冬山をよく知っている方は雪庇(せっぴ)についても詳しく、どの場所が雪庇になっているか把握しています。
一方で雪庇を知らない方が冬山に登ると、遭難したり命を落とす結果になりかねません。
また街中にも雪庇は存在していて、どちらかといえば冬山での雪庇よりも、こちらの雪庇の方が遭遇する危険性は高いといえます。
これから冬山への登山を検討している方や「雪庇ってなに?」といわれる方のために、今回は「雪庇(せっぴ)」について解説します。
雪庇(せっぴ)には2種の意味がある
ウィキペディアによると「雪庇(せっぴ)とは、雪のかぶった山の尾根、山頂などに、風が一方方向に吹き、風下方向にできる雪の塊である。また、雪の積もった屋根から雪がせり出している状態のことも雪庇と言う。」と説明されています。
つまり、雪庇には2種類あり山で起きる雪庇と、街中で起きる雪庇があるということです。
山で起きる雪庇に乗ると落ちてしまう
この写真が山で起きる雪庇の例で、赤枠の1の部分にヒビが入っているのが分かります。
そして「3」の部分が雪が風によって突き出してしまった雪庇で、まるで地面の上に積もった雪のように見えます。
ところが、赤枠の2の部分が地面(がけ)の先端で「3」の雪庇に乗ってしまうと、瞬く間に下に落ちてしまいます。
屋根からせり出した雪も危険
この写真が街中で起きる雪庇の例で、屋根からせり出した雪を雪庇と呼んでいます。
当然ながら、雪庇の下には屋根がないので重みに耐えかねて雪の塊が落下することとなり、大変危険な状態です。
雪国の方が雪下ろしをする理由の一つに雪庇があり、家族や道行く人の安全のために雪下ろしをしているのです。
どちらの雪庇も危険だが、街中の雪庇のほうが深刻となる
雪庇の種類について解説しましたが、冬山での雪庇よりも街中の住宅の屋根に起きる雪庇の方が深刻といえるでしょう。
なぜなら、冬山は自らが好んで登らなければ雪庇に出会うことはありません。
一方で、街中で起きる雪庇は1個所でなくあらゆる屋根で起きるので、危険性は高くなります。
雪国に住む人は知っているけど、そうでない方は要注意
雪国で暮らす方は屋根に発生する雪庇を知っているので、近づかないようにしていますが、そうでない方は珍しさから近寄ってしまうケースが多いです。
特に雪庇が少し溶けかけて小さなつららが見られるなどの風景は、珍しさのあまり写真を撮ろうと近づいてしまいます。
その行動によって、これまでにケガをした方は多くいます。
雪庇が原因で停電になることもある
雪庇は屋根からせり出した雪の塊なので、家庭内に引き込んでいる電線よりも高い位置にあることが多いです。
そこから、電線めがけて雪庇が落ちてしまうと、勢いで電線を切断して停電を引き起こすことも珍しくありません。
家庭への引き込み線なら復旧も早く済みますが、電柱間の電線が雪庇で切断されると、停電も広範囲となり復旧までに時間がかかってしまいます。
雪庇の危険性を確かめて見る
街中による雪庇は直撃するとケガでは済まず、命を落とす結果になり得ます。
しかし、雪庇を屋根から落とすには慣れと道具が必要になってきますが、それでも雪庇を処理しておかないと、万一自宅の屋根から落ちてきた雪庇で人がケガを負ってしまうと、賠償責任が発生するかも知れないのです。
住宅の屋根に発生する雪庇による事故は建物の所有者の責任となる
民法第717条1項には、次のように定められています。
「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」
民法第717条1項
このことから、住宅の屋根に発生する雪庇による事故は、建物の所有者の責任となってしまいます。