記録的短時間大雨情報とは?雨量基準や歴代大雨情報まとめ

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ライターの永野です!

2023年は阪神大震災から28年。関西方面に住んでいる友人たちと話していたところ、生まれていない、赤ちゃんだったから記憶がないという人も。私よりもやや若い世代の方は、2018年に起こった「大阪府北部地震」のほうが記憶にあるようでした。その流れから、話は台風に。大阪・兵庫あたりに大きな被害を及ぼした平成30年台風第21号が起こったのも2018年、こちらは9月頭頃に起こりました。

東日本大震災や阪神淡路大震災のような甚大な被害のあった災害は、多くの方の記憶に残りやすいでしょうが、割と大きな災害でも、地元の方しかあまり覚えていないというものは少なくありません。

身近なところでいくと2021年8月、私の住んでいる地域周辺で大雨が降り、絶対に決壊しないだろうというくらい川幅があり堤防も高めの川が、氾濫寸前までいったことがありました。今年、2023年も6月の豪雨で同じくらい水位が上がり、「興味本位で見に行かない」といわれてはいるものの心配なので車で近くまで行ったところ、徒歩で川の様子を見に来る危険なご高齢者を多数見かけました…。

幸い、水があふれることはありませんでしたが、2021年の豪雨では水圧で水道管に影響があり、一定地域の水道がうまく機能しないという事態に。私は洗濯機を回そうと思って給水しなかったため気づいたのですが、まさか大雨が降ったあとに水が止まるとは予想もしていなかったので、はじめは「洗濯機壊れたな」などと思っていました。

大雨の被害というと河川の波乱や浸水、土砂災害などをイメージしますが、ライフラインへの影響もあるのだと身をもって感じる体験になりました。雨が降り続くことによる影響も大きいですが、昨今は「ゲリラ豪雨」といって短時間に激しい雨が降る現象も、各地で起こっています。そんなときに発表されるのが、「記録的短時間大雨情報」です。

今回は、記録的短時間大雨情報とは何か、歴代の記録的短時間大雨はどれくらいなのかをご紹介します。

目次

記録的短時間大雨情報とは

夏場を中心に、記録的短時間大雨情報という言葉を見聞きしたことがある方は多いのではないでしょうか。まずは、具体的にどういった情報なのか、情報として発信される際の雨量の基準などを確認しましょう。

記録的短時間大雨情報とは「稀にしかない雨量」を知らせるもの

「記録的短時間大雨情報」という言葉から、意味はある程度想像がつくかと思いますが、洪水などの発生につながるような短時間の大雨を観測した場合に発表される情報です。

数年に一度くらいしか発生しないような短時間の大雨を、地上の雨量計によって観測したり、気象レーダーなどを組み合わせて解析し、基準値を超えたときには、発表の対象となります。

記録的短時間大雨情報が正式に発表されるのは、上述の基準を満たしているだけでなく、大雨警報発表中に危険度分布(キキクル)の「危険」が出現しているときです。

発表される雨量の基準

「数年に1度程度の大雨」を発表する記録的短時間大雨情報ですが、発表される雨量の基準はどのようになっているのでしょうか。

地域によって、過去に記録された雨量は異なります。ですから、一概に「何ミリ以上降ったら発表する」とは決まっていません。

雨量基準は、府県予報区ごとに決められていることが多く、1時間雨量の歴代1位、または2位の記録を参考にしています。各地の雨量基準については、こちらもご参照ください。幅はありますが、80~120mmとなっています。

ちなみに、岐阜県で昨年発表された記録的短時間大雨情報は、2回。いずれも7月でした。2021年は発表なし、2020年は5回発表されました。全国で見ると、2013年から2021年までの平均発表回数は80.1回で、7~9月が特に多いようです。2022年は例年の倍以上発表されており、雨の多い年だったことがわかります。

どのように発表される?

記録的短時間大雨情報は気象台が発表し、警報などと同じくニュース速報やJアラート、自治体が使用する各種ツール(SNSやメールなど)を使って発信されます。

岐阜地方気象台が発表した、過去の記録的短時間大雨情報について調べてみたのですが、2013年から現在まで、筆者の住む岐阜県土岐市で発表されたことはないようです。冒頭でお話した2022年8月の大雨の際には深夜に大きな警報音が鳴りましたが、記録的短時間大雨情報の記録はないので、河川の氾濫に関する情報だったことがわかります。

あれだけ激しい雨でも発表されなかったとなると、どれだけ深刻な状況で発表されるものなのかと、考えさせられる思いです。

記録的短時間大雨情報が発表された場合の注意点

記録的短時間大雨情報が発表されるのは、単に激しい雨が降っているというだけでなく、大雨によってさまざまな災害が起こる可能性が想定される場合でもあります。

注意したいのは、土砂災害・洪水・浸水です。

雨が降り続くと地盤がゆるみ、土砂災害が起こりやすくなります。また、河川の氾濫などで洪水が起こったり、水があふれると建物が浸水したりもするので注意が必要です。大雨が起こったときにどのような災害が起こりやすいのかは、以下の記事も参考にしてください。

歴代の記録的短時間大雨

記録的短時間大雨情報という名前では、1986年から発表が開始されました。しかし、継続時間の短い雷雨での発表例が多かったため、運用の見通しを実施。時間をかけて現在の基準を作りました。

とはいえ、実際どれくらいの雨量だと記録的短時間大雨情報として発表されるのかは想像がつきにくいでしょう。ここからは、10分、1時間、1日あたりの歴代の降水量をご紹介します。

以下のランキングに載っている地域で、当時必ずしも記録的短時間大雨情報が発表されたとは限りませんが、降水量の基準として参考にしてください。

10分間あたりの降水量

気象庁が発表している、歴代の最大10分間降水量上位10地域は、以下の通りです。

順位都道府県地点雨量(mm)観測日
1北海道木古内55.02021年11月2日
2埼玉県熊谷50.02020年6月6日
2新潟県室谷50.02011年7月26日
4高知県清水49.01946年9月13日
5宮城県石巻40.51983年7月24日
6埼玉県秩父39.61952年7月4日
7兵庫県柏原39.52014年6月12日
8兵庫県洲本39.21949年9月2日
9神奈川県横浜39.01995年6月20日
10東京都練馬38.52018年8月27日

1時間あたりの降水量

続いて、1時間あたりの最大降水量上位10地域を見てみましょう。

順位都道府県地点雨量(mm)観測日
1千葉県香取1531999年10月27日
1長崎県長浦岳1531982年7月23日
3沖縄県多良間1521988年4月28日
4熊本県甲佐1502016年6月21日
4高知県清水1501944年10月17日
6新潟県下関1492022年8月4日
6高知県室戸岬1492006年11月26日
8福岡県前原1471991年9月14日
9愛知県岡崎146.52008年8月29日
10沖縄県中筋145.52010年11月19日

1日あたりの降水量

最後に、1日あたりの降水量上位10地域を、ご紹介します。

順位都道府県地点雨量(mm)観測日
1神奈川県箱根922.52019年10月12日
2高知県魚梁瀬851.52011年7月19日
3奈良県日出岳8441982年8月1日
4三重県尾鷲8061968年9月26日
5香川県内海7901976年9月11日
6沖縄県与那国島7652008年9月13日
7三重県宮川7642011年7月19日
8愛媛県成就社7572005年9月6日
9高知県繁藤7351998年9月24日
10徳島県剣山7261976年9月11日

記録的短時間大雨情報が発表された場合の行動

記録的短時間大雨情報が発表されるのは、すでに大雨警報が発令されているときに、さらに警戒を呼びかけるためのものです。発表されたら大雨のときと同様に、迅速な避難や自宅での待機が求められます。

より一層周囲の状況に注意しながら、具体的にどういった行動を取ればよいのでしょうか。

危険箇所に注意しながら避難する

自宅や職場などにいるのが危険だと判断した場合は、安全を確保できる避難場所まで移動する必要があります。避難所については事前に確認し、河川付近や土砂災害の危険性がある場所などを避けながら安全に避難できるよう、避難経路も決めておきましょう。

大雨の避難時には、さまざまな二次災害なども想定し、以下の点を意識してください。

避難時の注意点

・ヘルメットなどで頭部を保護する
・素足は絶対NG!長靴よりもフィットして歩きやすいスニーカーで
・長袖長ズボンなど動きやすい服装で避難する
・浸水が始まっている場合は、マンホールや危険物がないか足元に注意しながら歩く
・単独行動は避け、声を掛け合って避難する
・病人や高齢者、子どもなど「災害弱者」と呼ばれる方への配慮を忘れない

自宅などで待機する場合の注意点

歩行可能な水深は、一般的には50センチ程度だといわれています。これを超えてしまった場合は、より安全に注意して避難するのも選択肢の1つですが、安全を確保できる可能性が高い場所にいる場合は、無理に外に出ず待機することも考えましょう。

自宅などで待機する場合に注意したいのは、以下の点です。

自宅待機の際の注意点

・ライフライン停止を考慮し、非常用トイレやポータブル電源などを用意しておく
・テレビやラジオなどの気象情報をこまめにチェックする
・浸水の可能性を考慮し、大切なものは2階など被害の少なそうな場所へ移動する
・いつでも避難できるような態勢を整えておく

「備蓄」や「持ち出し袋」の用意

大雨だけでなく、いつ、どのような災害が起こるかはわかりません。災害がなくても、何かの不具合でライフラインが停止する可能性もあるでしょう。さまざまな非常事態を想定し、私たちが日頃から備えておきたいモノや知識についても、今一度見直すとよいかもしれません。

非常事態に向けてできる備え

・食料品や日用品の備蓄をしておく。ローリングストックを活用する
・避難時にすぐに持ち出せるよう、必要なものを入れた防災バッグを準備する
・窓に飛散防止シートを貼る、家具が転倒しないよう固定するなど災害対策をする
・ハザードマップを見て、安全に避難できる経路を確認する
・家族がバラバラの場所にいた場合の連絡手段や集合場所を決めておく
・保険や共済の補償対象・内容を知っておく
・災害情報アプリなどをダウンロードし、情報収集の手段を確保しておく

正しい情報収集で大雨から身を守る行動を

記録的短時間大雨情報は、大雨警報発令中に、さらなる危険を知らせるために発表されるものです。2022年は例年よりも発表が多く、大雨が多い1年でした。2023年夏はどのようになるかわかりませんが、日頃から迅速な情報収集や安全確保ができるよう準備をしておくことは重要です。

正しい行動で、記録的な大雨の際も大切な命を守りましょう。

編集後記

子どもの頃、1度だけ大雨で近くの川が氾濫しそうになり、夜中に畳を上げたり大事なものを持って2階に避難した記憶があります。私が生まれる前、兄が幼少の頃には実家が床上浸水したため、警戒しての行動だったのでしょうが、私も兄も子どもなので「夜中に起きていられる」「必要なものをリュックに詰めて2階でテレビを見ている(ニュースでしたが)」という状況に無駄に興奮していたことを思い出します。

今思うと非常に不謹慎ですが、子どもにとって警報は「学校を合法に休める免罪符」だったので、「明日休める~!」という気持ちが大きかったのもあるかもしれません。

小学1年生の長男も先日、「幼稚園の頃警報出たよね~また学校休みにならないかな~」などと申しており、「血筋とは恐ろしいものだ」と感じました(笑)。

とはいえ、災害・防災などの記事執筆に関わらせていただいている身としては、子どもが警報に喜ぶ姿はやや許しがたかったので、「いや、警報出るってめちゃくちゃ大変なことなんだよ。川とかあふれたらどうすんのよ。」と諭しましたが…。

自分を棚に上げて子どもに説教をするというのは何とも滑稽だなぁと感じると同時に、「こうやって親になっていくんだろうな」と思う瞬間でもありました。2023年は、大雨に悩まされない1年になるとよいですね。

参考記事

・気象庁「記録的短時間大雨情報
・気象庁「歴代全国ランキング
・TBS RADIO「「避難する時」「自宅待機する時」それぞれのポイント【台風・豪雨への備え】

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

大学・大学院にて日本語学を専攻。日本語教師を経て2018年よりライターに転身。子どもと学べる防災に関心を持ち、日々災害や備えについて勉強中。
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