梅雨から夏にかけ、細菌による食中毒が増える傾向にあります。「サルモネラ菌」は原因となる細菌の一つであり、保育所などで集団発生したというニュースが取りあげられることも。
お子さんが食中毒になってしまうと、早く良くなってほしいものの「市販薬は飲ませていい?」といった疑問や、「病院ではどんな治療をする?」と不安に感じる方も、いらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、サルモネラ菌をはじめとする『食中毒の治療で大切なこと・注意したいこと』を調べてみました。
ご家族そしてご自身の健康を守るため、ぜひ一緒に学んでみませんか。
サルモネラ菌(食中毒)の治療で大切なのは「脱水を防ぐこと」
サルモネラ菌が原因の食中毒では、吐き気や嘔吐のあとに、腹痛や下痢・発熱(38度以上)といった症状があります。
一般的に、サルモネラ菌による食中毒は、特別な治療をせずとも自然治癒するとされており、病院での治療も脱水を補ったり腹痛の緩和といった対症療法が中心になります。
ですが、後述するように、重症化しやすい人もいるため注意が必要です。気になる場合は病院を受診しましょう。
食中毒の治療で大切なことは「脱水状態にならないよう水分をとること」です。
水分がとれないほどひどい場合は、脱水状態がすすんでいる可能性があるため、救急車を呼んだ方がよいでしょう。
◇水分補給の仕方
・「水分」は、水・麦茶・スポーツドリンク・経口補水液が望ましい
・一度にたくさんではなく、回数を分け、こまめに飲む(与える)
・スポーツドリンクは、糖分が多いものもあるため、飲み過ぎに注意
食中毒の症状が重くなりやすい人
次の人は、重症化しやすいとされています。早めに病院を受診するようにしましょう。
◇食中毒の症状が重くなりやすい人
・乳幼児や高齢者の方
・妊娠中の方
・肝臓疾患、ガン、糖尿病の治療を受けている方
・鉄剤を飲む必要のある貧血の方
・胃腸の手術を受けた、胃酸が少ない等、胃腸に問題がある方
・ステロイドが入っている薬を飲んでいる、HIVに感染している等、免疫力が落ちている方
※引用 農林水産省「食中毒かな?と思ったら」より
なお、「何度も吐く・血もまざる・下痢や嘔吐がひどく水が飲めない・意識がもうろうとしている」といった場合は、すぐ救急車をよんだほうがよいとされています。
【参考】
EPARK 薬の窓口「食中毒のときに使っていい薬・使わない方がいい薬」
お医者さんオンライン「食中毒・食あたり:原因は?潜伏期間は?人にうつるの?治療は?」
サルモネラ菌(食中毒)の治療で注意すること「自己判断による服薬はさける」
下痢や発熱といった症状があると、市販の下痢止めや解熱剤を使いたくなるかもしれませんね。
ですが、下痢止めの使用は「体から菌がでていくのが遅くなる(回復が遅れる)」ため、使用しないほうがよいとされています。
さらに、麻痺性イレウスとよばれる「腸の運動がにぶくなり、著しい便秘や腹痛・嘔吐などを引き起こす可能性」があるとも言われています。
また、解熱剤は「脱水を悪化させる可能性がある」ため、できるだけ使用しないほうが良いでしょう。
食中毒の治療では、自己判断で薬を飲まないよう注意しましょう。
サルモネラ菌の特徴と予防策
そもそも「サルモネラ菌」とはどのようなものでしょう。ここでは、食中毒をもたらす「サルモネラ菌の特徴」と「家庭における予防策」をお伝えします。
サルモネラ菌はどこにいる?
牛や豚などの家畜、ハ虫類・犬・ネコなどのペット、川や沼・下水など、自然界にひろく存在しています。
どのような感染源がある?
・汚染された食品(卵、鶏肉、牛や豚など)
賞味期限切れの卵を生食したり、サルモネラ菌に汚染されていた卵で作ったお菓子などから感染したケースもあります。
・カメやイグアナなどのハ虫類
小さいお子さんが、カメを触った手をそのまま無意識に口に運ぶなどして、感染したケースがあります。
厚生労働省「ミドリガメ等のハ虫類の取扱いQ&A」では、ハ虫類とサルモネラ菌の関係、衛生的な取扱いについて解説しています。
・犬やネコ・鳥類などのペット類
・汚染された土壌や水を介した作物 など
サルモネラ菌は加熱すると死滅する?
はい、75℃以上1分以上の加熱で死滅します。
サルモネラ菌による食中毒の予防策は?
細菌性食中毒をふせぐ三原則をご紹介します。
➀細菌を「つけない」
・調理前、生の肉や魚を触ったあとはよく手をあらう
・まな板や包丁などの調理器具は洗剤でよくあらう
・ペットを触ったら石鹸をつかって手を洗う
・食材は水でよく洗ってから調理する
➁細菌を「増やさない」
・冷蔵が必要なものは早めに冷蔵庫にいれ、早めに食べる
・卵は冷蔵庫で保管し、溶き卵はすぐに調理する
③細菌を「やっつける」
・中心部までしっかり加熱しする
・調理器具は熱湯などで消毒する
サルモネラ菌は、私たちに比較的身近な存在と言えるのではないでしょうか。食中毒は家庭内にとどまらず、食品をあつかう場面ではどこであっても注意が必要ですね。
【参考】
厚生労働省「家庭での食中毒予防」
公益社団法人 全日本病院協会「食中毒について」
政府広報オンライン「食中毒予防の原則と6つのポイント」
サルモネラ菌は症状がなくても体内にいることがある
食品関係の職場などで検便の結果、サルモネラ菌の反応がでて驚いたというケースがあります。このような方は「健康保菌者」とよばれています。
過去のデータではありますが、一般財団法人東京顕微鏡院によると、食品を取り扱っている従事者のうちサルモネラ菌の陽性率が、過去10年のなかで増加傾向にあったとされています。
具体的には『2004年には0.019%でしたが2013年には0.053%まで上昇』したとされ、その差は3倍程にもなっています。
無症状にもかかわらずサルモネラ菌が陽性と言われると、ショックを受けることでしょう。ですが、自身も職場の人も安心して働くことができるよう、病院を受診し適切な治療を受けるようにしましょう。
【参考】
一般財団法人東京顕微鏡院「サルモネラ属菌による健康保菌者の問題」
中島クリニック「無症候性(症状のない)サルモネラ菌保菌の治療|無症候性サルモネラ陽性をみたら胆のうをチェック」
まとめ
今回は食中毒の原因の一つ「サルモネラ菌」について、その治療で大切なこと・注意したいことを中心に、お伝えしました。まとめると、次のようになります。
・サルモネラ菌による食中毒の治療では「こまめに水分をとり、脱水を防ぐこと」が大切です。
・食中毒の多くは自然治癒するとされています。しかし、小さいお子さんや高齢の方、妊娠中の方などは重症化することもあるため、早めに病院を受診しましょう。
・市販の下痢止めや解熱剤は、回復が遅れたり症状がひどくなる可能性もあるため、使用は控えましょう。
・食中毒の予防では、細菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」といった3原則が重要です。
冷蔵庫での適切な保存、調理器具の消毒、十分な加熱が大切です。
・サルモネラ菌の特徴の一つに、カメなどのハ虫類を介した感染があります。
ハ虫類を飼っているご家庭では、お子さんが簡単に触れないようにするなど、飼育環境に注意しましょう。
サルモネラ菌は、私たちの周りにいる膨大な数の細菌のうちの一つです。ご家庭でできる予防策をとりながら、この時期に潜むリスクから身を守っていきましょう。
(以上)