一口に「騒音」といってもその分類はさまざまで、騒音の種類によっては大きなトラブルに発展するケースもあります。
工事で起きる騒音もうるさいですが、なかでも「生活騒音」はトラブル発生の要素が強い騒音です。
今回は意外に知らない騒音の種類や、生活騒音によるトラブルと騒音に関する法律などを学んでいきましょう。
騒音の種類は概ね6種類!発生源の種類によって異なる
騒音の種類は、発生源の種類によって分類されています。
その種類は、概ね6種類。
この6種類の騒音の内容を、カンタンに説明しておきましょう。
1:工場・事業場騒音
工場・事業場内の機械や装置、工場敷地内を走行する自動車や作業車両から発生する騒音で、字のごとく工場などの傍に行くと聞こえてきます。
2:建設作業騒音
建設作業に用いる機械や建設機材、建設作業場内を走行する自動車や作業車両から発生する騒音です。
文字通り、建設現場で起きる騒音が該当します。
3:近隣騒音
営業騒音(カラオケ装置などの営業機器、商業宣伝・選挙等用の拡声器)、テレビ・音響機器等、事業所や家庭における空調設備など、屋外に設置される機器による騒音などを指しています。
4:営業騒音
各都道府県の条例によって、店舗や住宅街における商業宣伝の拡声器使用について、規制が設けられています。
住宅街を巡回する廃品回収車や、移動販売車の増加によって、拡声器の騒音苦情が多くなっています。
5:生活騒音
・家庭用機器からの騒音 ⇒冷蔵庫、掃除機などの音
・家庭用設備、住宅構造面からの騒音 ⇒ドアの開閉音など
・音響機器からの音 ⇒ピアノ、カラオケ、ステレオ、テレビなどの音
・生活行動に伴う音⇒ 話し声、食器の音など
・自動車(主にクラクションやエンジン音、タイヤロードノイズ等)
・ペットの鳴き声、風鈴の音
これらは、東京都環境局が生活騒音として分類している騒音です。
最近では、保育園や幼稚園、小学校などの幼児や児童が発する声がうるさいとの苦情も増えてきています。
6:低周波騒音
低周波音は、200Hzあるいは100Hz以下の、低い周波数帯域の音が聞こえてくる現象です。
具体的にいうと、車のアイドリングが家の壁を抜けて聞こえる音が、低周波騒音に該当します。
実際の生活における不要な音は全て生活騒音と考えてしまう
学術的に騒音を分類すると、先のような分類になるのでしょう。
ですが、生活している日常の中で「うるさい」と感じる音は、全て生活騒音になると考えていいのではないでしょうか。
ここでは、日常で起きる迷惑な音について考えてみましょう。
マンションの上階からの音
マンションなど共同住宅の場合よくあるのが、上階からのドスンドスンと暴れる音や、楽器の音はうるさいと感じます。
小さな子どもがいると仕方ないのですが、分かっていても我慢できないケースもあります。
さらに、楽器の音も意外に下の階に響きます。
ベースなどのギター系はアンプを使っていなくても、弦を弾く力が強いと振動が伝わって不快な音として聞こえてきます。
マンション隣部屋からの話し声
しっかりしたマンションであればあまり問題がないのかも知れませんが、壁の薄い作りだと隣部屋の話し声や、テレビの音が漏れ聞こえてきます。
生活リズムが異なる際には、夜中に隣がうるさくて眠れないケースもあります。
ご近所トラブルの、典型的な例になりますね。
家の隣で工事が始まったら朝からうるさい
戸建てでマンションのような騒音トラブルがなくても、いきなり隣で工事が始まると騒音に悩まされる結果になるかも知れません。
工事会社も近隣への配慮はするでしょうが、騒音規制法では7:00から19:00までの工事を許可しています。
朝の7:00が早いと感じるか否かはそれぞれのライフスタイルによって異なりますが、大抵の場合「早い」でしょう。
工事が7:00から始まるには、早ければ6:00くらいから人が集まり始めて、話し声や車の音が聞こえてきます。
道具の用意などでガチャガチャと、工事より先に騒音が発生する可能性は高いです。
こうなると、「朝からうるさい!」となる気持ちは分かりますね。
建設工事にせよ、道路工事にせよ、同じくうるさいです。
早朝や深夜の話声はよく聞こえてくる
早朝や深夜などは、外の音がよく聞こえてきます。
これは、騒音が少ないことと、気温が低いことの2つの要因で、よく聞こえてきます。
音は温かいと、早く伝わる性質を持っています。
昼間は地表面が暖かく上空が冷たいので、地表面の音は上空に抜けていきます。
一方で、早朝や深夜は気温が逆転して、地表面が冷たく上空が暖かいので、音は上空に行くと早く伝わろうとして、上空には逃げません。
なので、早朝や深夜は地表面付近での会話が聞こえやすくなっています。
生活騒音によるトラブルの事例
生活騒音によるトラブルの事例は、たくさんあります。
民事のトラブルは数えきれないほどで、刑事事件のトラブルもたくさんあり、中には殺人事件に発展しているケースもあります。
ここでは、数例をご紹介しましょう。
大工仕事の騒音注意に逆切れ、刺殺した事件
2011年、大阪府堺市中区で起きた事件です。
騒音の原因は「大工仕事の音」ですが、事件を起こしたのは騒音の原因となった大工の方です。
概要をカンタンに説明すると、普段から大工仕事を手伝っていた大芦容疑者が、事件当日、隣に住む大塚さんの同居人の男性に騒音で注意されました。
その2時間後に、隣の大塚さん宅から大きな音がしたので「また、苦情にくる!」と考えて激高し、自宅台所から出刃包丁を持ち出し隣家の前で男性を刺して、近くにいた大塚さんも刺して逃亡。
刺された二人は死亡しています。
ピアノの音に腹を立て無言電話で抗議
2010年、兵庫県で起きた事件です。
逮捕されたのは本溜徹容疑者(44)。
上の階から聞こえるピアノの音に腹を立てて、平成20年12月~22年4月11日までの間に、上の階に住む女性(42)の携帯電話にほぼ連日、数回から数百回の無言電話をかけた容疑で逮捕されています。
ピアノは女性の長女(11)が練習しており「うるさい」と、怒鳴り込んだこともあるようです。
生活騒音への対処法はある!?
先の事件のように、騒音で大きなトラブルに発展することは珍しくありません。生活騒音への対処法は、現実的にあるのでしょうか。
マンションの場合は管理組合に相談する
マンションなどの場合は、管理組合に相談すれば解決できる可能性はあります。
その際には、証拠となる音声データか動画を撮っておくことが有効です。
特に、動画なら状況もよく分かりますし、何より説得力があります。また、1回や2回だけでは管理組合も動けません。
騒音が常態化していることも証明する必要があるので、動画は数十回程度撮影する必要があるでしょう。
戸建ての場合はかなり難しい
戸建ての場合で、隣の犬の吠える声がうるさいとか、室外機の音が大きくてうるさいなどの苦情は、言いずらいのが現状です。
苦情を言ってしまうと、ご近所トラブルに発展する可能性は高く、住みにくくなってしまいます。
また、民事となるため警察に相談しても相手にしてもらえません。
地域の自治会も近隣のトラブルには、干渉しませんからね。
残念ですが、それとなく分かってもらうか、我慢するしかないでしょう。
工事現場の音も「騒音」と認定しずらい
工事現場の騒音も、工事自体が7:00から行われていれば法律違反にはなりません。
7:00以前の音については、いくらかクレームを付けることができますが、100%なくなることはないでしょう。
7:00からの騒音にしても、騒音規制法4条1項における「特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準」に該当しているか調査するもの難しいです。
まとめ
今回は騒音について、いろいろとと学んできました。
騒音には種類がありますが、日常生活で「うるさい」と感じた音は、全て生活騒音になってしまうでしょう。
生活騒音はいつ起きてもおかしくありません。そして、そのほとんどに確実な対処法が存在しません。
あまりに酷いものは騒音規制法に抵触するはずなので、法的処置をとることが可能ですが、そうでない場合は我慢するしかないようですね。
くれぐれも、頭にきて大きなトラブルにならないよう、隣人関係には注意したいですね。
出典:ウエザーニュース 気温が関係あり?音が遠くまで聞こえる理由
https://weathernews.jp/s/topics/201712/050105/
日本騒音調査 ソーチョー 騒音トラブル事件簿
https://www.skklab.com/noise_incidents
Wikipedia 騒音