災害図上訓練DIG(Disaster Imagination Game)は、災害想像力ゲームとも呼ばれる訓練です。
大きな地図を作り、その上に透明のシートを被せます。
そのシートに目的に合わせて、色を塗ったり、付箋を貼りつけたりしてチームで話し合います。
やり方は、さまざまで「絶対にこうしないといけない!」との決まりごとはありません。
今回は、私が行った実体験をお話しましょう。
防災リーダー講習では必ず行われる訓練
訓練と聞くと、何やら大変そうに思われますが、実際はそんなに緊張するモノではありません。
ただ、本格的な防災講習や防災リーダー講習では、必ずプログラムに取り入れられている訓練でもあります。
地図は必須!でも、用意する物はそんなに多くない
災害図上訓練DIG(Disaster Imagination Game)を行うために、用意する物はあまり多くありません。
ただ、地図は必須となります。しかも、小さなモノでなく1m四方程度の大きな地図が必要です。
その理由は、「広範囲の中で、どのような災害対策が必要か?」を、考えるためです。
小さな地図だと、範囲が狭すぎて訓練になりません。
あと必要なモノは、次のような道具があれば十分です。
【図上訓練で必要なモノ】
・広範囲の地図
・透明なシート(数枚)
・油性マジック(数種類の色があればベスト)
・付箋(大きさや色が違う数種類用意)
図上訓練に正解はない!お題に対しての対応を考えるのが目的
図上訓練には、正解はありません。
設定されたお題に対して、どのような行動が必要なのか、どのような災害対策が必要なのか、を考えるのが目的だからです。
例えば、「河川がはん濫した時に、どのように逃げるか!?」を想定する際に、「河川敷の公園に逃げる」など、ふざけた考えは論外ですが・・
図上訓練は10名未満のチームで行う
ここからは、図上訓練のやり方について解説していきましょう。
図上訓練は、10名未満のチームにて行います。なぜ10名未満なのかというと・・
机の周りに座れるのが、それくらいだからです。
図上訓練は、個人が自分の意見を主張する場でもありますが、それをチーム全員でディスカッションする目的も有しています。
ですから、人数が多すぎるとディスカッションに時間がかかることと、参加できない人も出てくる可能性が高くなります。
それに、机の上に置いた地図で訓練を行うので、机の周りに確実に座れる人数でないとダメです。
なので、1チームは10名未満が最適となります。
リーダーは全員の考えを促す役目も担う
チームには、必ずリーダーが必要となります。
お題ごとに、リーダーは入れ替わって、できれば全員がリーダーをすることができればベストです。
チームのリーダーは、お題に対しての考えを全員が述べるように、訓練をリードする役目があります。
つまり、チーム全員が訓練に参加できるように、進行役も担うこととなります。
また、数百名単位での訓練の場合だと、多くのチームができます。
訓練終了後には、各チームで想定した内容を発表するので、リーダーが代表してチームの考えを発表します。
お題:上流のダムが放流開始を予定!どのような避難対策が有効なのか?
出典:総務省消防庁 災害図上訓練DIG
https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/senmon/cat2/cat/cat1/cat8/dig-1.html
ここでは、私が実際に行ってきた訓練の一例を使って解説していきましょう。
次のような内容で、避難対策を考えるパターンです。
起こり得る災害の内容
・大雨にて上流のダムの貯水量がオーバーする
・ダムが放流することを予告
・タイムリミットは2時間
・どのような避難対策が有効か
訓練の多くは、河川が関係した災害対策が多いです。
理由は、もっとも身近で実際に起きている災害として、件数も多いからです。
今回も河川関係で、どのような避難をするのが最も人命を救うことができるかになります。
訓練方法はさまざま、ほんの一例として紹介
訓練の進め方はさまざまです。
全員で思いつくまま付箋に対策を書いて貼り付けたり、話し合いをした結果を地図に書き記すなど、チームによっても異なってきます。
私の参加したチームでは、次のような進行方法を選びました。
1:1人目が避難案を地図に書き記す
2:2人目から順に、避難案をブラッシュアップしていく
3:ひと回りしたら、問題点を探し出す
4:問題点を解決していく
このような進行で、ベストな災害対策を見つけていきます。
地図に書くのは色の情報
図上訓練で重要なのが、地図に記載する情報です。
視覚的に分かりやすく色分けをすることが、重要なポイントとなります。
基本的に地図上には色分けだけを記載して、文字情報は付箋で行います。
文字情報を記載する付箋も、住民が求める情報は「青の付箋」支援する側の情報は「ピンクの付箋」など、付箋の種類で情報の分類も行います。
先ずは浸水予想区域を青色・避難区域を赤で記載
ダムの放流によって、浸水が予想される範囲を青色で囲みます。
それに応じて、赤色で避難区域を決定します。
その後、避難所を緑色で表示しその横に付箋で「収容人員と地盤高」を記載。このように、地図には色で情報を記載し、文字情報は付箋で対応するのが図上訓練の特徴です。
避難地域から避難場所への経路と時間を算出
避難区域と避難所が決まったら、避難経路と避難所までの所要時間を計算します。
ダム放流までは2時間しかありません。
その間にどうすれば、全員が避難できるかの方法も考えます。
この時に行った手法は、それぞれがベストと思われる避難方法を簡潔に付箋に書き込んで、次々に地図上に貼っていきます。
全員が貼り終わったら、付箋の内容を検討し、同じ避難方法が多い順から採用していくことにしました。
図上訓練をすることのメリットとは!?
では、災害図上訓練DIG(Disaster Imagination Game)を、行うメリットは何かを解説しましょう。
図上訓練をチームで行うことで、自分では気づかなかったアイデアを自分のモノにできるメリットがあります。
また、自分がリーダーを行うことで「率先して避難誘導できる人」に近づくことができます。
さらには、避難の難しさを改めて知ることも大きなメリットと言えるでしょう。
高齢者の避難方法、身体障がい者の方の避難は難しい
図上訓練をしていて、いつも時間切れとなる問題があります。
それは、高齢者の方の避難と身体障がい者の方の避難方法についてです。
図上訓練はあくまでもシュミレーションですが、高齢者の方の避難については、シュミレーションがいくつも出てきて収集がつきません。
また、身体障がい者の方の避難方法については、実際に行ったことがないので明確な想定ができなかったのが事実です。
これらについては、介護の現場で活躍している方の意見が必要、との認識でいつも終わっています。
図上訓練はやらないよりやった方が役に立つ
図上訓練については、「どうせシュミレーションなんだから、実際の災害現場では役にたたないでしょう!」との考えを口にする方も多いです。
ですが、図上訓練を行うことで、災害対策の知識が増すことは確かです。
何でもそうですが、図上訓練も「やらないよりはやった方が役に立つ!」のは間違いありません。
出典:総務省消防庁 災害図上訓練DIG
https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/senmon/cat2/cat/cat1/cat8/dig-1.html