1年中リスクはあるものの、ジメジメする梅雨頃から暑い夏にかけては特に注意したい食中毒。食中毒にもさまざまな症状や種類があるので、正しい予防・対処法で防いでいきたいところです。万一食中毒になってしまった場合も、最悪の状況を防ぐためには迅速かつ適切な対処が求められます。
今回は、食中毒に関するさまざまな知識をまとめました!原因や症状・種類などを知り、食中毒にならないよう注意しながら日々の食事をより楽しいものにしましょう。
食中毒の原因は「細菌」や「ウイルス」
食中毒の主な原因は、細菌とウイルスです。このほかにも、食中毒の原因となるものはあるので、原因について1つずつ解説していきます。
細菌とは
細菌は栄養となる糖などと水があり、一定条件を満たしていれば、自らが持つ力で増殖することができます。生きた細胞のない調理後の食品などでも食中毒が起こる原因は、細菌です。細菌によって起こった感染症は、抗生物質の投与で症状を抑えられるケースが多いです。
ウイルスとは
ウイルスは水や栄養があっても、細胞がないので単独で増殖することはありません。タンパク質と核酸からなるのが基本で、生きた細胞に寄生して増殖します。抗生物質は細菌には効果が期待できますが、ウイルスには効果がありません。ウイルスは細胞に寄生するので、ワクチンで予防することが重要です。無毒化・弱毒化したウイルスで免疫力を高めることで、もし感染した場合にウイルスの急激な増殖を防ぐことができます。
その他の食中毒原因にも注意が必要
食中毒の主な原因は細菌、ウイルスによるものですが、その他の食中毒にも注意が必要です。たとえば、ふぐやカビ、キノコなどの毒は「自然毒食中毒」といわれており、命に関わる症状を引き起こす可能性も低くはありません。
また、洗剤や農薬、有害金属による「化学性食中毒」は、重篤な後遺症を残すこともあるため危険です。さらに、アニサキスなどの「寄生虫」、ヒスタミンなどによる「アレルギー関連の食中毒」も存在するので、口に入れるものには常に気を配る必要があることが分かります。
食中毒を引き起こす主な細菌・ウイルスの種類
ここからは、食中毒の危険性がある細菌やウイルスの種類を見ていきましょう。細菌・ウイルスの種類は多くありますが、特に有名なものをまとめました。原因となる食品や潜伏期間などを知っておくことで、万一食中毒のような症状が現れたときに「あの食べ物がよくなかったのかな」と原因に目星をつけることができます。
細菌・ウイルスの種類 | 原因となる主な食品 | 潜伏期間 | 特徴 |
サルモネラ菌 | 鶏卵、その加工品牛レバー刺しなど | 6~72時間 | 鶏肉や卵を中心に、生肉が原因となりやすい |
黄色ブドウ球菌 | 乳製品、加工品、卵製品など | 1~3時間 | 100℃、30分の加熱でも無毒化されない毒素を生成 |
腸炎ビブリオ菌 | 刺身などの魚介類 | 8~24時間 | 夏から秋に多発する室温でも増殖しやすい |
カンピロバクター | 鶏肉やその他の肉、飲料水、生野菜など | 1~7日 | 乾燥や熱に弱く、通常の加熱調理で死滅する |
腸管出血性大腸菌 | 水耕野菜、井戸水、加工食品製品など | 1日~数日 | 熱や消毒剤に弱い5つに分類される |
ノロウイルス | 牡蠣などの二枚貝、患者の吐瀉物など | 1~3日 | 人の腸内のみで増殖感染力が強い |
ウェルシュ菌 | カレーやシチュー、弁当など | 6~20時間 | 加熱調理後、放置して冷めた食品が原因になりやすい |
ボツリヌス菌 | 缶詰やレトルト食品、蜂蜜など | 8~36時間 | 自然界に広く生息毒性の強い神経毒を生成 |
エルシニア菌 | 加熱が不十分な肉、井戸水など | 2~5日 | 冷蔵庫のなかでも増殖する潜伏期間が比較的長い |
食中毒による症状の特徴
食中毒になると現れる症状は、原因となる細菌やウイルスの種類によってもさまざまですが、主に次のような症状が見られるケースが多い傾向です。
・下痢
・吐き気
・腹痛
・嘔吐
このほか、細菌やウイルスによっては以下の症状も現れることがあるので、注意しましょう。
・発熱
・頭痛
・倦怠感
・血便
・筋力低下
・神経症状(呼吸困難、視力障害など)
下痢や嘔吐が続くと、脱水症状を引き起こすこともあります。また、呼吸や意識に問題が生じ、命に関わるケースも。死亡につながる食中毒上位は、キノコなどの植物やフグなどの持つ毒が多いですが、細菌やウイルスによる食中毒でも死亡事例があるので、症状が出た場合には適切な対処をする必要があります。
食中毒予防のための適切な調理と保管
食中毒は軽症でも下痢や嘔吐など、体に大きなダメージを受ける可能性があるため、できるだけならないようにしたいところです。食中毒を予防するためには、調理や食材の保管に関して、どういった点に注意すればよいのでしょうか。
手洗いをしっかりとする
新型コロナウイルスの感染拡大防止対策としても、手洗いは非常に有効でした。調理前後はもちろん、細菌やウイルスの発生源となるようなペットや昆虫に触れたあとなどにも、しっかりと手洗いをすることで食中毒を防げる可能性は高まります。
食材の加熱
魚介類や食肉などは、加熱をしない、加熱が不十分なことで食中毒を引き起こすことがよくあります。じゅうぶんな加熱で毒素を消滅させることが可能なケースは多いので、食材はしっかりと加熱するようにしましょう。
低温、短期間の保存
夏に食中毒が起こりやすいのは、温度の高い場所に食品を置いておくことで、細菌やウイルスが繁殖するからです。食材にはそれぞれ、適した保管温度というものが存在しますが、多くは低温での保存が求められます。買ってきた食材はすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れ、傷まないようにしてください。
調理器具の洗浄殺菌
調理器具を使い回す、調理器具の洗浄や殺菌がしっかりとできていないことが、食中毒の原因になることもあります。使用後のじゅうぶんな洗浄・消毒・乾燥などはもちろん、調理前にも念のため消毒を行うことで、食中毒のリスクを軽減させることが可能です。
食中毒発生時の適切な対処法
どれだけ注意していても、食中毒になってしまうことはあります。最後に、食中毒だと思われる症状が見られた場合の対処法を見ていきましょう。
薬は服用しない
辛い腹痛や嘔吐などに見舞われると、整腸剤や下痢止めなど、市販の薬でなんとか症状を緩和させたいと思う方もいるでしょう。しかし、こうした症状は体内に入った毒素を排出させるための行為ですので、素人の判断で薬を服用すると逆効果な場合もあります。独断で薬を服用するということは、避けるようにしてください。
水分をしっかりと補給
下痢や嘔吐が続くと、体内の水分が奪われてしまいます。脱水症状は重症化すると死亡することも。特に、小さな子どもや高齢の方は、脱水症状によって深刻な症状を引き起こす可能性があるため注意が必要です。体調が悪いなか大変かもしれませんが、水分をしっかりと補給するようにしましょう。
早めに医療機関を受診
軽い腹痛や吐き気だけで症状がおさまる場合もありますが、下痢や嘔吐が続く、高熱が出るなど、さまざまな症状が起こることもあります。水分補給ができない、、呼吸や意識に問題がある、血便が出るなど、症状が改善しない場合には一刻も早く医療機関を受診しましょう。
症状が改善しても、下痢や嘔吐、発熱などがあった方は、念のため受診されることをおすすめします。
重症化の恐れがあるのは…
同じ食材で食中毒になっても、症状の度合いは人それぞれです。小さなお子さまや高齢者の方をはじめ、次のような方は食中毒が重症化する可能性が高いので、もし少しでも違和感がある場合には、早急に医療機関を受診するようにしてください。
・妊娠中の方
・がんや糖尿病、肝臓疾患の治療中の方
・胃腸に問題がある方(手術を受けた、胃酸が少ないなど)
・ステロイド入りの薬を服用している方
・HIVに感染している方
・免疫力が低下している方
・ひどい貧血の方(鉄剤を服用しているなど)
正しい調理や保管で食中毒を予防しよう
食中毒は軽度のものから、命に関わる重度のものまでさまざまです。正しい調理や食材の保管方法を実践することで、食中毒から身を守ることができます。
食中毒に関する知識を身につけ行動すれば、重篤な症状を防ぐことは可能です。自身や大切な方の命や健康を守るため、食中毒予防と対策に努めましょう。