計画停電は大規模停電を防ぐための最終手段~電気の需給バランスに注目

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計画停電とは「事前に予告をしたうえで停電すること」です。

急に停電になるのも困りますが、事前に言われたとしても、日常生活に大きな影響がおよぶことは避けられないでしょう。

そこで今回は、東日本大震災での事例をふまえ「なぜ計画停電をするのか」、そして「計画停電を防ぐたの対策」について解説します。

また「あると便利な停電対策グッズ」もご紹介するので、ぜひ停電への備えにも取り組んでみてくださいね。

目次

計画停電は大規模な停電を避けるためにおこなわれる

計画停電とは「停電になる日時・対象地域を、事前に周知しておこなわれる停電のこと」です。

それは、電気の供給をストップさせ、電気の需給バランスを適切な状態に戻さなければ、「広範囲における大規模な停電が起こる可能性があるとき」におこなわれます

各電力会社が計画停電の考え方を公表している

計画停電がどのように実施されるかについては、公表すべきとする国の提言をうけ、各電力会社および、電力の安定供給を担う広域機関(正式名称:電力広域的運営推進機関)が検討し、2018年7月10日にそれぞれ公表しています。

主な点は、次のとおりです。

計画停電の概要
<対象地域>
契約している電力会社に関わらず、大手電力会社が管轄する地域全体。
(ただし、災害拠点病院や警察・消防など適用されない施設あり)
<停電になる時間>
1日2時間程度
(時間帯は、地域を細分化したグループごとに日替わり)

なお、詳細は下記、電力会社のホームページで確認することができます。

計画停電は不実施が原則

たとえ数時間の停電であっても、私たちの日常生活はもちろん、社会・経済活動なに大きな影響をおよぼすことは避けられません。

そのため、計画停電は「不実施が原則」であり、大規模停電が予想されるときの「最終手段」なのです。

大規模停電が予想された際には、計画停電がおきないよう、あらゆる対策をおこなうことが前提であり、それでも需給バランスが適正に戻らなかった場合に実施されます。

では、どのようなときに大規模停電の可能性があるのか、次に見ていきましょう。

大規模停電は電気の需給バランスの崩れでおきる

電気の需要は、その日によって変動しています。

たとえば、猛暑日にはエアコンの使用量が増え、ニュースで「電力需要が大幅に増えています」と取りあげられることがあります。

需要が増えてもすぐ停電しないのは、需要量に応じて発電量を調整し、需要と供給のバランスをとっているためです。

つまり、停電をおこさないためには、電気を使う量(需要)と電気を作り出す量(発電量・供給量)のバランスが保たれている必要があるのです。

しかし、地震で発電所が被災、落雷で送電線が損傷するなど、十分な発電量が確保できなくなると、その需給バランスは大きく崩れ、大規模停電がおこってしまうのです。

ゲームで電気の需給バランスを調整してみよう

経済産業省資源エネルギー庁のホームページには、キッズページがあり、電力の需給バランスについてゲームで遊びながら学ぶことができます。

春夏秋冬の4パターンがあり、5つの発電方法(太陽光・風力・水力・原子力・火力)ごとに電力を調整するのですが、時間帯ごとの天候や、速報で流れる気象の変化に応じて、発電量を見直しながら、無事に街へ電気を届けなければなりません。

上手に需給バランスをとらないと、ゲームオーバーになってしまいます。おとなでも楽しめるので、挑戦してみるのもよいですね。

【参考】資源エネルギー庁「電力バランスゲーム~町に電気をとどけよう~」https://www.enecho.meti.go.jp/about/kids/game/

東日本大震災によっておこなわれた計画停電

2011年3月11日に発生した東日本大震災(最大震度7、震源地は三陸沖)では、3月14日から計10日間、東京電力管内において計画停電が実施されました。

この地震では、福島第一原子力発電所をはじめとする、多くの原子力発電所および火力発電所が運転できない状態となり、一部の発電所が復旧してもなお、予想される需要量に見合うだけの電気が供給できないと見込まれたのです。

東京23区は一部をのぞき、計画停電の対象からはずれたものの、電車の運休や店舗の閉店、金融機関のATMやエレベーターの停止など、社会生活に多大な影響が及んだのでした。

電力会社間で電気の融通ができなかった

このとき、東京電力および東北電力以外の電力会社では、発電できていたのですが、被災した地域へ電気を融通するというシステムが構築されていなかったのです。

その結果、東京電力管内の供給量は不足したままとなり、そのままでは大規模な停電が予想されるとして、計画停電が実施されたのです。

そこで、全国各地の電力会社間で電気の融通ができるよう、先述した広域機関(正式名称:電力広域的運営推進機関)が2015年4月に設立されました。

広域機関によって電力融通指示がなされた例 

では実際に、広域機関が電気の融通指示をだした事例をみてみましょう。

次の表は、経済産業省 資源エネルギー庁:電力システム改革の鍵を握る「広域機関」を参照し作成したものです。
ほかの地域から電力の融通を受けた地域(供給量の不足地域)と、その地域で供給量が不足した理由をまとめています。

実施年月日供給量の不足地域不足理由
平成27年4月8日  東京電力管内気温低下による需要増加
平成27年9月26日四国電力管内気温上昇による需要増加
平成28年9月8日中部電力管内落雷による送電線事故
平成29年2月21日中部電力管内電源脱落による供給力低下
平成30年1月23日~26日東京電力管内気温低下による需要増加
参考元:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/kouikikikan.html

停電がおきる理由も規模もさまざまなため、完全に停電をおこさないようにすることは難しい面があるかもしれません。ですが、大規模な停電を防ぐため、さまざまな対策が取られていると言うことはできるでしょう。

そこで次に、大規模停電・計画停電を防ぐための対策の一つである「電力需給ひっ迫警報」について見てみましょう。

計画停電を防ぐため「電力需給ひっ迫警報」が出されることもある

2022年(令和4年)3月21日夜、政府は東京電力および東北電力管内に、運用開始以降初となる「電気需給ひっ迫警報」を発令しました。

この警報は、先述した東日本大震災での教訓をもとに、2012年から運用がスタートし、電気の需要に対して供給量が追いつかない状況が予想されるとき、つまり大規模停電の発生が予想されるときに発令されるのです。

このときは、3月16日に発生した地震(最大震度6強・震源地は福島県沖)によって、停止した発電所があり、もともと供給量が低下していたことに加え、3月22日の予想気温が前日より大幅に低く、エアコンの使用による需要量増加が見込まれたのです。

警報の発令を伝えるテレビ局の照明は低く抑えられ、スカイツリーなど街の明かりも落とされ、家庭での節電が繰り返し呼びかけられたのでした。その結果、大規模停電に至ることなく、東北電力管内は22日、東京電力管内は23日に、それぞれ警報は解除されました。

日常生活でできる「節電」の取り組み 

電気需給ひっ迫警報によって、私たちが節電に取り組んだことは、大規模停電・計画停電を防ぐための対策であったと言うこともできるでしょう。

わたしたちは電気を使って、日常生活を便利に過ごしています。大規模停電をさけるために節約するだけでなく、ふだんから節電を心がけることで、停電時のストレスがほんの少し軽減されるかもしれません。できることから日常生活に取り入れてはいかがでしょう。

日常生活のなかでできる節電(一例)

  • 照明器具・・・使っていない部屋の電気を消す
  • テレビ・・・見ていないときは消す、画面の明るさを下げる
  • 冷蔵庫・・・「強」から「中」にする、扉の開閉を極力控える、食品を詰め込みすぎない
  • 炊飯器・・・保温機能は使用しない(暑い時期は冷蔵庫で保管)
  • エアコン・・温度設定を上げる(体調悪化につながらない程度に)

エアコンについては「設定温度」と「室内温度」の違いに注意しましょう。「夏の暑い日に28度の設定温度は厳しい」と思われていないでしょうか?

環境省が推奨しているのは「室温を28度にする」ことであって、エアコンの設定温度を28度にすることではありません。無理をして体調を崩さないようにしましょう。

日常生活の継続と節電とのバランスをうまくとりながら進められるとよいですね。

まとめ|あると便利な停電対策グッズ

計画停電は、大規模停電を防ぐためにおこなわれる最終手段であり、不実施が原則です。

とはいえ、その可能性がゼロでないのならば、計画停電がどのように実施されるのかを知っておくことは大切でしょう。お伝えしたように、各電力株式会社のホームページから、計画停電の考え方は確認することができるので、ぜひ一度目を通してみてはいかがでしょうか。

また、停電に備えた防災グッズを準備しておくことも必要です。

伊藤忠商事株式会社がおこなった調査によると、停電のための備えが足りると思うかとの問いに対して、「全く足りない」との回答が約53%と半数にのぼりました。

スマホを充電するための「モバイルバッテリー」を備えている方も多いと思われますが、そのほかにも備えておきたい防災グッズがあります。

たとえば、停電時には、懐中電灯だけでなく、より広く照らすことができる「ランタン」や、視線の先の明かりを効率的に確保できる「ヘッドライト」もあるため、用途にあわせて使い分けすると便利です。

また、暗い室内でも目的とする場所がわかるよう事前に「蓄光テープ」を貼っておいたり、「クーラーボックス」があると冷蔵庫の代わりにとして使うこともできます。

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ぜひ、これらの記事も参考に停電への備えをすすめてみてくださいね。

【参考文献】
電力広域的運営推進機関「万一の際の備えとしての計画停電の考え方について」https://www.occto.or.jp/oshirase/shiji/180710_keikakuteiden_kangaekata.html

経済産業省 資源エネルギー庁:電力システム改革の鍵を握る「広域機関」 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/kouikikikan.html

経済産業省「3月22日は電力需給が厳しくなる見込みのため東京電力管内で節電のご協力をお願いします【需給ひっ迫警報】」https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220321001/20220321001.html

日本経済新聞「計画停電で生活混乱 鉄道相次ぎ運休、店舗は営業中断」https://www.nikkei.com/article/DGXNASDC1400P_U1A310C1EA1000/

SUMOジャーナル:環境省に直撃取材!「冷房28℃」設定、ほんとに守らないといけないの?https://suumo.jp/journal/2017/09/28/141596/

(以上)

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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