11月は「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の対策強化月間です。冬に多くなる傾向があるとして、厚生労働省では本格的に寒くなる前のこの時期に、注意をうながしています。
そこで今回は、乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因とリスクを減らすポイントについて調べてみました。
後半は、家庭内で赤ちゃんの命を危険にさらす「3つのリスク」についてもお伝えしています。ぜひ最後までご覧ください。
乳幼児突然死症候群(SIDS)とは睡眠中の赤ちゃんが亡くなる病気
はじめに、乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)とは何か確認しましょう。
乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、死因につながる病歴や兆候がないにも関わらず、睡眠中の赤ちゃんが突然亡くなってしまう病気のことです。
アメリカでは早産や低出生体重の赤ちゃんにその危険性が高く、生後6ヶ月まで・女児より男児・寒い時期に多い傾向があるとの見方がなされています。
日本では、その多くが1歳未満であるものの、それ以上の年齢でもまれにおこるといわれています。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因は明らかになっていない
ではなぜ、寝ている赤ちゃんが突然亡くなってしまうのでしょうか。これから出産される方もふくめ、赤ちゃんが身近であれば誰もがその原因を知りたいと思うでしょう。
ですが現在、乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因は特定されていません。
死をもたらす病気の原因がわからないことは非常に不安です。ですが、たとえば喫煙が肺がんの原因になり得るというような因果関係が、乳幼児突然死症候群(SIDS)においては明らかになっていないのです。
乳幼児突然死症候群のリスクを減らすためにできる3つのこと
ハッキリした原因はわかっていないものの、厚生労働省のホームページには「データ上、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症率が低くなる3つのポイント」が記されています。
とくに、1歳未満のお子さんがいる方は、次の3点を心がけましょう。
➀1歳になるまでは仰向けで寝せる
仰向けでも乳幼児突然死症候群(SIDS)はおこるものの、顔を下に向けるうつぶせ寝のほうがそのリスクは高まるとされています。(ほかの病気で医師からうつぶせ寝をすすめられている場合は、医師に相談しましょう。)
この「赤ちゃんをうつぶせ寝にする危険」が広まることで、以前よりも乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症数は減っています。たとえば、1995年(平成7年)に亡くなったのは526人ですが、2019年(令和元年)には75人となっています(※)。
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411774
➁タバコは吸わない(受動喫煙にも注意)
妊娠中の女性が喫煙することは、流産や早産・胎児の発達に影響するだけでなく、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクも高めることが、明らかになっています。
たとえ妊婦さん自身がタバコを吸わなかったとしても、ほかの人が吸うタバコの煙を吸ってしまうこと(受動喫煙)でも同様です。
乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクから赤ちゃんを守るためには、妊娠中そして生まれたあとも、赤ちゃんをタバコの有害物質にさらすことは避けたいものです。
煙がでないタバコなら安心?
最近は煙がでないタバコとして、加熱式タバコや電子タバコが販売されています。しかし、これらを吸った呼気には通常のタバコと同様の有害物質があるとされています。
したがって、それらのタバコであったとしても、乳幼児突然死症候群(SIDS)をひきおこすリスクはないと言いきることは難しいのではないでしょうか。
③できるだけ母乳で育てる
粉ミルクが乳幼児突然死症候群(SIDS)をひきおこすものではありませんが、母乳で育っている赤ちゃんの発症率は低いとされています。
一般的に母乳のメリットは、赤ちゃんにとってだけでなく、母親にもあると言われています。ですが、母親が母乳で育てたいと思っていても、さまざまな理由でそれができないこともあります。
粉ミルクにもメリットはあるので、それぞれに応じた判断と対応がもとめられますが、不安なときは保健師さんなどに相談するとよいでしょう。
ここまで、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを減らす3つのポイントをお伝えしました。
乳幼児突然死症候群(SIDS)のほかにもある家庭内のリスク
ここからは、赤ちゃんを育てるご家庭において、注意すべき3つのリスクをお伝えします。
窒息:顔のまわりにある物・柔らかすぎる寝具には注意
赤ちゃんが寝ている環境には、乳幼児突然死症候群(SIDS)だけではなく、窒息のリスクもあります。
窒息は、顔のまわりに置いたタオルやぬいぐるみ、スタイ(よだれかけ)のヒモなどによって引きおこされます。また、柔らかい寝具に鼻や口が埋もれてしまうことで、おこることもあります。
寝返りがうてない月齢では、それらを払いのけることができません。寝返りがうてる月齢であっても動けるがゆえに、それらが首や口・鼻にまきついてしまうことがあります。
赤ちゃんが寝る周囲には不要な物をおかず、ときどき様子を見て確認するようにしましょう。
感電:コンセントには触れさせない・物を挟まない
家庭内のコンセントには、最悪の場合は死に至る「感電」のリスクがあります。
コンセントカバーで対策をとっているご家庭もあると思いますが、商品によっては簡単に外れてしまう物もあるため、注意が必要です。
コンセントは低い位置にあることが多いため、赤ちゃんにとっては興味の対象になりがちです。成長するにつれ「触ってみたい・物を入れてみたい」という好奇心が芽生えてきます。
外れにくいカバーなどで対策をとるとともに、月齢が小さいうちからくり返し、その危険性をしっかり教えましょう。
転落:高層階でも窓のカギはしめる・足場になる物をおかない
室内の高い場所、窓やベランダからの転落にも注意が必要です。少し前までは登れなかった場所でも、成長が早い子どもの場合にはあっという間に登れてしまうものです。
また、窓やベランダのカギを「防犯」の視点からだけ捉えてしまい、高層階だからと無施錠にすることは大変危険です。たとえ低層階であっても「いつの間にか子どもが外にでていた」ということもあり得るのです。
カギをかけることは「子どもを窓の外・ベランダに行かせないための対策」です。かけ忘れに十分気をつけつつ、万が一に備え、ベランダには足場になる物を置かないようにしましょう。
『危ないかもしれない』で身の周りをチェックしよう
今回は、乳幼児突然死症候群(SIDS)と家庭内における危険についてお伝えしました。
乳幼児突然死症候群(SIDS)は事故ではなく病気です。その原因ははっきりわかっていませんが、リスクを減らす3つのポイントが示されています。
一方で、大人の不注意がもとでおこってしまう事故があります。「これくらいは大丈夫」ではなく「危ないかもしれない」という認識で、今一度、赤ちゃんをとりまく環境を見直していただけたらと思います。
【参考文献】
厚生労働省ホームページ「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」
横浜市ホームページ
(以上)