富士山は日本一高い活火山であることは、誰もが知っていることでしょう。
昔は休火山との呼び方もされていましたが、近年では「休火山や死火山」などの呼び方をしないで「活火山か活火山でない」との呼び方に変わっています。
この点については、サイト内の「活火山・休火山・死火山の違いとは?詳しい知識を身につけよう!」を、ご覧いただけるとよく分かります。
ということで、富士山は今も活動を続けている活火山で、たびたび噴火の危険性が伝えられてきました。そして「富士山の噴火は予兆できる」との説が公開されています。
そこで今回は、富士山の噴火の予兆について、なにが本当なのかを調査してみました。
2021年・2022年にも「富士山の噴火の予兆か!?」との報道があった
富士山の噴火は予兆できるらしいのですが、その真意がよく分かりません。というのも、ここ2年間の間でも、富士山が近く噴火するような報道があったからです。
ここでは、2021年と2022年の報道を振り返ってみましょう。
2021年12月30日報道「大災害の予兆!?首都直下地震・伊豆大島 富士山噴火」
まずは、2021年12月30日に報道されたテレビ朝日のニュース番組で「大災害の予兆!?首都直下地震・伊豆大島 富士山噴火」との見出しが踊っています。
これは、2021年12月に東京23区を含む首都周辺にて、震度1~2の弱い地震が頻発して起きたことを受けての報道です。
このときには地球科学の権威である、京都大学の鎌田浩毅名誉教授が解説にあたっています。
首都直下地震を予感させる
この報道の中で鎌田浩毅名誉教授は「地震学者は心配した」との意見を述べて、政府想定の19パターンのひとつと震源地が同じで、マグニチュード7に達した場合、首都直下地震となっていた。とのコメントでした。
伊豆大島に異変「マグマがパンパン」
続いて伊豆諸島では「35年前も、この地下のマグマだまりがパンパンに。次回も、ここから噴火する可能性が高い」とのコメントを残しています。
さらに35年前の噴火口は全くの予想外で、火山学的には「中規模噴火」としながらも、噴火が起きる可能性を指摘しています。
富士山は噴火スタンバイ状態
さらに鎌田浩毅名誉教授は、富士山についても「現在、300年マグマをためている。前回の1.5倍。富士山は“噴火スタンバイ状態”」であるとコメントしています。
このときのコメントのなかに、東日本大震災の4日後にあたる2011年3月15日に、静岡県富士宮市で起こった地震では震源が富士山直下の14kmで、マグマだまりの真上だったとのこと。
震度6強の地震を受けても噴火しなったのは、奇跡だと伝えていました。
2022年7月25日報道「富士山のふもとで地震相次ぐ 噴火の予兆か?桜島との関連は?専門家に聞く」
2022年7月25日にはTBS NEWS DIGで「富士山のふもとで地震相次ぐ 噴火の予兆か?桜島との関連は?専門家に聞く」とのタイトルで、SBS静岡放送局のニュースを報じています。
この報道では、巨大地震を探るため、数百万回にもおよぶ地震を解析してきた、静岡県立大学の楠城一嘉特任准教授が解説しています。
7月25日朝から昼ごろまで有感地震が5回発生!どんな地震?
楠城一嘉特任准教授によると、今回の地震は富士川河口断層という断層の近くで起こった地震で、過去にも起こった場所であるため特殊な地震ではないと説明。これまで起きている地震の一部と考えるのが妥当としています。
また、先の2021年の報道と同じく2011年3月15日に起きた、富士山の直下での震度6強の地震についても説明を求められています。
この質問に対して楠城一嘉特任准教授は「偶然、同時期に地震が発生したというのが正しい考え方。直接的に地下にあるマグマを刺激するほどの大きな地震活動ではないと思う」と回答し、2021年の鎌田浩毅名誉教授の「噴火しなったのは奇跡だ!噴火スタンバイ状態」とは異なるコメントをしているのが印象的です。
富士山の噴火の予兆ではないが備えは怠らないように!
楠城一嘉特任准教授によると、今回の有感地震は富士山の噴火に結びつく予兆ではないとした上で、巨大地震や富士山の噴火はいつ起きてもおかしくないので、備えは怠らない方がよい。とコメントしています。
同じ地震の専門家でも見解が異なる!原因は富士山の噴火周期
2021年と2022年に、地震の専門家に「東日本大震災の4日後にあたる2011年3月15日に発生した、震度6強の地震について」質問したところ、2021年では「噴火しなったのは奇跡だ!噴火スタンバイ状態」と恐怖を感じるほどのコメントがされています。
一方で2022年では同じ質問に「偶然、同時期に地震が発生したというのが正しい考え方。直接的に地下にあるマグマを刺激するほどの大きな地震活動ではないと思う」と、安心できるコメントがなされています。
同じ専門家でも、異なるコメントが発せられている理由を考えてみました。すると、富士山の噴火周期に辿り着いたのです。
「富士山の噴火はいつ起きてもおかしくない」は共通事項
コメントは違っても、両者の「富士山の噴火はいつ起きてもおかしくない」は共通したことであり、このことは根底にあり考え方の違いによって、コメントの内容が変わるのだと感じています。
というのも、これまでの記録を見れば富士山は確かに、いつ噴火してもおかしくない状況にまで到達しているといえるからです。
最後の噴火は今から約300年前!1707年の宝永噴火
富士山が直近で噴火したのは約300年前の、1707年に起きた宝永噴火です。
ただ、もっと歴史を遡ると5,600年前から1707年までに、富士山は180回を超える噴火を繰り返しており、平均すると約30年に1度は噴火していることになります。
火山の噴火はカンタンにいうと、マグマだまりが満タンになって火口から押し出されることで噴火します。
つまりこれまでは平均30年で富士山のマグマだまりが満タンになっていたのに、それが約300年溜まり続けているのです。
これを考えると、2021年の鎌田浩毅名誉教授がコメントした「富士山は噴火スタンバイ状態」は理解できます。
富士山は気象庁が常に監視しており現在の噴火レベルは1
では、富士山の噴火は予兆できるのかといえば「できる」が正解でしょう。
恐らくですがいきなり「ドカン」と噴火することはないはずです。その理由は、気象庁が最先端の技術を駆使して、全国の火山の噴火レベルを監視しているからです。
日本全国の活火山マップと最新の噴火警戒レベル
気象庁は「日本全国の活火山マップと最新の噴火警戒レベル」をシステムにて公開しています。
先の画像はそのシステムのキャプチャーですが、現在の富士山は噴火警戒レベルが1で「活火山であることに留意」として、登山も可能となっています。
富士山の噴火警戒レベル
これは気象庁が公開している、富士山の噴火警戒レベルです。このように、富士山だけでなく日本中の活火山を常に監視し、火山活動に変化が見られれば噴火警戒レベルが上り、入山規制や避難が指示されます。
まとめ
今回は、富士山の噴火予兆について2つの報道をもとに、なにが本当なのか調査してみました。
お伝えしてきたように、それぞれの報道での専門家のコメントは違う内容となっていますが「いつ噴火してもおかしくない状況」であることは同じでした。
調査して見れば、それはこれまでの富士山の噴火周期に根拠があり、平均で約30年に1度は噴火してきています。
ところが、ここ約300年は噴火していないので「いつ噴火してもおかしくない」との状況であることが判明しました。
しかし、近年では気象庁が日本中の活火山を監視しているので、富士山が噴火する際も予兆を見逃さず火山活動に合わせて、適確な指示をするはずです。
みなさんも何か変化があれば「日本全国の活火山マップ」で噴火状況を確認するといいですよ。
参考サイト
2021年12月30日 テレビ朝日のニュース番組
2022年7月25日 TBS NEWS DIG
気象庁 火山の仕組み
気象庁 日本全国の活火山マップと最新の噴火警戒レベル
気象庁 富士山の噴火警戒レベル