防災マニュアルは現実的であること!経験者が語る間違った作成方法

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防災マニュアルは災害時や非常時に、従業員の行動を明確にするために、役割分担や活動内容を手順化したものになります。

よくある、「防災マニュアルの手引き」などを参考に作るケースが多いです。

私もこれまでいくつか防災マニュアルを手掛けてきましたが、疑問に思うことだらけです。

今回は、防災マニュアル作成の裏側をお話しましょう。

目次

企業の防災マニュアルは自治体の地域防災計画が基本となっている

防災マニュアルは基本的に企業が作成するモノを、マニュアルと呼んでいます。

自治体が作成するのは「地域防災計画」と呼ばれていて、マニュアルはこの地域防災計画から派生してできるモノと考えてよいでしょう。

ですから、専門用語や法律用語をそのままマニュアルに使うと、素人には「なんのこっちゃ」と、内容が頭に入ってこないのです。

自治体の「地域防災計画」が作成される手順を公開

ここでは、地域防災計画の作成に携わった者しかしか知らない、地域防災計画が作られる手順を公開しましょう。

あくまでも経験上なので、この手順が全てではありません。

ですが、50%以上はこの手順によって作成されていると言ってよいでしょう。

地域防災計画は防災会議を開いて承認される

自治体が作成する地域防災計画は、各都道府県が策定した地域防災計画に沿った内容でなくてはダメなのです。

その都道府県は、国の中央防災会議が策定した「防災基本計画」に基づいて作成する必要があります。

つまり、市町村が作成する地域防災計画の大元は、国が策定した防災基本計画に従って作られていることになります。

そして、作成機関は市町村の「防災会議」が作成することとなっていて、防災会議で承認されないと使用することはできません。

実際は防災担当の部署が作成している

地域防災計画の表紙には「○○市防災会議」と、作成者が記載されています。

ですが、実際に作成しているのは防災担当部署の担当者の方であり、業務が大変な場合は業務委託を行ない、専門のコンサルタントと一緒に作成することもあります。

私の場合は、この業務委託を受けたコンサルタントとして、一緒に作成に携わっていました。

地域防災計画は防災会議が作成するのではなく、担当者が作成し、防災会議を開いて内容を説明して承認することで、防災会議が作ったことになるのです。

災害時の担当の割り振りに最も苦労する

地域防災計画を作成する時に最も苦労するのは、災害時の担当割です。

実際に、役所が行なう防災計画の中身は膨大な業務となっていて、「そんなもん、できるかぁ!」と、みんな口を揃えて言うほどです。

例えば、震度5の地震が起きた場合では、役所の職員全員が災害対策本部に集合しなければなりません。

集合途中には、市内の状況を確認して要救助者がいれば救助を行ない、その旨を本部に伝えることもします。

情報収集や住民の安否確認、避難所の開設、備蓄品の配布、ボランティアセンターの立ち上げなどなど、大変な業務がぎっしり詰まっています。

ですから、どの部や課も大変な役割は担いたくないのが本音です。

なので、防災計画を作成する担当者は、業務の担当割がもっとも苦労する仕事になっています。

そんな内容を企業の防災マニュアルに取り入れると・・

では、そんな大変な防災計画の内容を、企業の防災マニュアルに取り入れるとなると、とても大変です。

正直、「作れと言われたから作るけど、その通りできなくてもかまわない!」と、言うのが企業の防災担当の言い分となります。

実際、形だけのマニュアルが多く、「従業員がそこまでできるか?」と聞かれれば、100%ムリな行動がマニュアルに記載されることがほとんどです。

災害対策本部の設置と緊急動員名簿の作成って可能?

例えば、ほとんどのマニュアルで、震度6の地震が起きた時、企業で災害対策本部を立ち上げて、企業内にある本部に集まる従業員を決めるようになっています。

勤務時間内と時間外とで動員の方法も変わりますし、勤務時間内であっても動員予定者が、出張や外回りだとどうするのか?など、さまざまな条件を考えなくてはなりません。

実際にあり得るパターンを作ったことがありますが、なんと100パターン以上にもなるのです。

それをマニュアル化するのは、100%ムリなので取敢えず無難なところをチョイスして記載しています。

それって、本当の災害に有効な防災マニュアルと言えるのでしょうか?

企業規模で防災マニュアルの内容は変えるべき

企業の防災マニュアルは、企業の規模によって内容を変えないとダメです。

大手上場企業で、社員が1,000人近く勤務している企業と、中小企業で従業員が30名ほどの企業とで、同じマニュアルを使うことはできません。

ですから、企業の防災マニュアルは、企業規模で作成しなければ意味がないのです。

企業と役所との「立場の違い」は大きい

自治体の地域防災計画と、企業の防災マニュアルを作っていて気が付いたのは、立場の違いです。

役所は公務員であり、自治体を守り住民を守ることが仕事です。

なので、大雨が降ると役所の職員は役場に集合することも、仕事の内に入っています。

例えそれが、土曜や日曜日でもです。

一方で、企業は社会貢献も行ないますが、利益がなければ成り立ちません。

しかも従業員としては、会社を守ることはしますが、休日まで束縛されることは嫌います。

この立場の違いは、防災マニュアルに防災計画の内容を盛り込むデメリットを生んでしまうのです。

企業の防災マニュアルには最低限のできることを記載

これまで作成した企業の防災マニュアルで、最も現実的なマニュアルはA4用紙1枚で完結しています。

・従業員は自分から安否や状況を48時以内に各部長に報告
・部長は48時間を経過しても連絡のない従業員の安否確認を行なう
・社長および役員は社屋の被害状況を確認
・出社可能か不可能かを判断し、各部長に通達
・各部長は従業員にその旨を連絡する
・社屋の被害、備品の被害の補修については状況を見て判断する
・各従業員は家庭の安全を最優先とする
・業務の再開や稼働状況は、社長および管理職の判断にて決定する

項目はこれだけにしました。企業規模は、100人ほどの会社です。

この企業では、どのような災害が起きるのか確実に分からないので、本部を立ち上げて招集する社員を決めて、役割分担を決めても、その通りにはならないので、安否確認の方法だけルール化する。

とのことで、会社の運営自体は社長に権限があるので、社長が判断し管理職が従業員に伝えればいい。

との考えで、防災マニュアルはメールで配信されました。

従業員が覚えることのできるルールがベスト

これまで携わったなかで感じるのは、防災マニュアルは「従業員が覚えることができる内容がベスト」であることです。

地域防災計画などのように、「風水害編」と「地震編」に分けたり、「災害予防計画・応急対策計画・災害応急対策・災害復旧計画」などを、なぞるようなマニュアルは非現実的な内容となります。

災害は、いつ起きるか分かりません。

マニュアルを作っても、内容を把握していなければ意味がありませんし、冊子になるほどの量は覚えることもできません。

本当に有効な防災マニュアルは、従業員が覚えることのできる内容であるべきでしょう。

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

1963年生まれ、兵庫県在住の防災士&フリーライター 
2014年から本格的にライターを開始!これまで多数の記事を執筆
2017年にひょうご防災リーダー講座を受講し防災士を取得。ハザードマップなど防災業務に長年従事し、防災関連の講演も行っています。
経験を活かして防災に関する情報をできるだけわかりやすく、みなさんへ届けたいとの想いを持って執筆しています。詳しいプロフィールはこちら

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