高齢化が進み、多くの方がデイサービスや訪問介護など、介護サービスを利用しています。介護が必要な方を抱えるご家族の方は、「介護度」という言葉を耳にする機会が多いでしょうが、触れる機会がなければどういったものかはわかりません。介護度は段階によってどのように異なるのか、どういったサービスが受けられるのかなどは、ご自身やご家族のためにいつか必要となる知識かもしれないので、理解しておくことをおすすめします。
今回は8段階ある介護度と状況の目安、また判定やサービスを受けるための手順などをまとめました。これから介護を必要とする方が身近にいる方、介護について知りたい方などの参考になれば幸いです。
介護度を理解する:要支援と要介護の区分について
「介護度」は全部で8段階ですが、そもそも「要支援」と「要介護」の大きく2つに分かれています。それぞれがどういった状況を指すのか、簡単に確認しましょう。
要支援とは
要支援は、身体もしくは精神上の障害があるものの、基本的には1人で生活ができる方です。とはいえ、部分的な介助を必要としており、入浴や排泄、食事など日常生活における基本的な動作において、原則6カ月にわたり継続して介護を要する状態の軽減や悪化防止に役立つ支援を行います。
要支援は2段階あり、要支援2は、要支援1よりもよくない状態です。詳しい状態については、後述します。
要介護とは
要介護は、食事や排泄、入浴など日常生活の動作においてさまざまなケアが必要な状態です。基本的な動作の一部、または全部について、継続して常時介護を要すると見込まれ、介護の必要度に合わせてさまざまなサービスを受けられます。
要介護は5段階あり、要介護1が介護の必要度が低い状態、要介護5は最重度の介護を要する状態です。段階ごとの状態については、次項で詳しく説明します。
8段階の介護度と状況の目安をチェック
介護度は大きく8段階、といいましたが支援や介護が必要な状態を指すのは「要支援1,2」「要介護1~5」の7段階です。介護を必要としない「自立」の状態を含め、8段階になります。
それぞれの状態、目安について見ていきましょう。
自立
歩行や立ち上がり、その他日常的なさまざまな動作が問題なく自力で行える状態を「自立」といいます。家事が自分でできることはもちろん、公共交通機関を利用しての外出、薬の管理・電話の利用など、さまざまなことができ、介護保険サービスによる支援や介助がなくても、生活が可能です。
ちなみに、高齢の方で「自立」の状態だと自宅ですごさなければいけない、と思われるかもしれません。しかし、独居などで生活の不安がある場合には、自立の方も入所可能な老人ホームに入ることができます。
要支援1
要支援1は、介護度のなかで最も軽度で、自立に近い状態をいいます。サポートがなければ生活できない、というわけではないものの、立ち上がりの動作や家事など、部分的な見守りやサポートが必要です。
とはいえ、長期的な支援を受ける、というよりも現在の心身の状態をより改善することを目指したり、自立に近い現在の状態を維持したりすることが目的になります。
要支援2
要支援2は、要支援1からわずかに能力が低下し、さらに支援を必要とした状態です。介護とまではいかないものの、一定の社会的支援を要し、介護予防への取り組みを行います。
ちなみに、日常生活を送るうえで欠かせない動作において介助が必要な場合は、要介護1に該当しますが、要支援2の場合は支援の程度が低くなります。
要介護1
食事や排泄など、身の回りの最低限のことは自力で行えるものの、複雑な動作が難しく、部分的な介護を必要とするのが要介護1です。要支援2よりも心身機能の低下が多く見られます。
要介護2と比べると、できることは多く理解力の低下は軽度です。
要介護2
家事はもちろん、食事や排泄、入浴など日常的な動作においても支援が欠かせない状態が、要介護2です。身体機能を維持するのが難しいため、立ち上がりや歩行にも危険が伴い、見守り、介助が必要になります。
また、お金の管理ができなくなってくるなど、認知機能の低下も見られるのも、要介護2の特徴です。
要介護3
食事や排泄などはもちろん、立ち上がりや歩行などの動作も自力で行うのが難しい状態を、要介護3といいます。日常生活において、ほぼすべて介護が必要で、見守りや介助を常時行わなければなりません。
在宅で介護を行う場合、昼夜問わず対応しなければならないため、家族など介護をする方にとっては大きな負担となります。
要介護4
立ち上がりや歩行などの基本的な動作が難しいことに加え、自力で座ることもできない状態を、要介護4といいます。要介護3と比較して、もちろん身体機能の低下も見られますが、大きいのは思考力や理解力の低下でしょう。
要介護4の方とは意思疎通が困難で、介護者の負担も非常に大きくなります。よって、在宅での介護がより大変になり、老人ホームなどへの入所を検討するケースも少なくありません。
要介護5
介護度のなかで最も重度なのが、要介護5です。要介護5は、ほぼ寝たきりの状態で、ベッドのうえで寝返りをするのも難しくなります。なかには、口から食事をすることができないという方もおり、要介護5になると、全ての動作において介助が必要だといえるでしょう。
認知機能の低下も大きく、要介護4では一定の意思疎通が行える場合があるのに対し、要介護5はより意思疎通が厳しくなります。
介護度の認定方法
介護度の目安は前述の通りですが、ご家族などが見た様子で決めるのではなく、認定のための審査を行います。介護度認定に必要な審査は大きく2つです。
介護の手間の審査判定
介護が必要かどうかの認定は「要介護認定」といい、まず行われるのが、介護の手間に関する審査判定です。一次判定にあたるこちらの審査判定はコンピュータで行われます。
こちらは認定調査の項目等ごとに選択肢を設けており、調査結果に従い対象者を分類するというものです。たとえば食事摂取に関する項目では、「介助されていない」「見守りが必要」「一部介助」「全介助」などの選択肢があり、前者2択は「自立」、後者は「要介助」に分かれます。
こうした調査を日常生活における動作や認知機能など、さまざまな項目で実施。その得点により、介護度が決まります。
状態の維持・改善可能性の審査判定
コンピュータによる一次判定の結果をもとに、介護認定審査会(保健医療福祉の学術経験者5名程度)での二次判定を行います。ここでは、対象者の状態維持や改善可能性に視点を置き、審査・判定を実施。
要支援者となった場合は「予防給付」、要介護者には「介護給付」がされます。ちなみに、要支援者が受けられるサービスは「介護予防サービス」、申請場所は「地域包括センター」です。一方、要介護者の受けるサービス(居宅・施設等)は「介護サービス」、申請場所は「居宅介護支援事業者」と、サービスや申請場所の違いもあるので、覚えておきましょう。
介護度別のサービスや支給限度額・自己負担額は
介護度の判定を受けると、どういったサービスを受けられるのかが決まります。介護度によって支給限度額や自己負担額も異なるため、注意が必要です。
とはいえ支給限度額などがわかっても、具体的に、どういったサービスをどれくらい受けられるのかイメージがつかないという方も多いのではないでしょうか。こうした面も含め、解説していきます。
受けられるサービス一覧
要支援・要介護ともにさまざまなサービスが受けられます。介護度により受けられるサービスも異なりますが、自宅で利用できるサービスから、デイサービスなどのように通所で受けるサービス、また、福祉用具のレンタル・購入にも、介護保険を適用できます。
どのようなサービスを受けられるか、以下にまとめました。
サービスの種類 | 具体的な内容 |
訪問型サービス | 訪問介護 |
訪問入浴介護 | |
訪問看護 | |
訪問リハビリテーション | |
居宅療養管理指導 | |
夜間対応型訪問介護 | |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | |
通所型サービス | デイサービス(通所介護) |
デイケア(通所リハビリ) | |
ショートステイ(短期入所生活(療養)介護) | |
訪問・通所複合サービス | 小規模多機能型居宅介護 |
看護小規模多機能型居宅介護 |
福祉用具のレンタルについては、介護度により対象となるものが変わってきます。
要支援1~要介護1
・手すり
・スロープ
・歩行器
・自動排泄処理装置
要介護2~5
・手すり
・スロープ
・歩行器
・自動排泄処理装置
・車椅子(付属品含む)
・特殊寝台(付属品含む)
・床ずれ防止用具
・体位変換器
・認知症老人徘徊感知機器
・移動用リフト(吊り具を除く)
また、以下の福祉用具は、介護保険を利用して購入できます。
・腰掛便座
・自動排泄装置の交換可能部品
・入浴補助用具(椅子や手すり、すのこ、台、入浴用介助ベルトなど)
・簡易浴槽
・移動用リフトの吊り具部分
・ポータブルトイレ
利用限度額と自己負担額
さまざまなサービスを受けるための利用限度額は、介護度によって異なります。利用限度額と自己負担額は、次の通りです。
介護度 | 利用限度額(30日) | 自己負担額(30日) |
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 |
こちらは、居宅サービスの支給限度額と自己負担額で、特定施設入居者生活介護の限度額などはまた異なります。
サービス頻度の目安は
利用限度額がわかっても、どういったサービスをどれくらい受けられるか、想像がつかないという方も少なくありません。介護度ごとのサービス頻度の目安は、次の通りです。
要介護度 | サービス頻度の目安 |
要支援1 | 訪問型サービス:週1~2回 通所型サービス:週1~2回 |
要支援2 | 訪問型サービス:週2~3回 通所型サービス:週2~3回 |
要介護1 | 訪問介護:週2~3回 訪問看護:週1~2回 通所介護、通所リハビリ:週2~3回 |
要介護2 | 訪問介護:週3~4回 訪問看護:週1~2回 通所介護、通所リハビリ:週3~4回 |
要介護3 | 訪問介護:週3~4回 訪問看護:週1~2回 通所介護、通所リハビリ:週3~4回 定期巡回・随時対応型訪問介護看護:毎日1回 福祉用具貸与:車椅子、特殊寝台・特殊寝台付属品など |
要介護4 | 訪問介護:週5~6回 訪問看護:週2~3回 通所介護、通所リハビリ:週3回 定期巡回・随時対応型訪問介護看護:毎日1回 福祉用具貸与:車椅子、特殊寝台・特殊寝台付属品など |
要介護5 | 訪問介護:週5~6回 訪問看護:週2~3回 通所介護、通所リハビリ:週3回 夜間対応型訪問介護:毎日2回 短期入所:月に1週間程度 福祉用具貸与:車椅子、特殊寝台・特殊寝台付属品、床ずれ防止用具など |
介護度が上がれば、もちろんさまざまなサービスを利用できる頻度も上がります。とはいえ、「要介護1」だからといって必ずしもデイサービスは週に2~3回、というわけではなく、同居する家族の状況によっては週に1回でもかまいませんし、反対に「支給限度額を超えた分が全額自己負担になってもよいから、利用頻度を増やしたい」という場合、週に4回以上の利用も可能です。
とはいえ、「介護度が低いから」「利用できるサービスが埋まってしまっている」などの理由で、希望通りに進まない場合もあります。利用頻度や自己負担額については、ご家族を交え、担当のケアマネージャーの方とよく相談するとよいでしょう。
介護度ごとのサービスを受けるための手順
初めて介護保険を利用する場合は、そもそも介護度認定の審査やその後のサービス利用に向けた手順がわからないという方も少なくありません。最後に、サービス開始までの手順を簡単に説明します。
相談窓口で専門家に相談
ご家族に介護が必要だと感じた場合、またご本人が日常生活においてサポートがないと大変だと思った場合には、まずは相談窓口で専門家に相談をしましょう。介護サービスに関する相談は、市区町村の介護保険課介護保険課をはじめ、高齢者のための相談窓口である地域包括センター、居宅介護支援事業者、病院の医療相談室、地域の民生委員、民間介護保険サポートサービスなど、さまざまな場所で行えます。
相談窓口に足を運ばなければいけないところもありますが、地域包括センターや民生委員などは、自宅に来て話を聞いてくれるケースも多いので、介護サービスを受けたいご高齢の方本人が相談をする場合は、こうした相談窓口の利用もおすすめです。
要支援・要介護認定の申請
相談窓口でどのようなことで困っているのか、どういったサービスを受けられるかなどの話を聞いたら、サービス利用に向けて動き始めます。まずは、要介護・要支援状態にあるかどうか、そして介護度はどれくらいなのかを判定する「要支援・要介護認定」を申請しましょう。
申請手続きは自治体の窓口で行います。本人、または家族が行えますが、すでにケアマネージャーが決まっている場合は、代行申請も可能です。申請には、本人の基本情報やかかりつけ医、認定審査時の立会い者の有無(いる場合は連絡先)などを書いた「要介護認定申請書」と、介護保険証、もしくは健康保険証が要ります。介護保険証は65歳以上になると自治体から送られてきますが、見つからなければ本人情報のみで申請可能。また、40~64歳の方はそもそも介護保険証がないので、健康保険証を用意しましょう。
ちなみに、要介護認定の申請をすると、自治体からかかりつけ医に連絡がいくシステムになっていますので、かかりつけ医には事前に申請についての連絡をしておくとスムーズです。
審査と認定
要支援・要介護認定申請後は、介護度の審査と認定が実施されます。審査は認定調査と主治医の意見書によって行われ、まずは認定調査員が自宅を訪問。家族や本人に聞き取り調査をします。
その後、申請書の情報をもとに、自治体が主治医に意見書を依頼し、この2つにより前述した要介護度の一次判定が出されるというシステムです。その後、介護認定審査会による二次判定も実施され、正式な介護度が決定します。
認定結果の通知は、原則申請から30日以内です。また、この結果に納得できないという場合には、不服申し立てもできます。
ケアマネージャーと契約・今後の相談
介護度が決まると、具体的にどういったサービスを、どれくらいの頻度で利用するか、どの施設を利用するかなども決めていきます。とはいえ、素人では詳しいことはよくわかりませんよね。
そこで、まずはケアマネージャーと契約をします。ケアマネージャーは利用者の状態を把握し、快適な生活を送るためのケアプランを作成する人です。困っていることや希望を細かく伝えると、介護保険のなかでどういったサービスを受けられるか、具体的に計画を立てたり手配をしてくれたりするので、分からないことや「こうしたい」ということは、遠慮せず放すようにしましょう。
サービス開始
ケアマネージャーにケアプランを作成してもらったら、デイサービスや訪問介護などのサービス事業者と契約し、サービス開始です。しかし、初めて利用する施設では、思っていたようなサービスが受けられないこともあるかもしれません。
そんなときに活躍するのも、ケアマネージャーです。まずはケアマネージャーにどういった点が不満か、どうしたいかなどを相談すると、解決できるケースも少なくありません。サービス事業者に直接文句を言っても逆効果となる場合もありますので、注意しましょう。
介護度に合わせてサービスを利用しよう
介護度は介護を不要とする「自立」を含めると8段階あり、大きく「要支援」と「要介護」に分かれます。介護度によって受けられるサービスやサービス頻度が異なるので、認定調査では、介護を受ける方の状態を正しく審査してもらう必要があります。
介護に関する疑問や不安は、ケアマネージャーに相談するとスムーズです。筆者の家族も2名、要介護認定を受けてデイサービスやショートステイを利用していますが、ケアマネージャーさんは介護を受ける人間はもちろん、その家族にも細やかな気配りをしてくださり、とても助かっています。
健康で、介護を必要としないまま年を取ることがベストですが、誰しもいつ、何が起こるかは分かりません。もしものときに備えて、介護度に関する知識も、少し身につけておくとよいかもしれませんね。