ライターの永野です!
前回の記事でNISAには大きく3つあることをお伝えしました。その1つ、ジュニアNISAは「おすすめしない」というキーワードでの検索が多いのが気になるところ…。よっぽどデメリットが多いのかなと思って調べたところ、なんとジュニアNISAはもうすぐ廃止になるようです。
やはり、「おすすめしない」という意見が多いことから廃止になるのでしょうか?
今回は、ジュニアNISAのデメリットやメリットから、なぜ「おすすめしない」といわれるのかを分析しました。ちなみにこの記事は2023年7月28日に公開した記事ですが、現時点ではまだジュニアNISAは始められます。
メリット・デメリットを理解したうえで「やってみたい」と思う方は、ジュニアNISAを始める最後のチャンスが迫っています!この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
間もなく廃止?ジュニアNISAとは
一般NISA、ジュニアNISA、つみたてNISAと、現在3種類あるNISA。しかし2024年より「新NISA」に生まれ変わり、同時にジュニアNISAは廃止となります。
まずは、ジュニアNISAとはどういうものなのかを確認しましょう。
※NISAは「老後2,000万円問題」などの影響もあり、多くの方が注目する「非課税枠を設けた初心者でも始めやすい投資」です。将来の年金受給額や、NISAによる資産増加の想定を知りたい方は、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」、金融庁の「資産運用シミュレーション」もご活用ください!
正式名称は「未成年者少額投資非課税制度」
ジュニアNISAは正式名称を「未成年者少額投資非課税制度」といい、国が未成年の資産形成をサポートするためのものです。日本在住の0~17歳までが利用でき、新規投資額は毎年80万円。株式や投資信託などへの投資で得られる配当金や分配金、譲渡益などが非課税対象となります。
高校や大学に進学する際には、多くの費用がかかるケースも少なくありません。中学校から受験をする方はさらに多くの費用がかかるでしょうし、公立の中学校に進学する場合も、制服や指定バッグなど、必要なものをそろえるには「10万円くらいかかる」という声も耳にします。
ジュニアNISAは、こうしたこどものために必要な資産形成のために、特例的に設けられた制度です。特に多額の費用がかかるとされる、大学や専門学校への進学に向けた資産形成を目的にしているので、子どもが18歳になるまでは払い出しができません。
「途中で払い出せないのは不便だ」と感じるかもしれませんが、銀行や保険会社などが提供する学資保険も、18歳を満期として途中解約は基本的にできないシステムです。目的を考えると、こうした制度は「当然」ともいえるでしょう。
ジュニアNISAの運用例
こどもが生まれると進学などに向けて貯金をする方も多いでしょうが、ジュニアNISAで5年間投資をするとどうなるのでしょうか。
たとえば、3歳まで15,000円、それ以降は10,000円毎月受給される「児童手当」を、進学などのために貯め続けるという方もいるでしょう。これをジュニアNISAで5年間、毎月1万円ずつ運用するとシミュレーション結果は次のようになります。
想定利回り(年率)は3%としています。
普通預金に入れておくだけよりも4.6万円多くなり、年率がよい、より多くの元金を入れるなどすれば、さらに多くの運用収益が得られるでしょう。そして、通常の投資では収益におよそ20%の税金がかかりますが、ジュニアNISAは非課税のため、税金がかかりません。すべての収益が手元に残るのも、ジュニアNISAの魅力です。
2023年12月で廃止!理由は?
そんなジュニアNISAですが、2023年、つまり今年12月末日をもって終了となります。その背景には、2020年度に行われた「税制改正」が大きく関わっています。
税制改正では、NISAの制度についても見直しが行われました。2024年から一般NISA、つみたてNISAが「新NISA」になるのも、この影響です。そして、ジュニアNISAは制度自体が終了。最大の理由として金融庁は、「利用実績が乏しい」ことを挙げています。
2016年4月より制度を開始したジュニアNISA。1年後の2017年3月には口座数が21万を超えましたが、2019年12月末時点でも約35万口座と、利用数の増加は想定より低い結果となりました。同時期の口座開設数は、一般NISAが約1,175万、つみたてNISAが約189万ですので、いかにジュニアNISAの利用者が少ないかがわかるでしょう。
とはいえ、その後税制改正によりジュニアNISAが廃止することが決定すると、口座開設数は大幅に増加。2022年3月時点で80万を超えています。いわゆる「駆け込み需要」が発生しており、ここから2023年末に向けてもさらに口座開設数は増えることが予想されている状況です。
ジュニアNISAのデメリット
ジュニアNISAは制度廃止を目前に需要が高まっていますが、これまで口座開設数が思うように伸びなかったのには、多くのデメリットがあるからだといわれています。ジュニアNISAを「おすすめしない」という声も多かった理由は、大きく5つです。
こどもが18歳になるまで引き出せない
ジュニアNISAは、原則こどもが18歳になるまで引き出し(払い出し)ができません。「原則」とはいうものの「絶対」ではないので、18歳前に引き出せなくもないのですが…。こどもが18歳になる前に引き出してしまうと、過去に非課税となった利益が課税対象になってしまいます。
つまり、「原則」を破ったペナルティが課される、というわけですね。「投資は余裕資金で」というのが鉄則なので、資金の無駄遣いを防げるのは引き出せないことのメリットでもありますが、いざというときに途中で払い出したら課税されてしまうと思うと、なかなか手が出ない方が多いのも、わかる気がします。
金融機関の変更ができない
ジュニアNISAの利用は1人につき1つの金融機関のみ。途中で変更することはできません。「どうしても変更したい!」という場合には開設中の口座を廃止し、希望の金融機関で再開設手続きをする必要があります。投資先を見誤っても諦めるか、面倒な手続きを経て変更しなければいけないのも、ジュニアNISAのデメリットの1つです。
元本割れのリスク
ジュニアNISAの投資商品には元本保証がないため、投資金額を下回る「元本割れ」が起こる可能性があります。プラスマイナスゼロに近い損失ならまだ諦められるかもしれませんが、想像以上に資産価値が下がることも考えられます。ジュニアNISAのみならず、NISA全体にいえることですが、「絶対に損はしたくない」という方はもちろん、「減らしてはいけないお金」しか手元にない方にはおすすめができません。
手続きに時間を要する
ジュニアNISAの対象者は18歳未満の未成年です。つまり、ジュニアNISAを始めるには保護者の力も必要になります。具体的には「大意商となる未成年者の口座」に加え、「親権者の証券総合口座」が欠かせません。また金融機関によっては「未成年向け特定口座」の開設を求められることもあり、手続きには1~2ヵ月程度かかるといわれています。通常、NISA口座は2~3週間で手続きが完了するので、ジュニアNISAは手続き完了までに時間を要することがわかりますね。
非課税投資期間は5年間
ジュニアNISAで非課税投資ができる期間は5年間です。一般NISAと同じくロールオーバーで期間の延長もできますが、都度手続きが必要になります。手続きを怠ると課税対象となってしまい、非課税の恩恵を受けられないため注意が必要です。
ジュニアNISAをおすすめしない人の意見
SNSなどでは、ジュニアNISAについてさまざまな意見を目にします。前述の「駆け込み需要」で、最近口座開設を完了した方も多いようです。また、「学資保険よりもジュニアNISAのほうがいい」「ジュニアNISAで保有している株の株主優待が届いた」など、意外にもポジティブな意見が多数ありました。
ネガティブな意見はやはり、デメリットとして挙げた「18歳まで引き出せない」「投資商品を変えられない」ということが多い印象です。また、「投資」未経験の方、投資の知識があまりない方は、ジュニアNISAに関わらずそもそも「NISA」などへの投資行為自体に「儲かるというのも『たられば』だ」と、不安に思っているようでした。
ジュニアNISAの平均利回りは5%といわれていますが、今後も安定してこのままとは限りません。ジュニアNISAは、万一価格変動が起こり元本割れした場合に、「こどもの進学のための資金が減ってしまった」ということが起こる可能性もゼロではないことを視野に入れて始める必要があるでしょう。
ジュニアNISAに挙げられるメリット
デメリットが多いと感じられるジュニアNISAですが、多くの方が制度廃止前に口座を開設しているということは、当然それだけのメリットもあるということです。どのようなメリットがあるのかを、見ていきましょう。
年80万円の非課税運用が可能
ジュニアNISAの非課税運用枠は80万円です。ジュニアNISA自体は2023年末で廃止になるため、2024年からは新規で年間80万円の非課税枠が設けられることはありません。しかし、廃止までに投資したお金は、こどもが18歳になるまでロールオーバーも活用しながら、非課税のまま保有できます。
たとえば、いま0歳のこどもの名義でジュニアNISAを始めて80万投資した場合、利回りが3%なら18歳までに136万円ほどになる計算です。Twitterでのさまざまな方のつぶやきによると、60歳、65歳までこの80万円を放置したら2,000万円ほどになるらしく…。「ジュニアNISAでこどもに老後の資金をプレゼントできる!」という声もありました。
2024年以降は引き出し制限がなくなる
ジュニアNISAは原則として、こどもが18歳になるまで引き出せないという「縛り」がありました。これが大きなデメリットともいわれていたのですが、制度廃止によりいつでも非課税で引き出せるようになります。
ジュニアNISAは、最もお金がかかるといわれる大学や専門学校進学のタイミングでの引き出しを想定していました。しかし、それ以前に留学や学費の高い学校への進学、遠方への進学などで大きなお金が必用になることもあるでしょう。出費がかさむタイミングで自由に引き出せるのは、大きなメリットです。
ただし、引き出す場合は「全額の引き出し」となります。一部のみ引き出すことはできず、引き出してしまうとジュニアNISAの口座は廃止。すでに制度はなくなっているので、新たにジュニアNISAを開始することもできなくなるので注意しましょう。
贈与税対策に活用できる
ジュニアNISAはこどもが自分自身で資産形成をするのではなく、両親や祖父母などが代わりに行うのが基本です。こども自身ではない人物がお金を出すとなると、「贈与税」を心配する方もいるでしょう。
しかし、ジュニアNISAの上限は年間80万円。贈与税は「年間の贈与額が110万円以上」の場合にかかるものなので、基本的には非課税となります。税金をかけずに、こどもや孫にお金を出せるのは、うれしいポイントでしょう。
このように税金対策にも活用できるのがジュニアNISAのメリットですが、場合によっては課税されてしまうこともあるようです。贈与税に関して不安に思う方は、事前に税理士などのプロに相談することをおすすめします。
まだ間に合う?ジュニアNISAをおすすめしたいのはこんな人!
本日、2023年7月28日。ジュニアNISAはあと5ヵ月ほどで廃止となります。手続きに最大2ヵ月かかることを考慮すると、現実的な開始期間のリミットは10月半ば頃でしょうか…。
この記事をどのタイミングでお読みいただいているかはわかりませんが…。諸々知ったうえで「はじめたい!」と思ったら、10月ぐらいまでは間に合うかなぁと思います(が、適当なことはいえないので必ず確認してくださいね!)。
ジュニアNISAをおすすめしたいのは、「お子さまやお孫さんの教育資金や資産形成をしたい」と考えている方です。制度廃止前に80万円投資すれば、贈与税がかからず、投資に対しての利益にも税金が発生しません。貯金すれば80万円から大きく増えることはありませんが、ジュニアNISAで投資することで、80万円が考えられないような大金になる可能性もあります。
ただし、知識がないままに「制度廃止前」という焦りから80万円を投資するのは危険です。多くの方にとって、80万円はけっこうな額だといえます。よく考え、ご家族で相談しながら、ジュニアNISAをはじめるかどうか、いくら投資するかなどを決定してください。
廃止前にジュニアNISAも検討しよう
ジュニアNISAは間もなく廃止となってしまいますが、廃止が決定してからはじめている方も非常に多く、魅力ある制度だといえます。いままで迷っていた方は、ジュニアNISAをはじめる最後のチャンスかもしれません。
手続きには時間がかかるので、よく検討したうえで早めに口座開設などを行いましょう。
編集後記
「学資保険よりジュニアNISA」という意見をSNSでもちらほら見かけ、息子たちに学資保険をかけている身としては心をえぐられるような思いで書きました。というのは冗談ですが…。
我が家は長男が300万円、次男が200万円ぐらいになる学資保険をかけていたような気がします。250万円と150万円だったかもしれません。これぐらいお金について無知で無頓着だったことを、こうしてマネー系の記事を書く度に痛感し、反省しています。
とはいえ、学資保険は学資保険で解約する気もありません。ジュニアNISAをはじめ、さまざまな投資にも興味がないわけではないものの、親しい方の投資に関する大きな失敗を近くで見ていた身としては、軽率に手を出せないのも事実です。
NISAについてはもう少し勉強して、新NISAの動向をみて1年後ぐらいから始めてみてもいいのかなとは思っています。「ほったらかしでもお金が増える」というおいしい話は嫌いではないので、今はPayPayのポイント運用で「うわ~3.8%すご!」と、地道にポイントを増やすことに注力しています。
1年後に「余裕資金」を増やすためにも、いまは投資について勉強しながら「とりあえず頑張って働こう」と改めて思いました。
参考サイト
・ジュニアNISAはおすすめしない?デメリットでみる使うと損する人とは
・ジュニアNISAはおすすめしない? 2023年廃止で損?やるべき?徹底解説
・ジュニアNISAはデメリットばかり?活用すべきはこんな人