今回は、2回に分けてお伝えしている登山の注意点【その2】です。
前回【その1】では、登山届をだす背景や登山届の提出方法などについてお伝えしました。
今回は、近年のコロナ禍において低い山での遭難が増えていることをふまえ、「低い山」についての注意点をお伝えします。また、低い山は初心者の方にも人気ということで、登山するにあたってまずは備えてほしい5点も合わせてご紹介します。
安全に登山を楽しむための一つの参考として、ぜひご覧ください。
ハイキング感覚の登山にも遭難の危険がある
ハイキング中に遭難するケースもある
警察庁のデータによると、令和3年における遭難時の状況は「登山中」がもっとも多く、約8割にもなっています。登山と聞くと、富士山のような標高が高い山へ登ることをイメージする方もいると思いますが、そうではありません。ここでの「登山」とは、ハイキングも含まれています。
ハイキングと聞けば、気軽に行ける身近な山を思い浮かべる方もいるでしょう。その身近な山にも遭難の危険があることを、まずは頭に入れておきましょう。
気軽に登れそうな「低い山」にも遭難のリスクがある
身近な山の例として、外国人にも人気の高尾山(東京都)を取りあげてみたいと思います。高尾山は、標高599メートルと決して高い山ではありません(参考:国土地理院「日本の主な山岳標高」)。
しかし、令和3年における高尾山での遭難者数は85人であり、過去5年平均比より8人増えているのです。一方、富士山の遭難者は24人であり、こちらは48人減っています(参考:朝日新聞デジタル「身近な低い山」で増加 昨年の山岳遭難者数、コロナ影響か 警察庁)。
この背景には、コロナ禍で密をさけて活動できる登山(ハイキング)が、気軽に楽しめる娯楽として注目されたこともあると見られています。
低い山ならではの特徴で道に迷ってしまう
なぜ、気軽に登れそうと感じてしまう「低い山」で遭難するのでしょう。そこには、標高が高い山とは別の危険が潜んでいるのです。
たとえば、登山道がしっかり整備された山に対して、生活圏に近い山であれば、そこまで整備されていない場合もあるでしょう。また、ハイキングコースのすぐ近くに「こっちの道も行けそう」と感じる道があったりします。しかしそこは、林業に従事している方が通る道であったり、動物の往来でできた道かもしれないのです。その結果、山の中で「自分がどこにいるかわからない」という状況におちいってしまうのです。
このように「低い山ならではの特徴」によって、道に迷い遭難する危険があるのです。
では次に、遭難時も想定して登山時に備えておきたい物について、見ていきましょう。
登山に必要な物とは?この5点は忘れずに
高い山であれ低い山であれ、自然の山に登ることに違いはありません。もちろん。高くなればなるほど酸素が薄くなるなど、特別の備えと対応が求められる部分もあります。
しかし、ここでお伝えしたいことは「低い山であっても、登山用の装備をしましょう」ということです。では、早速「まずは備えておきたい5点」をご紹介します。
➀雨具・防寒具(エマージェンシーシート)
山の天気は変わりやすいものです。いつ雨が降ったり気温が下がっても大丈夫なように、雨具・防寒具を持参しましょう。防寒具のほかに、エマージェンシーシート(体に覆うことで、体の熱を反射して温かくさせるもの)もあると、より良いでしょう。
「ちょっと登るだけだから要らない」という甘い考えは、自然の山を相手にしたときには、低体温症などで命を落としかねない危険につながるのです。
➁地図・コンパス
登山中は、遭難を防ぐためにも、自分がどこを歩いているか確認することが必要です。そのためには、地図やコンパスが欠かせません。
③携帯電話・スマートフォンとモバイルバッテリー
通信手段は登山中でも欠かせませんが、圏外のこともあるでしょう。ですが、GPS機能をオンにしておくことで遭難時に役立ったり、地図などのアプリを活用しているケースもあるでしょう。いずれであっても、万が一遭難したとき「電池切れ」では使えません。バッテリーも合わせて持参しましょう。
④食料(行動食)
休憩時の栄養補給から遭難時に備えるものとしても、食料は持って行きたいものです。登山者の間では行動食は必須アイテムとされており、どのような物を選んだらよいか参考になるでしょう。
⑤ヘッドライト
ヘッドライトは遭難時はもちろん、予定より下山が遅れて暗くなったときにも必要です。また、遭難時にはライトの明かりが発見に役立つこともあるでしょう。
以上、今回は5点にしぼってお伝えしました。ですが、このほかにも、帽子や水筒・救急用品(常備薬)などもあるでしょう。万が一を想定し、ご自分にあった物をそろえるようにしましょう。
まとめ
今回は、登山の注意点【その2】として、低い山でも油断できないこと、そして登山に必要な物についてお伝えしました。登山は自然を相手にした楽しみであるため、噴火はもちろん、さまざまな備えが必要となります。
ここではその一部しかお伝えできませんでしたが、一つの参考としてご覧いただき、安全に登山を楽しまれることを願ってます。
【参考文献】
NHK「低い山でなぜ遭難してしまうの?~救助された人に聞いてみた」
政府インターネットテレビ「山岳遭難救助隊長にきく 山岳遭難防止のための5つのポイント」
NHK「遭難者が増加中!”低山登山”に注意を(2022年5月17日放送)」
(以上)