水嚢はゴミ袋に水を入れるだけで、カンタンに作ることができます。小さいと重量がないので、逆流した汚水が染み出る可能性が高いです。

できるだけ、大きなビニール袋で水嚢を作ることをおススメします。

水嚢については、次の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せて読んでください。

「水嚢」は雨水の侵入を防ぐ災害時の便利アイテム 記事はこちらからご覧いただけます!
https://bousai.nishinippon.co.jp/836/

大雨被害・下水の逆流は特に「家庭内」に要注意

今回は、下水道による大雨被害について詳しく解説しました。合流式の下水管路では雨水が噴き出すと、汚水も混ざって噴き出しています。

「汚いなぁ」と思われるでしょうが、数百倍以上に希釈されているのです。

それより恐ろしいのは、家庭内への下水の逆流なのです。これこそ本当の意味で「汚い最悪の大雨被害」といえるでしょう。

そんな時は、水嚢を作って対応して雨がやむのを待ちましょう。

 

出典:東京下水道局 

http://www.gesuijoho.metro.tokyo.jp/semiswebsystem/html/SemisWebSystem/web/info/index.html

出典:ウェザーニュース https://weathernews.jp/s/topics/201809/180245/

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

1963年生まれ、兵庫県在住の防災士&フリーライター 
2014年から本格的にライターを開始!これまで多数の記事を執筆
2017年にひょうご防災リーダー講座を受講し防災士を取得。ハザードマップなど防災業務に長年従事し、防災関連の講演も行っています。
経験を活かして防災に関する情報をできるだけわかりやすく、みなさんへ届けたいとの想いを持って執筆しています。詳しいプロフィールはこちら

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