ライターの永野です!
以前に、「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」というドキュメンタリーについてご紹介させていただきました。作品紹介という内容でしたので、福島第一原子力発電所の水素爆発の話や、自衛隊員なのにヒゲを剃らないで活動を行っていた方がいたというエピソード、ご遺体が見つかった際に「寒かったろう」と声をかけている隊員さんの話など、書き切れないことも多くありました。
自衛隊員の方々の当時の活動がリアルに知れると同時に、どんな思いで1人ひとりが被災地での活動を行っていたのかが伝わる作品ですので、興味のある方はぜひご視聴ください。ちなみに永野は、1人でベソベソ泣きながら見ました。震災を思っての心の痛みもありましたが、「絆」というテーマにぴったりの内容に対する感動の涙です…。
そんな東日本大震災から12年。地震はもちろん、巨大な津波によって多くの地域が甚大な被害を受けたなか、当時政府は、復興期間を「10年間」と定めました。
さまざまなデータを見てみると、2019年の段階で学校や病院などの施設復旧、がれきの処理、インフラの回復はほぼ完了しており、ピーク時には11万人以上が入居していた仮設住宅も、2019年1月時点の入居者は3,400人ほどまで減少。
まだまだ課題が残っていたり、復旧支援が継続していたりする部分はあるものの、多くの地域が震災前のような平穏を取り戻している印象です。
震災を経験された方のなかには、大きな地震や津波がトラウマになっていたり、大切な方を亡くされたりと、東日本大震災がつらい経験、思い出したくない過去となっている方も多いでしょう。しかし、こうした災害があったことを、私たちは忘れずに後世へ伝え、また震災で得た教訓を日々の防災に生かしていくことも大切です。
さまざまな思いで、震災について語られた作品は多く存在し、映像作品はもちろん、書籍や楽曲まで、多岐にわたります。今回は、東日本大震災をテーマにした作品のなかから、映像分野に焦点を当て、どういった作品があったのかをご紹介したいと思います。
発災から12年を迎えた「東日本大震災」
作品をご紹介する前に、東日本大震災について振り返ってみましょう。東日本大震災が起こったのは、2011年3月11日、午後2時46分。気象庁は「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と名付けていますが、「東日本大震災」「東北地震」などと呼称されることが多い印象です。
マグニチュード9.0、最大震度は宮城県栗原市の7で、宮城県・福島県・茨城県・栃木県などでは震度6強を観測しています。また、北海道から九州地方までの広範囲にかけて、太平洋側を中心に、震度1から6弱までの揺れが観測されました。
東日本大震災は大きな揺れはもちろんですが、「津波」の被害や「原発事故」による脅威も、大きく取り上げられました。津波による被害は甚大で、浸水面積は561㎢に。高さ10メートル以上の巨大津波が街を飲み込み、多くの方の命を奪いました。
死者・行方不明者は東北地方を中心に、12都道府県で2万2,312名。また、災害関連死をされた方も少なくありません。
【災害映画まとめ】東日本大震災を題材にした作品は
東日本大震災後も、熊本地震、各地での大きな地震は発生しています。しかし、あれだけの被害が及んだものはなく、「大きな地震」というと東日本大震災を連想される方も多いようです。そんな東日本大震災を題材にした映像作品を、以下にまとめました。
このほかにも東日本大震災をテーマにした作品は多く発表されていますが、今回は「事実」をもとにしていたり、東日本大震災が何かの転機となったストーリー展開をしている作品のなかから、おすすめのものをピックアップしています。気になる作品は、ぜひVODやレンタルDVDなどで視聴してみてください。
ドラマ
東日本大震災をストーリーに絡めているドラマは多くあります。たとえば、筆者の地元周辺を舞台にしたNHKの連続テレビ小説「半分、青い」は、1人の女性が一大発明を成し遂げるまでを描いた作品です。岐阜県や東京都を中心にストーリーが展開しますが、東日本大震災が発生し、主人公は大切な友人を失います。
ほかにも、東日本大震災に触れている作品は多くありますが、そのなかでおすすめしたいのは、やはり「あまちゃん」ではないでしょうか。
あまちゃん
2013年度上半期に放送された、NHK連続テレビ小説です。「じぇじぇじぇ」という主人公の口癖、コミカルな挿入曲、笑いありのストーリーなどが人気を集め、低迷していた朝ドラの視聴率回復に大きく貢献した作品でもあります。
岩手県にある架空の街を舞台に、主人公が海女さんからアイドルに、そして震災の復興のために奮闘するストーリーで、主人公を演じた能年玲奈をはじめ、注目の若手女優たちが多く出演したことでも話題となりました。
概要
主人公のアキは、東京から岩手県に移住し、祖母の後を継ぎ、海女になる決意をします。あるとき、海女姿を動画にアップしたことで転機が訪れ、アイドルへの道を歩むことに。上京したアキは、レッスンを受けたり大女優の付き人になるなど紆余曲折あり、アイドル活動を再開したものの、主演映画公開が決まった矢先に、東日本大震災が発生します。
岩手に戻り惨状を目にしたアキは、復興のためにローカルアイドルとしての道を歩むことを、決意したのでした。
映画
Wikipediaに掲載されている、東日本大震災を題材とした映画作品は43作品にも及びます。ほかにも、多くの映画作品があるなか、ぜひ見ていただきたい作品を厳選しました。
Fukushima50
「Fukushima50」は、2020年3月に公開された映画です。上映時間は122分。主演は俳優の佐藤浩市さんです。ほかにも、渡辺謙さん、吉岡秀隆さん、佐野史郎さん、安田成美さんなど、豪華俳優陣が出演しています。
この作品は、実話をもとに制作されたという点が、非常に話題となりました。しかし、渡辺謙さん演じる東京電力元執行役員の吉田昌郎以外は、架空の人名が使用されています。
概要
大きな地震と津波が襲い、原子炉の冷却が不可能となった福島第一原子力発電所。メルトダウンの危機が迫るなか、所長の吉田昌郎が現場の指揮を執ります。吉田を含むおよそ50名の作業員たちが、ふるさとや家族を守るため、過去に例のない大事故に立ち向かった事実を、リアルに描いています。
遺体 明日への十日間
2013年2月に公開された、上映時間105分の作品です。西田敏行さん主演で、ジャーナリストの石井光太さんが、東日本大震災発生から10日間、岩手県の遺体安置所で見た現状をありのまま綴った書籍を、実写映画化しています。
報道では伝えられなかった内容をリアルに描いており、作品の収益金は被災地に寄付されました。
概要
東日本大震災発生直後、岩手県の遺体安置所には次々と遺体が運び込まれていました。町全体が大変な状況のなか、役所関係者や消防・警察関係者が遺体の扱いまで手が回らない状況。そんななか、葬儀関係の仕事をしていた民生委員の相葉は、ボランティアとして働くことに。相葉が遺体に接する様子を見た人たちは、遺族の元へ遺体を帰すため、奮闘するのでした。
風の電話
2020年1月に制作された映画です。モトーラ世理奈さんというモデルや女優として活動している女性が主演で、三浦友和さんや西島秀俊さん、西田敏行さんといった有名俳優も出演しています。
岩手県に実際にある、電話線がつながっていない黒電話の置かれた私設電話ボックス「風の電話」をモチーフにした作品です。死者と思いをつないでくれる電話が震災の苦しみを乗り越えさせてくれる様子を描いています。
概要
9歳の頃に両親と弟を東日本大震災で亡くした高校生のハルは、広島に移住し、叔母と2人で暮らしていました。ある日、叔母が倒れて病院で昏睡状態に。絶望したハルは亡き家族への思いがあふれ、1人で東北を目指します。ヒッチハイクをしたり電車を乗り継いだりするなか、さまざまな人と出会ったハルは、最終的にいわてにある「風の電話」の存在を知り、死者とつながる電話に興味を持ち、「風の電話」へと向かうのでした。
ドキュメンタリー
前回ご紹介した自衛隊災害派遣に関するドキュメンタリーをはじめ、事実を映像にまとめた作品も多くあります。テレビの特番や特集で取り扱われたドキュメンタリーも含めると、その数は膨大です。そんななか、2021年2月に公開されたドキュメンタリー映画をご紹介します。
たゆたえども沈まず
東日本大震災から10年、2021年にテレビ岩手が製作したドキュメンタリー映画です。テレビ岩手を含む取材団が撮影した被災地の記録、定点観測映像など1850時間の記録のなかから、さまざまな映像をピックアップしています。「後世に伝え遺すべき」「防災の資料として全国の方に知ってほしい」という思いから、あえて映画として制作されたそうです。
概要
震災直後から、被害情報や被災者の安否などを、テレビを通して伝え続けてきたテレビ岩手。10年が経過し、そんな被災地にも新しい街ができ、破壊された防波堤は整備され、がれきの山は撤去されました。しかし、復興が終わったように見える街では、10年前から生活が一変した多くの方が、現在もさまざまな思いを抱きながら、必死に生きているのです。
「たゆたえども沈まず」は、そんな人々の10年間を切り取った「真実の記録」となっています。
アニメ
アニメにも、一部震災を描いたシーンがあるもの、短編で東日本大震災をテーマにしたものなどがあります。最近話題となった「すずめの戸締まり」も、東日本大震災に関する描写があるようですね(私は未だに見ていません…)。
さまざまな作品のなかでおすすめしたいのは、「岬のマヨイガ」というものです。
岬のマヨイガ
2021年8月、105分のアニメ映画として公開された作品です。原作は、柏葉幸子さんによる同タイトルの児童文学で、東日本大震災をモチーフにした災害、「遠野物語」を想起させる伝承や妖怪が登場します。ジャンルは「ファンタジー」で、震災のあとの生活がメインに描かれています。
概要
夫の家庭内暴力から逃げてきた女性は、列車で出会った少女と出会い、一緒に食事をしている最中に大地震に襲われます。襲い来る津波の光景も目にした2人が避難所で途方に暮れるなか、老女が話しかけ、3人で暮らすことに。ボランティアから紹介された古民家での暮らしのなか、女性と少女は老女とともに不思議な体験をしながら、「マヨイガ」を目指します。妖怪や戦いといった「ありえない」経験を通し、3人は本当の家族のような絆で結ばれるのでした。
【おまけ】災害をテーマにした楽曲
東日本大震災を題材にしているのは、映像作品だけではありません。小説やマンガ、楽曲などにも、東日本大震災を思い作られたものは多くあります。そんななかで、筆者が本当に個人的にではありますが、聴いていただきたい曲を、ご紹介させてください。
それはポルノグラフィティの、「ワンモアタイム」です。
「ワンモアタイム」とは
「ワンモアタイム」は2011年9月21日に発売された、ポルノグラフィティ33枚目のシングル楽曲です。作詞・作曲ともに、ボーカルの岡野昭仁さんが担当しています。曲調は力強いロックで、アップテンポなところにも、岡野さんらしさを感じます。
そうですね、私、ポルノグラフィティの大ファンでして…。ライターとしての目標にも「アキヒトさんに関連する記事を書きたい」「できればインタビューがいい」というのがあるんです。すみません…。
話は戻って、「ワンモアタイム」は、東日本大震災のあとに、ポルノグラフィティが初めてリリースした楽曲です。その年の紅白歌合戦は「復興」「震災」に関連する内容だったのですが、そこでもポルノグラフィティはこの「ワンモアタイム」を披露しています。
なぜ疾走感のあるロックナンバーが、その年の紅白での歌唱に選ばれたのでしょうか。
歌詞に込められた思い
「ワンモアタイム」は、東日本大震災を意識して歌詞が書かれています。岡野さんは、震災後曲作りをする気になりませんでしたが、時間の経過とともに徐々に「書いてみよう」という気持ちになり、多くの歌詞を考えたそうです。そのなかで、被災者の方の意見も聞き、「津波ですべてが流されてしまったけど、もう一度ここに自分たちの居場所を作りたい」「もう1回家を持つという夢ができた」など、前向きな言葉に「すごい」と思ったとのこと。
そして、自分たちが音楽でなにができるかを考え、「ワンモアタイム」のリリースに至ったそうです。
歌詞を全文載せることはできませんが、「あなたを守れなければ終わり ならばどうする?」「僕らは纏うものはなくなった だからこそ夢があるって思い出す」など、ポルノグラフィティのファンであるという偏見を除いても、震災の苦しみと、そこにある希望を語っている内容になっています。
ぜひ検索して歌詞全文をチェックしていただきたいです!ちなみに、YouTube公式チャンネルでは、ショートバージョンも公開されていますので、ぜひ視聴してみてください。
東日本大震災を風化させないために
つらい思い出として記憶に残る方も多いなか、東日本大震災を「忘れてはいけない」こととして、さまざまな形で残し、伝えていこうという取り組みも積極的です。我が家の子どもたちは学校などでまだ過去の災害について学ぶ機会はありませんが、もう少しいろいろと分かるようになったら、東日本大震災関連の映像なども一緒に見て、震災について学べる機会を作っていきたいと思います。
首都直下型地震、静岡県を中心とした大きな地震なども懸念されるなか、過去の災害の教訓を生かしながら、多くの方が防災への意識を高めることはもちろん、こうした作品を通して、絆や大切な方への思いなどについても、考えていけるとよいのではないでしょうか。