みなさんは「アウターライズ地震」と呼ばれる地震をご存じでしょうか?
恐らく、あまり見聞きしたことのない地震の名前だと思います。
ただ、90年前の1933年(昭和8年)3月3日起きた、昭和三陸地震は「アウターライズ地震」と呼ばれています。
2011年に起きた、東日本大震災の震源地に近い場所で起きた地震です。
今回はこの「アウターライズ地震」について、自分でも調査し独自の画像を作りながら解説してみます。
アウターライズ地震とは何か?
アウターライズ地震が何かを分かりやすく解説すると、プレート境界をはさんで陸地より遠い海域(海溝外側)で起きる地震のことです。
Outer(海溝外側)と、Rise(隆起部分)で起きる地震を意味していて、その状況の説明用に作成したのが上記の画像です。
画像のなかの赤い「×」部分で起きる地震を「アウターライズ地震」と呼んでいます。
因みに専門的な用語で解説するとこうなる
アウターライズ地震とは、地震学的な用語のひとつで、沈み込み帯と呼ばれるサブダクション・ゾーンにおいて、プレートのオーバーライド(大陸プレートの上にオーシャンプレートが覆い被さる現象)の際に発生する地震を指します。そして、主に太平洋プレートの沈み込み帯周辺で発生することが知られています。
東日本大震災の震源と昭和三陸地震の震源位置
※ウエザーニュースと気象庁の画像を加工
出典:ウエザーニュース
出典:気象庁
昭和三陸地震の震源地 | 岩手県の沿岸から東におよそ200km |
東日本大震災の震源地 | 三陸沖の宮城県牡鹿半島の東南東130km付近 |
このように、昭和三陸地震と東日本大震災の震源地が近いことが分かります。
地震発生頻度の変化について
出典:読売新聞オンライン
2023年3月7日の「読売新聞オンライン」にて、興味深い記事が掲載されていました。
東北大の遠田晋次教授(地震地質学)によると、2011年の東日本大震災にて、東北沖の海底にたまっていたひずみが解消され、逆にアウターライズ域で小規模な地震発生が活発になっているとの研究結果が掲載されています。
上記の画像のとおり、東日本大震災の震源付近は揺れが沈静化していますが、昭和三陸地震の震源域は逆に活発化しているのです。
この結果から、「アウターライズ域で今後、大地震が起きるリスクがある」と、遠田晋次教授は述べています。
アウターライズ地震の発生率は10%程度
先の教授の研究を見ると、今にもアウターライズ地震が発生しそうに見えますが、実は発生率は10%程度と低くなっています。
とはいえ、0%ではないため、絶対に起きないとは断言できません。ここでは、アウターライズ地震が起きるとどうなるのか、2つの特徴を解説します。
アウターライズ地震の2つの特徴
ひとつめの特徴は、大きな津波が発生する確率が高いということです。
震源が浅い海底で地震が起きるため、津波が大きくなりやすくなっています。
ふたつ目は、震度が小さく、陸地では大きな揺れを感知しない点です。
しかし、陸地の揺れが小さいために津波への警戒が薄くなることが懸念されます。
アウターライズ地震の予知システム
出典:読売新聞オンライン
アウターライズ地震は、主に太平洋プレート周辺で発生するため、日本にとっても重要な地震のひとつです。
太平洋プレート周辺に位置する日本は、アウターライズ地震の被害を受ける可能性が高いとされています。
それは、90年前の昭和三陸地震が証明しているので、明らかでしょう。
そのため日本では、アウターライズ地震に備えて独自に津波警報システム「S-net」を開発しています!
S-netは、海底に設置された地震計や圧力計からのデータを収集し、津波警報を発するシステムで、このシステムはアウターライズ地震のような、震源が浅い地震に対しても高い精度で警報を発することが可能です。
気象庁以外の研究機関でも調査されている
日本では、アウターライズ地震に対応するために、海洋研究開発機構(JAMSTEC)などが研究をおこなっています。
JAMSTECは、太平洋プレートの上昇を正確に観測するために、海底地震計や海底変位計を活用した研究をおこなっているのです。
また、津波の予測には、海洋底地震計や海底変位計のほか、人工衛星を利用した観測も活用されます。
アウターライズ地震に備え、地震発生前の警報システムや観測網の整備を進めるとともに、国内外の研究機関と協力して研究を進めています。
まとめ
今回は聞きなれないであろう「アウターライズ地震」について、その特徴や観測体制について解説してきました。
また、2011年に起きた東日本大震災との関係も解説しています。
いずれにしても、地震は日本中どこで起きてもおかしくない自然現象です。
したがって、海岸の近くでは津波について、そうでない地域でも土砂災害などに警戒しなければいけません。
そして、突然襲ってくる地震に対しては、普段から家具の転倒防止対策など、有効な対策を施しておくのも大切です。