地すべりのメカニズムと起きる被害状況&国土交通省の対策方法も解説

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土砂災害の種類には「がけ崩れ(急傾斜地の崩壊)・土石流・地すべり」の3つの種類があります。

2021年(令和3年)7月に熱海市で起きた災害では、上流部にあった盛土が崩れ土石流が発生し、下流の住宅や住民に甚大な被害が発生しています。

このような土石流による災害は毎年のように起きていて、土石流が起きると逃げる間もなくあっという間に飲み込まれてしまいます。

一方で地すべりとは、どのような状況の土砂災害なのかあまり知られていませんが、広範囲に甚大な被害をもたらす土砂災害です。

今回は土砂災害のひとつとなる、地すべりのメカニズムと起きる被害状況、加えて国土交通省の地すべり対策も解説します。

目次

地すべりのメカニズム!斜面の広範囲がゆっくりと下方向に移動する

地すべりは土石流と異なり、斜面の一部もしくは全部がゆっくと下方向に移動する現象のことです。

移動する範囲は土石流よりも広い範囲となり、移動する土地の塊が大きいので動きを止めることは不可能で、地すべりが起きると甚大な被害が発生します。

地すべりは土石流と同様に範囲が広い

重ねるハザードマップ

これは、富山県氷見市の一部地域を国土交通省が提供する、重ねるハザードマップで確認した画面です。

急傾斜地の崩壊区域・土石流危険区域・地すべり危険区域など、土砂災害のみを表示しています。

画面内で着色された箇所が、土砂災害の危険性のある場所となるので、危険個所は広範囲であることが分かります。

重ねるハザードマップ

この画面は先の全ての土砂災害から、地すべりの危険個所のみを表示させたものです。

薄いピンク部分が「地すべり危険個所」で、オレンジの部分が「地すべり警戒区域」です。

ほとんどが山部となるので、地すべりが起きても問題ないように思えますが、地すべりが起きれば各道路は寸断されることとなるため、孤立する地域が発生していまいます。

地すべり被害の状況を詳しく解説

国土交通省 地すべりとその対策

先ほどの重ねるハザードマップでは、地すべりの危険範囲のみを表示させると、ほとんどが山部でした。

実際に地すべり危険区域はほとんどが山の斜面となるので、民家や住民に被害がないようにイメージされますが、実はそうではないのです。

道路は寸断・ライフラインも使用不可能となる

実際に民家がなくても山沿いに走る道路が寸断されて使用不可能になりますし、多くの道路には水道管や下水道管が埋まっています。

道路ごと地すべりが起きれば、当然ながら水道管や下水道管も使えません。さらに道路沿いには電柱があり、電気を運んでいますから停電も起きます。

つまり、ライフラインが寸断されることとなり、道路も使えないので支援物資を運ぶことができなくなります。

先ほどの氷見市の状況でも、地すべりの範囲に能越自動車道が通っていますから、高速道路も通行不能となれば打撃は大きくなります。

果樹園や畑などの作物に大きな被害がでる

山の斜面には果樹園や畑が作られることが多いですし、植林している山であれば林業への被害も大きくなってきます。

しかも、土地自体がズレるように崩れてしまうので元に戻すことはほとんど難しく、新しく再生することは可能ですが元の土地利用に戻すのは不可能なのです。

地すべりは他の土砂災害と複合して起きることもある

冒頭に土砂災害の種類を紹介していますが、台風や梅雨前線による大雨が原因で「地すべり・がけ崩れ・土石流」の全ての土砂災害が複合して起きることもあります。

七夕豪雨では静岡市清水区で全ての土砂災害が発生した!

国土交通省 中部地方整備局 富士砂防事務所

七夕豪雨とは、1974年(昭和49年)7月7日(日)に、台風8号が静岡県全域に浸水被害をもたらした集中豪雨のことです。

この時に静岡市清水区の由比倉沢・寺尾地区では、がけ崩れ・土石流・地すべりの全ての土砂災害が発生しています。

一昔前とはいえ、現在でもこの区域は全ての土砂災害危険区域に指定されているのです。

現在の静岡市清水区由比地区のハザードマップ

重ねるハザードマップ

国土交通省が行う地すべりの対策は大きく2種類となる

地すべりが起きる要因は台風などによる大雨だけでなく、地形・地質・地質構造・人為的などの要因が、複雑に組み合わさって発生します。

従って地すべりの対策もその状況に応じて行われていますが、大きく分類すると「抑制工と抑止工」の2種類に分かれます。

抑制工(よくせいこう)

抑制工(よくせいこう)は、地すべりが起きる地域の地形・地質・地下水などの自然条件を変化させることで、地すべりの滑動を停止もしくは緩和させる工法です。

集水井工と呼ばれる水を集める大型の井戸のような設備を施して、地下水の流れをコントロールする工法が代表的です。

抑止工(よくしこう)

抑止工(よくしこう)は、構造物による抑止力を利用して地すべりの滑動の一部もしくは全部を停止させる工法です。

代表的な工法は「杭工」や「アンカー工」であり、人工構造物を設置して地すべりを防ぐ方法です。

まとめ

今回は、地すべりのメカニズムと起きる被害状況、そして国土交通省の対策方法も解説してきました。

地すべりは山の斜面で起きることがほとんどですが、起きれば甚大な被害をもたらせます。

大規模な範囲が土地と建物ごとズレてしまうので、原状復帰はとても難しいです。

土砂災害の中では最も個所数が少ない危険個所ですが、それでも全国に11,288個所も存在しています。

国も随時対策を施していますが、個所数が多いので追いつかないのが現状です。

土砂災害ハザードマップにて、地すべりを含む危険個所を把握しておきましょう。

参考サイト
国土交通省 中部地方整備局 富士砂防事務所
国土交通省 地すべりとその対策
重ねるハザードマップ
国土交通省 都道府県別土砂災害危険箇所

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

1963年生まれ、兵庫県在住の防災士&フリーライター 
2014年から本格的にライターを開始!これまで多数の記事を執筆
2017年にひょうご防災リーダー講座を受講し防災士を取得。ハザードマップなど防災業務に長年従事し、防災関連の講演も行っています。
経験を活かして防災に関する情報をできるだけわかりやすく、みなさんへ届けたいとの想いを持って執筆しています。詳しいプロフィールはこちら

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