ホテル避難は防災士も推奨!ただし避難時の格差が問題になるかも

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2022年9月18日の鹿児島市に最接近した台風14号は、今年最大級の被害をもたらすと「命を守る警戒」を呼びかけられていました。

熊本市内では全45市町村612カ所に避難所が開設され、多い時には1万2000世帯・2万3000人以上が避難しています。

このような状況で、各テレビ局がクローズアップして報じたのが「ホテル避難」です。

今回は、このホテル避難について防災士目線で解説します。

目次

ホテル避難は今回がはじめてではない!以前からあった

今回の台風14号でキャンセルが相次ぎ空室だらけになったホテルに、台風被害から避難する方の予約で満室になったことから、マスコミによってクローズアップされて、ヤフーニュースにも取り上げられ一気に情報が広まりました。

ですが、ホテルを避難先にすることは以前から行なわれていたことです。

2020年9月の台風10号でもホテル避難は行なわれていた

ホテル避難は今回がはじめてではなく以前から行なわれており、特にコロナ禍になって利用者は増えています。

2020年9月の台風10号でも九州・山口地方では、多くの方がホテルを避難先として利用しているのです。

コロナ禍になり国としても感染防止対策のひとつとして、分散避難を呼びかけていてホテルへの避難も推奨しています。

「エッ!ホテルに避難するの!?」との驚きは自治体のPR不足

今回の台風14号に関するニュースを見て「エッ!ホテルに避難するって贅沢だわ!」と感じる方がいるなら、それは国や自治体のPRが不足しているといってよいでしょう。

ここでその証拠となる、令和3年12月17日の内閣府が作成した「災害時におけるホテル・旅館の避難所としての活用について」を紹介しましょう。

ホテルや旅館は避難先の対象となっている

市町村は,指定避難所だけでは施設が量的に不足する場合には,国や独立行政法人等が所有する研修施設,ホテル・旅館等の活用も含め,可能な限り多くの避難所を開設し,ホームページやアプリケーション等の多様な手段を活用して周知するよう努めるものとする。特に,要配慮者に配慮して,被災地域外の地域にあるものを含め,ホテル・旅館等を実質的に福祉避難所として開設するよう努めるものとする。

災害時におけるホテル・旅館の避難所としての活用について 3ページ

この内容を要約すると、市単位の避難指示が発令された場合は、数千人規模の避難が必要となりますが現実的に全員の避難は不可能です。

自宅避難・市外にある親戚や友人宅への避難・避難所への避難が検討されますが、この時に避難所のキャパは確実に超えてしまいます。

この状況が「指定避難所だけでは施設が量的に不足する場合」に当たります。

従ってこのような避難所のキャパを大幅にオーバーした世帯に避難指示を発令する場合は、ホテル・旅館等の活用が可能となりホームページなどで住民に周知することが、内閣府の「コロナ対応・避難所、地区防災計画」で定められているのです。

・数千人規模の避難指示が発令された場合
・ホテルや旅館も避難所として利用可能となる
・内閣府のコロナ対応、地区防災計画に明記されている

ホテルや旅館の利用料金はどうなるのか

内閣府でホテルや旅館を避難所として利用するように定めているのは分かったけれど、その際の利用料金はどうなるの?と、誰もが思いますよね。

ホテルや旅館を避難所として利用した場合の費用負担は、次の2つに分かれています。

災害救助法が適用される場合は国庫負担

災害救助法が適用される場合においては、救助として実施するホテル・旅館等や民間施設の借上げ、当該施設への輸送等を含む避難所の設置、維持及び管理に要する費用については、同法による国庫負担の対象となる。

災害時におけるホテル・旅館の避難所としての活用について 6ページ

災害救助法が適用されるほどの災害時には、ホテルや旅館の費用は全て国が負担するとなっています。

災害救助法が適用されない災害でも臨時交付金の活用が可能

災害救助法が適用されない災害においても、新型コロナウイルス感染症への対応として実施するホテル・旅館等や民間施設の借上げ、当該施設への輸送等を含む避難所の設置、維持及び管理に要する費用については、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用が可能である。

災害時におけるホテル・旅館の避難所としての活用について 6ページ

災害救助法が適用されない災害でも、新型コロナウイルス感染症対策としての対象となるなら、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用が可能となります。この点は、自治体と国との調整が必要になってくるでしょう。

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防災士も推奨するホテル避難は、身の安全を確保できる

ホテルへの避難は防災士である私も推奨していて、その理由は次のような項目で、家庭よりも身の完全を確保できる確率が高くなるからです。

ホテル避難を勧める5つのメリット

・高層階に避難すれば浸水被害もない
・木造の一般家庭よりも頑丈に作られている
・ホテル自体が備蓄しているので飲料水に困らない
・プライバシーが守られるのでストレスなく過ごせる
・原則として貯水槽水道方式なので断水でも水が使える

ホテル避難を勧める理由には、これらの5つのメリットが大きいといえます。

高層階の建築物であるホテルは、「貯水槽水道方式」と呼ばれる建物の屋上に貯水槽があるため、水道が断水しても一定の期間は水が利用できます。

従って、近隣の住宅ではトイレが使用できなくても、単なる断水のみならホテルではトイレが利用可能です。ただし、断水が長引くとホテルでもトイレの利用はできなくなります。

もっとも大きなメリットは、プライバシーが保たれる点です。

一般的な体育館などの避難所では、未だに段ボールパーティションや段ボールベッドのない避難所もあります。

また、備えていても避難が長期化しないケースでは利用されないこともあるので、過ごし辛いことは間違いありません。

これらと比較すれば、ホテル避難はベッドがあり個室であり、空調も効いていいるので快適な避難が可能です。

ホテル避難の最大の問題点は不平等を感じる点

ホテル避難を推奨していますが、問題点も多くあります。それは「不平等」になってしまうことです。

先に解説した災害救助法が適用された場合は、ホテルや旅館の宿泊代は無料となります。

食事代までは明記されていないので、ホテルや旅館の考えに寄ることとなりますが、このような場合避難するなら誰もがホテルや旅館への避難を希望するはずです。

高齢者や妊婦など避難行動要支援者が優先となる

あくまでも原則ですが災害救助法が適用されるほどのケースでは、高齢者や妊婦、基礎疾患を有する者、障がい者など、避難行動要支援者と呼ばれる方たちが、ホテルや旅館への避難が優先となります。

ただし、付き添いの方も一緒に避難できるために、高齢者のいる家庭全てが対象になるケースもあり、そうなるとやはり不公平感が出てくるのは否めません。

費用負担の場合は早い者勝ちとなる

では、個人で費用を全て負担するケースならどうでしょう。

これなら、お金を払ってでもホテルや旅館に避難したい人だけが利用するので、先ほどの無料の場合よりも不公平感は薄れてきます

しかしながらこの場合でも早い者勝ちとなってしまうので、どこで折り合いをつけるかは難しいところです。

「ホテル避難」の制度を実施している全国の市町村を紹介した特集記事があります。

「【特集】大雨・台風時に「ホテル・旅館」に避難できる地域をご紹介!」記事を併せてご覧頂くと、どのような自治体がどんな条件でホテル避難を提供しているかよくお分かり頂けます。

費用は自己負担でも快適に避難したい方は、ホテル避難がおすすめ

不公平感や早い者勝ちなどの問題は残るものの、費用は自己負担でも快適に避難したい方には、ホテル避難がおすすめです。

ストレスフリーで安全に台風が過ぎるのを待つだけで、身の安全が確保されます。

ただし、地震や津波の場合は状況が変ります。ホテル避難を手放しでおすすめできるのは、台風や大雨など風水害の時だけなのは知っておいてくださいね。

参考サイト

災害時におけるホテル・旅館の避難所としての活用について 
Yahoo!ニュース 「ホテルで避難」が一般的に 災害避難多様化 国の支援も必要
読売新聞オンライン 台風避難、頑丈なホテルに予約殺到…コロナ禍「金をかけても個室で」

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

1963年生まれ、兵庫県在住の防災士&フリーライター 
2014年から本格的にライターを開始!これまで多数の記事を執筆
2017年にひょうご防災リーダー講座を受講し防災士を取得。ハザードマップなど防災業務に長年従事し、防災関連の講演も行っています。
経験を活かして防災に関する情報をできるだけわかりやすく、みなさんへ届けたいとの想いを持って執筆しています。詳しいプロフィールはこちら

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