毎年のように、寄生虫のトラブルがニュースで報じられています。特に有名なのが、アニサキスによる食中毒でしょう。
アニサキスを食材と共に体内に取り込むと、激しい痛みを伴い、悪心(おしん)、嘔吐を生じます。
アニサキスでの死亡例は報告されていませんが、人によっては「死ぬほど痛かった」と訴えています。
ところで、寄生虫ではなくO157のような細菌による食中毒では、死亡例があります。
特に生肉を食べることで食中毒を起こし、死亡するケースが多いです。
そこで今回は「もしも、菌が繁殖した生肉を食べるとどうなるのか?」について考えてみました。
2011年には集団食中毒にて5人が死亡する事件が発生
生肉のトラブルとして有名なのが、2011年に焼肉チェーン「焼肉酒家えびす」による、集団食中毒事件です。
この事件では富山、福井、石川、神奈川の4県の6店舗で、提供された生肉のユッケを食べたお客の内、181人が食中毒を発症し、残念ながら5名が死亡してしまいました。
生肉がO157に汚染されていた
この事件で死亡者まで発生するに至った原因は、提供された生肉のユッケがO157(腸管出血性大腸菌)に汚染されていたことが原因でした。
生肉を提供したやく肉店の運営会社の元社長は、業務上過失致死容疑で書類送検されましたが、不起訴となっています。
この事件を契機にユッケ等の生食用牛肉の基準が策定された!
この事件が起きるまでは、焼き肉店などでは生肉を使ったユッケや、レバ刺しなど、生食用の肉の提供が当たり前におこなわれていました。
しかし、この事件を契機に厚生労働省では「ユッケ等の生食用牛肉の基準」を策定して、2011年(平成23年)10月1日から施行され、焼き肉店では生肉の提供が厳しくなっています。
2022年にもレアステーキで90代の女性が死亡している
2011年の集団食中毒を受けて、生食用の肉の提供が厳しく制限されることになったにも関わらず、その後も度々生の肉を食べて食中毒になるケースが後を絶ちません。
そして2022年9月には、京都府宇治市の食品店「MEAT&FRESH TAKAMI」が販売したレアステーキにて、90代の女性が死亡する事件が起きています。
9歳~87歳の男女22人が食中毒の症状を訴えている
死亡した女性を除いて、同店が販売したレアステーキやローストビーフを食べた、9歳~87歳の男女22人が食中毒の症状を訴えています。
この人たちは幸いにも命に関わるほどではなかったですが、もしかすると肉を食べるのが怖くなっているかも知れません。
生肉には菌が付着している
「新鮮な肉は生で食べられる」のは、ほとんどが間違いです。
ほとんどの生肉には、菌が付着しており食べると食中毒を引き起こします。
その証拠に厚生労働省では次のように勧告しているのです。
豚肉や豚レバーなどの内臓は生で食べず中心部まで、加熱して食べましょう。
豚のお肉や内臓は生食用として販売できません。
牛や豚だけでなくイノシシやシカなどのその他の動物も、生のお肉や内臓は、食中毒が発生する危険があります。
人間の胃液のpHは1.5と強い酸を持っている
では、人間以外の肉食動物を見てみましょう。一般的な雑食動物の胃液はpH2.9程度で、腐敗した肉を食べるスカベンジャーの胃液はpH1.3~1.8程度です。
一方で人間はというと胃液のpHは1.5なので、pH値だけを見れば人間の胃酸はスカベンジャー並みとなり、腐敗した肉を食べても問題ないといえます。
人間の胃酸ではアニサキスも食中毒菌も溶けない
人間の胃液のpHは1.5と強い酸性であるにも関わらず、アニサキスなどの寄生虫もO157などの食中毒菌も、胃酸に溶けることなく体の内部から攻撃してきます。
人間以外の動物にとっては、生肉は問題なく食べられる食材ですが、人にとっては危険な食材となっています。
火を十分通すことで人は肉を食べても食中毒にならない
生ではなく肉に十分火を通すことで、肉に付着していた菌を焼き殺し、食べても食中毒になることはありません。
野生動物との違いは、これまで人間が進化してきた過程で胃酸の強さだけでなく、さまざまな要因によって形成されたものなのでしょう。
菌の付いた生肉を食べるとどうなるか?結論は死に至る!
今回のお題でもある「もしも、菌が繁殖した生肉を食べるとどうなるのか?」の答えは、既に出ているとおり「死に至る!」です。
ただし、特異体質であれば菌が繁殖した生肉を食べても、健康に問題がない人も存在するかも知れません。
すべての人間が死に至っていない
なぜ「特異体質であれば菌が繁殖した生肉を食べても、健康に問題がない人も存在するかも知れない」のかというと、2011年に起きた集団食中毒においても、2022年の食中毒においても、それぞれ個人で症状が異なるからです。
菌に耐性のない人は死に至ってしまいますが、耐性が少しある方は食中毒で済み死に至っていません。
また、もっと耐性の強い方は食中毒でも症状が軽く済んでいます。
このことから、もしかすれば菌に強い耐性を持つ人がいれば、菌が繁殖した生肉でも平気で食べれるのかも知れません。
現代人は一昔の人間と比べると抵抗力が弱い
耐性の話はあくまでも想像の範囲のお話であり、生肉を人が食べるのはタブーとなります。
しかも、近代化された現代では、生まれてからほぼ無菌状態で育つので、昔のような自然の驚異に対する免疫はありません。
一昔前では、下水の整備も少なく畑には肥えツボがあり、肥料として使われていました。
つまり、人糞を肥料に畑で育つ野菜を食べていたのです。
また、ハエが食材に止まることは日常であり、手で追い払うも食材を改めて洗い直すなどはしませんでした。
このようなことが積み重なって、体の中にはさまざまな菌が侵入し、抗体を作っていたはずです。
これらのことを考慮すれば、現代人は一昔の人間と比べると抵抗力が弱いといってもいいでしょう。
肉は十分に加熱して食べることが重要!馬は生で食べてもOK
抵抗力が少なくなっているのですから、できるだけ体の中に菌を取り込んではいけません。
肉はしっかり加熱して、体調の悪い時には刺身などの生食を控えるなど、食事に気を付けることが重要です。
牛・豚・鳥・鹿・イノシシの肉や内臓は、生で食べてはいけません。
ただし、馬の肉は「馬刺し」として食べてもよいとされています。
その理由は、馬は体温が高く、雑菌が繁殖しにくいという性質を持っているからです。
そのため、馬の肉は生で食べても問題がないとされています。
まとめ
今回は「もしも、菌が繁殖した生肉を食べるとどうなるのか?」について考えてみました。
結論としては「死に至る!」です。
人間の胃酸は強く、ほとんどの食材を溶かすことが可能です。
しかしながら、アニサキスなどの寄生虫や、食中毒菌は胃酸で溶かすことができません。
そしてこれらは、体の内部から攻撃し激しい痛みを伴いながら、最悪のケースでは死に至ります。
そうならないためにも、生肉を食べるのは避けて、しっかり過熱して食べることが重要です。
最後に、今回の考察に至った原因である動画をご紹介しておきましょう。