数ある防災グッズを購入しても、聴覚障がい者の方が最も必要なグッズは入っていません。なぜなら、市販の防災グッズは健常者を基本に構成されているからです。
今回は、聴覚障がい者の方が避難所に向かう際に、必ず持って行って欲しい防災グッズをご紹介します。
聴覚障がい者専用の防災グッズ!考えるに至った経緯
これまで防災士として、さまざまな防災グッズを監修してきました。
女性専用・一人暮らし・必要最小限・100円ショップグッズなど、要望に応じてそれなりに考えて来ましたが、どれも「専用」と言えるものでなく「汎用」できるグッズばかりです。
ところが、聴覚障がい者の方に向けての防災講座の依頼を受けて、考えに至ったのが「筆談用のアイテム」が必要だ。ということでした。
災害対策基本法改正に基づき福祉避難所へ直接避難できるようになったが・・・
令和3年5月20日に改正された災害対策基本法では、避難勧告が廃止され避難指示に一本化されました。それと同時に、福祉避難所への直接避難もできるようになっています。
このことについて、関係各所に取材を行ったところ、「ガイドラインを策定する計画はあるものの、当面はこれまでと同じシステムでの運営となる」とのこと。
これまでと同じ運営とは、どういうことなのか次で詳しく説明しましょう。
実際に福祉避難所に避難するまでに必要なステップ
避難行動要支援者の方は、一般の指定避難所での長期的な避難生活は、難しいと考えられます。
このような要支援者の方は、設備のある福祉避難所での避難生活を送ることができるのですが、福祉避難所へ辿り着くまでにいくつか問題があります。
下記が、避難行動要支援者の方が福祉避難所に避難するまでのステップとなります。
1:指定避難所に避難する
2:避難が長期的になると災害対策本部が判断
3:福祉避難所が開設される
4:保健所員や福祉担当職員が指定避難所に派遣される
5:保健所員や福祉担当職員が要支援者を見極め
6:選ばれた要支援者が自らの力で指定された福祉補難所に向かう
7:福祉避難所で避難生活をおくる
問題その1 ステップ5での要支援者として見極める方法
先のステップに沿って、聴覚障がい者の方が避難されるにあたり懸念される問題点の1つは、ステップ5にて、聴覚障がい者の方が要支援者であることを、保健所員や福祉担当職員が見抜けるか、と言う点です。
聴覚障がい者の方は、一見するだけでは健常者との違いを見抜くことはできません。
ですから、保健所員の方が見回って会話をしなければ、要支援者の選別から漏れてしまう可能性が高いのです。
問題その2 ステップ6の自力で福祉避難所に向かう
次の問題は、要支援者として選別されたとして、指定の福祉避難所には自らの力で向かう必要がある点です。
家族のマイカーで送迎、もしくはタクシーやバスでの移動が原則であり、自治体では移動手段を用意できないこととなっています。
家族のいる方は問題ありませんが、そうでない方は自ら誰かに助けを求めることが必要となります。
自らの意思を伝える「筆談アイテム」が必須となる
そこで、聴覚障がい者の方は自分専用の「筆談アイテム」が防災グッズとして必須となってきます。
保健所員によって要支援者の見極めが行われるときは、「私も連れてってください!」と、アピールする必要があります。
交通手段がない場合は「タクシーを頼んでください」と、お願いする必要があります。
その場合、聴覚障がい者の方は「筆談」しか伝える手段がありません。
ですから、飲み水を忘れても「筆談アイテム」は絶対に忘れてはならない防災グッズになります。
聴覚障がい者の方は「筆談アイテム」で自らの意思をアピールしよう
福祉避難所が開設されるのは、現段階では災害が起きてから数日後となります。
その間は指定避難所に一般の方と一緒に、避難生活をおくることとなります。
手話通訳者のボランティア派遣も時間がかかる
どの市町村の防災マニュアルを見ても、要支援者に対してのボラティア派遣の記載があります。
ですが、災害直後からボランティアの受け付けを行うことは不可能です。
ボランティアセンターの開設も、市区町村の職員が行います。ですが、その職員も正に被災者です。
このような状況では、直ぐにボランティアの受け付けができないのは、お分かり頂けるでしょう。
なので、聴覚障がい者の方は指定避難所で欲しい物や、相談したいことは筆談するしか手段はありません。
聴覚障がい者の方が、無事に避難生活をおくるには「筆談アイテム」が必要なのです。
ビブスをつけたスタッフと筆談をしよう
避難所では運営スタッフは必ず役割を記載した「ビブス」を身に着けています。
「医者・看護師・救護班・物資班・対策本部」など自治体によって、役割の名前は変わりますが、必ずビブスを着用しています。
何か相談したいことや、して欲しいことがある場合は、遠慮しないでビブスを着用しているスタッフに筆談にて話しかけましょう。
重要なのは我慢しないこと!我がままに振舞うくらいでないと、避難時の喧騒に負けて酷い目にあうかも知れません。
筆談アイテムはできるだけ大きな方が分かりやすい
ここでいう「筆談アイテム」とは、相手と筆談できれば何でもいいのですが、小さいな手帳では見にくいですし、無くなる可能性もあります。何より目立たないのが、あまりよくありません。
最低でもA4サイズのノート、スケッチブック、ホワイトボード。
これらが最適だと言えるでしょう。A3サイズであれば、両手で持ち上げてアピールすれば目立つので最適ですが、持ち運びには大きすぎるかも知れません。
スマホアプリ「全国避難所ガイド」は行政防災無線の内容を読める
各自治体が普及に努めている防災行政無線ですが、残念ながら聴覚障がい者の方はこの無線の内容を聞くことができません。
ですが、スマホアプリである「全国避難所ガイド」では、行政防災無線の内容を読むことができます。
聴覚障がい者の方にはとても便利な機能なので、スマホにダウンロードしておくことをおススメします。
アプリの設定方法
行政防災無線をアプリで読むには「地域防災情報エリア」を設定する必要があります。手順は、上記画像のとおり行えば大丈夫です。
ただし、対象の県の右側に「未対応」と記載のある県は、アプリに対応してません。
空白なら対応しています。全国的には普及率は低いですが、対応している県や市であれば登録しておくメリットはあるでしょう。
「筆談アイテム」は、聴覚障がい者の方必須の防災グッズ
今回は「筆談アイテム」が、聴覚障がい者の方に絶対必要な防災グッズであることをお伝えしました。
数年後には、要支援者の方は福祉避難所に直接避難することが、できるようになるでしょう。
ですが、現段階では指定避難所に避難して数日過ごし、その後、福祉避難所に移動することとなります。
手話通訳者の方とペアで避難できれば問題ないのですが、そうでない場合は意思が伝えられないと困ります。
聴覚障がい者の方は、是非とも「筆談アイテム」を防災グッズの中に入れておいてくださいね。