スーパー堤防とは99.9%壊れない!堤防高の30倍の幅を持つ堤防

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スーパー堤防とは、堤防高の30倍の幅を持つ堤防のことで「高規格堤防(こうきかくていぼう)」が正式名称です。

現在では江戸川、荒川、多摩川、淀川、大和川の5河川で、延長120kmの規模で事業が進められています。

河川の氾濫を抑える効果が非常に高い事業ですが、実は2009年(平成21年)と2010年(平成22年)には、事業が一旦廃止となっているのです。

そこで今回は、スーパー堤防の持つ防災力と、事業の沿革について解説します。

目次

99.9%壊れないスーパー堤防のメカニズム

スーパー堤防の正式名称は「高規格堤防(こうきかくていぼう)」であり、99.9%壊れない堤防となっています。

計画では100%壊れることがないとされていますが、何ごとも100%はあり得ない世の中となっているため、99.9%としています。ここでは、スーパー堤防のメカニズムを解説しましょう。

東京都建設局 スーパー堤防及び緩傾斜型堤防の構造

堤防高の30倍の幅を持つ堤防で街を形成する

一般的な堤防とは上部左の画像のように、河川の水を止めるだけの機能となっていて、決壊すれば大量の河川の水が街に流れ込んでしまいます。

現在でも毎年のように台風シーズンには、大雨によって堤防が決壊して甚大な浸水被害を起こしています。

そこで国土交通省では、決して壊れない、河川からの越水のないスーパー堤防を計画しました。

上部右側の画像が、そのスーパー堤防です。

  • 堤防の幅は堤防高の30倍
  • 堤防内に街を形成できる
  • 街づくりも可能な堤防
  • 決して越水を起こさない

これが、スーパー堤防のメカニズムです。一般的な堤防はある程度の幅を持っていても、河川の水の勢いで浸食されて削られてしまい、やがて決壊し越水を起こします。

それによって、床上浸水などの甚大な被害となってしまいます。では、どんな水に勢いがあっても浸食されることなく決壊しない堤防にするには、堤防幅を極端に広くすればいいという発想です。

しかも、その極端に広い堤防の利用として街づくりを加えることで、環境のよい街をつくることも可能としています。

膨大な予算が必要なので国家プロジェクトでないと実現しない

スーパー堤防は堤防幅が最大50mにもなるため、用地買収も必要ですし建設費用も膨大になってきます。

なので、県単位での予算では実現不可能となるため、国家プロジェクトとして予算を組んで行わないと実現しません。

現在では江戸川、荒川、多摩川、淀川、大和川の5河川のみが、スーパー堤防の事業対象となっています。

いずれも過去に大きな水害が発生している

スーパー堤防の事業対象となっている5河川は、いずれも国土交通省が管理する一級河川であり、過去に河川の氾濫によって甚大な被害が発生しています。

たとえば、淀川流域では明治18年から昭和57年までに、8回の大きな災害が起きており、最大で88,371haが水没しています。

スーパー堤防事業が廃止された経緯は事業仕分け

国家プロジェクトで進むスーパー堤防事業ですが、冒頭でお伝えしたとおり2009年(平成21年)と2010年(平成22年)には、事業が廃止になっています。

中止でなく廃止になった理由を遡って調査してみると、意外な事実が分かりました。

民主党政権時代の事業仕分けにて廃止

記憶にある方も多いと思いますが、2009年に社民党・国民新党との連立政権が誕生します。

このときに行われたのが事業仕分けで、無駄な公共事業を無くすことを目的として行われました。

「コンクリートから人へ」をキャッチフレーズに、ダム建設を中止しスーパー堤防も夢物語として廃止に追い込まれたのです。

完成までに 400 年以上の工期?

事業仕分けではスーパー堤防事業は、夢物語だとバッサリと切られています。

その根拠は、完成までに400年以上の工期を有し、12兆円以上の予算がかかるので現実的でないとされました。

東日本大震災ですべての見方が変わった

ところが、同じ民主党政権時代に東日本大震災が起きて状況が一変します。

予想外のことがたくさん起きてしまい、これまでの常識が通用しなくなりました。

「これ以上の津波は起きない」とされて作った防潮堤を軽々と超える津波が発生し、誰もが予想しない甚大な被害がもたらされてしまったのです。

人命を守ることを第一に対応する

スーパー堤防も「ここまでの堤防を作らなくても、街は守れる」との観点から、不要とされていましたが、東日本大震災をきっかけに「人命を守ることを第一に対応する」と、設備の重要性を認識したのです。

2012年には廃止になったスーパー堤防事業が、約120kmは整備を継続することとなりました。

2019年(令和元年)10月の台風で効果を発揮

2019年(令和元年)10月に起きた、令和元年東日本台風(台風19号)では多くの河川の堤防が決壊し、甚大な被害が出ました。

しかし、スーパー堤防が整備されていた利根川や江戸川、荒川、多摩川では、氾濫危険水位を超える危険な状況となりましたが、決壊被害は発生していません。

これにより、スーパー堤防の防災効果は現実に証明されることとなりました。

人命のために防災事業に予算を投入して欲しい!

計画の120kmの整備が完了すれば、ほかの河川でもスーパー堤防事業が予定されるかも知れません。

スーパー堤防を作るには、長期の計画となり莫大な予算が必要となるのは確実です。

ですが、完成すればこれまで毎年のように被害を受けていた住民は、安心に暮らすことができます。

これからも人命第一として、防災事業に予算を投入して欲しいと願うばかりです。

参考サイト
東京都建設局 スーパー堤防及び緩傾斜型堤防の構造
近畿地方整備局 淀川高規格堤防整備事業

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

1963年生まれ、兵庫県在住の防災士&フリーライター 
2014年から本格的にライターを開始!これまで多数の記事を執筆
2017年にひょうご防災リーダー講座を受講し防災士を取得。ハザードマップなど防災業務に長年従事し、防災関連の講演も行っています。
経験を活かして防災に関する情報をできるだけわかりやすく、みなさんへ届けたいとの想いを持って執筆しています。詳しいプロフィールはこちら

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