外国人向けの防災対策には「やさしい日本語」を活用しよう

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日本には多くの外国人の方が暮らしており、観光地では多くの外国人観光客でにぎわう様子も見られます。新型コロナウイルスの影響により、一時期は海外との行き来がストップしていましたが、それも再開し、今後は労働力としても日本に移住する外国人の増加が見込まれます。

外国人の方も安全に暮らしや観光を楽しめるのが最善ですが、災害はいつ・どこで起こるかわかりません。

日本人はもちろん、言葉があまりわからない外国人は、災害時には特に大きな不安や恐怖を感じるでしょう。そんなとき、外国人の方々を災害から守るために役立つのが「やさしい日本語」です。誰1人逃げ遅れない環境を作るために、私たちは外国人の方々に何ができるのでしょうか。

今回はやさしい日本語とは何か、防災への生かし方や外国人の方が災害への不安を解消するための工夫などをご紹介します。

目次

外国人が抱える日本での災害時の不安

災害が起これば誰しも不安ですが、もし言葉もよくわからない知らない土地で災害に巻き込まれたら…その不安はより大きくなるのではないでしょうか。

実際、日本で暮らす外国人のなかには災害発生時に大きな苦労をした方もいたようです。

日本で暮らす外国人は263万人

2019年1月の時点で、日本に暮らす外国人の方の数は263万人。つまり、50人に1人は外国人という計算になります。地方の方はあまりピンと来ないかもしれませんが、都市部ではコンビニや居酒屋など、さまざまな場所で外国の方が働いているのを見かけることも多いでしょう。

ちなみに筆者は岐阜県の田舎に住んでいますが、車で20分ほど行った街には大きな工場があります。ここで働くため、この地域には多くの外国人の方が住んでおり、町内放送も日本語と英語、ポルトガル語で行われるなどの工夫がされているようです。

言葉の壁による災害時の問題の実例

2019年6月には、大阪府で大きな地震がありました。最大震度6弱だったこの地震で、大阪に住む外国の方々はさまざまな問題に直面したようです。

日本に来て7年が経っていたネパール人の方は「初めての大きな地震に、どこに逃げればよいか、何をすればよいのかまったくわからなかった」と、当時の不安を語ります。7年も日本にいればある程度言葉を理解したり話したりできますが、それでも地震が起こった際には、災害に関する情報をじゅうぶん理解することはできなかったようです。

日常的に使用しない「緊急」「避難所」「勧告」といった専門的な言葉の理解に苦しみ、この方は余震への恐怖を抱えながら何時間も公園で過ごしました。避難所がどこにあるのか、発災後どのように行動すればわからないといった孤独や不安感は、多くの外国の方に関わる問題だといえます。

外国人に向けた「やさしい日本語」とは

災害時、外国の方々が安全に避難する、不安なく過ごすために役立つのが「やさしい日本語」です。「やさしい日本語」とは、私たちが日常会話に使用する言葉よりも簡単で、あまり日本語が得意ではない方にもわかりやすいものを指します。

「やさしい日本語」は、迅速・正確・簡潔に必要な情報を伝えるのに有効です。災害時だけでなく、外国の方々が快適な日常生活を送るのにも役立ちます。

やさしい日本語の例をいくつか見てみましょう。

・少々お待ちください → 少し 待って ください
・更新する      → 新しくする
・食後        → ごはんを 食べたあと
・宿泊する      → 泊まる
・半額        → 料金が 半分に なります
・運転を見合わせる  → 電車は 動きません(来ません)
・犠牲者       → ケガをした人、死んだ人
・警戒する      → 気をつける
・慌てないで     → 急がないで、ゆっくりと
・停電する      → 電気が止まる、電気が使えない

このように、わかりやすい言葉に置き換えて話したり書いたりすることで、外国人の方が言葉の意味を理解しやすくなります。

「やさしい日本語」の防災への活用方法

「やさしい日本語」は日常的なコミュニケーションの促進はもちろん、緊急時や災害時の情報発信にも活用できます。「やさしい日本語」による情報提供により、外国人の方々は災害時に状況を理解したり、どのように行動したりすればよいのかをいちはやく理解できるでしょう。

書面、音声での情報提供における工夫のポイントをご紹介します。

書面での工夫

書面における「やさしい日本語」の工夫は、とにかく「ふりがなを振ること」です。外国人のなかには漢字が読めないという方も多いので、災害に関する情報を提供するときには、わかりやすい言葉に置き換えるだけでなく、難しすぎる漢字を使用しない、簡単な漢字にもふりがなをつけることが求められます。

また、この記事や日本人の方が読む一般的な文章のように句読点で区切るだけでなく、文節ごとにスペースを空けて読みやすくする工夫も必要です。具体例を見てみましょう。

例)地震が発生しました。慌てずすみやかに、近所の避難所へ避難してください

→地震(じしん)が ありました。 すぐに 近(ちか)くの にげるところへ 行(い)きましょう。 急(いそ)がないで 近(ちか)くの 家(いえ)の人(ひと)と 一緒(いっしょ)に 逃(に)げて ください。

音声での工夫

町内放送やテレビ、ラジオなどで災害の状況や避難についての情報提供をする場合にできる工夫は「ゆっくり、はっきりと話す」ことです。やさしい日本語、わかりやすい言葉に置き換えることはもちろんですが、外国の方は早口の日本語では聞き取れないこともあります。

日本人への情報提供や勧告ははっきりと話せば、やや早口でも問題ありません。しかし外国人の方に向けた音声は、小さな子どもと話すようなゆっくりとした口調で、活舌よく話すことが求められます。

緊急時は日本人も慌ててしまいますが、外国人の方が不安にならないような話し方ができるよう、「やさしい日本語」によるアナウンスの練習も、日頃からしておくとよいのではないでしょうか。

外国人が安心して暮らすためにできること

災害が起こったときにやさしい日本語が大いに役立つことがわかりましたが、万一災害が起こった場合を想定し、予めしておける工夫も必要です。

外国人の方が安心して生活を送れる環境を整えるには、どうしたらよいのでしょうか。

防災担当に外国人を採用する

日系ブラジル人を中心に、2万人の外国人が暮らす静岡県浜松市では、一部地域で自治体の防災担当者を外国人の方にお願いしているそうです。日本語が苦手な外国人とのコミュニケーションを密に取りながら、家庭訪問を繰り返し、災害時の行動を伝えたり、防災訓練への参加を促したりしています。そして、この甲斐あって、防災訓練に多くの外国人が参加するようになったとのこと。

防災担当に外国人の方を採用することで、同じ立場に立って解決策を考えたり、防災への意識を高めたりする効果が期待できるようです。

外国人の防災リーダーを育成する

防災への人々の興味・関心が高まるなか、防災リーダー育成のための講座も多く開講されています。実際に被災した外国人の方が講師となり、外国人の防災リーダー育成のための講座を開くことで、わかりやすく災害について、そして災害時の外国人支援の方法について学ぶことが可能です。

1人でも多くの防災リーダーが誕生することで、災害時の対応に役立つことはもちろん、外国の方も防災への意識が高まるのではないでしょうか。

地域住民との接点をつくる

外国人の方が災害時、同じ外国人はもちろん、避難誘導などを行う日本人の指示に従う、支援を受けるためには日頃からのコミュニケーションが大切です。地域住民との接点があれば、どういった人が住んでいて、どのくらいの日本語レベルであるか、日本人も理解できるでしょう。

地域イベントやセミナーの積極的な開催、そして外国人の参加により、地域の結束力を高めることができます。

多言語アプリでの情報発信も重要

最近はスマホでの情報収集が、さまざまな場面で活躍します。筆者も日本語学校で働いていた経験がありますが、学生たちは講師の指導に頼るだけでなく、スマートフォンを使っての学習、情報収集も積極的に行っていました。

最近は、多言語で災害に関する情報を提供してくれるアプリも存在します。こうしたアプリを入れていれば、日本語が苦手な方も簡単に正確な情報を収集できるのではないでしょうか。

多言語アプリのダウンロードなども、日本人、そして外国人の防災リーダーによる呼びかけにより増えていくことが予想されます。

やさしい日本語で、誰もが安全に避難できる環境づくりを

「やさしい日本語」での呼びかけは、災害時に外国人の方々の不安を軽減させながら、正しい情報の提供・避難誘導を可能とします。日本人はもちろん、日本で暮らす多くの方々が安全に過ごせる環境を、日頃から作っていきたいですね。

「やさしい日本語」は外国人だけでなく、小さな子どもやご高齢の方への指導・誘導などにも役立ちます。ぜひこの機会に簡単な言葉での表現を知り、日常生活やもしものときに役立ててみてください。

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

大学・大学院にて日本語学を専攻。日本語教師を経て2018年よりライターに転身。子どもと学べる防災に関心を持ち、日々災害や備えについて勉強中。
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