性暴力とは、本人の同意がない、または望んでいないのにおこなわれる性的な行為や発言のことです。
性行為・体への接触はもちろん、痴漢や盗撮、セクハラや売買春、性的画像の要求やAVへの出演強要なども性暴力にあたります。
被害は性別にかかわらずおきています。「どうして逃げなかったの?」「抵抗できたんじゃない?」このような言葉が、被害者にむけられることがあるといいます。
しかし、そのような声をきいたからといって、相談することをあきらめる必要はまったくありません。“暴力”をうけていい人はいません、むしろ、性暴力をうけたことで心に重くのしかかる思いは外にだすことが大切です。
本記事では、性暴力被害の相談窓口について、「インターネットに性的画像が公開されてしまったとき」や「18歳までの子どもが相談できるところ」をおりまぜながらご紹介します。
さらに、性暴力の被害者が中心となって活動する団体が実施したアンケート結果から、被害者のおかれた状況についてもおつたえします。
相談することに時効はありません。「相談したい」「相談してみようかな・・・」そう思ったとき、あなたの声を聞くために待っている人がかならずいます。
性暴力の相談窓口~24時間いつでも電話・夕方からチャットやメール~
「#8891」付添い・医療支援・カウンセリング
内閣府では全国に「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」を設置しており、「#8891(はやくワンストップ)」に電話をかけると最寄りの支援センターにつながります。※名称は各地でことなります。
相談者の話を支援員がききとり、病院や警察への付き添い、緊急避妊薬や性感染症検査料への助成、臨床心理士や弁護士の紹介などを必要に応じておこないます。
- ◇電話番号(全国共通)
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#8891(はやくワンストップ)無料
・NTTひかり電話からは TEL:0120889177
・宮城県内のNTTひかり電話からは TEL:0120556460
・埼玉県内のNTTひかり電話からは TEL:0120318341
・高知県内のNTTひかり電話からは TEL:0120835350※最寄りの支援センターにつながります(夜間祝日はコールセンターに)
※各地の支援センター連絡先は、こちら(内閣府ホームページ)から確認できます - ◇相談方法
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・電話
・メール相談は、一部地域で対応。対象地域はこちら(内閣府ホームページ)から確認できます。 - ◇相談時間
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24時間
Curetim(キュアタイム)チャット・メール・外国語での相談
こちらも内閣府が設置する性暴力の相談窓口で、チャットとメール相談および外国語にも対応しています。
性暴力をうけた事実を声にだして話すことがつらいときは、文字で自分の気持ちえをつたえてみませんか。
相談時間にご注意ください。
- ◇相談方法
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・チャット
・メール
・外国語 - ◇相談時間
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毎日 17時~21時
「#8103」警察の性犯罪被害相談窓口
緊急を要する場合は「110番」通報ですが、そうでないときは警察の性犯罪被害相談窓口「#8103(ハートさん)」に電話をかけて性暴力についての相談をすることができます。
犯罪捜査のプロである警察だからこそ、安心して相談できるということもあるのではないでしょうか。
- ◇相談方法
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電話
- ◇電話番号(全国共通)
-
#8103(ハートさん)無料
※一部のIP電話等はつながらないことがあります。各地の相談窓口をこちら(警察庁ホームページ)でご確認のうえ、直接おかけください。 - ◇相談時間
-
24時間
※夜間休日・執務時間外は当直職員が対応
性的画像や動画をネット上に公開されたときの相談窓口
本人が同意していないのに、性的な画像や動画をインターネット上に公開することは性暴力にあたる犯罪です。
そのような被害にあったときは、すぐに画像や動画を削除することが必要です。
そうしないと、さらなる被害につながってしまう危険性もあります。
警察への相談でもよいのですが、ここでは、被害者にかわりプロバイダへ削除依頼をおこなう相談先をご紹介します。
セーファーインターネット協会|プロバイダに削除の代理申請
元配偶者や元交際相手が別れた腹いせに、性的な画像や動画をインターネット上に公開することを「リベンジポルノ」といいます。
より良いインターネット社会の実現にとりくむ「一般社団法人セーファーインターネット協会」では、リベンジポルノ被害者からの通報にもとづき、画像や動画の削除依頼をプロバイダに対しておこなっています。
- ◇相談(通報)方法
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メール
- ◇相談料
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無料
18歳未満が性暴力被害を相談できる窓口
性暴力の被害者が18歳未満の子どもだった場合に、本人または保護者が相談できる窓口をご紹介します。
児童相談所「189」に電話:保護者指導や一時保護も
性暴力は性虐待であり、その加害者が家族ということもありえます。
児童相談所は子どもにかんするあらゆる困り事に対応する公的機関です。保護者指導や必要におうじて児童の一時保護などをおこないます。
- ◇相談方法
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電話
- ◇電話番号(全国共通)
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189(いちはやく)無料
※最寄りの児童相談所につながります。
※全国の児童相談所一覧は、こちら(厚生労働省ホームページ)から確認できます。 - ◇相談時間
-
24時間いつでも
法務省「子どもの人権110番」いじめや暴力・メール相談も
「子どもの人権110番」は、親からの虐待や学校でのいじめ・部活動での暴力など、子どもの人権がおびやかされている ときの相談窓口です。
性暴力は犯罪であり人権侵害です。まよわず相談しましょう。
- ◇電話相談
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<電話番号> TEL:0120007110(全国共通) 無料
※IP電話などつながらない場合は、こちら(法務省ホームページ)から各地の直通番号へおかけください。有料<相談時間> 月曜日~金曜日/午前8時30分~午後5時15分
- ◇メール相談
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<相談先> 子どもの人権SOSメール
- ◇LINE相談(一部地域)
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LINE相談ができる地域は、こちらでご確認ください。
※大人からの相談にも応じています
チャイルドライン|電話・チャット相談で子どもの声によりそう
子どものあらゆる悩みに専門の相談員がよりそいます。
- ◇電話相談
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<電話番号> TEL:0120997777 無料
<相談時間> 毎日 午後4時~午後9時
※「ネット電話」でもうけつけています。くわしくはこちらをごらんください。
- ◇チャット相談
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チャット相談は、こちらから。
※相談できる日が決まっているので、こちらでご確認ください(黄色い日が実施日)。
<相談時間> 毎日 午後4時~午後9時
性暴力をうけた当事者の声を社会へ
一般社団法人Spring(以下、Spring)は、性暴力をうけた当事者を中心に活動している団体です。
性暴力の実態を社会へ広く周知するとともに、刑法における性犯罪の課題解決にむけてとりくんでいます。
Springでは、2020年8月16日〜9月5日に「性被害の実態調査アンケート(以下、アンケートという)」をおこないました。
回答者は20代~40代が多いものの未成年や50代以上の方もおり、全体で5899件の回答を分析しています。
ここでは、その一部の結果をご紹介します。
【参考文献】
Spring「性暴力について学ぶ」
Spring:性暴力について学ぶ「性被害の実態調査アンケート 結果報告書➀~量的分析結果~」
性暴力をうけたときの年齢は「7~12歳」が多い
性暴力被害をうけた年齢は、全体でみると「7~12歳」と「20~29歳」のときが高い割合をしめています。
- 「7~12歳(28.8%)」
- 「20~29歳(20.8%)」
- 「13~15歳(14.9%)」 (出典:アンケート9頁)
この一方で、被害の内訳として「撮影」させられたと回答した人の年齢をみると「20~29歳」がもっとも多くなっており、リベンジポルノ被害の可能性も懸念されます。
さらに、性暴力の加害者は“知らない人“だけでなく、家族や友人・学校や会社の人といった「知っている人」だとする回答もみられました。
専門家へ相談するまで「10年以上」かかっている
被害にあったことを「専門家や支援機関に相談したことがあるか」を聞いた質問には、全体で約88%の人が「いいえ」と回答しています。
さらに、被害後はじめて専門家や支援機関へ相談した時期への回答では『平均約10~16年』も要していたのです(出典:アンケート23頁)。
被害者のなかには、被害後に外出できなくなったり意図せず当時の状況がよみがえる(フラッシュバック)、常に緊張感や不安感にさいなまれるなどの症状がでるといいます。
本来なら心のケアが必要な被害者が、サポートをうけられないまま10年以上苦しんでいる現状があきらかになっています。
性暴力の被害者は悪くない
くりかえしますが、性暴力は犯罪であり性暴力をうけた人は被害者です。
にもかかわらず、「逃げださなかったのが悪い」「同意していたはず」など、被害者を責める声もあるといいます。
しかし、専門家によると、あらゆる手段を講じても危険を回避できなかった場合、最終的に人間の体は凍りつく(身動きできなくなる)のだといいます。
したがって、抵抗していないからといって「同意していた」とはならないのです。
もちろん、被害者が自分を責める必要もありません。体が動かせなくなってしまったのは「命をまもろうとした結果の行動」なのですから。
性暴力被害を相談できないでいるのはあなただけじゃない
今回は、性暴力の相談窓口と「一般社団法人 Spring」がおこなったアンケート調査結果をご紹介しました。
アンケートからは、性暴力をうけても相談できないでいる被害者がおおいことが明らかになっています。
性暴力にかぎらず「相談」は勇気がいることですが、性暴力の相談となると「恐怖心」がわきでてきたり、性暴力だと認識できるまでに時間を要することがあるかもしれません。
また、相談してもすぐに解決するほど簡単なものではないでしょう。しかし、あなたの話に耳をかたむけ、いっしょにのりこえようとしている人たちは必ずいます。
本記事を参考に、どうか相談することをあきらめないでほしいと心から願っています。
【参考文献】
*NHKスペシャル「性暴力 “わたし”を奪われて」
*NHK「PTSDと性暴力 どんな症状が?治療法は?<解説>」
*NHK「性暴力被害 トラウマからの回復」
*福岡県「性暴力根絶に向けた指針 」
*一般社団法人Spring
(以上)