災害対策基本法を簡単に解説~過去3つの災害による改正ポイント~

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災害用語を解説する、今回のテーマは「災害対策基本法」です。

法律を専門的に勉強する人でなければ、なかなか読む機会はないのではないでしょうか。

しかし、災害対策基本法は災害に関するあらゆる対策の基本となるものです。

どのような内容が書かれているのかを知ることで、わたしたちが災害からどのように守られているのか知ることができるでしょう。

今回は、災害対策基本法に書かれている内容をできるだけ簡単にそして阪神淡路大震災」「東日本大震災」「令和元年台風第19号」をふまえた法改正のポイントを解説します。

この法律の大事なポイント、過去の災害が法改正にどう影響しているのか、ぜひいっしょに学びましょう。

目次

災害対策基本法は「11の章」にわかれている

災害対策基本法は日本の災害対策に関する基本法です。

以下のとおり、11の章にわかれています。

災害対策基本法に書かれていること ※カッコ「」・太字は筆者加筆

1章(1条~10条)総則
2章(11条~33条) 防災に関する「組織」
3章(34条~45条)防災「計画」
4章(46条~49条) 災害「予防」
5章(50条~86条)災害「応急対策」
6章(87条~90条)災害「復旧」
7章(90条の2~90条の4)「被災者の援護」を図るための措置
8章(91条~104条) 「財政」金融措置
9章(105条~109条の2) 災害「緊急事態」
10章(110条~112条) 雑則
11章(113条~117条) 罰則
参考:e-GOV「災害対策基本法

本記事では、1章・2章・4章・5章をもとに災害対策基本法の基本、そしてとくにわたしたちの生命生活に関わると思われる点について解説します。

第1章から「災害の定義・法の目的・国民の責務」を確認

はじめに、第1章【総則】から「災害とはなにか」そして「なにを目的とした法律なのか」を確認しましょう。

災害とは自然現象だけではない

災害対策基本法で規定している災害の定義(第2条)を、「自然災害」と「自然災害ではないもの」に分けておつたえします。

□自然災害
暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑り、その他の異常な自然現象
□自然災害ではないもの
・大規模な火事 
・爆発その他 これらに類する政令で定める原因により生ずる被害
※参考 e-GOV「災害対策基本法」第2条(定義)」

災害の定義はときに法改正によって見直されています。

たとえば、“竜巻”は「異常な自然現象」にあたるとして、平成24年(2012年)の法改正で追加されたものです。

昨今“異常気象”という言葉がよく聞かれるようになりましたが、今後あらたに“災害”として追加される現象があるかもしれません。

法律は何のためにあるのか

法律にはかならず目的がしるされています。

災害対策基本法の目的(1条)を簡単にまとめると、次のとおりです。

災害対策基本法の目的=「災害から国と国民をまもるため」

(この目的を実現するために)

1.必要な体制を確立し、
2.責任の所在をあきらかにし、
3..必要な対策の基本を定める。

(1~3をすることで)
社会が混乱せず、公共の福祉の確保につながる。
※参考 e-GOV「災害対策基本法」第1条(目的)」

災害から国と国民をまもるために、体制をととのえ・その責任の所全をハッキリさせたうえで、対策の基本を規定しているのですね。

国・都道府県がやるべきこと

第1章【総則】では、国・都道府県・市町村それぞれが責任をもっておこなうべきこと、そして相互に協力すること(5条の2)を規定しています。

それぞれのポイントを簡単にまとめると、次のとおりです。

防災に関するそれぞれの責任(一部)

国の責務(3条1項、3条2項)
・ 防災に関し万全の措置を講ずる責務
・災害にかかわる基本となる計画を作成し実施する など

都道府県の責務(4条1項)
・計画をつくって実施すること、また市町村等のサポートや総合調整をする 

国・都道府県ともに、災害対策をおこなううえで根幹となる計画を作成・実施することが、この法律では明確にしるされているのです。 

このほか、市町村の責務(5条)公共機関等の責務(6条)についても規定されています。

国民が努力すべきこと

災害対策基本法では、地域の公共団体の責務(7条1項2項)とともに、“国民(住民)が努めるべきこと”についても規定しています。

住民が努力すべきこと(7条3項)
・食品など生活に必要な物資の備蓄
・防災訓練への参加 など

ちなみに、原文では次のようにしるされています。

(住民等の責務)

第七条
 前二項に規定するもののほか、地方公共団体の住民は、基本理念にのつとり、食品、飲料水その他の生活必需物資の備蓄その他の自ら災害に備えるための手段を講ずるとともに、防災訓練その他の自発的な防災活動への参加、過去の災害から得られた教訓の伝承その他の取組により防災に寄与するように努めなければならない。

引用:e-GOV「災害対策基本法」第7条3項 ※太字は筆者加筆

「自分の命はじぶんで守る」ことが防災の基本ともいわれますが、そのために努力すべきことが法律にも明記されているのですね。

第2章から「国が設置する災害対策本部の種類」を確認

第2章【防災に関する組織】では、防災会議※1や災害対策本部※2の設置などについて規定しています。

※1:防災計画の作成・実施などのために防災会議を設置
国の中央防災会議(11条)、都道府県防災会議(14条)、市町村防災会議(16条)
※2:災害発生時または発生のおそれがあるとき“災害対策本部”を設置
都道府県災害対策本部(23条)、市町村災害対策本部(23条の2)

ここでは「国が設置する災害対策本部」の種類について、おつたえします。

「特定・非常・緊急」災害対策本部

災害対策基本法では、国が設置する災害対策本部として3種類を規定しています。

しかし、条文にある説明だけでは、それぞれがどのような災害時に設置されるのか具体的に知ることはむずかしいため、ここでは『コトバンク(日本大百科全書ニッポニカ)「災害対策本部」』の解説も引用しながらおつたえします。

■「特定」災害対策本部(23条の3)
=『死者・行方不明者数が数十人規模と想定される場合』

「非常」災害対策本部(24条)
=『死者・行方不明者100人規模の場合』  
適用災害例には平成30年7月豪雨(2018年)や令和元年台風19号(2019年)などがあります。

「緊急」災害対策本部(28条の2)
『大震災などの際に設ける』とされており、東日本大震災(平成23年/2011年)ではじめて適用されました。

このほか、原子力災害対策特別措置法にもとづいて「原子力」災害対策本部が設置されることもあります。

第4章から「命の安全を確保する場所」と「避難生活の場」を知る

第4章【災害の予防】では、行政施設等における「防災教育の実施(47条の2)」や「防災訓練義務(48条)」、自力での避難がむずかしい人の把握や「避難行動要支援者名簿」の作成など、災害による被害を予防するために必要な基本事項がしめされています。

ここでは、住民の避難先となる「避難場所」や「避難所」についての規定をおつたえします。

「避難場所」と「避難所」は異なる

災害対策基本法では、市町村に「指定緊急避難場所」と「指定避難所」それぞれ指定することを義務づけています。

「どちらも避難先にかわりはないのでは?」と思うかも知れませんが、この2つはあきらかに異なるのです。

指定緊急“避難場所”の指定(49条の4)

指定緊急避難場所とは、命の安全を確保することが目的の場所です。
災害対策基本法では「洪水、津波その他の政令で定める異常な現象の種類ごとに」指定することを義務づけています。

指定“避難所”の指定(49条の7)

指定避難所は災害の危険がなくなるまで、または自宅で生活できなくなった被災者を一時的に滞在させることが目的の場所です。
学校の体育館など一般的にイメージする“避難所”がこれにあたります。

住民がスムーズに避難できるよう、市町村はこれらの避難場所や避難経路などを印刷物の配布などをとおして、住民に周知するよう努めることも規定されています(49条の9)

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第5章「災害応急対策」にはもっとも多くの条文がある

第5章【災害応急対策】は“第50条から第86条”まであり、災害対策基本法のなかでもっとも多くの条文がしるされている部分です。

災害の拡大を防ぐためにする9つのこと

章のはじまりである第50条には、災害の被害拡大を防ぐべく、以下のとおり避難情報の発令から犯罪予防・緊急輸送の確保まで、9つの事項についてしるされています。

(災害応急対策及びその実施責任)
第五十条 災害応急対策は、次に掲げる事項について、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に災害の発生を防御し、又は応急的救助を行う等災害の拡大を防止するために行うものとする。
 警報の発令及び伝達並びに避難の勧告又は指示に関する事項
 消防、水防その他の応急措置に関する事項
 被災者の救難、救助その他保護に関する事項
 災害を受けた児童及び生徒の応急の教育に関する事項
 施設及び設備の応急の復旧に関する事項
 廃棄物の処理及び清掃、防疫その他の生活環境の保全及び公衆衛生に関する事項
 犯罪の予防交通の規制その他災害地における社会秩序の維持に関する事項
 緊急輸送の確保に関する事項
 前各号に掲げるもののほか、災害の発生の防御又は拡大の防止のための措置に関する事項

引用:e-GOV「災害対策基本法」第50条 ※太字は筆者加筆

避難所の「生活環境の整備」も大事

このなかには「避難所の生活環境の整備(86条の6)」があります。

たとえ避難所であったとしても、「必要な安全性」や「良好な居住性の確保」などに努めなけれなならないとされているのです。

避難所における生活環境の整備等)
第八十六条の六 災害応急対策責任者は、災害が発生したときは、法令又は防災計画の定めるところにより、遅滞なく、避難所を供与するとともに、当該避難所に係る必要な安全性及び良好な居住性の確保、当該避難所における食糧、衣料、医薬品その他の生活関連物資の配布及び保健医療サービスの提供その他避難所に滞在する被災者の生活環境の整備に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

引用:e-GOV「災害対策基本法」第86条の6

必要以上の要求は受け入れられないとしても、そうでないのなら被災者も声をあげ、良好な避難所環境にむけ共にとりくむことが大切かもしれませんね。

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過去の災害をふまえた法改正のポイント

ここからは、過去の災害の教訓をもとに法改正がなされた主なポイントについておつたえします。

阪神淡路大震災 ~交通規制・ボランティア活動~ 

阪神淡路大震災:1995年(平成7年)1月17日発生、マグニチュード7.3、最大震度7。

1.車の通行禁止・制限(76条)

阪神淡路大震災では、車の渋滞等によって緊急車両の通行や物資の輸送にいちじるしい影響がおよんだといいます。そのため、緊急車両等以外の車の通行を禁止(または制限)することができるよう改正しました。

2.ボランティア活動等の整備(第8条第2項13 号、15号、16号)

阪神淡路大震災は日本における「ボランティア元年」とよばれるほど、ボランティア活動が社会に知られるキッカケとなりました。

このほか国内外のボランティアが活動する環境整備や、自主防災組織を育てること、要配慮者へ必要な措置をおこなうこと等が法改正で追加されています。

東日本大震災 ~他県への応援要請~

:2011年(平成23年)3月11日発生、マグニチュード9.0、最大震度7。

東日本大震災では甚大な被害によって、市町村庁舎が被害をうけたり市町村長の犠牲などによって、被災自治体だけでは十分な対応ができない状況もありました。

そこで、必要に応じて他県に応援要請が可能なことを法改正によって正式に明記したのです(74条)

また、あらかじめ相互応援について協定をむすんだり、共同で防災訓練をおこなるよう努めることも規定されました(49条の2)

令和元年台風第19号 ~避難勧告の廃止~

令和元年台風第19号:2019年(令和元年)10月10日~10月13日、広範囲で記録的な大雨・暴風等。

この災害発生当時、市町村が住民に避難をうながすための情報には「避難勧告」と「避難指示」の2つがあったため、避難すべきタイミングがわかりづらいことが指摘されたのです。

この点をふまえた法改正では、避難勧告を廃止して「避難指示」に一本化し、令和3年5月20日からあらたな避難情報がスタートしています(60条1項)

さらに、避難することがかえって危険な状況におちいる可能性があるときには「緊急安全確保措置」を発令し、ドアなど屋外に面する部分から離れる・高所への移動などを指示できることが明記されました(60条3項)。

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法律の概要と改正点をふまえつつ災害にそなえる

今回は災害対策基本法について、改正点をふまえて簡単に解説しました。

法律の文言はわかりづらく読みにくいと感じることがあるかもしれませんが、わたしたちの生命・生活・人権等あらゆることの根幹となるものです。

防災には「これで万全」という対策はないと言われることもあります。

できる限りの備えをしていても過去の災害ではそれをこえた犠牲が発生しており、そのつど法改正がおこなわれているのが現状です。

今回、法改正のポイントについては一部しかお伝えできませんでしたが、他にも多くの改正がおこなわれています。

内閣府防災情報のページ「最近の主な災害対策基本法の改正」では、平成24年(2012年)から令和3年(2021年)までの改正について、その概要や新旧の条文を表でみくらべることもできます

過去の教訓をふまえつつ、今後おこりえる災害にそなえ不十分な点はないか、法律を参考にあらためて見直してみるのもよいかもしれませんね。

【参考文献】
*e-GOV「災害対策基本法」
*内閣府「災害対策基本法の概要」
*総務省消防庁「消防の動き」2022.No.612
*コトバンク「災害対策基本法」
*気象庁「改正 災害対策基本法(抄)」

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(以上)

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これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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