今回は、地震時に起きる津波から命を守る津波避難ビルのお話です。
日本は地震大国と呼ばれるほど地震の多い国で、文献によれば奈良・平安時代から各地で大きな地震の発生記録が残されています。
また、大きな地震と同時に津波による被害も記録されており、改めて「津波が怖いモノ」と認識させられたのは、2011年3月11日の東日本大震災です。
この災害以降、日本各地で津波対策が見直されて「津波避難ビル」がより多く誕生しました。
想定外の津波は世界中を震撼させた!
三陸沖の宮城県牡鹿半島の東南東130km付近で、深さ約24kmを震源として発生した地震はマグネチュード9.0であり、世界で4番目となる大規模な地震でした。
この地震の揺れによって発生した地震被害と津波被害を総じて、東日本大震災と呼ばれています。
地震被害よりも津波被害の方がはるかに大きく、想定外の大津波は世界中を震撼させました。
東日本大震災の津波は世界の人々の心を痛めた
東日本大震災時の津波の映像は、日本のみならず世界中で公開されています。
そのシーンは世界中の人々の心を痛めるほどのモノでした!
「未曾有の 大津波」と呼ばれる、岩手、宮城、福島県を中心とした、太平洋沿岸部を襲った津波の高さは、福島県相馬では9.3m 以上、岩手県宮古で8.5m 以上、大船渡で8.0m以上、宮城県石巻市鮎川で7.6m以上が観測され、宮城県女川漁港で14.8mの津波痕跡も確認。
また、全国津波合同調査グループによると、遡上高(陸地の斜面を駆け上がった津波の高さ)では、国内観測史上最大となる40.5mが観測されたと公表されています。
これまで存在しなった「津波避難ビル」が、より多く誕生する!
津波から命を守るには、「大きな地震が起きたら、とにかく高い場所に逃げること!」です。
このことは、東日本大震災の教訓として国民全員が共有している情報でしょう。しかし、沿岸部ならどこでも高いところがある訳ではありません。
近くの高台に行くまでに、津波が到達してしまうケースも考えられます。そこで誕生したのが「津波避難ビル」です!
実際は、内閣府が2005年に策定した「津波避難ビル等に係るガイドライン」によって、津波避難ビルは実在していました。
しかし、東日本大震災の発生を機により多くの津波避難ビル・津波避難タワーが誕生し、震災前の8倍にものぼっています。
津波避難ビルとは
津波警報や大津波警報、避難勧告・避難指示が発表されて逃げる際に、近くに高台などがない場合は緊急的に避難するための一次避難の建物が津波避難ビルです。
そのため、高台に近い場所や津波による浸水の心配のない所には、津波避難ビルは存在しません。
あくまでも津波避難ビルは、近くに高台などがなく津波が発生したら浸水が予想される地域に設置されます。
津波避難ビルには専用と併用の2種類が存在
津波避難ビルは、津波から一時的に避難することを目的として、専用に建てられる建物(タワーと呼ばれる)と、頑丈なコンクリートの商業施設を津波避難ビルとして、行政が指定する建物の2種類が存在します。
既に東日本大震災で被災した宮城県石巻市や、今後大きな津波の発生が予測されている千葉県旭市、青森県おいらせ町、和歌山県串本町、静岡県磐田市、高知知県四万十町などでは、津波専用の避難ビルが建設されています。
これらの津波専用の津波避難ビルには、非常食や水、トイレ、毛布、ブルーシートなどを備蓄した、防災倉庫も完備されているケースもあります。
行政(自治体)が依頼して指定する商業施設など
一般的に津波避難ビルの使用は避難勧告・避難指示の発令から
一般的に津波避難ビル(津波避難タワー)の使用は避難勧告・避難指示が発表されて、初めて利用できる手順となっています。
したがって、専用の津波避難ビルは平常時には使用できません。加えて、商業施設を津波避難ビルに指定している場合も、自治体によって利用方法が異なっています。
このように、市区町村が独自に設定した自主避難基準に達した場合は、津波避難ビルの使用が可能となります。
そのため、津波が影響する地域では、各自治体のホームページで確認しておくことをおススメします。
津波避難ビルは15,304棟&津波避難タワーは502棟
津波避難ビル及び津波避難タワー等の整備数
ここで、内閣府が公開している2021年(令和3年)4月時点の「津波避難ビル及び津波避難タワー等の整備数」を紹介しておきましょう。
対象地域 | 津波避難ビル(棟) | 津波避難タワー等(棟) |
---|---|---|
全国 | 15,304 | 502 |
①南海トラフ地震防災対策推進地域 | 12,981 | 435 |
②南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域 | 5,482 | 385 |
上記表を見て「ん?」と感じた方も多いでしょう。①と②の合計が全国の棟数と合っておらず、少し複雑な集計方法を取っているからです。
まず、全国の合計は「海岸線を有する又は海岸線を有しないが、津波の遡上等で被害が想定される都道府県及び市区町村(40都道府県、675市区町村)」の数字です。
①南海トラフ地震防災対策推進地域とは
①南海トラフ地震防災対策推進地域とは、上図の範囲で「震度6弱以上が想定される地域 又は 高さ3m以上の津波が想定される海岸堤防が低い地域」の数字です。
②南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域
②南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域とは、上図の範囲で「津波によって、30㎝以上の浸水が地震発生後30分以内に生じる地域」での数字です。
図を見ればお分かりのように、①と②の地域は重複しているため「②の棟数は①に含まれる」と考えてよいでしょう。
津波ハザードマップを確認して逃げる場所を決めておこう!
南海トラフ巨大地震で心配されているのは、やはり津波被害です。
津波から自分の命を守るためにも、津波ハザードマップを参考にして、自宅や勤務先・学校・通勤通学ルートでの浸水状況と、どこに逃げるか決めておくことが重要です。
せっかく自治体が津波避難ビルに依頼して商業施設が許可をしてくれていても、存在を知っていなければ意味がありません。
住んでいる地域が津波の影響を受けるなら、避難先は頭にいれておく必要があるでしょう。
まとめ
・津波避難ビルには2種類が存在する
・津波避難専用に作られた津波避難タワー
・自治体が依頼して避難先となる商業施設などの津波避難ビル
・一般的に津波避難ビルは「津波警報・大津波警報」で利用できる
・津波ハザードマップでどこに逃げるか予想しておくことが重要
参考サイト
内閣府 概要(津波避難施設の整備数)
内閣府 津波避難ビル等に係るガイドライン(案)
内閣府 津波避難ビル等に係る事例集