南海トラフ巨大地震が起きると騒がれていますが、同じような確率で30年以内に起きると言われている巨大地震があります。(内閣府 首都直下地震対策検討ワーキンググループによる)
その地震こそ、首都直下型地震です。地震の規模はマグネチュード7.3と予想されていて、被害額はなんと約95兆円とも言われています。
あまり報道されていないので知らない方もいらっしゃるでしょうが、実際に起きてしまうとどのような状況になるのでしょうか。
今回は、起きてしまうと日本全体に影響すると考えれれる首都直下型地震について、中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループが公表している資料に基づいて解説します。
首都直下型地震と南海トラフ巨大地震との違い
首都直下型地震と南海トラフ巨大地震との違いは「内陸型の地震であるか、海溝型の地震なのか」の違いとなります。
海溝型地震・内陸型地震が起きるメカニズム
地球内部では、いくつものプレートが重なって動いています。このプレートの動きによって「海溝型地震」が起きるのですが、同時に大陸プレートを圧迫して内陸部の岩盤が歪を帯びてきます。
歪が大きくなると内陸部の地中内で弱い部分から破壊が起こり、その時の振動によって「内陸型地震」が生じることとなります。
内陸型地震の2つのタイプ
内陸型地震(直下型地震)には、下記の2つのタイプが存在されると言われています。
1:地面近くの岩盤が破壊されて起こる地震。(活断層による地震で阪神淡路大震災を引き起こした地震など)
2:大陸プレートと海のプレートが接している境界付近で、岩盤が破壊されて起こる地震
今回起きると予想されている首都直下型地震は、1のタイプが当てはまります。
関東周辺のプレート境界と南関東地域で発生する地震のタイプ
出典:内閣府 首都直下地震の被害想定対策のポイント
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/jikkoukaigi/03/pdf/1-1.pdf
左の図から確認できる、関東周辺で東京に影響のあるプレートは、フィリピン海プレートと北米プレートが接する、相模トラフです。
そして、右の図では南関東地域で発生する地震タイプとして、次の6種類が挙げられています。
1:地殻内の浅い地震
2:フィリピン海プレートと北米プレートの境界の地震
3:フィリピン海プレート内の地震
4:フィリピン海プレートと太平洋プレートの境界の地震
5:太平洋プレート内の地震
6:フィリピン海プレート及び北米プレートと太平洋プレートの境界の地震
この内、首都直下型地震となるのが「1:地殻内の浅い地震」となるのです。
70%の確率で30年以内に地震が起きる根拠とは
ここでは首都直下型地震が、70%の確率で30年以内に起きる根拠について解説します。
地震の歴史を遡ってみると、南関東ではこれまでにM8クラスの地震が、約200年から400年周期で発生しているのです。
南関東における過去の地震の周期
出典:内閣府 首都直下地震の被害想定対策のポイント
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/jikkoukaigi/03/pdf/1-1.pdf
上記の過去の地震歴を見ると、M8クラスの地震は約200年から400年周期で起こっていることが分かります。そして、M8クラスの大きな地震が起きる前には、必ずM7クラスの地震が繰返し起きているのです。
最も直近で起きている「千葉県東方地震 M6.7」が1987年なので、M7クラスの地震の起きる確率が、「今後30年以内に70%の確率」であるといわれているのです。
因みにM7クラスの内陸型地震がどのくらいの大きさかというと、関東大震災の地震規模ががM7.9、阪神淡路大震災の地震規模がM7.3となっています。
首都直下型地震の地震情報
地震の規模 | M7クラス |
発生頻度 | 今後30年間に約70% |
震度分布 | 震源域から一定の範囲
被害最大の地震を想定 |
津波 | 東京湾内は1m以下 |
首都直下型地震と海溝型地震の発生率
出典:内閣府 首都直下地震の被害想定対策のポイント
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/jikkoukaigi/03/pdf/1-1.pdf
上記の図は首都直下型地震と海溝型地震が起きる確率を、それぞれで示したものです。
海溝型地震の地震規模はいずれもM8を超えていますが、発生確率はほぼ無いに等しくなっています。
一方で、M7クラスの首都直下型地震の確率は約70%と、非常に高い予測となっているのです。
M7クラスの地震が起きる断層位置図
出典:内閣府 首都直下地震の被害想定対策のポイント
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/jikkoukaigi/03/pdf/1-1.pdf
これは、M7クラスの地震が起きる断層の位置図です。赤で示されている「都心南部直下断層・都心西部直下断層・都心東部直下断層」の3つの断層が、首都直下型地震になりえる断層です。
首都直下型地震における被害想定
出典:内閣府 首都直下地震の被害想定対策のポイント
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/jikkoukaigi/03/pdf/1-1.pdf
首都直下型地震における被害想定一覧
首都直下型地震には、上記の通り甚大な被害が予想されています。
震度7の地震は一部ですが、都心では震度6強が予想されているので、ビルの倒壊が起きればドミノ式の倒壊が起きる可能性もあります。
次に、被害の様相についてまとめてみました。
首都直下型地震の被害の様相
建物 | ・木造住宅を中心に多くの建物が損壊する |
火災 | ・火災が同時に多発し、延焼が2日程度続く |
電力 | ・5割の地域で停電が発生し、最悪の場合1週間以上回復しない |
電話 | ・携帯電話を含め不通の状態が1日程度続き、停電が長期化すると携帯電話の使用も不安定となる |
道路 | ・主要道路の開通には少なくとも1日~2日を要する
・一般道はガレキによる不通区間が大量に発生、 復旧には1カ月以上を要する |
鉄道 | ・運転再開には地下鉄で1週間、JRや私鉄では1ヶ月程度を要する |
南海トラフ巨大地震について詳しい記事紹介
今回は内陸型の首都直下型地震について、詳しく解説します。
南海トラフ巨大地震については、『南海トラフ地震とは?瀬戸内海沿岸地域における津波の特徴を中心に解説』記事をご覧頂くと、よくお分かり頂けます。
『南海トラフ地震とは?瀬戸内海沿岸地域における津波の特徴を中心に解説』記事は、コチラからご覧いただけます。 |
https://bousai.nishinippon.co.jp/928/ |
首都直下型地震の影響は大きい
首都直下型地震による被害は、直接地震によるもので東日本大震災ような津波の被害はありません。ですから、被害の大きいエリアは1都3件のみとなります。
ですが、この1都3県は現在日本の経済の中心となっているのは事実なので、首都機能がマヒすることは、日本全体に大きな影響を及ぼすでしょう。
首都直下型地震が日本に与える影響を、確実に想定するのは無理かも知れません。ただ、政府や専門学会でも首都中枢確保や迅速な復旧・復興に向けての対策も計画されています。
いずれにしても、この30年では南海トラフ巨大地震や首都直下型地震など、地震災害が多く予測されているので、各個人レベルでもしっかり対策を行う必要があるでしょう。
いつくるか分からない地震にも、しっかり対応できる備えを普段から行っておきましょう。
出典:内閣府 首都直下地震の被害想定対策のポイント
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/jikkoukaigi/03/pdf/1-1.pdf