2022年5月、まだ新型コロナウイルスが猛威を振るっていた時期に「サル痘(とう)」のニュースが報じられました。
この時点では対岸の火事でしたが、2022年7月には国内でも1例目の患者が見つかっています。
その後も散発的に発生報告がありましたが、2023年に入って患者数は増加しています。
しかし、サル痘とはどのような病気なのか、詳しく知っている方は少ないはずです。
ただサル痘は、ウイルスを原因とする新型コロナと同様の感染症なのです。
そこで今回は「もしも、サル痘がパンデミックになったらどうなるのか?」に、ついて考えてみます。
そもそも「サル痘」とはどのような病気なのか?
「あなたは、サル痘に罹っています」といわれても、ピンとこないでしょう。
それもそのはずで「サル痘」がどのような病気なのか、知っている方は少ないからです。
そこでまずは、そもそもサル痘とはどのような病気なのかを、解説しておきましょう。
サル痘ウイルスが原因の感染症
サル痘とはサル痘ウイルスが原因の感染症で、天然痘ウイルスと類似性があります。
ヨーロッパでは大昔に350万人もの命が亡くなったことから、天然痘は恐怖のウイルスともいわれています。
その天然痘ウイルスと似ていることから、サル痘ウイルスも危険な病原体として認識されています。
一般的には発熱や発疹(ほっしん)、リンパ節のハレなどの症状が主ですが、ほとんどが数週間で自然に治っています。
では、自然に治るサル痘がなぜ騒がれているのか?それは2022年~2023年にかけて、急激に増加しているからです。
どのようなウイルスでも発生率が高まれば、リスクは高くなるのは当然です。
サル痘も自然に治るとはいえ、0~11%の致死率があることから、パンデミックになれば死亡者も多くなることが予想されます。
2023年3月26日にはYahoo!ニュースでも報じられている
現在国内で流行しているサル痘の症状は、既に流行している梅毒の症状と類似しているといわれています。
類似している症状を持つこの2つの病気が、同時に流行していることからパンデミックが起きるのではと、懸念されているのです。
というのも、梅毒は別にしてサル痘は海外では流行が終息しているにも関わらず、日本国内では患者が増加しているからです。
ここで、厚生労働省が公開している「サル痘の発生件数のグラフ」と、Yahoo!ニュースに掲載されている「梅毒患者のグラフ」をご覧ください。
いずれも、2022から急激に増加していることが分かります。
【サル痘の症例数】
【梅毒の年間報告数の推移】
実験動物のサルから発見されたので「サル痘」と命名
ところでサル痘とは、サルがウイルスの原因と思われるようですが、それは間違いです。
1958年デンマークの研究所で、サルから発見された病原性ウイルスなので「サル痘」と名付けられています。
したがって、サルがもたらすウイルスではないことを、知っておいてください。
サル痘が発生するメカニズム
サル痘は中央アフリカや西アフリカの森林地帯で発生する風土病であり、アフリカ以外の国で発見されたのは数例しかありません。
しかも、そのすべての発症患者は全員アフリカへの渡航歴があったそうです。また、サル痘は人間を宿主にすることはありません。
ここで、サル痘が人に発病するメカニズムを見てみましょう。
リスなどのげっ歯類から感染する
サル痘はアフリカに生息するリスなどのげっ歯類に、人間が接触することで感染します。また、感染した人との体液や血液、性交渉によって人から人への感染が起こります。
さらに、対面での長時間に渡る飛沫の吸引や、寝具等の接触によっても感染するようです。これは、先にお伝えした梅毒の感染メカニズムと同様です。
もしも、サル痘がパンデミックになったらどうなるのか?
ここまでで、サル痘とはどのような病気であり、感染のメカニズムも解説してきました。
ここからは、本題である「もしも、サル痘がパンデミックになったらどうなるのか?」を、考えてみます。
重症なケースではとても苦しい体験をする
先にサル痘に感染しても自然に治ると、お伝えしました。それは軽症なケースであり、重症になると相当苦しむことになります。
発熱と頭痛で起き上がることができず、リンパ節の腫れ、筋肉痛が1~5日継続し、赤い小さな発疹が起こります。
最初は部分的に起きた発疹が、全身に広がるケースもあるのです。次の画像は、国立感染症研究所が発表しているサル痘での発疹例です。
これらの発疹はやがて水ぶくれとなり、発症から2~4週間で治るとされています。
今回のサル痘はひとひと感染している点がポイント
先の症状であれば、初期症状では苦しみますが最終的には治癒することになります。
それならやはり、サル痘に罹っても問題はないのでは、と思いますよね。
ただ今回のサル痘は、これまでの感染ルートとは異なって、多くがひとひと感染によるものです。
サル痘ウイルスが進化した?動物でなく人に宿る能力を獲得
これまでは、サル痘はアフリカのげっ歯類のみを宿主としていました。
ところが今回の状況を見ると、サル痘がげっ歯類だけでなく人を宿主にできる能力を獲得したともいえるでしょう。
その証拠に、WHOの報告では2022年5月時点において30ヵ国以上、感染者数は550人と報告されています。
ウイルスは基本的に変異する!新たなサル痘ウイルスが誕生?
新型コロナウイルスもさまざまなに変異してきたのは、記憶に新しいでしょう。その度に、変異に対応したワクチンが開発され、摂取が推奨されてきました。
今回のサル痘ウイルスも突然変異を起こし、全く新しいサル痘ウイルスとして世界中に広がったと推測されます。
サル痘ウイルスではパンデミックは起きない!
今回サル痘ウイルスが突然変異を起こし、人に宿ることを覚えたことでパンデミックが起きるのかというと、答えはNOです。
その理由は、新型コロナウイルスのような飛沫感染よりも、性交渉のような身体接触による感染が原因となるからです。
この点は梅毒の感染と同じで、飛沫感染にしても長時間に渡って相手の飛沫を吸収しなければ、感染には至りません。
したがって、爆発的なパンデミックは起きないといってよいでしょう!
まとめ
今回は、現在進行形で流行しているサル痘を、ピックアップしてみました。
「もしも、サル痘がパンデミックになったらどうなるのか?」について考えてみましたが、サル痘ではパンデミックは起きないと分かりました。
ホッと一安心ですが、実はそうでもないのです。記事内で紹介したとおり、2022年以降梅毒とサル痘の患者数が急激に増加しています。
パンデミックにならないまでも、他人事で済まされなくなってきています。不要な身体接触は控えて、サル痘や梅毒に感染しない行動が求められています。
最後に、サル痘について分かりやすい動画を見つけたのでご紹介しておきましょう。