エレベータという狭い密室に閉じ込められる、その恐怖は計り知れないものでしょう。日常的にエレベーターを使用している人は、閉じ込めのリスクがあることを念頭に入れておく必要があります。
今回は、閉じ込めの原因、閉じ込められたらどう行動するのか、そして閉じ込め対策についてお伝えします。
エレベータの閉じ込めは地震、停電、故障などで起こり得る
私たちが安全にエレベーターを利用できるように、日頃メンテナンス業者がエレベータの点検をおこなっています。エレベータを利用しようとして「点検中」という表示があり、仕方なく歩いた経験のある方もいるでしょう。
一方、エレベータは、突然やってくる地震や停電、あるいはエレベータの故障などによって、動かなくなる可能性があります。この「エレベーターに閉じ込められる危険性がある」ことを知っておくことが、まずは大切です。
エレベーターは地震時に最寄り階で停止しない?!
エレベーターの中に「地震発生時には最寄り階で停止します」という表示を見たことはありませんか?日本では、地震の揺れを感知したら一番近い階(最寄り階)に停止する機能、「地震時管制運転装置」の導入が平成21年から義務化されています。
この装置がついていれば「エレベータの閉じ込めは起こるはずがないのでは?」と思うかもしれませんね。実は、そうではないのです。
最寄り階に到着する前に止まってしまう可能性がある
確かに、地震時管制運転装置が付いているエレベーターでは、「地震だ!」と感じる揺れが起きると、エレベーターは最寄り階へと移動していきます。問題はこの後です。
最寄り階に移動中に、最初の揺れよりも大きな揺れが来ると、エレベーターは緊急停止するのです。大きな揺れによって安全に運転できない危険性があるため、緊急停止する仕組みが備わっています。
もちろん、これまで「地震時管制運転装置」があることによって、閉じ込めを防ぐことができたケースもあるでしょう。ですが、この装置が設置されていないエレベーターもあるのです。
予想されている大災害でもエレベータ閉じ込めはあり得る
2011年に発生した東日本大震災では、東北地方だけではなく首都圏のエレベータでも閉じ込めが発生しました。
そして、今後予想されている首都直下型地震および、南海トラフ巨大地震においても、エレベータの閉じ込め予想が発表されているのです。
首都直下型地震、南海トラフ巨大地震では1万人以上が閉じ込められると予想
各地震について発表されている資料をもとに、グラフを作成してみました。
いずれも、閉じ込めにつながり得る停止台数は約3万以上、閉じ込め者数も1万人以上と非常に大きな被害となることがわかります。
予想される災害名 | 閉じ込めにつながる可能性のあるエレベーターの停止台数 (台) | エレベーター閉じ込め者数 (人) |
首都直下型地震 | 約3万 | 約1万7千 |
南海トラフ巨大地震 | 約4万2千 | 約1万2千 |
※引用サイトのデータをもとに作成
【引用元URL】
※中央防災会議・首都直下地震対策検討ワーキンググループ 「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」平成25年12月http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg/pdf/syuto_wg_siryo01.pdf
※中央防災会議・防災対策推進検討会議・南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ 「南海トラフ巨大地震の被害想定について (第二次報告)」平成25年3月18日 http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130318_shiryo2_3.pdf
エレベーターへ閉じ込められたら、こう行動しよう!
エレベーターに閉じ込められた場合、私たちができることはどんなことでしょうか?
階数ボタンをすべて「押す」
地震の揺れを感知したら最寄り階に停止する機能、「地震時管制運転装置」はすべてのエレベーターに設置されているわけではありません。そのため、どこかの階で停止させるため、全ての階数ボタンを「押す」ことが必要です。
また、ドアが開いても決して慌ててはいけません。出来るだけ落ち着いて行動しましょう。
可能な手段で外部に「知らせる」
停止したままドアが開かない、閉じ込められたときは、当然助けを求めます。
エレベーターの非常用ボタンを押す、または電波が届いていれば携帯電話などで管理会社や家族に知らせましょう。
しかし、電波が届かない場合もあります。そのような時に役立つのがホイッスルです。大声で叫ぶより、体力的にも効果的です。持ち歩く防災グッズとして、ホイッスルを備えておくのも良いでしょう。
非常用ボックスがあるか「確認する」
エレベーターの一角に、閉じ込めに合った際に備えて、水や簡易トイレといった非常グッズを収納しているものがあります。
すべてのエレベーターに設置されているわけではありませんので、最低限の防災グッズを持ち歩くと安心です。
※こちらの記事では、女性のための防災ボーチを紹介しています。 防災新聞「防災ポーチを持ち歩く~女性のための防災ポーチの中身とは?~」 https://bousai.nishinippon.co.jp/669/
救助を「待つ」
外部に知らせることができたら、あとは救助を「待つ」しかありません。とは言っても、なんとか出られないか考えるかもしれませんね。ですが、我慢です。安全上、ドアは内部からは開かない仕組みになっています。
体力を消耗しないように落ち着いて待ちましょう。
小さなお子さんがいたら、とにかく気をそらす
小さなお子さんは状況が理解できず、不安にもなり、外に出たいと泣いてしまうかもしれません。狭い空間で泣き叫ばれたら、親御さんはなおさら困ってしまいますね。
そうならないためにも、とにかくお子さんの気をそらしましょう。持ち歩いているオモチャや、手遊びのほか、シールがあるといろいろな場所に貼って遊ぶことができますよ。
エレベーターへの閉じ込めに備えて日頃からできること
なるべく階段を使う
エレベーターの定期点検日しか階段は使わない、ということはありませんか?
どうしてもエレベーターでないと難しい、という場合でなければ、できるだけ階段を使ってはいかがでしょう。定期点検日に階段を使う苦痛も、少しは軽く感じられるかもしれません。
エレベーターを利用していることを伝えておく
よく行くお店や職場などで、日頃エレベーターを利用している人は、家族にそのことを伝えておきましょう。
災害発生時、自分がどこにいる可能性があるか、それを家族が事前に把握していることは、災害に備える上でとても大切なことです。
エレベーターメンテナンス業者から閉じ込め時の対応を学ぶ
エレベーターのメンテナンス会社によっては、住民を対象に救出方法の講習を開いているところもあります。一度、問い合わせてみるのも良いでしょう。
エレベーターの中に非常用ボックスがあるか確認する
閉じ込められたときの行動でもお伝えした、非常用ボックスの確認です。
設置されている場合は、管理組合がおこなう避難訓練のときなど、実際に中身を見ておくのも良いですね。
まとめ
エレベーターには、事故を未然に防ぐための対策が講じられており、日頃から点検作業も実施されています。
一方、エレベーターに閉じ込められてしまう可能性があることも事実です。このことを知ることで、備えておけること、できる対策があります。
日頃、何気なく利用しているエレベーターですが、ちょっと見方を変えて、災害への備えを始めるキッカケにしてみませんか?
【引用元URL】
内閣府「首都直下型地震における災害応急対策の主な課題」平成24年7月 http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg/5/pdf/4.pdf
国土交通省「大阪府北部を震源とする地震による エレベーターの被害状況の分析と対策の実施状況について (令和元年6月)」」 bunsekitotaisaku.pdf (aichi-higashiura.lg.jp)
【参考文献】
一般社団法人 日本エレベーター協会 https://www.n-elekyo.or.jp/index.html
YAHOO!ニュース 「福島県沖の地震でも発生、エレベーターの閉じ込め対策が進まない本当の理由」https://news.yahoo.co.jp/byline/nakazawakosuke/20210329-00229737
賃貸事務所ドットコムBLOG「エレベーターの非常用ボタンを間違えて押した時の対処法」 https://www.chintai-jimusho.com/blog/%e3%81%9d%e3%81%ae%e4%bb%96/%e3%82%a8%e3%83%ac%e3%83%99%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%81%ae%e9%9d%9e%e5%b8%b8%e3%83%9c%e3%82%bf%e3%83%b3%e3%82%92%e6%8a%bc%e3%81%99%e3%81%a8/
大阪市「エレベーターの安全対策のお願い」 https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000465198.html
(以上)