車の立ち往生とは車が進まなくなった状況です。渋滞は長い列ができるものの少しずつ動いているという点で、立ち往生とは区別されています。
大雪による車の立ち往生では災害救助法が適用されることもあり、それほど雪による車の立ち往生は非常時です。
雪の日に車を運転することは、この非常事態に遭遇するリスクがあり、自分の車が立ち往生するだけでなく、巻き込まれる可能性も。
そこで今回は、東日本大震災を経験した筆者が防災グッズとしてそなえている中から、雪による立ち往生にも役立つ5点をご紹介します。
さらに、立ち往生する原因と対処法も解説するので、ぜひ最後までご一読ください。
雪の立ち往生には普段備えている防災グッズ5点が役立つ
こちらの写真は、筆者が防災グッズとして普段持ち歩いているものです。
雪で車が立ち往生した際にも、これらが役立つことを(左の物から)1つずつ解説していきましょう。
携帯トイレ(おむつ):トイレに行けないストレスは大きい
車が進まなくなる立ち往生では、長時間車内で過ごすことになります。食欲は我慢できてもトイレを我慢するのは大変です。
近くにコンビニやお店があればいいですが、そうなるとは限りませんし、視界が雪で見えなくなる「ホワイトアウト」では、車外にでる行為は命を落とす危険があります。
また「トイレができない」という状況は、水分をとることを控えさせてしまい、体によくありません。
携帯トイレはコンパクトなので人数分、小さいお子さんがいる場合はオムツも一緒に準備するとよいでしょう。
下の写真は、100円ショップ「セリア」の商品です。
※携帯トイレについては本サイト内の記事、こちらでもご紹介しています。
エマージェンシー(レスキュー)シート:エアコンには一酸化炭素中毒のリスク
エマージェンシーシートとは、防寒や防風・防水を目的とした薄いシートです。体をおおうことができる大きさで断熱性があるため、寒いときには保温効果が期待できます。
雪で車が立ち往生するのは寒いとき。そのため、立ち往生への備えに防寒用品は欠かせません。エアコンの暖房では、気づかないうちにマフラーが雪でおおわれ、死をもたらす一酸化炭素が車内に充満する危険性があります。
できれば毛布も積んでおきたいところですが、それほど雪が降らない地域の方にとっては、スペースをとる毛布は邪魔に感じるかもしれませんね。
エマージェンシーシートであれば毛布よりもコンパクトなので、負担なく備えられるのではないでしょうか。
保温を目的としたエマージェンシーシートは、100円ショップでも購入できます。
下の写真は、100円ショップ「セリア」の商品です。
飲み物(食品):車内でも脱水症状になりえる
雪のふる寒い季節といえども、乾燥する車内では水分が欠かせません。とくに小さいお子さんは脱水症状を引き起こしやすいため注意が必要です。
500mlペットボトルの水ならそれほど重くなく、一人分ずつ準備しやすいでしょう。小さいお子さんには紙パック飲料もありますね。
また、栄養補助食品(ゼリー)やチョコレートのような食品もあると、空腹を満たすだけでなく気持ちも少し落ちつくのではないでしょうか。
なお、ペットボトルの水や食品を車内に保管するときは、直射日光が当たらない場所に置いておきましょう。
※非常食になるお菓子については本サイト内の記事、こちらでご紹介しています。
充電器(モバイルバッテリー):連絡手段の確保
携帯電話やスマートフォンは、万が一車内で具合が悪くなったときの連絡手段です。
雪による立ち往生では、何十時間も車内ですごす可能性もあるため、連絡がとれる状態にしておくことが大切です。
冒頭の写真(筆者の防災グッズ)は乾電池をつかって充電するタイプですが、100円ショップで購入できるモバイルバッテリーでもよいでしょう。
※モバイルバッテリーについては本サイト内の記事、こちらでもご紹介しています
小型懐中電灯:精神的な安心と防犯対策
夜中まで立ち往生が続いた場合、暗い車内にいることは心細く感じるでしょう。たとえわずかな明かりであっても、真っ暗な状態よりは安心するものです。
また、夜間の車外にでる場合には、防犯面からも明かりは確保しておきたいものです。
スマホのライトは電池の消耗を考えると使用を控えたいところ。コンパクトな小型懐中電灯があると便利につかえるでしょう。
ただし、周囲への影響を考えると、あまり明るすぎないものが良いかもしれませんね。
下の写真は、100円ショップ「セリア」の商品です。※乾電池は大きさ比較のため配置
※小型懐中電灯については本サイト内の記事、こちらでもご紹介しています。
ここまで、雪で車が立ち往生したときに持ち出したい5つの防災グッズをご紹介しました。
雪の日に車の立ち往生をひきおこす2つの原因
ここでは、なぜ雪の日に車の立ち往生がおきるのか、考えられる2つの原因を解説します。
原因1:ノーマルタイヤでの走行(法令違反で罰則も)
1つ目の原因は、積雪があるにもかかわらずノーマルタイヤで走行したためです。
それを示す1つのデータをご紹介します。
中国地方整備局によると、2022年12月17日~19日にかけて発生した立ち往生11カ所(広島県・島根県・鳥取県)のうち、ノーマルタイヤによるものが9カ所あったとされています。(参考:中国地方整備局「 お知らせ 17日からの降雪による立ち往生等について」)
雪道をノーマルタイヤで走行することは、非常に危険なだけでなく、各都道府県(沖縄県をのぞく)が規定している法令違反として、罰則の対象になります。
積雪があったら冬用タイヤまたはチェーンの装着が必要
たとえば、広島県では次のように規定しています。
◇広島県道路交通法施行細則(第10条第2号)
引用:一般社団法人 日本自動車タイヤ協会「冬道走行とタイヤ」 ※太字は筆者加筆
積雪又は凍結している道路において自動車(二輪のものを除く。)を運転するときは、駆動輪にタイヤチェーンを取り付け、又は全車輪にスタッドレスタイヤ若しくはスノータイヤ(接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る。)を装着する等路面の状況に応じ効果的な滑り止めの措置を講ずること。
たとえ大雪でなくとも、積雪がある日に車を運転するならば、冬用タイヤまたはチェーンを装着しなければいけないのです。
各都道府県(沖縄県をのぞく)の規定(抜粋)は、一般社団法人日本自動車タイヤ協会「冬道走行とタイヤ」から確認できるので、ぜひチェックしてみましょう。
原因2:スタックで走行不可(冬用タイヤでも発生)
2つ目の原因は「スタック」です。スタックとは雪やぬかるみにはまり、アクセルを踏んでもタイヤが空転して進めなくなる現象のことです。
このスタックは、たとえ冬用タイヤであってもおこるため注意が必要です。
それを示す一つのデータをご紹介します。
立ち往生した車の約8割は冬用タイヤ
国土交通省によると、平成27年度に立ち往生した車の内訳は、大型車(61%)・中型車(24%)・小型車/乗用車(15%)でした。
このなかで、スタックした車のタイヤは75%が冬用タイヤでしたが、その中でチェーンをつけていたのは11%だったのです。
このデータからは、立ち往生したのは大型・中型車が多いものの、冬用タイヤをつけていても立ち往生することがある、ということがわかるでしょう。(参考:国土交通省「冬期道路交通確保に向けた これまでの主な取り組みについて」)
車が立ち往生したときの対処法と気をつけたい2つのこと
ここでは「自分の車が立ち往生したらどうするか」そして、「身動きがとれなくなったら気をつけたいこと」を解説します。
道路緊急ダイヤル(#9910)に電話する
自分が運転する車が立ち往生したときは「道路緊急ダイヤル(#9910)」に連絡しましょう。また、非会員は有料ですがJAF(日本自動車連盟)の「ロードサービス救援コール(#8139)」もあります。
状況によっては、警察(110番)や消防(119番)にかけて救助をまちましょう。
注意点➀ 一酸化炭素中毒~頭痛・めまい・吐き気・失神・死亡
雪で立ち往生になったら、一酸化炭素中毒にならないよう、エンジンを切りましょう。
排気ガスにふくまれる一酸化炭素は無臭ですが、吸い込むと軽い頭痛からはじまり、めまいや吐き気、失神、そして死に至る恐ろしいものです。
どうしても寒くてエアコンを使うときは、こまめにマフラーの雪をどけて、マフラーが雪でおおわれないようにしましょう。(マフラーが雪でおおわれると、車内に一酸化炭素が充満してしまいます)
(参考)一般社団法人 日本ガス石油機器工業会「一酸化炭素(CO)中毒に注意!」
注意点➁ エコノミー症候群~呼吸困難・胸痛・死亡
狭いスペースにいるとき水分を十分とらずにいると、血の塊ができて肺の血管に詰まることがあります。その結果、呼吸困難や胸痛、ときに死に至ってしまうもので「エコノミー症候群」とよばれています。
狭い車内ではエコノミー症候群になるリスクがあるため、下記の予防策をとりましょう。
(参考)厚生労働省リーフレット「エコノミークラス症候群の予防のために」
ここまで、立ち往生したときの対処法と注意点をお伝えしました。
まとめ|立ち往生に備えて役立つ防災グッズと対処法を知っておこう!
今回は、雪による立ち往生への備えとして、以下の防災グッズ5点をご紹介しました。
1.携帯トイレ
2.エマージェンシーシート
3.飲み物(食品)
4.充電器(モバイルバッテリー)
5.小型懐中電灯
これらは、ふだんの外出時にも持ち歩くことで、車の立ち往生だけでなく、外出先で地震にあったときや電車やエレベーター内に閉じ込められたときでも役立つものです。
また、立ち往生の原因には、ノーマルタイヤでの走行やスタックがあります。雪が降り積もった日(または凍結路面)の運転では、冬用タイヤまたはチェーンを装着しないと非常に危険であり、かつ法令違反となってしまいます。
とくに、冬用タイヤの装着が恒例になっていない地域であればなおさら、天気予報をチェックして、雪道への備えをすすめることが必要です。
そして、立ち往生になったら、道路緊急ダイヤル(#9910)などに連絡し、「一酸化炭素中毒」や「エコノミー症候群」を防ぐための対策をとって、無事安全に帰宅できるようにしましょう。
(以上)