今や、ハザードマップを知らない方はいないと言ってよいほど、知名度が上がっています。ですが、本当に活用されているのかどうかは、知名度ほどではないような気がします。
と言うのも、ハザードマップは知っていても「見たことがない!」と言われる方が、各地域で20%前後存在し、ハザードマップの存在を知らない方も約20%いるのです。
ハザードマップが活用されていない率は、なんと40%にも達するので、改めてハザードマップの重要性をお知らせさせて頂きます。
各地域での住民アンケートの結果をまとめてみた
冒頭にお伝えしたことがどのような内容なのか、各地域での住民アンケートの結果を独自でまとめてみました。
住民アンケート6パターンを集計してみた!
項目A:ハザードマップの存在を知らない
項目B:ハザードマップを確認していない
自治体 | 実施年 | n値 | A | B |
広島県 | 2015年 | 1,174 | 20.2 | 27.3 |
東北地方※1 | 2020年 | 3,078 | 21.7 | 24.2 |
兵庫県 | 2021年 | 1,728 | 8.4 | 17.4 |
秋田県湯沢市 | 2007年 | 923 | 15.0 | 11.0 |
秋田県横手市 | 2007年 | 389 | 49.0 | - |
埼玉県春日部市 | 2020年 | 393 | 4.1 | 16.3 |
※1:宮古市・釜石市その他39自体体
ハザードマップの存在を知らない方が約20%存在する
冒頭でもお伝えしている通り、ハザードマップは災害が起きる度にニュースで扱われますし、台風や大雨時には天気予報でも「ハザードマップで、ご自宅の危険リスクを確認しておきましょう」と、注意喚起されています。
県や市などの自治体が防災関連の住民調査を行ったアンケート結果を、6パターンまとめてみたのが先の一覧表です。
この独自調査でも、「ハザードマップの存在を知らない」と回答した方は、全体平均で19.7%と、約20%の方がハザードマップの存在を知っていませんでした。
ハザードマップは知っていても「確認していない」方も20%存在
ハザードマップの存在は知っていても、「見たことがない、確認したことがない」と回答した方も、19.2%とこの項目も約20%の方が該当しています。
結果としては、ハザードマップを利用していない方が全体の40%にも及ぶことが分かります。
この数字は、2021年7月に公開されているNHKの世論調査において「ハザードマップを確認したことはない=3割」の回答に当てはまってきます。
ハザードマップは命を守る情報源であることを知っておくべき
ハザードマップには、命を守るための情報が詰まっています。
そのことを政府広告などを利用して、広く国民に周知したり、小学校の授業で教材として取り上げるなりして、多くの方がハザードマップの必要性を学ぶべきでしょう。
もちろん、地域によっては学校の授業でハザードマップを利用している地域もあります。
ですが、もっと広くハザードマップ本来の知名度が上がるべきです。
土砂災害ハザードマップは絶対に確認すべき
自宅や会社、学校の近くに山がある場合は、土砂災害ハザードマップは絶対に確認しておくべきです。
自宅や会社、学校が土砂災害警戒区域内にある場合は、大雨警報が発表され「土砂災害警戒情報」が発表されたら、必ず避難しなくてはダメです。
そのことを知らずに避難しないで、土砂災害に巻込まれると多くのケースで命を亡くしてしまいます。
それだけ重要な情報がハザードマップには詰まっているのです。
また、自宅や会社の情報を確認していても、避難先の学校などが土砂災害時には利用できない避難所であるケースも存在します。
大雨の中、必死で辿り着いた避難所で土砂災害に巻き込まれては意味がありません。
つまり、自宅や会社、学校など普段自分が存在する場所と、避難先が土砂災害の影響を受けるか否かを、確実に知っておく必要があるのです。
1km離れていても土石流は影響してくる
この画像は、ハザードマップポータルサイトである「重ねるハザードマップ」で、神戸の六甲山系の土砂災害のリスクを表示したものです。
先ほど、「自宅や職場、学校の近くに山がある場合」とお伝えしていますが、近いとは、1km範囲と考えて良いでしょう。
例えば、この画像でA点の権現谷から発生した土石流は、JRを超えてB点の街中まで影響しています。
この距離は、ザっと1kmあります。仮に、このハザードマップを確認していないB点付近の方は「ここまでは土砂災害の影響はないだろう」と考えるはずです。
ですが、実際にハザードマップを確認すると、しっかり影響が出ているのです。
なので、土砂災害ハザードマップは誰もが、必ず確認した方が良いと言えますね。
洪水ハザードマップは分かりにくいとの指摘もある
この画像は、国土交通省水管理・国土保全局 河川環境課水防企画室が定めている、「水害ハザードマップ作成の手引き」から抜粋した、「浸水ランク」です。
現在多くの洪水ハザードマップにて、浸水ランクは次のようになっているはずです。
浸水ランク一覧
床下・床上の定義がしやすいように分類されている
ここで、分かりにくと言われているのは、「避難するべきなのか、どうなのかが分かりにくい」と言うことです。
先の浸水ランクを見てみると、以下の意味でランク付けされています。
ここで、0.5m~3.0mの浸水ランクの家庭が、「避難所に逃げるべきなのか、どうするのか分からない」と、よく言われます。
その理由は、浸水深に幅があり過ぎるからです。例えば、0.7mから1.0mであれば、地盤を上げているので床上浸水にはならない住宅が多くあります。
ですから、2.0mなら避難所に行くけれど、1.0mなら問題ないのでどうしたもんか、判断しかねる。と言うことになっています。
そこで、回答としては3.0mまでの浸水ランクなら、2階への垂直避難が可能なので、自宅2階に避難する。3.0m以上のランクは、屋根しか逃げ場がないので確実に避難所に避難する。
と、言うことになります。浸水深に幅があるので迷ってしまうのですが、この浸水ランクの設定はこのような意味が含まれているのです。
避難所に避難するのか自宅避難するかで備蓄も変わる
ハザードマップにて自宅や会社の危険度を確認することで、備蓄にも影響が出てきます。
避難所に避難する際には、リュック1つ分の備蓄品や防災用品で十分です。
そうでなければ、安全な避難ができないからです。
一方で、自宅避難する際には最低3日、できれば1週間分の備蓄をしておく必要があります。
そうかといって、構える必要は全くなく、普段の買い物の買い足しで十分です。
ハザードマップについての疑問にお応えします!
- ハザードマップはどうして確認しておく必要があるのですか?
-
ハザードマップには、洪水・土砂災害・津波・地震・火山など、さまざまなハザードマップが用意されています。どれも、危険度を表示したものですから、確認することで自宅や会社など普段自分自身が滞在している場所の危険度が分かります。危険度を把握しておくことで避難先や避難経路も把握でき、災害から命を守ることにつながるので、必ずハザードマップを確認しておきましょう。
- 自宅が0.5m~3.0mの浸水域になっています。避難した方が良いのでしょうか?
-
ご自宅が0.5m~3.0mの浸水域になっている場合は、最悪床上浸水にて1階部分が浸水することとなります。ですが、必ず1階全部が浸水するとは限りません。この場合、特に避難所に避難しなくとも自宅の2階に避難することも可能です。
参考サイト
災害ハザードマップに関するアンケート結果報告書 春日部市防災対策課
https://www.city.kasukabe.lg.jp/material/files/group/4/R2hmkekkahoukoku.pdf
ハザードマップアンケート調査結果の概要(湯沢市、横手市)
https://www.thr.mlit.go.jp/yuzawa/01_kawa/hazamap_a/kekka_yokote.pdf
第4回県民モニターアンケート「防災に対する意識と取り組み」の調査結果 兵庫県
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk04/documents/r2-4_monitor.pdf
防災に関するアンケート結果 広島県
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/153502.pdf
住民向けアンケート結果 宮古市・釜石市その他39自体体
令和元年台風第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループ
http://www.bousai.go.jp/fusuigai/typhoonworking/pdf/dai2kai/siryo5.pdf
水害ハザードマップ作成の手引き 平成 28年4月(令和3年12月一部改定)
https://www.mlit.go.jp/river/basic_info/jigyo_keikaku/saigai/tisiki/hazardmap/suigai_hazardmap_tebiki_202112.pdf
重ねるハザードマップ
https://disaportal.gsi.go.jp/