ライターの永野です!
突然ですが、「絆」というとどんなことを思い浮かべるでしょうか?親子の絆、仲間の絆など、なんとなく「つながりのあるもの」といったイメージのある言葉ですが、「絆について詳しく説明してください」「絆が伝わるシチュエーションを具体的に教えてください」と言われて、パッと出てくる方はどれくらいいるのでしょうか。
私自身、「部活の仲間と一生懸命取り組むなかで、人と人とのあいだにできた信頼や深まった仲」のような、ありきたりなものしか上手く説明できないのですが…。そもそも「絆」って、何なのでしょう?
感動的なドラマや映画、アニメのなかにはさまざまな「絆」に触れられる作品が多くありますが、実話を通して「絆とはこういうもの」「絆があるからできたことがある」といったことが学べる、筆者イチオシの作品があるんです!
それが、「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」。2011年、東日本大震災で被災地の復旧に携わった、自衛隊員の皆さんの記録を収めたドキュメンタリーです。
最初は「防災に役立つ知識ないかな~」などと見ていましたが、作品が終わったときにはタイトル通り、当時被災地にあったさまざまな「絆」を感じられる内容だな、と思いました。
今回は、「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」の概要や筆者の感想などをまとめています。自衛隊の皆さんの活動について知りたい方、絆とはどういうものかをその目で確かめたい方はもちろん、東日本大震災当時を振り返りたい方や胸がジーンとするような作品をお探しの方など、たくさんの方に興味をもっていただければ幸いです。
作品紹介の前に確認!「絆」とは
「絆」を学べる作品です!といっても、「そもそも絆とは?」という方にとってはピンとこないこともあるかもしれません。防災、災害とは少し離れますが、まずは「絆」という言葉について解説させてください。
辞書的な意味での「絆」
「絆」は「きずな」と読むのが一般的ですが、「ほだし」とも読みます。「ほだし」は馬の足を縄でつないで歩けないようにするもので、そこから「人の気持ちや行動を束縛すること」を、「絆す(ほだす)」と言うようになりました。
これではマイナスな印象を覚えますが、「絆(きずな)」には、「人間関係の特別な結びつき」「強い心のつながり」という意味があります。
私たちの生活のなかで感じる「絆」
日常生活のなかには家族や友人、スポーツなどの仲間、地域住民など、さまざまな方との絆が存在します。たとえば家族は、多くの時間を過ごす相手です。親子、夫婦、きょうだいと家族のなかでも複数の関係性がありますが、家族とは特に強い絆で結ばれていると感じる方も多く、その関係は長いあいだ続きます。
筆者の思う「絆」
筆者も「絆」というと、辞書などにある通り「心の結びつきを表す言葉」だと考えています。「絆」の前提には「長い時間を共有する」「1つの目標に向かって共に努力・成長する」といったものがあるのではないかというのも、筆者の思う「絆」の定義の1つです。
絆が何かわかる?「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」とは
今回ご紹介したい!と思ったドキュメンタリーは、 「絆~キズナノキオク~」と、タイトルにも「絆」の言葉があり、人とのつながり、結びつきに関する内容だということがわかります。では、具体的にどういった「絆」を知ることができるのか、詳しい内容を後和尚回する前に、作品情報と概要を見て行きましょう。
作品情報
「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」は、2012年に制作されたドキュメンタリーです。10月6日、発災から1年半ほど過ぎた時期にDVDとして発売され、収録時間は2時間2分。
制作には防衛省の陸上・海上・航空各自衛隊や愛日オーストラリア大使館、オーストラリア国防省、オーストラリア空軍なども関わっています。
概要
こちらの作品は、ドキュメンタリー映像となっています。2011年3月11日、三陸沖を震源として発生した東北地方太平洋沖地震。最大震度7の未曽有の大地震は、岩手県・宮城県・福島県を中心に、青森県から千葉県までの600km以上に及ぶ沿岸部に被害をもたらしました。
巨大な津波によって多くの方が亡くなり、また福島第一原子力発電所の水素爆発は、「見えない凶器」として今も多くの方の不安の種となっています。
そんな巨大地震からの復旧に、大きく貢献したのが、陸海空自衛隊の災害派遣部隊。自然災害派遣市場最大の10万人を被災地に送り込むことになった被災地には、全国から多くの自衛隊が派遣され、復旧のために尽力しました。
なかには、自身の家族が被災している隊員もいるなか、彼らはどんな思いで、どのような任務にあたったのか。記録映像や写真、そして当時災害派遣に向かった隊員たちへのインタビューを通して伝える作品となっています。
「絆」や被災地について学べる作品レビュー(ネタバレあり)
「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」では、「絆」に関する学びがあるだけでなく、もちろん東日本大震災の記録、被災地で自衛隊災害派遣の皆さんがどういった活動をしたのかも知ることができます。
ドキュメンタリーなのでストーリーや驚くような展開、オチがあるわけではありません。しかし、あらすじや見どころ、そして「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」から得られる絆などに関する学びがあります。ネタバレになる内容もありますが、「災害」「防災」という観点からの教訓や、作品を通してどのような「絆」を感じられたのかを、お伝えできれば幸いです。
あらすじと見どころ
作品は、大きく2部構成。前半は自衛隊派遣でどういった活動が行われたのかが、時系列で語られます。後半は、陸海空自衛隊それぞれの活動について、インタビューを交えながらより詳細に語られるという内容です。
前半は、地震発生前の宮城県の航空自衛隊松島基地の映像から始まります。あの日もいつもと変わらず訓練を行っていた隊員たちですが、悪天候により訓練を中止。その30分後に、東日本大震災が起こります。
地震が起こっているあいだの映像などはないものの、その後、巨大津波が迫るなかを走って逃げる人たち、大きな波に飲まれていく町並み、がれきだらけになった被災地の様子などが、写真や映像によって映し出されるので、震災当時の映像などを見るのに抵抗がある方は、少し苦しくなるかもしれません。
自衛隊員が救助や行方不明者の捜索をいつ行ったか、アメリカやオーストラリアがどういった貢献をしたのかなどが、日付を追いながら詳細にわかる内容となっています。
後半では、多くの方のインタビューを通し、具体的に陸海空自衛隊がどのような活動をしたのか、そのとき隊員たちはどんな思いを抱いていたのかが伝えられています。人命救助、原子力災害に対する活動などに向き合う自衛官たちの思い、またより多くの自衛隊員を派遣するために「即応予備自衛官」という、一度は自衛隊を辞めた方が呼ばれたことなどもわかります。
映像と写真で改めて東日本大震災を振り返り、震災の活動を通して変わったことはあるのかと、自衛隊員たちに質問した回答で、ドキュメンタリーは終了です。
全体を通して、被災地での自衛隊員たちの活躍や被災者との交流、陸海空自衛隊がそれぞれどのように支援活動を行っていたのかが、詳細に描かれています。
見どころは、やはり当時の被災地の惨状を知る自衛隊員の方の「生の声」が聞ける点でしょう。「あのとき、どうだった」「こんな行動を取った」という記録に残る話はもちろん、どんな思いで救助や支援に当たっていたのかなども聞くことができます。
また、最後の「震災の活動を通して変わったことは」というインタビューに、回答したすべての自衛隊員の方が「ない」と答えるシーンも、視聴した多くの方の印象に残っているのではないでしょうか。何かあったら全力で動くだけ、それが大きな災害でも、自分たちがやることは変わらないし、高い評価をいただいてもおごることはない。そう語る自衛隊員の皆さんの瞳に偽りはなく、どんなミッションにも全力で取り組んでいるのだろうな、という市政が伝わりました。
さらに、被災地への自衛隊10万人派遣を政府が決定してからは、全国の自衛隊員だけでなく、「即応予備自衛官」が招集されたのも、多くの方は初めて知る内容だったかと思います。即応予備自衛官は、陸上自衛隊を退職し、現在は民間で働きつつ、年間30日の訓練を行い、いざというとき部隊に戻って自衛官として活動する方々です。現役自衛官の方たちに比べて、圧倒的に訓練時間は少ないものの、もともと自衛隊で活動していた経験と、現在の仕事を生かした支援活動で、被災地に大きく貢献しました。
防災の観点からの学び
防災新聞で「絆~キズナノキオク~」をご紹介するからには、何か防災の観点からの学びをお伝えしたいな~と思い、作品を視聴しました。結論からいいますと、「震災があったときにこんな行動を取るといいよ!」といった、一般の人が実践できるような内容はありませんでした。
しかし、大規模な災害が起こった場合にどういった支援をしていただけるか、その裏側などを知る資料としては、非常に有効だと思います。たとえば、「災害時のお風呂事情」については、「避難所(学校や公民館など)のお風呂、シャワーなどを使うのかな」と思っていましたが、発災から10日以上経った3月22日に、自衛隊の方が入浴支援を開始。大きなテントにお風呂を用意したり、海上自衛隊は艦艇内にお風呂を作って提供したりしました。
さらに、入浴後にペットボトルのお水や着替えを提供する、子どもの遊び場を併設する、そうめんを配るなど、本当の銭湯やスパのようなサービスで、少しでも被災者の方にリラックスしてもらえるような環境を作っていたことも、初めて知る内容でした。
ほかにも、私たちが支援物資として寄付した大量の衣類や食べ物、日用品などは、後方支援部隊と呼ばれる方々が仕分けを行い、避難所に分配されます。こうしたなかで「明らかに不要なもの」がでてきても、「せっかく寄付していただいたものだから捨てるわけにはいかない、でも被災者の方に届けてもいらないといわれる」といった葛藤があるそうです。もし被災地に物資の寄付をする場合には、本当に必要なものを自分で調べ、自衛隊の方々を悩ませないようにしないといけないな、というのも、防災という観点での収穫だったと思います。
作品を通して感じた「絆」とは
タイトルにもあるように、今回ご紹介した作品は、自衛隊災害派遣がどういったものだったのかという記録を通し、人と人との「絆」を伝える内容です。被災地で見られた「絆」は、大きく2つあったと感じました。
1つは、自衛隊員同士の絆。同じ駐屯地で日々訓練をしたりと、長い時間を共に過ごしている自衛隊員の方々は、被災地支援の前から仲間同士の絆で結びついています。しかし、不眠不休での活動、行方不明者の集中捜索や被災者支援という長期にわたる大変な環境での活動を通し、その絆がより深まっているような描写もありました。
また、自衛隊創設以来最大となった東日本大震災への災害派遣は、延べ1,066万人、1日の最大派遣人員約10.7万人と、全国の自衛隊員の方はもちろん、前述の即応予備自衛官など、さまざまな立場の方が、被災地のためにそれぞれの任務を全うしました。
請け負う仕事の内容、活動する場所などは異なるものの、自衛隊員の方たちは「被災地支援」という大きな1つの目標のために一致団結し、そこにも大きな絆が生まれたように感じます。
もう1つは、自衛隊員と国民との絆です。「温かい食べ物は被災者の方に、自分は缶詰めを」「発災から3日間は不眠不休での活動だった」「ご遺体があるかもしれない瓦礫を、1つひとつ手作業で地道に撤去していった」など、自衛隊員の方の活動は、本当に過酷なものでした。いくら任務とはいえ、140日以上の災害派遣活動を続けるのは大変です。
そんなときに自衛隊員の皆さんの励みになったのは、「国民からの声かけ」だったといいます。被災者の方の「ありがとう」の言葉や、子どもたちが敬礼したり手を振ってくれたりする様子、また、被災地ではない場所からの励ましの言葉なども、自衛隊員の方の大きな支えとなったようです。
長きにわたる災害派遣活動を支えたのは、自衛隊員と被災者との「絆」である、と、作品の最後にもナレーションで語られており、およそ2時間の映像が伝えたいメッセージはこれだったのかとわかったときには、私も胸が熱くなりました。被災者の方も、自衛隊員との「絆」に救われたでしょうし、全国の多くの方が被災地を思い、行動を起こしたのも、もしかしたら国民同士の「絆」かもしれません。
そう思うと一緒に過ごした時間には関係なく、「復興」「復旧」「支援」など、目標に向かって心が1つになったところに、絆は生まれるのかなと思いました。
「絆~キズナノキオク~」を視聴したい!と思ったら
「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」が視聴できるのは、U-NEXTやビデオマーケット、GYAOなどです。また、music.jpやゲオ宅配レンタルなどではレンタル視聴ができ、ネットショップでDVD・ブルーレイディスクの販売も行っています。
筆者はU-NEXTで視聴しましたが、会員なら何度でも無料で視聴でき、今のところ公開期間終了の予定はありません。会員ではない方も、30日間無料トライアルで視聴でき、「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」以外の作品も楽しめます。個人的には、作品に興味のある方には、U-NEXTでの視聴をおすすめします!
さまざまな人を結ぶ「絆」を感じる作品を見てみよう
自衛隊災害派遣について、東日本大震災について学べることはもちろん、絆とは何か、絆が私たちにどういったよい影響を与えてくれるのかを学ぶことができる、「3.11東日本大震災 自衛隊災害派遣 絆~キズナノキオク~」。
以前ご紹介した「東京マグニチュード8.0」というアニメは、トラウマになりそうな描写がアリながらも、災害時に私たちができる行動や役立つ知識の多いものでしたが、今回の作品は、純粋にドキュメンタリーとして視聴したい方にもおすすめです。人とのつながりが生み出す温かなストーリーを、ぜひ確かめてください。
編集後記
「動画紹介」はあまり経験がなく、しかし「よい作品だから知って欲しい!」と今回の作品紹介に至りました。しかし、私が最初に書こうとしていたのはいわゆる「ネタバレあり!レビュー」で、この作品を知らない方の目には120%とまらないようなもの。「そもそも」の部分から大幅に内容を変更し、今回の記事になりました。
作品のよさが伝わる内容になったのか、これでいいのかというところは、正直自分でもわかっていません。無駄に長いし、内容が伝わっていないと思われる方もいるでしょうし、作品の魅力までは伝わらないと感じる方もいるでしょう。
ライター、といってもいろいろなジャンルがあるので、挑戦したことのない内容の執筆は、ワクワクしたり不安だったりします。それでもやってみなければ成長はないですし、作品レビューは苦手だからと諦めて、伝えたいことも伝えられないのは悔しいので、これからもよいと思う作品があれば、より多くの方にその魅力が伝えられる内容を試行錯誤しながら、ご紹介させていただきたいと思うのでした。