2023年(令和5年)4月までに、すべての自転車利用者に乗車時のヘルメット着用義務化が20日決定しました。
現時点では13歳未満の子どもに対しては、道路交通法にてヘルメットの着用義務が求めれています。
したがって、小学生がヘルメットをして自転車に乗っていても違和感はありません。
ですが、今後は主婦や高校生、OLの方もヘルメットをかぶっての自転車運転が必要になってきます。
今回は新しくなった、道路交通法について解説しましょう。
自転車利用者にヘルメットが必要となった理由
道路交通法の改正が12月20日に閣議決定されて、すべての自転車利用者にヘルメットの着用が義務付けられました。
これまでは、13歳未満の子どもには保護者がヘルメットを着用させることが義務付けられていましたが、これが拡大されることとなります。
その理由は、自転車事故による致死率の増加にあります。
自転車事故での死亡原因は頭部損傷が約60%
これは福岡県警が公開しているチラシの一部ですが、過去5年間で自転車事故で死亡した方の原因が、頭部への損傷であった事故が58%にも上っています。
警視庁での公表でも、自転車事故の死亡率は次のようになっています。
このように福岡県内でも、全国レベルでも自転車事故において約60%が、頭部への損傷が原因で死亡につながっているのが現状です。
今回の「道路交通法第63条の11」の改正内容
ここでは今回の「道路交通法第63条の11」が、どのように改正されたのかをお伝えします。
・改正前
【児童又は幼児の保護する責任のある者の遵守事項】
児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児を自転車に乗車させるときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
・改正後
【自転車の運転者等の遵守事項】
1 自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
2 自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
3 児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
罰則のない努力義務なのでどこまで浸透するかが課題
今回の道路交通法改正による、自転車利用者すべてがヘルメットを着用するのは、あくまでも努力義務であって、たとえヘルメットをしていなくても罰則はありません。
そんな中でどれだけの方が、ヘルメットの着用を守るのかが課題といえます。
社会人は髪が乱れるとの理由から普及しない?
努力義務であれば絶対に守る必要がないため、社会人であれば次のような理由から、ヘルメットの着用を嫌がるかも知れません。
このような理由から、ヘルメットの着用を嫌がる社会人は多いと予想できます。
高校生は校則に記載されるかも
高校生は意外に多く自転車通学をしていますから、警察からの要請や自主的に校則にて、生徒にヘルメットの着用を指示するかも知れません。
そうなれば、一定数の自転車利用者はヘルメットを着用することとなります。
愛知県でもヘルメット未着用が死亡原因のトップ
実際に一足早く2021年10月1日から自転車利用時のヘルメット着用を、努力義務とした条例を施行した愛知県でも、自転車事故の死亡原因のトップは、ヘルメット未着用による頭部への損傷になっています。
2021年(令和3年)までの3年間で自転車事故にて90人が死亡し、この内ヘルメットをかぶっていなかったのは86人、そして64人が頭部損傷が原因で死亡しています。
愛知県が行った高齢者へのアンケートで「なぜヘルメットをかぶっていないのか?」との回答では「面倒だ」との意見が49%と半数に上っています。
鳥取県が公開している資料から読み解いてみる
これは鳥取県が公開している「中学・高校生と高齢者の自転車乗用中の交通事故の分析結果について」の資料の一部です。
民間の啓発団体「自転車ヘルメット委員会」が、20年7月に約1万人を対象に実施したインターネット調査にて、都道府県別では愛知県が29%で1位、長崎県が26%で2位、鳥取県は18%で全国で3番目にヘルメット着用率が高い県です。
その鳥取県における2012年(平成24年)~2021年(令和3年)の過去10年間の分析結果ですが、黄色部分が中学・高校生の自転車事故の件数です。
この表をまとめると、次のようになってきます。
中学生・高校生の自転車事故率
中学生と高校生の自転車事故による死亡者は鳥取県では1名ですが、負傷者を含めると全体の約24%にあたります。
仮にこの負傷の約60%が頭部への負傷とすれば、ヘルメットの義務化で193人の負傷者が減る計算になります。
高齢者は命を守るために重要なアイテムとなる
では今度は、60歳以上の高齢者を含むデータを見てみましょう。
この結果から、高齢者を含む60歳以上の方がヘルメットを着用すれば、約275人負傷者が減り22人の命が助かるといえます。
中学生・高校生・高齢者が着用するだけで負傷者は減る
この結果から、中学生・高校生・高齢者がヘルメットを着用するだけで、自転車事故での負傷者が減り、死亡者もグンと少なくなることが分かります。
中学生と高校生は校則によってヘルメットの着用率がアップすることが期待できますが、高齢者は「面倒だ」との意識改革がなければ、ヘルメット着用はなかなか普及しないでしょう。
機能的で髪が乱れないオシャレなヘルメットの登場を期待!
2023年(令和5年)4月までに、すべての自転車利用者に乗車時のヘルメット着用義務化が決定しました。
ただし、罰則のない努力義務となっているので「ヘルメット=命を守る」との意識がなければ、スルーされることが多くなります。
過去のデータを見ても、自転車事故にてヘルメットの装着は命を左右していることが分かります。
利用者の意識改革も必要ですが、機能的で髪が乱れないオシャレなヘルメットが登場すれば、利用者も増えるのではないでしょうか。
今後、このようなヘルメットの登場に期待したいですね。
参考サイト
毎日新聞 自転車のヘルメット着用、23年4月から義務化 全利用者に対象拡大
福岡県警察 道路交通法の一部改正
鳥取県公式サイト
中日新聞 高齢者75%「かぶってない」 自転車ヘルメット努力義務化