低温やけどは、体温より高いものの熱いとは感じない程度の温度でおきるやけどのことです。
熱くもないのにやけどになる理由、それは「熱が1カ所に長時間触れつづけている」ため。
カイロは、下着など肌に近い場所に貼って使うこともあるため、低温やけどのリスクがあります。また、カイロ以外の暖房器具でも低温やけどはおこります。
そこで今回は、5つの事例をとおして低温やけどの特徴とその予防法を解説します。
身の周りにあるリスクを知って、低温やけどを防いでいきましょう。
カイロで低温やけどになった2つの事例とその特徴
では早速、2つの事例と、そこからわかる低温やけどの特徴をみてみましょう。
事例1「靴下の上にカイロ」長時間の使用で水ぶくれに
はじめは、靴下の上にカイロを貼って、低温やけどになった事例です。
これだけなら通常の使用方法かもしれませんが、低温やけどに至った背景には、その使いつづけた時間も関係していたのです。
靴下の上から左足首にカイロを24時間継続して貼っていた。はがしてみると、皮膚が赤くなり、水ぶくれができていた。(70歳代 男性)
引用:独立行政法人 国民生活センター「長時間の使用は注意!カイロで低温やけど」 ※太字は筆者加筆
この事例では、1日中カイロを貼りつづけたことで、皮膚の深くまで熱が「じわりじわり」と届いたのでしょう。
このように、カイロを長時間継続してつかうことは、低温やけどになるリスクを高めます。
事例2「カイロと電気毛布」皮がむけ深部までやけど
次は、カイロを貼ったまま電気毛布をかけて就寝した事例です。
腰にカイロを貼り、電気毛布のスイッチを付けたまま就寝した。
引用:独立行政法人 国民生活センター「低温やけどにご用心 見た目より重症の場合も」 ※太字は筆者加筆
翌朝カイロをはがすと「痛がゆさ」があったので、皮膚科を受診したところ、皮がむけており皮膚の深い部分までやけどをしていると言われた。(70歳代 女性)
この事例では、カイロを貼って寝てしまっただけでなく、さらに電気毛布をつかったことで、より体に熱がとどいたと想像できます。
就寝中は異変に気づかなかったものの、低温やけどが進行していたのでしょう。
じんわりと熱が皮膚の深部に届き「いつの間にか」重症化
やけどは、皮膚のどこまで熱が届いたかによって3段階に分類できます。
下記のように、皮膚の奥深くになるにつれて、数値が「1度→2度→3度」と大きくなっていきます。
もっとも重症な3度のやけどでは痛みがありません。
◆やけどの程度(3度:重症)
1度:痛みがある=赤くなる・ヒリヒリする
2度:強い痛みがある=水ぶくれができる
3度:痛みなし=皮膚が黒く(または白く)なる
カイロを貼った場所には、心地よいと感じる程度の熱が「じんわりと」加えつづけられます。
そのため、事例のように長時間継続して使用したり、寝るときも貼ったままにすると、「いつの間にか」皮膚の深いところまで熱がとどき重症化する可能性があるのです。
軽症のやけどであれば自然治癒もありますが、重症の場合には入院・手術が必要になることもあるとされています。
ここまで、低温やけどの事例とその特徴をお伝えしました。
カイロによる低温やけどを防ぐために
ここからは、カイロによる低温やけどを防ぐために「気をつけたい5つのこと」と、「冷え症への対策」を知ることができるサイトをご紹介します。
カイロをつかうとき気をつけたい5つのこと
寒い時期にはカイロの温かさが心地よいものですが、次の点に注意して使いましょう。
◆カイロで低温やけどにならないために
1.寝るときは使わない
2.ほかの暖房器具といっしょに使わない
3.肌に直接貼らない
4.カイロの上からベルトやコルセットなどを押し付けない
5.「熱さ」や「かゆみ」を感じたり、「ヒリヒリ」したときは使用を中止する
低温やけどになると、いつの間にか重症化するリスクがあることを思い出して、カイロは適切につかっていきましょう。
自分の「冷えのタイプ」を知って対策をとる
NHK「健康チャンネル」では、冷え症を「四肢末梢型」「下半身型」「内臓型」「全身型」の4タイプに分け、それぞれの冷え解消に有効なツボや日常生活でできることを紹介しています。
サイトでは、5つの設問に応えることで簡単に自分のタイプを知ることができます。
カイロの温かさも心地よいものですが、そのほかの冷え症対策についてもぜひチェックしてみてはいかがでしょう。
カイロだけじゃない!低温やけどに注意が必要な物
低温やけどになるのは、カイロだけではありません。
ここでは、こたつ・湯たんぽ・電気カーペットで低温やけどになった事例をご紹介しながら、気をつけたい点を解説します。
事例3「こたつ」指を切断するほど重症に
「こたつで寝てしまうことがある」方は、気づかないうちに熱源に足があたりつづけ、低温やけどになる危険があります。
こたつで就寝し朝起きると、足の指から出血しており、やけどに気づいた。
引用:独立行政法人 国民生活センター「低温やけどにご用心 見た目より重症の場合も」 ※太字は筆者加筆
左足の親指と人差し指を切断し、中指は皮膚移植を行うほどの重症だった。(70歳代 男性)
指を切断するほど重症であるにもかかわらず気づかないのは、まさに低温やけどの怖い点といえるでしょう。
こたつでは寝ないように気をつけましょう。とくに、皮膚の感覚が鈍くなっている方はより注意が必要です。
事例4「湯たんぽ」カバーをつけても皮がむけるほど
近年は、かわいいキャラクターの湯たんぽも販売されており、小さいお子さんに使っている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、湯たんぽも「心地よい温度」であるため、使い方に気をつけないと低温やけどになる可能性があります。
「子どもが湯たんぽを欲しがったので、シリコン製の湯たんぽにカバーをかけたものを渡して寝かせていた。
引用:消費者庁「Vol.476 電気カーペットや湯たんぽによる低温やけどに注意!」 ※太字は筆者加筆
1時間程して子どもが『お尻が痛い』と訴えた。赤くなっている部分があり、一部の表皮がむけていた。」(4歳)
この事例では、お子さんが異変を訴えられる年齢でしたが、そうでない場合には気づかないまま深刻な状態になってしまう危険性もあります。
お子さんには湯たんぽを渡したままにせず、大人がつかう場合であっても寝るときは布団から取り出すようにしましょう。
事例5「電気カーペット」タオルを敷いても皮膚が赤く
電気カーペットがついた状態のうえで寝てしまうと、おなじく低温やけどになる可能性があります。
「電気カーペットの上におねしょパッドとタオルを敷いて子どもを寝かせていた。
引用:消費者庁「Vol.476 電気カーペットや湯たんぽによる低温やけどに注意!」 ※太字は筆者加筆
2~3時間たった頃、子どもが泣き出した。背中が熱く、部分的に皮膚が赤みを帯びていた。」(0歳3か月)
小さいお子さんは大人よりも皮膚が薄いため低温やけどになりやすいとされています。
お子さんにかぎらず、電気カーペットをつけたまま寝ると、低温やけどだけでなく脱水状態になる危険もあります。寝るときは電気カーペットの電源を切りましょう。
ここまで、こたつ・湯たんぽ・電気カーペットによる低温やけどの事例と、気をつけたい点をお伝えしました。
このほかにも、横になって充電中のスマホを操作しているうちに寝てしまい、低温やけどになるケースもあります。
それほど熱くない温度の物であっても、長時間の使用によって低温やけどになる可能性があることを頭に入れておきましょう。
まとめ~正しい使い方で低温やけどを防ごう
今回は、5つの事例をとおして「カイロ」や「こたつ」「湯たんぽ」や「ホットカーペット」による低温やけどについてお伝えしました。
どれも寒い日には便利につかえるものです。ですが、長時間、体のおなじ場所に熱が加え続けられると低温やけどになるリスクがあります。
低温やけどは気づかないうちに「いつの間にか」重症化することもあり、やけどの跡が残ることも。
そうならないため、各製品の説明書を確認して正しい使い方を守っていきましょう。
【参考文献】
独立行政法人 国民生活センター
消費者庁「Vol.476 電気カーペットや湯たんぽによる低温やけどに注意!」
EPARKくすりの窓口【医師が解説】意外に怖い!低温やけどの症状と予防・対処法を解説
京都市消防局「救急事故を予防しよう-やけど編」
(以上)