防火区画という言葉には馴染みがないという方も多いかもしれませんが、これはビルなどには必要不可欠なものです。勤め先のビルに防火区画があるかはもちろん、場所や活用方法などを知っておくと、いざというときに役に立ちます。
そのためには、そもそも防火区画とは何かはもちろん、種類や防火区画を設ける条件などを知っておくことも重要です。そこで今回は、防火区画に関する情報をまとめました!
防火区画とは「火災の被害を抑えるための区切り」のこと
ビルなどの大きな建物で火災が起こると、火の手は見る間に広がってしまい、甚大な被害を及ぼします。そんな被害を最小限に抑えるのが、防火区画です。燃えにくい構造の壁や床、防火扉などを用い、広い建物を一定の区画に区切ることで、火災の広がりを防いだり、避難経路を確保したりできます。
防火区画設置の目的
防火区画が設けられる最大の目的は、火災の広がりを最小限に抑えることです。広いスペースをそのままにしておけば、炎はそのスペース全体に広がる可能性が高くなります。しかし、狭い区画に区切ることで、他の区画に炎が広がらないようにすることが可能です。
炎が広範囲に及ばなければ、その分、消火も容易になりますし、避難や救助活動におけるリスクも低減できます。
防火区画の必要性
前述の通り、防火区画には重要な役割がありますので、条件に当てはまる建物には設置が義務づけられています。建築基準法施行令第112条で規定されていますので、覚えておきましょう。
防火区画がなければ、炎が広範囲に広がり周辺施設などにも影響を及ぼす、火災に巻き込まれる方が増えてしまう、ということにもなりかねません。
防火区画が必要とされる建物の条件
防火区画を必要とする建物は、準耐火建築物と、耐火建築物です。耐火建築物は、壁や柱、床、階段、屋根、はりなどの主要構造部が耐火構造になっていて、火災が発生した際に鎮火まで倒壊・延焼しない構造のものをいいます。
準耐火建築物は、主要構造部が準耐火構造となっており、火災が起こった場合の延焼を抑制する構造です。これらは鉄筋コンクリートやレンガなどで造られた建物に多く見られますが、木造住宅でも基準を満たしたものがあり、その場合には防火区画を設ける必要があります。
とはいえ、すべての耐火建築物、準耐火建築物が設置の対象ではありません。次に解説するような条件を満たしたものが、防火区画の設置に該当します。
防火区画の種類は4つ!
ここからは、防火区画の種類を解説していきます。防火区画には大きく4種類があり、これらに該当するものは防火区画の設置が必要です。どういったものなのかを1つずつ見ていきましょう。
面積区画
面積区画は、延べ面積が500㎡以上のビルのなかでも、避難時間が短いもの、準耐火建築物となっているなっているものです。当てはまる建物は500㎡ごとに防火区画を設置する必要があり、1500㎡を超える場合はさらに細かい規定が設けられています。
たとえば、1時間準耐火基準に適合する床や壁をしようすること、防火扉などの特定防火設備を設置することなどです。
高層区画
耐火建築物、準耐火建築物のどちらも、11階以上のフロアには高層区画の面積区画規定を適用します。こちらは原則として、100㎡ごとに防火区画の設置が必要です。
しかし、不燃材・準不燃材を使用している区画に関しては、緩和措置が適用されます。
竪穴区画
階段、エレベーターの走行する空間であるシャフト、吹き抜けなど縦に開いた空間は炎や煙が上りやすく、火災拡大の原因となりかねません。そこで、3層以上のこうした縦穴には、縦穴区画が必要です。
縦穴部分が防火性を持つことで、避難を迅速勝つ安全に行える、火災の広がりを抑えることに貢献します。
異種用途区画
オフィスのみが入っているビルももちろん多くありますが、なかには飲食店や事務所、工場などが1つのビル内に入っていることもあります。こうしたビルは防火上有効な壁や床、開口部で区画することで、防火性を高めなければなりません。これが、異種用途区画です。
防火区画の施工に関する決まりも知っておこう!
防火区画を設置するための条件はもちろん、防火区画の施工に関しても、さまざまな決まりがあります。素材の仕様や外壁の決まりなどを確認しましょう。
壁・扉・床・天井の仕様について
防火区画の壁・扉・床・天井の仕様については次のような決まりがあります。
箇所 | 決まり |
壁 | 耐火性が高く安価、移動もしやすいLGS石膏ボードを埋め込むことが多い(コンクリートは重くて施工費が高額になりやすい) |
扉 | 国土交通大臣が定めた構造方法に準じている、個別に認定を受けているもの(鉄筋コンクリートや土蔵、鉄材など) |
床 | 11階以上は耐火性、それ以外は1時間準耐火や耐火などの基準あり(それぞれの基準に合わせる必要あり) |
天井 | 床と同様の基準が適用される |
外壁にも決まりがある
耐火性に関する決まりは建物内の部分についてのみ適用されると思われがちですが、実は外壁にも決まりがあります。外壁は厚みが90センチ以上ある、準耐火構造にしなければなりません。
90センチというと非常に厚みのある外壁になることはわかるでしょう。壁に厚みを持たせることで、炎が回り込んで火災が広がることを防げます。外壁に開口部を設けるときにも規定があるので、確認が必要です。
防火区画の貫通処理とは
防火区画は前述の通り、壁や天井、床、扉などに耐火性のある素材を採用し、延焼を一定時間防ぐことを可能とします。しかし、防火区域に配管がある場合は、そこからの延焼の可能性も考慮しなければなりません。
よって、防火区域内の配管は耐火ブロック充填工法やケイカル板を用いた耐火仕切板工法など、炎症防止のための特殊な貫通処理が必要です。こうした処理をする際には、専門業者に依頼することも覚えておきましょう。
防火区画が免除・緩和されることも!免除規定は
防火区画が必要な条件を提示しましたが、条件を満たせば免除・緩和される場合もあります。防火区画の設置箇所を減らすことができれば、ビル内の内装工事やレイアウト設計にも影響するでしょう。最後に、免除規定について解説します。
面積区画の免除
面積区画の免除・緩和の条件には次のようなものがあります。
・自動消火設備の設置:スプリンクラーなどの自動消火設備を設置すれば、面積区画が2倍になる(消火器などの手動のものはNG)
・階段やエレベーター:これらは面積区画には含まれない
・用途による免除:映画館や体育館、冷蔵品保管のための倉庫など、やむを得ない場合に置いて面積区画が免除されるという規定に当てはまるものもある
該当する場合にも、免除や緩和のためには書類提出が必要です。わからない場合には専門家に確認する、書類提出について教示してもらうことも、忘れないようにしましょう。
竪穴区画の免除
竪穴区画の免除規定は面積区画と同様で、体育館や映画館、劇場などは、やむを得ない場合に該当し、区画が緩和・免除されますので覚えておきましょう。また、避難階(基本的には1階)から直上・直下に通じる吹き抜け部分に限り、仕上げと下地を不燃材料にすれば、免除対象となります。
さらに、3階以下で200㎡以内の床面積である住宅部分における吹き抜けや階段部分も免除対象です。
使用する建物の防火区画を確認しよう!
防火区画は、万一の場合に迅速な避難を可能とし、1人でも多くの方が安全に建物の外に出る、命を守るために必要なものです。ただ建物を使用するだけではあまり意識しないかもしれませんが、どういった設備があるのかを日頃から確認しておくと、いざというとき安心です。
建物の設計や管理をする方は、もちろんご存じの知識かもしれませんが、今一度防火区画の必要性や条件を知り、利用者の安全確保に努めるようにしてくださいね。