火山が噴火するとさまざまな被害が及びますが、その1つに火山灰があります。事前の対策はもちろん、降灰中、事後処理などの際にもしっかりとおこなうことで、被害を抑えることが可能です。
今回は財産やいのちを守る、火山灰への対策をご紹介します。
火山灰とは直径2ミリ以下の噴石
火山が噴火すると岩石の欠片が落下してきますが、直径2ミリ以下のものを火山灰といいます。ちなみに、2ミリ以上のものは「噴石」です。噴石には数センチの小さめのものから、数十センチを超える非常に大きなものまであります。
火山灰は噴石よりもさらに小さいので、火口から数十キロ、数百キロ離れた場所にまで飛んでいくことも少なくありません。幅広い範囲に火山灰が降り注ぐ可能性があるので、活火山の近くに住んでいる方はもちろん、やや離れた地域でも、火山灰への対策が必要となります。
火山灰の被害
火山灰による被害には、具体的にはどういったものがあるのでしょうか。大きく以下の3つが考えられます。
交通網の麻痺
火山灰が道路に積もると、白線が見えなくなりスリップしやすくなります。また、降灰中は視界が悪くなるため、事故が起こりやすい状況になるのも特徴です。火山灰がエンジンに入り込めば、誤作動や故障の原因にもなります。道路はもちろん、鉄道や航空などさまざまな交通網の麻痺につながるため、注意が必要です。
社会生活への影響
火山灰は農作物やライフライン、生活などにも支障を来す可能性があります。具体的な問題は次の通りです。
・火山灰の重みで電線が切れ、停電が起こる
・水道施設に降灰し、給水に支障が生じる
・作物に火山灰が積もり、商品価値が下がる
・日照時間減少で作物が生育不良に陥る
・川や海に降灰し、水質悪化で生物が死ぬ
・火山灰の重みで家屋の屋根が崩れる
・太陽光パネルが損傷する など
人体への被害にも注意
小さな火山灰は人体にも影響を及ぼします。たとえば呼吸と共に吸い込めば、咳やのどの痛み、息苦しさを覚えることもあるでしょう。目に入ると異物感や痛み、充血、かゆみを引き起こします。吸い込んだり目に入ったりしなくても、皮膚に触れると腫れや痛みを覚えることもあるため、人体への被害が及ばないよう、しっかりとした対策が必要です。
火山灰から命や大切なものを守るための対策
火山灰の影響が極力及ばないようにするには、日頃からの対策が重要です。もしもの噴火に備えてできる対策には、どういったことがあるのでしょうか。
近隣の活火山を知っておく
まずは、近隣に噴火の可能性がある活火山がないか把握しておくことです。全国には現在111の活火山があり、気象庁で観測・監視を行ったうえで評価をし、噴火の予想などに応じて警報を発令しています。
近くの活火山を知ると同時に、警報にも注意し火山灰の影響を最小限に抑えられるようにしましょう。
保存食などを用意する
火山灰が降ってくると、自宅から出られない日が数日続くこともあります。こうした可能性を考慮し、数日分の保存食を用意しておきましょう。できれば1週間分、家族全員が食べられる分をストックしておくと、降灰時はもちろん、地震や大雨などさまざまな災害の際に役立ちます。
保存食は日頃から消費でき、常に新しいものを用意できるローリングストックがおすすめです。ローリングストックの方法についてはこちらの記事もご参照ください。
健康被害を防ぐ対策も忘れずに
通勤・通学中に火山灰が降る、また火山灰が降り注ぐなかを避難所などへ避難しなければいけないこともあります。火山灰を吸い込んで健康被害が起こらないよう、マスクなどの対策グッズを用意しておくことも大切です。
また、目や皮膚への影響も考慮し、ゴーグルや長袖・フードつきの長ズボン、スニーカーなど体全体を守れるアイテムも1つにまとめて用意しておくと、いざというときに役立つでしょう。
時系列で見る!火山灰対策
火山灰が降ってくることを想定して事前にできる3つの対策のほか、噴火が起こってから火山灰が降るまで、降灰中、降ったあとの対策も具体的に知っておくと、万一のときに適切な対応ができます。
火山灰対策を時系列で見てみましょう。
火山灰が降る前の対策
火山灰が降ってくる可能性があることがわかったら、以下のような方法で自宅内に火山灰が入ってくるのを防ぎましょう。
・窓やドアはすべて閉める
・通気口やドアの隙間には、湿ったタオルやテープで蓋をする
・電化製品にはカバーをし、火山灰の除去が終わるまで外さない
・雨どいや排水管を排水溝から外し、下水がつまらないようにする
・排水溝のつまりを防ぐため、火山灰と水が地面流れるように調整する
また、数日間自宅にいなければいけないことも考慮し、お子さまのいるご家庭では備蓄に加えゲームなどの娯楽用品も用意しておくことをおすすめします。
降灰中の対策
火山灰が降っている最中には、次のような対策を行います。初めて火山灰が降るシーンに直面する方は動揺することもあるかもしれませんが、慌てず、冷静に行動することを心がけましょう。
・できるだけ外に出ず、屋内にとどまるようにする
・屋外にいる場合は車や近くの建物などを探し、迅速に避難する
・事前に降灰情報を得た場合には速やかに職場や学校から帰宅する
・職場や学校にいる際に降灰した場合はその場にとどまる
・緊急の場合を除いては電話はつないだままにしない
・コンタクトレンズをしている場合は角膜剥離を防ぐため外す
・待機中に噴火や清掃などの情報収集をし、今後の計画に役立てる
火山灰が降ったあとの対策
火山灰が降ったあとには、火山灰の除去が主な作業となります。火山灰は建物内に入らないよう対策しても、あらゆるところから入り込んでくるため、屋外はもちろん屋内の清掃も必要です。放っておくと精密機器が故障する可能性もありますので、「これくらいなら大丈夫だろう」と思わず、職場や自宅内の清掃もしっかりと行うようにしましょう。
また、降灰後は道路が滑りやすいこともありますので、徒歩や車での移動の際には足下にじゅうぶん注意すること、ゴーグルやマスクなどで対策をしながら外出や屋外での作業に臨むことも忘れてはいけません。
火山灰は正しい方法で処理しよう
降り積もった火山灰は、正しい方法で処理する必要があります。最後に、火山灰を処理する際の注意点を確認しましょう。
法令上の取り扱い
火山灰は法令上、「廃棄物」に該当せず、また「土壌汚染対策法」の対象外となっています。自治体によって処分の方法が異なるので、ホームページなどで確認し、集めた火山灰は適切な方法で処理しましょう。
ただし、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」では「廃棄物」に該当します。船などに積もった火山灰を海に捨てることは原則禁止されており、守らない場合には罰則を受けることもありますので、注意してください。
屋外での火山灰処理の注意点
屋外で作業を行う際には、次のことに注意をしましょう。
・作業前に防塵マスクを着用する。防塵マスクがない場合には濡れた布などを口元に当てる
・ゴーグルを着用し、目を保護する
・必ず2人以上で作業をする
・火山灰が風などで巻き上がらないよう、作業前に火山灰を軽く湿らせる
・1センチ以上積もっている場合にはショベルで除去する
・薄く積もった火山灰は丈夫なほうきを使用すると便利
・火山灰は滑りやすいので、屋根の上での作業などはより注意深く行う
・作業後、衣類は屋外で脱ぎ、付着した火山灰を持ち込まないようにする
自動車の清掃方法は…
屋外に駐車している自動車にも火山灰が積もることはもちろん、部品内に火山灰が入り込む可能性があります。自動車を清掃する際には、以下の点に注意しましょう。
・エンジンやラジエーターなどの重要な部品を毎日清掃する
・必要に応じて水洗いをする
・清掃前には吸気口と電子部品を密封する
・道路状況に応じ、西武工場でブレーキ部品を清掃してもらう(道路そのものの状況が非常に悪い場合は80~160キロ、火山灰が積もっているだけであれば320~800キロ)
また、避難時や集めた火山灰を捨てる際などに車を使用したいと思う方もいるかもしれませんが、道路が滑りやすい状況であること、走行によって火山灰が舞い散る可能性があること、故障の原因になることなどを考慮し、運転は極力控えましょう。
正しい対策で火山灰から身を守ろう
火山灰は広範囲に甚大な被害を及ぼす可能性がある、危険なものです。家族や財産を守るための正しい対策を、日頃から意識してみてください。
火山灰は降った直後だけでなく、何ヶ月、長い場合には何年にもわたり被害が続くこともあります。もし噴火や降灰が起こってしまった際には事後処理をきちんと行い、快適な暮らしを早く取り戻せしましょう。