阪神淡路大震災や東日本大震災の映像で、火災がおきているのをご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか?
感震ブレーカーとはどのようなもので、地震のときはどのように火災がおきるのか、防ぐ手段はないのかお伝えします。
感震ブレーカーとは
感震ブレーカーとは、ある一定以上の地震の揺れを感じると、自動的に電気の通りを遮断するブレーカーのことです。じつは、地震のときに電気が原因で起こる火災があるのです。
この火災を防ぐことができるのが、感震ブレーカーです。国も感震ブレーカーの普及に取り組んでいます。
でははじめに、ブレーカーについて確認してから、なぜ感震ブレーカーの普及が促進されているのか、そして感震ブレーカーの種類と費用についてみていきましょう。
そもそもブレーカーって?
突然家の電気が消えて驚いたことはないでしょうか?自宅だけが停電していたなら、ブレーカーが作動したのでしょう。ブレーカーとは、ある一定の電気量を超えたときや、異常な電流が流れたときに、電気の流れを自動的に止める装置です。
エアコン、炊飯器など、初動に多くの電気を使用する機器を複数使い、契約した電気量を超えてしまった場合などに、ブレーカーが落ちて電気を遮断します。そのまま電気を通しておくと、火災につながる危険性があるためです。
電気火災と通電火災
このように、電気機器を原因とする火災を「電気火災」といいます。コンセントに差したプラグ部分に埃がたまり、湿気などの水分がついた状態に電気が流れて、炎があがるなどの事例もあります。
一方、地震の揺れなどの影響で停電したあと、電気が復旧することで発生する火災があります。これを「通電火災」といいます。
通電火災は電気が復旧したときにおこる火災
地震のときにおこる火災と聞き、どのような状況を思い浮かべますか?調理中に揺れがおきガスコンロに周りの物が引火した、電気ストーブの上に物が落ちてきたなどがありますね。もちろん、このような火災もあります。
今回、取りあげるのは、「停電したあと、電気が復旧したとき」におこる火災です。地震発生時、電気はライフラインのなかでも早く復旧するため、通電火災の危険性をしっかりと認識していないと、地震の被害を取りのぞくまえに再び、火災という被害にあってしまいます。
阪神淡路大震災では原因が特定できた火災のうちの6割、東日本大震災では5割が、この通電火災によるものです。
地震の揺れがもたらした、通電火災の事例
通電火災とは、どのようにおきるのでしょうか?考えられるケースをみてみましょう。
・地震の揺れで電気ストーブの上にタオルが落ちていた。停電したので、すぐに火事にはならず、タオルが落ちているのに気がつかなかった。その後、電気が復旧したため、電気ストーブにも電気が通り、タオルが燃えてしまった。
・電源コードの上にタンスが倒れていた。その部分の電源コードは破損しており、電気復旧後ショートし火災につながってしまった。
【参考文献】 総務省消防庁 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/post-2.html
このように通電火災は、地震で電気が止まったことによる2次災害といえるでしょう。
では、どうしたら通電火災を防げるのでしょうか?
自宅から避難するときはブレーカーを下げる
自宅のどこにブレーカーがあるかご存知でしょうか?ブレーカーを下げると電気は通らなくなり、確実に通電火災を防ぐことができます。地震が起きた後自宅から避難するときは、必ずブレーカを下げていきましょう。
地震がおきてから慌てて探すことが無いよう、今のうちにブレーカーの位置を確認しておきましょう。地域の避難訓練などに参加するときは、ブレーカーを下げるということも意識してみましょう。
ブレーカーを上げる前にチェック!
外出先、避難先から自宅に戻ったとき、すぐにブレーカーを上げてはいけません!ブレーカーを上げる前にすることがあります。それをしないと火災が発生する危険性があるのです。
コンセントに差してある電源コードを抜きます。もし倒れた物などで、コンセントの前がふさがれていたら、電源コードが破損していないか確認しましょう。電源コードの途中に物が落ちていたら、それも取り除きましょう。
ブレーカーを下げられなかった、と後悔しないために
このように、日頃から訓練をつづけ、いざというときに実行できるのが望ましいことです。しかし、突然大きな災害に見舞われたとき、気持ちが動揺するのは自然なことです。冷静にブレーカーを切ることができないかもしれません。また、災害は自宅にいるときに起きるとも限りませんね。
このような状況に備えるのが、感震ブレーカーです。
感震ブレーカー普及が促進される背景
感震ブレーカーについては、内閣府、消防庁、経済産業省が連携して普及活動に取り組んでいます。2014年6月に閣議決定された「首都直下地震緊急対策推進基本計画」において、感震ブレーカーの普及促進が位置づけられたのです。
以下のサイトでは、感震ブレーカーの普及を先行的におこなっている自治体の事例などが紹介されています。
【参考文献】 http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/denkikasaitaisaku/pdf/kasaitaisaku_sanko.pdf
感震ブレーカーにはさまざまな種類があります。設置にあたり電気工事が必要かどうかという点で分類してみましょう。
感震ブレーカーの種類と費用
以下、消防庁が「タイプ別の感震ブレーカー等の主な特徴」をまとめていますので、そこから引用します。
<電気工事不要>
① 簡易タイプ:3,000円~4,000円程度
ばねの作動やおもりの落下によってブレーカーを落とし、電気を遮断
<電気工事不要または、コンセントに差し込むもの>
② コンセントタイプ:約5,000~2万円
コンセントに内蔵されたセンサーが揺れを感知し、コンセントから電気を遮断。
<電気工事必要>
③ 分電盤タイプ(後付型):約2万円
分電盤に感震機能を外付けするタイプで、漏電ブレーカーが設置されている場合に設置可能
④ 分電盤タイプ:約5万円~8万円(標準的なもの)
分電盤に内蔵されたセンサーが揺れを感じて、ブレーカーを落として電気を遮断
【引用URL】 消防庁:感震ブレーカー等普及啓発 https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/271207_jimurenraku.pdf
まとめ
ホームセンターなどでは、さまざまな非常食や地震対策グッズが販売されており、身近なものとなっています。しかしブレーカーはどうでしょう。非常食とくらべると、身近とは言えないのではないでしょうか?
地震の後におきる電気が原因の火災「通電火災」。
地震の揺れがきたら、自動的にブレーカーが下がる「感震ブレーカー」の設置は、地震が起きる前からできる対策です。 また地震が起きた時は「ブレーカーを下げてから避難」、「ブレーカーを上げる時はコンセントを抜く」ということがポイントとなります。
地震による停電を経験すると、電気が復旧したときの喜びは本当に大きいものです。私たちの生活が、いかに電気に支えられているか思い知らされます。しかし、この喜びが火災という2次被害によって、悲しいものに変わってしまうことは避けなければなりません。
【参考文献】
感震ブレーカーの普及啓発(METI/経済産業省) https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2015/10/270105-1.html
内閣府・消防庁・経済産業省(啓発用チラシ) https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2015/10/20190408-1.pdf
消防庁(感震ブレーカー等普及啓発リーフレット) https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/271207_jimurenraku.pdf
以下、内閣府
大規模地震に備えるための家庭での停電対策について http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/denkikasaitaisaku/pdf/teiden_low.pdf
くまモン特別講座!くまでもわかる!?「地震への備え」
https://www.youtube.com/watch?v=2uRSgyx8Re0
大規模地震時の電気火災発生抑制に関する検討会 http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/denkikasaitaisaku/