一酸化炭素中毒は死にいたる可能性もある恐ろしいものですが、一酸化炭素は無臭無色ゆえ、その危険性に気づきにくいとされています。
しかし、一酸化炭素中毒は自宅や車内・飲食店など身近な場所でおこりえることです。
さらに、一酸化炭素という有害物質の発生に気づかない理由は無臭無色のためだけではありません。
そこで今回は、一酸化炭素中毒に気づきにくい別の理由と、一酸化炭素中毒の発生リスクがある状況、そして対策についてお伝えします。
一酸化炭素中毒は適切な対策によって防ぐことができます。
ぜひ本記事を参考にして、1人ひとりの大切な命を守っていきましょう。
一酸化炭素中毒が気づきにくいのは「症状」にも理由がある
実は一酸化炭素中毒の症状には、日常的におこりえる体の不調と重なるものがあるのです。
それはどのような症状なのか、そして一酸化炭素を吸うと体内はどういった状態になるのかお伝えします。
「頭痛やめまい」は偏頭痛や疲れのせいだけじゃない
一酸化炭素中毒の症状には「頭痛・めまい」があります。
しかし、頭痛やめまいといった症状は日常生活のなかで慢性的におこる、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
また気象病や睡眠不足が続いたときなど、特定の条件下において、これらの症状があらわれる場合もあります。
そのため、頭痛やめまいは一酸化炭素中毒の症状であるにもかかわらず、「また頭痛(めまい)がする・・・」とそれほど気にとめず、その結果、重篤な中毒症状につながってしまう危険性があるのです。
「吐き気や嘔吐」も食中毒や感染症だけじゃない
一酸化炭素中毒では「吐き気・嘔吐」もおこりえます。
これらの症状にいたっても、食中毒や感染症にかかったときも出現するでしょう。
したがって、頭痛・めまい同様、一酸化炭素が発生しえる状況下で吐き気や嘔吐がある場合には、一酸化炭素中毒を疑い、換気をしたり状態によっては救急車を要請する必要があるのです。
一酸化炭素は体を酸欠状態にさせる
ここで一度、一酸化炭素中毒が死に至ってしまう理由を簡単に確認しておきましょう。
生命維持に不可欠な酸素は、血液中のヘモグロビンとむすびつくことで体内に運ばれていきます。
しかし、一酸化炭素は「酸素の200倍以上」もヘモグロビンとくっつきやすいとされています。そのため、一酸化炭素を取り込んだ体内は酸素の運搬能力が下がり、体は酸欠状態におちいるのです。
実は、一酸化炭素はタバコの煙にも含まれており、ニコチンやタールとともに「タバコの三大有害物質」と言われています。
一酸化炭素中毒の発生リスクがある状況~事例紹介~
一酸化炭素中毒のリスクがあっても気づきにくいのなら、予防策として「どのような状況で一酸化炭素中毒になりやすいのか」を知っておくことも大切でしょう。
ここでは、一酸化炭素中毒がおきた事例をとおして、その場面を考えます。
暖房器具を使うとき
次の事例は、寒くなると使う機会が増える暖房器具によるものです。
◆暖房器具の使用中に、一酸化炭素中毒になった事例
燃焼空気取入口に多量のほこりが堆積した石油ストーブを、密閉された室内で使用したまま就寝し、給気不足から不完全燃焼となって一酸化炭素が大量に発生した異常に気づかず、一酸化炭素中毒に至ったと考えられる事故で、1名が死亡されました。
NITE:Vol.423 2月28日号「一酸化炭素中毒の事故」より引用 ※太字は筆者加筆
この事例では「多量のほこり」によって酸素が十分に取り込めませんでしたが、「我が家は掃除しているから大丈夫」と安心できません。
というのも、石油ストーブやファンヒーター・ガスストーブといった暖房器具は、室内の酸素をとりこんで燃焼させています。そのため、換気せずに使い続けると室内の酸素が不足・不完全燃焼となり、一酸化炭素が発生するのです。
寒いときに換気をするのは抵抗があるかもしれませんが、命を守るために不可欠なのです。
炭火や七輪を使うとき
続けて「換気が不可欠」な場面、それは「炭火」をつかうシーンです。
◆七輪の使用中に、一酸化炭素中毒になった事例
(事例3)男性4人が釣りをするためテントを張って宿泊し、中に七輪を持ち込み練炭などを燃やして暖をとっていたが、一酸化炭素中毒で2人が死亡し、残り2人は病院に運ばれたが、1人が重傷、1人は軽症を負いました。
NITE 製品安全:Vol.81 9月24日号「七輪による事故」より引用 ※太字は筆者加筆
テント内での死亡事故は、ほかにもキャンプでガスバーナーを使用したときにもおきています。
また、炭火をつかって調理をする場面は、飲食店にかぎらず自宅でもありえるため注意が必要です。
車内にいるとき
車から出る排気ガスには一酸化炭素がふくまれています。そのため、排気ガスを外に出すマフラーが雪でおおわれると排出されず、車内に一酸化炭素が充満してしまうのです。
事実、2022年12月の大雪では、停電のため車内で暖をとっていた女性が一酸化炭素中毒により亡くなっています。
しかし、大雪のとき以外にもリスクがあるのです。それは、車庫や壁にかこまれた場所でエンジンをかけっぱなしにすること。過去には、アパート1階の車庫で発生した一酸化炭素によって、上階にいた住人が中毒をおこし救急搬送されたという事例もあるのです。【参考サイト】シンク出版|屋内駐車場での一酸化炭素中毒に注意
くりかえしますが「排気ガスには有毒な一酸化炭素がふくまれている」、車を運転するときはこの点を頭にいれておきましょう。
ここまで、一酸化炭素中毒がおこりえる主な状況についてお伝えしました。このほか、厚生労働省「化学物質による災害発生事例について」にも「一酸化炭素による中毒」について、平成17年から令和元年まで(※2023年9月8日時点)の事例が掲載されています。こちらも参考にご覧ください。
一酸化炭素中毒にならないための対策
では、一酸化炭素中毒にならないためには、どうすればいいのでしょう。
換気をする
暖房器具の使用や炭火をつかった調理などが、必ず一酸化炭素中毒をひきおこすのではありません。
換気をしていない、もしくは換気が不十分なために、一酸化炭素が発生(充満)します。したがって、換気扇を回したり窓を開けるなどして新鮮な空気をとりこむことが大切です。
エアコンの効きをよくするため換気をしない場合もあるようですが、それが思わぬ重大事故へとつながる可能性もあります。常時もしくはこまめに換気しましょう。
警報器を設置する
一酸化炭素(CO)は無臭無色のため、私たちは何らかの症状がでるまで気づきませんが、一酸化炭素を感知する警報器があります。
ガス警報器とは別に「CO警報器」として販売されているものや、ガス警報器に一酸化炭素を感知する機能が加わったものなどさまざまです。
このような警報器を設置することで、いち早く一酸化炭素の発生に気づくことができるでしょう。
なお、一般的な火災報知器は煙や熱を感知するものなので、混同しないよう注意してください。
『一酸化炭素中毒の症状かもしれない』と疑い、命を守ろう!
「一酸化炭素中毒になっても気づかない」そうと言われると、誰もが恐ろしく感じるでしょう。
ですが、それは『「頭痛・めまい・吐き気・嘔吐」といった症状がでているにも関わらず、一酸化炭素中毒だと思わない(気づかない)』と言い換えられる場面もあるのです。
たとえば過去には、ラーメン店の厨房で、従業員全員に一酸化炭素中毒の症状(頭痛・めまい)がでているものの営業を続け、従業員の様子がおかしいと感じたお客さんが救急に連絡したという事例もあります。【参考サイト】厚生労働省|3一酸化炭素による中毒等(令和元年)
『もしかしたら、これは一酸化炭素中毒の症状かもしれない・・・』、そう疑い対処することで救われる命があるのです。
ぜひこのことを念頭におき、1人ひとりの大切な命を守っていきましょう。
【参考文献】
*厚生労働省e-ヘルスネット|一酸化炭素
*一般社団法人 日本ガス石油機器工業会|一酸化炭素(CO)中毒とは
*東京都保険医療局/東京都多摩立川保健所「一酸化炭素中毒に注意しましょう」
*日産自動車|車を運転するときに注意すること
*ガス警報器工業会|ガス警報器一覧
(以上)