ライターの永野です!
先日、何気なくスマホで調べ物をしていたのですが、突然画面いっぱいに「お使いのiPhoneが(14)個のウイルスに…」という文章が。5分からの謎のカウントダウンも始まっていて、「詐欺だろうな」とわかっていても、ああいうのって結構焦りますよね。
普通(だと思っていただけかもしれませんが)の、芸能系の情報をまとめたようなサイトだったので、「いやいやいやいや~」と思いながらブラウザを閉じ、とりあえず「お使いの~」で検索。するとやはり、画面にあったウイルス対策と謳っていたURLに飛ぶとマズいことになっていたかもしれない、という感じでした。
こうしたスマホやパソコンなどでURLをクリックする形式を「ワンクリック詐欺」というらしく、2000年代中盤以降に流行し始めたもののようです。時代や相手の年齢などに合わせて、まさに「手を変え品を変え」た詐欺が登場するんだなと思います。
座談会でもお話した通り、そんな「詐欺」から身を守るのも災いを防ぐこと、つまり「防災」の1つ。詐欺の種類や対策などを知っておくと、自分自身や周囲の人を守ることにつながります。
そこで今回は「送りつけ詐欺」について解説します。実際の被害事例や法改正の内容、送りつけ詐欺に遭わないための対策などをまとめていますので、ぜひご一読ください!
送りつけ詐欺(送りつけ商法)とは?
送りつけ詐欺は「送りつけ商法」といい、「ネガティブ・オプション」などと呼ばれることもあります。まずはその定義を確認しましょう。
送りつけ詐欺の定義
送りつけ詐欺は「注文していない商品を勝手に送り付け、代金を一方的に請求する商法」です。一定期間内に「購入しない」といわないと買ったことにされますし、断ろうと思って送りつけてきた会社に連絡をすると恫喝されてしまう可能性もあります。また、断った場合は送りつけられた商品の返品を求められるなど、とにかく「厄介」でしかない詐欺です。
前述の通り、警視庁の公式サイトをはじめ、さまざまなサイトでは「送り付け商法」「ネガティブ・オプション」という呼び方がされます。しかし、注文していない商品のお金を払わせようとするというのは、立派な詐欺の手口の1つです。
参考:警視庁:ネガティブ・オプション(送り付け商法)
Wikipedia:ネガティブ・オプション
誤送付は対象外
特定商取引59条では、送りつけ詐欺について以下のように記されています。
①売買契約の申込みないし契約の締結を行った者以外に対して、売買契約の申込みをすると共に商品の送付をする場合
Wikipediaより引用
②申込み等を受けた商品以外の商品について、売買契約の申込みを受けるとともに商品の送付をする場合
「頼んだはずのない商品が届いた」という部分だけを切り取ると、何でも送りつけ詐欺になってしまいそうですが、「違う人が注文した商品が、自分の家に配達された」「注文した商品が入っておらず、別の商品が届けられた」など、故意ではない「誤送付」は、当然送りつけ詐欺の対象外です。
送りつけ詐欺(送りつけ商法)の実際の被害
送りつけ詐欺についてよく知らない方は、定義を聞いてもあまりピンとこないかもしれません。これまでどのような送りつけ詐欺がどれくらいの数あったのか、数字とともに実例をご紹介します。
近年の消費者相談件数
送りつけ詐欺のピークは2012年頃で、年間1万件以上を超える相談がありました。最近、といっても少し古いデータになりますが、消費者庁によると2019年度は3,087件、2020年度は6,673件の相談があったそうです。
2020年度といえば、コロナ禍真っ只中。売り切れ続出だったマスクや消毒液の送りつけ詐欺が急増したのも、相談件数が急増する理由の1つです。
実際に起こった送りつけ詐欺の被害
具体的な送りつけ詐欺の被害について、いくつかご紹介します。
注文していない商品を一方的に送りつけてくるだけでも迷惑ですが、相手の対応が威圧的だったり、「弁護士」「警察」などの文言を使って脅してきたりというのも、送りつけ詐欺の特徴です。
「タチが悪い」の一言に尽きる…。
送りつけ詐欺の増加により「特定商取引法」が改正
送りつけ詐欺が増加しはじめたのは2008年頃だといわれています。その頃は一方的にカニを送りつけるという手口が多く、「カニカニ詐欺」と呼ばれていたそうです。いまも、断りづらい海産物の送りつけは少なくありません。
前述の通り、2020年に送りつけ詐欺が再度増加したこともあり、2021年に「特定商取引法」が改正されました。法改正による変更点などを、解説します。
「特定商取引法」とは
消費者庁の「特定商取引法ガイド」によると、特定商取引法の定義は以下の通りです。
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。 具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。
「特定商取引法ガイド」より
特定商取引法のなかには「訪問販売等に関する法律(訪問販売法)」があり、これは訪問販売や通信販売、連鎖販売などの取引にルールを設け、業者と消費者のトラブルの防止を目的としたものです。訪問販売法は昭和51年に施行されたものですが、2021年の法改正により新たなルールが加えられました。
改正後の変更点は?
特定商取引法の改正で、送りつけ詐欺に関わる部分での変更は以下の通りです。
販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者(以下この項において「申込者等」という。)以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合…(中略)…には、その送付した商品の返還を請求することができない。
特定商取引法 第59条(売買契約に基づかないで送付された商品)
これまでは、一方的に送りつけられた商品でも返品しなければ行けませんでしたが、法改正により、送りつけられた人は商品を保管しないで処分してもよいことになりました。届いてすぐの商品を処分してしまっても、業者は商品の返還について一切請求できないため、お金を払わない、返品もしないという状況ができやすくなります。送りつけることによるメリットを減らすとともに、送りつけられた人の被害の軽減にもつながる内容になったのではないでしょうか。
送りつけ詐欺に遭ったらどうする?
さまざまな詐欺の手口についてはメディアでもたびたび取り上げられますが、いざ「自分事」となると、慌ててしまう方も少なくありません。もし身に覚えのない荷物が送りつけられてきたら、どう対処すればよいのでしょうか?
身に覚えのない荷物は「受取拒否」する
宅配業者から受け取る時点で注文した覚えがない商品だと気づいたら、受取拒否をしましょう。送り主の事業者名と住所、電話番号をメモしておくと、どういった業者か自分で調べたり、さらなるアクションがあり、他者に相談したりするときに役立ちます。
1人暮らしではない場合は、自分以外の人が注文した商品の可能性もゼロではありません。しかし代引きなどでお金を払ってしまうのは危険ですので、一旦「保留」にして宅配業者に持ち帰ってもらうことをおすすめします。保留にした荷物はその後「再配達」か「受取拒否」かを選べるので、1人で判断しないようにしてください。
宅配業者さんには負担になるから、事情を説明するといいかもね!
購入履歴を確認する
記憶にない配達物が届いた場合は、購入履歴を確認することも忘れてはいけません。送りつけ詐欺だと思ったら、「一旦カゴに入れたものの、購入の取り消しを忘れて注文してしまった」という自分のミスだったという可能性もあります。
調べても自分や家族が注文した商品ではない場合は、キャンセルの手続きをしましょう。間違って注文した商品も、返品ができないか早めに相談することをおすすめします。
消費者ホットラインに相談する
購入履歴を確認しても注文した形跡がない場合は、「受取拒否」をすれば問題ありません。その後もしつこく連絡がくるなど、トラブルに発展しそうなときは、1人で解決しようとしないで消費者庁の「消費者ホットライン」や、独立行政法人国民生活センター、最寄りの警察署などに相談しましょう。
送りつけ詐欺に関するよくある質問
送りつけ詐欺がどのようなものか、もし荷物が届いたときの対処法などをご紹介しました!最後に、送りつけ詐欺についてよくある質問をまとめましたので、こちらも参考にしてください。
- 受け取って開封してしまった
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法改正により、送りつけられた商品の返品は不要になりました。開封してしまった商品は、処分してしまってかまいません。
- 代金を支払ってしまった
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法的には代金の返還を請求できるので、消費者ホットラインに相談しましょう。しかし、送りつけ詐欺で払ってしまったお金は戻ってこないケースが多いです。支払い前に気づけるよう、「受取拒否」や「保留」をしてください。
- 「連絡がないと売買が成立する」という書面があった
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一方的に送りつけてきた商品については、「購入しない」という連絡をしなくても売買契約は成立しないので、無視してよいといえます。業者に連絡をすると、しつこく電話がきたり脅されたりすることもあるので、連絡をしないようにしましょう。
- 業者に連絡したら怒鳴られる、脅されるなどされた
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不要な支払いについて脅すのは、「恐喝罪」にあたる可能性があります。業者には直接コンタクトをとらないのがベストですが、もしこうした状況に陥った場合は、警察に相談してください。
- 業者から「返品しろ」といわれた
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法改正により、商品を処分しても問題はなくなったので「法律上、返品の義務はありません」と伝えましょう。業者からしつこく連絡が来る場合は、無視をして構いません。住所や電話番号などの個人情報を知られていて不安に感じるときは、消費者ホットラインや警察などに相談することをおすすめします。
受け取らない!もしくは処分でOK!
送りつけ詐欺に遭っても焦らないで!困ったら消費者ホットラインを利用しよう
特定商取引法の改正で、消費者が送りつけられた商品を自由に処分できるようになりました。送りつけ詐欺の被害を減少させるために、法改正が大きな役割を果たしてくれることを期待したいですね。もし注文した記憶のない荷物が届いたら、以下のように対策をします。
①「受取拒否」または「保留」
②購入履歴を確認
③必要に応じて消費者ホットラインに相談
詐欺の手口や被害について理解し、「防犯」「自衛」の精神で災いを防ぎましょう。
編集後記
最近はスマホでメールを使う機会がほとんどなく、メールアドレスはほぼ何かのID用に利用しています。恐らく10年以上変えていないアドレスなので、定期的に「迷惑メールが鬼のように届く習慣」が訪れるのですが…。
最近は「A〇azon」を騙るメールが10分以内に15件ぐらい来るというトンデモな経験をしました。実母に話したら、実母も兄も同じことがあったといいます。いかにも怪しいリンクのついたメールは目的が何となく理解できますが、リンク先もない意味不明なメールって、どんな目的で送られているんでしょうか。
怪しいメールは開封しないですぐに削除していますが、今やスマホは財布以上に中身を取られるとマズいものなので、これからも注意していかないとなぁと、「詐欺」というテーマを取り扱って改めてと感じました。