「減災」とは、災害で被害が発生することは前提とし、その被害を最小限におさえるという概念です。
一般的には「防災」のほうが聞き慣れた言葉でしょう。そのため、減災に取り組むと言われても「何をどうしたらいいの?」と困ることがあるかもしれません。
そこで今回は、はじめに減災のヒントを見つけるべく、災害に遭われた方々のエピソード(『災害の一日前に戻れたら、あなたは何をしますか?』の質問への回答)をご紹介します。
そのうえで、減災にむけて今すぐできる具体的な取り組みを、本サイト内の関連記事と合わせてお伝えします。
ぜひ最後までご一読ください。
防災と減災の違い「減災」で“想定外の被害”をなくす
はじめに、防災と減災の違いを簡単に確認しておきましょう。
「減災」について、コトバンクには次のように記されています。
地震、津波、風水雪害、火山噴火などの巨大災害に対し、災害を防ぐ(防災)のではなく、被害がでることを前提にして、それをできるだけ少なく抑えるという概念。
※日本大百科全書(ニッポニカ)「減災」 ※太字は筆者加筆
例をあげてみましょう。津波による被害を出さないために防潮堤をつくるのが「防災」、津波が防潮堤を乗りこえてくる可能性もふくめて対策をとるのが「減災」への取り組み、といったところでしょうか。
そう考えると、毎年のように、これまでの常識を越える規模や頻度で災害が発生している日本では、厳密に言うと「減災」への取り組みが必要だと言えるでしょう。
そしてその取り組みは、災害の種類や家庭内または会社なのかといった場面によっても異なります。
そこで次に、減災のヒントを見つけるべく、実際に災害に遭った方々のエピソードがわかるサイトをご紹介します。
減災のヒントを「一日前プロジェクト」のエピソードに探る
「一日前プロジェクト」とは、内閣府がおこなっているもので、被害に遭った方・災害に対応した方に『災害の一日前に戻れたら、あなたは何をしますか?』をテーマにインタビューし、そのお話をまとめたものです。
実際に経験したからこそ「あのとき~しておけばよかった」との思いも生まれるでしょう。
「避難しなくて本当に大丈夫?」豪雨災害に学ぶ
では早速、ひとつのエピソードをご紹介します。
これは、平成30年7月豪雨(※)を経験された方のお話です。
(※)2018年(平成30年)6月28日~7月8日にかけて、西日本を中心に広い範囲に記録的な大雨がもたらされた。
被害概要:死者224名、行方不明者8名、床上浸水8,567棟、床下浸水21,913棟(参考:気象庁「平成30年7月豪雨」)
ご近所中で「逃げない同盟」!?
あの日は、3人の子どもと、夫の両親と自宅にいました。夕方、暗くなってきた頃から、私も子どもたちも不安になり、両親に避難しようと声をかけました。でも、「大丈夫だから」と避難しないのです。何回も何回も、最後には子どもたちと一緒に避難するようお願いしましたが、両親は動きませんでした。結局、仕事から帰宅した主人の説得で、やっと避難したのです。私の家族に限らず、ご近所の高齢のご両親がいるお宅は、みんな同じ状況だったようです。「ご近所同士で『逃げない同盟』でも結んでいるのかしら」と話していたくらいです。
引用:内閣府 防災情報のページ「一日前プロジェクト」風水害-平成30年7月豪雨/ご近所中で「逃げない同盟」!? ※太字は筆者加筆
私は自分自身に持病があるので、薬や避難生活で必要なものを準備して、家族と一緒に落ち着いて避難したかったですね。(倉敷市 30代 女性)
このエピソードからは、減災のためには「災害の危険性について正しく理解する」ことが大切だと気づかされます。
過去に災害がおきた地域で人々から聞かれる言葉に、「ここまでひどいのは今までなかった」というものがあると言います。
近年は集中豪雨が増えているとするデータもあり、昨今の災害は過去にはない・かつ想像以上の被害をもたらす危険性があるのです。
地震・津波には「434のエピソード」がある
「一日前プロジェクト」では、3つの方法(災害別・地域別・場面別)からエピソードを読むことができます。
●災害別/地震・津波(434)、風水害(301)、雪害(32)、火山(61)、突風(5)、災害共通(39)
※( )内はエピソードの数
●地域別(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州)
●場面別(家庭、地域・ご近所、帰宅困難、学校、企業・職場、行政)
ぜひ、ご自分にとって身近な災害または、それぞれの立場に応じたエピソードを読んで、減災のヒントをみつけてみてはいかがでしょう。
減災にむけて今すぐできる取り組みと関連記事をご紹介!
ここからは、減災にむけた具体的な取り組みについて、本サイト内にある関連記事と合わせてお伝えします。
「自助」自分の命を守る方法を考える
まずは減災の基本とも言える「自助」、つまり発生した災害から自分の命を守ることです。
災害と聞くと真っ先に避難所を思い浮かべる方もいると思いますが、自分の安全が確保されていなければ避難所に行くこともできません。
まさに「自分の身は自分で守る」、これが減災の第一歩です。
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では、「自助」にむけた取り組みにはどのようなものがあるでしょう。
どこにどのような危険があるのか把握する
自分の命を守る(自助)ためには、まず「どこにどのような危険があるか」を知っておくことが大切です。
それを知る1つの手段が「ハザードマップ」です。ハザードマップには、災害による地域の危険箇所が示されています。
国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」には、地図上に災害のリスクを重ねて表示する「重ねるハザードマップ」と、各市町村のハザードマップが検索できる「わがまちハザードマップ」があります。
自宅や会社といった身近な場所だけでなく、旅行先などはじめて行く場所についても、事前にその地域の危険を知っておくことで、減災へとつながるでしょう。
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そして、ハザードマップの確認と同時におこないたいのが、災害の種類に応じた減災の取り組みです。
ここでは、地震そして土砂災害についてみてみましょう。
地震に強い建物・安全なスペースをつくる
地震による圧死から身を守るには、まずは建物の「耐震性」が重要です。
昭和56(1981)年以前の建物は耐震基準が見直されるまえのため、一度耐震性をチェックされることをおすすめします。
ですが、耐震性は業者に依頼しての点検となり日数も要します。そこでまずは、地震がきても倒れてこないよう「家具などを固定」する、そして安全なスペース「セーフティーゾーン」を室内につくりましょう。
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土砂災害の前ぶれを知る
土石流やがけ崩れといった「土砂災害」には、次のような前ぶれ(前兆現象)があるとされています。(引用元:内閣府「減災のてびき~今すぐできる7つの備え~」8頁)
◆土石流の前兆現象
➀川の流れがにごり流木が混ざりはじめる ②雨は降り続いているのに川の水位が下がる ③山鳴りがする
◆地すべりの前兆現象
①沢や井戸の水がにごる ②地割れができる ③斜面から水が噴き出す
◆がけ崩れの前兆現象
①がけから小石がパラパラと 落ちてくる ②がけから水が湧き出ている ③がけに割れ目が見える
ハザードマップで土砂災害の危険箇所を知るのとあわせて、このような前ぶれ・土砂災害のサインを見落とさないようにしましょう。
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ここまで、減災の基本となる「自助」にむけた取り組みをお伝えしました。
次は「共助」そして、避難生活へとつながる「日頃の備え」についてみてみましょう。
「共助」しあえる関係づくり
「共助」とは、ご近所や仲間同士などによる助け合いのことです。
大きな災害下では、消防や警察も日頃のような素早い対応ができない可能性も高く、「共助」はとても大きな力となります。
それは、自分が助けてもらうだけでなく、災害時に支援が必要な方の助けとなることにもつながります。
日頃、地域内で挨拶を交わすだけでなく、できれば地域の行事にも参加をしておくと、より「共助」しやすい関係性へとつながるでしょう。
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日ごろの備えは「外出時」にも忘れずに
災害ではライフラインが途絶えることもあり、「日ごろの備え」が減災への取り組みにつながります。
一般的には「防災対策」として備えている方もいらっしゃることでしょう。
そのなかで、ぜひ忘れないでいただきたいのが、外出先で災害にあうことも考えて備えることです。
室内であればたとえわずかな備蓄であっても、災害への対処もそれなりに可能となるでしょう。しかし、外出先で全く備えがない状態で災害に遭ってしまうと、その影響は肉体的・精神的にとても大きなストレスになってしまいます。
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そして、外出先での減災を考えるときには、見える物だけでなく、連絡手段や安否の確認といった「見えないものへの備え」も大切です。
大切な人たちと災害時の行動を共有しあう
災害が日中に発生すると、家族それぞれが離れた場所で被災する可能性がでてきます。
そのため、各自が「自助」で身をまもった後、「どこに避難するか」「安否は何でどう伝えるのか」などをあらかじめ話し合って決めておくことが大切です。
そのうえで、避難訓練に参加すると改善すべき点や新たな危険がみえてくることもあります。また、安否情報については、WEB171の体験日(※)などを活用し、使い方に慣れておくことも大切です。
※WEB171の体験日/毎月1日・15日(00:00~24:00)、正月三が日(1月1日00:00~1月3日24:00)、防災週間(8月30日9:00~9月5日17:00)、防災とボランティア週間(1月15日9:00~1月21日17:00)
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減災にむけて、災害について学び・備える
今回は、「減災」に取り組むためのヒントと具体的な取り組みをお伝えしました。
厳密には「防災」と「減災」は異なる概念です。ですが、近年はさまざまな媒体で「防災」という言葉が使われており、実は自然と「減災」の取り組みをおこなっていることもあるでしょう。
いずれの場合であっても、予想される災害に対して「なんらかの行動をおこす」ということに違いはありません。
本サイトには、災害について「学ぶ」「備える」そして、役立つ商品をご紹介する「おすすめ」にわけて、さまざまな角度からお伝えしています。
ぜひ具体的な行動につなげるキッカケとして、ご活用いただけると幸いです。
【参考文献】
内閣府「減災のてびき~今すぐできる7つの備え~」
(以上)