ギャロッピング現象とは、強い風により送電線同士が縄跳びのように揺れて接触する現象のことです。
送電線に雪や氷が付着した状態で強風が吹き寄せたとき、送電線が上下に激しく振動します。
ギャロッピングの発生原因は、大きく揺れることで、送電線の接触部分を熱くして断線を引き起こす可能性があります。
ギャロッピングの対策としては、ルーズスペーサや相間スペーサと呼ばれる部品をを使用することで、ギャロッピングの発生を防止することが可能です。
今回は、ギャロッピング現象の発生原因や対処法について解説します。
ギャロッピング現象の発生原因と対策
ギャロッピング現象の原因は、強風時に送電線に積雪や着氷による自励振動であると考えられています。 この現象は、ねじれ振動だけでなく、縦方向および横方向の大きな振動を引き起こす可能性があり、寒さや強風と相まって停電につながることもよくあります。 いい換えればギャロッピング現象は、自然が引き起こす事故といってもよいでしょう。 |
対策1:相間スペーサを使用することで接触を防ぐ
雪や氷が付着することが多い地域には、送電線に相間スペーサと呼ばれる棒状の部品を取り付けることで、送電線同士の距離を保って接触を防いでいます。
対策2:ねじれ防止ダンパーを装備
湿った雪が電線に付着してしまうと、電線自体の「より」に沿って雪が回転しながら成長することが分かっています。
また、電線全体に雪が付着すると雪の重みでさらにねじれやすくなり、雪の回転成長を促してしまいます。
そうなると、電線を支える鉄塔にも負担がかかり、雪の重みで垂れ下がった電線が、ほかの電線や樹木に接触して停電を引き起こすこともあります。
そのような事故を防ぐために「ねじれ防止ダンパー」にて、電線のねじれを抑えて停電事故を予防しています。
対策3:難着雪リング( Snow Resistant Ring )を装備
難着雪リング( Snow Resistant Ring )は、電線に雪が積もって停電するのを防ぐための装置です。
一定間隔でワイヤーに取り付けられたリングで構成されており、ワイヤーに沿って雪が移動しにくくしています。
ギャロッピング現象での停電事故は大規模となる
ギャロッピング現象は、2005年の新潟停電や2015年の長野停電など、日本で大規模な停電の原因となっています。
ギャロッピングは送電線同士が接触することで起きる現象で、一たび事故が起きると大規模な停電を引き起こしてしまうのです。
ここでは、当時の状況と対策を振り返ってみましょう。
2005年の新潟停電では最大で約65万戸が停電した
2005年(平成17年)12月22日に起きた新潟停電では、最大で約65万戸が停電しています。
直接的な原因は、新潟変電所(五泉市)に接続する多重化された送電線のがいしへの塩雪害によるもので、これまで経験したことのない複数回の故障が同時に多発したとされています。
そして、復旧を補うための、北新潟変電所(聖籠町)から新潟市方面に供給すべく使用していた送電線も、ギャロッピング現象で故障し、複数の要因が重なり広範囲の停電となったようです。
ルーズスペーサや相間スペーサによるギャロッピング対策
ここでは、当時のギャロッピング現象への対策を紹介します。これは2006年(平成18年)1月13日に、東北電力が発表したプレリリースの資料です。
今回の停電を受けて、ギャロッピング現象への対策を公開しています。
2015年の長野停電では最大約38万戸が停電している
2015年(平成27年)3月2日に、中部電力管内となる長野県内にて最大約38万戸の停電が起きています。
この時の直接的な停電の原因は、ギャロッピング現象でした。
当時の中部電力によるプレリリースを確認すると、やはりギャロッピング現象対策として「ルーズスペーサと相間スペーサの設置」となっています。
まとめ
今回は、雪国で大規模停電が起きてしまう「ギャロッピング現象」について解説してきました。
ギャロッピング現象による事故は、これまで2005年の新潟停電と2015年の長野停電で、大規模な停電が発生しています。
この事故を受けて、北陸電力と中部電力は「ルーズスペーサと相間スペーサ」を設置することで、ギャロッピング現象の対策としています。
この2件の対策を見ても分かるように、ギャロッピング現象にはルーズスペーサと相間スペーサの設置が有効のようです。
今後も、これらの防止装置によってギャロッピング現象による停電事故が起きないことを願います。