南海トラフ巨大地震の発生が騒がれてから、防災リーダーという言葉をよく見聞きするようになったと思います。
防災リーダーとは、「地域で率先して防災活動を実践できる人材」のことで、ある意味「防災のプロ」と呼んでもよいでしょう。では、どうすれば防災リーダーになれるのか知りたい方も多いと思います。
基本的には各自治体が行う研修に参加して、座学や演習のカリキュラムを終えることで、防災リーダーと認定されることとなります。
本記事では防災リーダーになるためのカリキュラムの中身などを、わかりやすく解説しますので、興味のある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
防災リーダーになるためのカリキュラムとは
先ずは、防災リーダーになるためのカリキュラムを解説しておきますね。研修を行う機関で詳細は異なりますが、ここでは内閣府の「地域防災リーダー育成用研修テキスト」からお伝えすることにします。
内閣府の資料はどちらかというと「教える側」寄りに作られているので、小難しい印象があるかもしれません。今回はより、わかりやすく噛み砕いた内容にしてお伝えします。
カリキュラムの3つの構成と2つの枠組み
防災リーダーには防災に関する、さまざまな知識の習得はもちろんのこと、地域の実情に合わせて自らワークショップなどを実践する力も求められています。そこで、カリキュラムは次の3つの構成が推奨されています。
- 災害や防災に関する知識の習得
- 地域活動の進め方や注意点
- 防災に関する訓練やワークショップの運営手法
実際に研修を終えて防災リーダーとなった多くの方は、地域での防災訓練の計画立案や講演活動などを行えるようになっています。
地域で実践できるようになるためのカリキュラムの枠組みとしては、「座学」と「演習」の2つに分かれます。
座学の内容について
地域防災リーダー理論 | リーダーの役割や地域で活動を進めるためのコツ、自ら率先して実施する活動の仕方などを学びます |
地域の防災活動の進め方 | 平常時の活動と災害時の活動の違いを明確に学び、特に平常時でなにが必要なのかを学びます |
災害に関する基礎知識 | さまざまな自然現象によって起きる災害について詳しく学びます |
防災に関する基礎知識 | 平常時からやるべきこと、災害時にやるびきことなど、防災の基礎知識から習得していきいます |
演習の内容について
- 救命救急法(普通救命講習修了証が発行されます)
- 避難訓練、初期消火訓練等
- 防災まち歩き
- 防災マップ作製
- 図上演習(DIG 等)
- 避難所運営シミュレーション(HUG 等)
- その他防災課題の解決策を検討するワークショップなど
出典:地域防災リーダー育成用研修テキスト「地域防災リーダー入門」活用の手引き
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/keigen/gensai/pdf/leader_guide.pdf
座学で学ぶ内容とは!?代表的な3つの項目
それでは座学で学ぶ内容について、わかりやすく解説していきましょう。詳しい内容は実際に研修を受けてみればわかることなので、ここでは代表的な3つの項目をお伝えしますね。
その1:防災リーダーとは、どのような人を指して呼ぶのか
防災リーダーになるには「自己犠牲の精神がなければいけない!」と、勘違いしている方も中にはいます。
そうではなくて、自助をしっかりできるようになれる人。そして、共助である周囲を助ける人になることが、防災リーダーになるということなのです。
【POINT】
- 自助とは、先ず自分の命を守ること
- 自分が助かった後、家族や周囲を助けることが共助
- 自己犠牲の精神でなく自分が助かる術を持っていること
- 自分が助からないと家族を助けることができない
- 防災リーダーは先ず自分を助ける術を持っている人
「自助」というい葉の意味も曖昧に捉えてしまいがちですが、超簡単にいえば「自分の命を守ること」となります。
防災リーダーとは、自分の命を守る術を持っている人をそう呼ぶのだと、覚えるといいですよ。
その2:家族や周囲を助ける術を学ぶ
前述の自分の命をまもる術を持っていれば、家族や周囲の方も守れると思ってしまいますが、ところがそう簡単には行かないのです。
例えば、大雨で洪水が起きた場合をイメージしてください。自宅が浸水するので安全な避難所に逃げることを、自分だけが知っていて家族が知らなければどうなるでしょう。
洪水ハザードマップで大雨時は自宅が浸水することを知っている
- 大雨時は早急に安全な避難所に逃げるつもり
- 家族は自宅が浸水することを知らない
- 自分は助かるが家族の命は危険となる
ここで防災リーダーとしてやらなければならないことは、大雨時には自宅が浸水してしまうことを家族で共有しておくことなのです。
洪水ハザードマップを家族で確認しながら、どの避難所に逃げるのかしっかり話をしておくことが重要となります。
【POINT】
- 家族で自宅が浸水する情報を共有しておく
- どの避難所に逃げるのかも決めておく
- 集合できない場合の連絡方法なども決めておく
- これだけで、自分と家族の安全が確保される
その3:災害の種類と逃げ方を学ぶ
3つめは災害の種類と逃げ方を学びます。災害を大まかに分類すると、地震災害と土砂災害、突発的に起きる火災に分けることができます。
では、地震が起きた場合引き起こされる災害を考えてみてください。
- 地震がおきると、さまざまな災害が発生する
- 土砂崩れ
- 家屋の倒壊
- 津波
- 火災
地震が起きると、これだけの災害発生が予想されますよね。では、大雨の時に地震が起きるとどうなるか、想像すると土砂災害が起きる可能性が高くなることは容易に思いつくでしょう。
【POINT】
- 地震が起きた時、自宅が倒壊する危険があれば安全な広場に逃げる
- 津波が起きた時はとにかく高台に逃げる
- 土砂災害の発生が高い時は川の近くを通らず逃げる
このように、起きる災害によって避難する場所や逃げ方も変わってくるので、命を守る手段としてこれらを学んでいくのです。
その他お年寄りの避難の方法など、さまざまな知識が身につく
先の3つの座学の内容はあくまでもわかりやすく解説したもので、もっとたくさんのことを学んでいきます。
お年寄りの避難の方法なども普通の方と異なってきますが、カリキュラムの中でしっかり勉強できるので、色んな知識を持つことができますよ。
演習は恥ずかしがらずに率先して取り組むことが大切
次に演習ですが、基本的にワークショップ形式で学んでいきます。研修生の中でグループを作って、グループごとに演習を行い演習後には成果を発表しあうのがポピュラーな手法ですね。
「救命救急法」では大きな声と指さし確認が求められる
ここで是非アドバイスしておきたいことは、演習では「恥ずかしがってはいけない」ということです。
代表的な演習で説明すると、救命救急法では次の手順を学びます。
1:倒れている人の周囲の安全を確認する | 指さし確認を行い「周囲異常なし!」と呼称する |
2:倒れている人の反応を確認する | 「大丈夫ですか!!」と耳元で大声で呼びかける |
3:周囲の人に119番通報とAEDの手配を依頼する | 迷わず、誰でもいいので付近の人に強くお願いする |
4:呼吸しているか確認する | 耳を口元、鼻先に近づけて確認する |
5:胸骨圧迫と人口呼吸を行う | 肋骨が折れるくらい強く圧迫する、口から息を吹き込む |
6:AEDを使用する際に「離れて」など大きな声で指示を出す | 必要以上に衣服を脱がさないで確実に装着する |
大まかな流れですが、この方法を大勢の前で行うのです。恥ずかしがり屋の方だと「ちょっとムリかも」と、思ってしまうでしょう。ですが、人命がかかっているので恥ずかしいといっている場合ではありませんよね。
演習を繰り返す内に、恥ずかしがり屋の方でもスムーズに声を出せるようになってきます。防災リーダーと呼ばれる頃には、これができるようになっているのですから不思議ですね。
まとめ
防災リーダーになるための研修では、たくさんの知識を取得していきます。勉強は苦手という方もいますが、学校で習う数学や英語の勉強とは違って「災害から生き残る力」を養うための勉強なので、あまり辛くはありません。
防災リーダーに相応しいのは、元気なお年寄りよりも、元気で若い人です。年配の方に負けず、若い方もどんどん防災リーダーになっていってくださいね。
出典:内閣府 地域防災リーダー育成用研修テキスト「地域防災リーダー入門」活用の手引き
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/keigen/gensai/pdf/leader_guide.pdf