2024年1月1日に発生した、令和6年能登半島地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。 被害を受けられた皆様の安全と、1日でも早く平穏な生活に戻られますことを心よりお祈り申し上げます。
2011年3月11日から13年目を迎えようとしています。東日本大震災の教訓を活かして、この10数年で地震津波観測網は飛躍的に進化を遂げています。
今回は、地震や津波から国民の命をまもる「海底地震・津波観測網」を紹介しましょう。
海底地震・津波観測網とは
海底地震・津波観測網とは、文字通り海底地震と津波を観測する装置のことです。
1995年の阪神淡路大震災をきっかけに、陸地における地震観測に力を入れてきました。その理由は阪神淡路大震災の地震が、断層による内陸型の地震だったからです。
東日本大震災が起きた2011年当時を振り返ると、それまでに陸地には1,490基の地震計が設置されていて、地震観測網としては充実していました。
一方で、海溝型地震を観測する海域には45基しか設置されておらず、観測網と呼ぶまでには成熟していません。従って、当時の地震は震源から遠く離れた陸地の地震計で得たデータで、規模を推測するしかなかったのです。
地震規模を過小評価してしまう
数百キロ離れた海底での地震動を、陸地の地震計で受信したため地震発生から3分後に、マグネチュード7.9と判断しています。
この地震規模による津波の高さは、宮城県で約6m、岩手県と福島県で3mと予測しました。
ところが、実際の地震規模はマグネチュード9.0であり、これは予測の規模の40倍以上のエネルギー量となります。
気象庁は地震発生後から28分後に訂正し、津波の高さは宮城県で10m以上、岩手県と福島県で6mの津波となると警報を発表しています。
しかし、現地では地震によって既に停電が発生し、警報がきちんと伝わることなく津波が到来してしまったのです。
海底地震津波観測網・S-netが急ピッチで整備された
同じ過ちを繰り返さないためにも、東日本大震災以降、海底地震津波観測網の整備を急ピッチで進めており、東日本の太平洋側には「日本海溝海底地震津波観測網 S-net」が整備され、南海トラフにはDONETが整備されました。
そして現在は、南海トラフ海底地震津波観測網「N-net」が整備されつつあります。
日本海溝海底地震津波観測網 「S-net」
日本海溝海底地震津波観測網「S-net」は、地震計と水圧計が一体となった観測装置を海底ケーブルで接続し、これを日本海溝から千島海溝海域に至る東日本太平洋沖に設置し、リアルタイムに24時間連続で観測データを取得できるシステムです。
観測装置は150個所、ケーブルの延長は約5,500kmにもおよんでいます。
海溝型地震や直後の津波を直接的に検知し、迅速かつ確実な情報伝達により被害の軽減や、避難行動などの防災対策に役立てるための観測網です。
「S-net」の観測網は、次の5つの海域と日本海溝の外側にそれぞれ設置されています。
- 房総沖
- 茨城・福島沖
- 宮城・岩手沖
- 三陸沖北部
- 釧路・青森沖
- 海溝軸外側(アウターライズ)
地震・津波観測監視システム「DONET」
「DONET」は、先の「S-net」同様、海底観測網です。この観測網では過去の東南海地震と南海地震の発生地点となる、熊野灘と紀伊水道沖に観測網を展開しています。
「DONET」は、熊野灘がDONET1、紀伊水道沖がDONET2と呼ばれていて、2つの観測網で構成されています。
南海トラフ海底地震津波観測網「N-net」
「N-net」は南海トラフ巨大地震に備えて、南海トラフ地震の想定震源域のうち観測網が設置されていない、高知県沖~日向灘の海域に、ケーブル式の海底地震・津波観測システムを構築しています。
「N-net」は現時点で整備中であり完成には至っていません。スケジュール的には次のようになっています。
- 2023年10月24日 沖合システムの敷設工事 開始
- 2023年10月下旬 陸揚げ作業※(高知県・室戸ジオパーク陸上局への陸揚げ)
- 2023年12月下旬 陸揚げ作業※(宮崎県・串間陸上局への陸揚げ)
- 2024年 1月中旬 沖合システムの敷設工事 終了
- 2024年以降 沿岸システムの敷設工事 実施
- 2025年 3月末 N-net 整備完了
※陸揚げ作業:海底ケーブルと陸上局を繋ぐ作業
防災科学技術研究所の2023年12月18日付けのプレリリースには、宮崎県串間市でN-netの海底ケーブルの陸揚げ作業見学会がお知らせされています。
このことから、スケジュール的には遅れなく観測網の設置が行われているようです。
1秒でも早く津波の情報を伝える仕組み!
「S-net」「DONET」「N-net」の、各海底地震津波観測網によって、大規模な津波情報をいち早く伝えることで早期の避難を実現させ、多くの命を救うことができます。
「N-net」が完成すれば、日本の太平洋側全ての海溝を観測することが可能となります。
近い将来必ずくるであろう、南海トラフ巨大地震に備えることができるでしょう!
参考サイト