宮城県在住の筆者ですが最近また地震が増えており、ここが全国のなかでも「地震が多い県」であることを嫌でも実感する日々です。
ところで近年「石川県」でたびたび地震が発生しています。
そこで今回『なぜ石川県で地震が多く発生しているのか?』について、調べてみました。
すると、これらの地震には「流体」というものが関係していることが示されていたのです。
本記事では、石川県でみられた“ある現象”や“専門家の検証結果”をお伝えしながら、「流体」が地震発生の要因とされていることを解説します。
さらに、これまで石川県ではどれくらいの地震が発生しているのか、気象庁や地震本部のデータをもとにまとめます。
地震がおきる要因そして過去の地震を知り、今後発生する可能性がある地震の備えへと生かしていきましょう。
石川県で地震が多い理由を解くカギは「流体」
石川県珠洲市(すずし)周辺では、2020年12月頃から地震活動が活発化しており、震度1以上を観測した回数(2020年12月~2023年8月末まで)は累計470回となっています。
「石川県ではなぜ地震が多いのか?」その疑問を解くカギは「流体」の存在にありました。
ここでは、石川県でくりかえし起きている地震の特徴、そしてそのような地震を引き起こすとされる「流体」について解説します。
活火山のない能登半島で群発地震
石川県の能登半島を中心に発生している地震は、群発地震だとされています。
◆群発地震とは・・・
前震・本震・余震の区別がはっきりせず、ある地域に集中的に多数発生するような地震群を群発地震と呼ぶことがあります。
地震本部「群発地震」より引用 ※太字は筆者加筆
群発地震の発生にはさまざまな要因が関係しているものの、一般的には火山の周辺でおこるとされています。
しかし、能登半島の周辺に活火山は存在しないため、なぜ石川県で群発地震が多いのか?その原因が注視されていたのです。
流体は地震波の速さを遅くする
そのような中、2022年11月に東京工業大学中島淳一教授(以下、中島教授)は、地震波の到着時刻データから地球内の構造を分析した結果、これらの群発地震には「地殻流体」が関係していることを発表しました。
地殻流体とは『岩石や鉱物の隙間に存在する水などの流体※』とされており、一般的にはマグマやガス、そして水だとされています。※東京工業大学|地殻流体によって誘発された能登半島の群発地震より引用
能登半島には活火山が存在しないこと、そして地震波の速さなどから、専門家はこの地域における流体は「水」だと考えています。
マグマなどの流体があると地下の地震波の速さは遅くなるのですが、中島教授は能登半島北部の地下深くにそのような領域があることを発見したのです。
しかし、その領域はほとんど地震が発生しないとされる場所でした。そのため、なんらかのきっかけによって地下深くの「流体」が上昇して、地震活動が活発化したと推測しました。
「流体」が地震の要因とみる検証結果
群発地震の発生に流体が関係しているとする発表は、ほかにも出されています。
珠洲市を中心に地殻変動がおきていた
まず京都大学防災研究所の西村卓也教授(以下、西村教授)は、金沢大学などとともに珠洲市や能登町に観測機器を設置しました。
その結果、2020年11月から翌年12月までに『最大で約7センチ』の地殻隆起を観測したのです。さらに2021年秋以降、ある2地点の距離が『約3センチ』伸びている、すなわち地盤が膨張していることを発見しました。
これらの現象について西村教授たち専門家は、地震によっておきたのでないとすれば、断層の隙間に「流体」が流れ込んだことで周辺の岩盤を押し上げたと考えたのです。
流体がゆっくりとプレートを動かした
さらに、西村教授らの研究グループは、流体が能登半島の地下『深さ14キロから16キロの領域』でスロースリップ(※本サイト内関連記事)を引き起こしたとも考えました。
スロースリップとはゆっくりとしたプレートの動きであり、地震はともないません。しかし、多発すると大規模な地震発生の可能性が高まるとされているのです。
そして実際に、能登半島では2022年6月に最大震度6弱、2023年5月には震度6強という大きな地震を観測しています。
珠洲市周辺に「電気を通しやすい場所」の存在
水は電気を通しやすいのですが、『地下の電気の通しやすさ』から流体のある領域を推測した専門家がいます。
それは京都大学防災研究所の吉村令慧教授(以下、吉村教授)で、吉村教授は2021年11月珠洲市・能登町・輪島市に観測機器を設置して、地下『深さ20キロまで』の構造を解析しました。
その結果、地震活動がはじまったとされる南側から地震が活発化している北側に向かって、電気を通しやすい領域があることを発見したのです。
このように、石川県で地震が多い要因には「流体」が関係していることが専門家によって指摘されています。
ここ数年、石川県では何回地震が起きている?(2020年12月~)
これまでお伝えしたように、2020年12月以降、石川県では地震活動が活発化しています。
そこでここでは、地震本部および気象庁のデータから、2020年12月~2023年8月末までに発生した「地震の最大震度別回数」をお伝えします。
震度1は293回、震度5強は2回発生
以下をもとに、地震回数をまとめました。
【参考文献】
*地震本部「石川県能登地方の地震活動の最大震度別地震回数表 令和5年9月25日10時現在」
*気象庁「石川県地震概況(令和4年12月)」
*気象庁「石川県能登地方(珠洲市付近)の地震(震度1以上)の一覧表(2023年)2023年9月29日09時現在」
●石川県で発生した地震回数(2020年12月1日~2023年8月31日)※2023年9月29日現在
最大震度 | 発生回数 | 発生日 |
震度1 | 293回 | ー |
震度2 | 111回 | ー |
震度3 | 48回 | ー |
震度4 | 13回 | ー |
震度5弱 | 1回 | 2021(令和3)年9月16日 |
震度5強 | 2回 | 2022(令和4)年6月20日 2023(令和5)年5月5日 21時台 |
震度6弱 | 1回 | 2022(令和4)年6月19日 |
震度6強 | 1回 | 2023(令和5)年5月5日14時台 |
もっとも最近発生した大きな地震は、2023年5月5日の地震で「震度6強」を観測しています。
石川県に被害をもたらした過去の地震
では、長い歴史のなかで石川県ではどのような地震が発生してきたのでしょう。
ここでは、地震本部「石川県の地震活動の特徴」のデータをもとにお伝えします。
明治以降に発生した主な地震
地震本部のサイトには、もっとも古い地震として今からおよそ300年前(1729/亨保14年8月1日)に発生した地震から記されています。
ここではその中から、明治時代以降に発生し地震名がつけられているものを掲載します。
地震名 | 発生日 | マグニチュード | 主な被害(石川県のみ) |
濃美地震 | 1891(明治24)年10月28日 | 8.0 | 家屋全壊25棟 |
東南海地震 | 1944(昭和19)年12月7日 | 7.9 | 死者3名・負傷者55名 |
福井地震 | 1948(昭和23)年6月28日 | 7.1 | 死者41名・負傷者453名 |
大聖寺沖地震 | 1952(昭和27)年3月7日 | 6.5 | 死者7名・負傷者8名 |
北美濃地震 | 1961(昭和36)年8月19日 | 7.0 | 死者4名・負傷者7名 |
平成19年(2007年)能登半島地震 | 2007(平成19)年3月25日 | 6.9 | 死者1名・負傷者338名 |
あらためて見てみると、石川県は地震が少ないとは言えない現状があるのではないでしょうか。
このなかで特記すべき地震として「福井地震」をとりあげます。
福井地震は「震度7」創設のきっかけ
今年2023年は、福井地震(1948/昭和23年6月28日発生)から75年となります。
福井地震は“震度7”をつくる契機となった地震としても知られており、最大震度は当時の階級で最大の震度6(マグニチュード7.1)を観測したのです。
福井平野(福井県坂井市丸岡町)真下の浅い所で発生し、死者3,769名・負傷者22,203名、全壊36,184戸・焼失3,851戸という被害をもたらしました。
石川県でも金沢市や小松市などで41名の方が亡くなり、全半壊した建物は2,076戸にのぼったのです。
まとめ【4つのポイント】
『なぜ石川県では地震が多いのか?』そこには「流体」の存在が関係していました。主なポイントを、以下にまとめます。
- 能登半島北部の地下には、地震波の速度が遅くなる領域が存在。
- マグマや水といった流体の存在は、地震波の速度を遅らせる。
- 能登半島北部の地下には、「流体」が存在しているのでは?
- 能登半島には活火山は存在しない。流体は「水」なのではないか。
上記を裏付けるような発見もなされています。
- 珠洲市周辺で地殻変動が観測された。
- 流体が断層の隙間に流れ込んで、岩盤を押し上げたと考えられる。
- さらに、流体は大きな地震発生の可能性を高める「スロースリップ現象」をも引き起こしている。
- 地震が活発化している珠洲市周辺の地下で、電気を通しやすい領域があることを発見。
自然災害を完全になくすことはできないでしょう。ですが、なくすことはできないからこそ、なぜ災害が起きるのかを理解して、備えに生かしていくことが大切なのかも知れません。
本サイトでは、災害のメカニズムから具体的な備えの方法まで幅広いテーマをとりあげて解説しています。ぜひ参考にしながら備えに生かしていただけると幸いです。
【参考文献】
*気象庁「石川県能登地方の地震活動の最大震度別地震回数表」
*東京工業大学|地殻流体によって誘発された能登半島の群発地震
*TBS NEWS DIG|“能登群発地震”の原因は「東京ドーム23杯分の水」震度6強のあと研究者が考える2つのシナリオ
*テレ朝news|長期間続く恐れも…能登で続く地震の原因は“流体”これまでと異なるメカニズムを解説
*YAHOO!JAPANニュース|能登半島で震度6強…2年半も続く「群発地震」 要因は『流体』か 日本列島”どこでも”同様のメカニズムで地震起きる可能性「阪神・淡路大震災の震源域にも分布」【専門家に聞いてみた】
*地震本部「地殻変動」
*金沢地方気象台|石川県能登地方の地震活動と防災事項ポータルサイト
*福井地方気象台「福井地震」
(以上)