こどものさまざまな危険についてご紹介していますが、こどもの危険は自宅内だけではありません。外出先、特に夏場に注意したい危険の1つが「おぼれ」です。こどもは溺れたときどうなるのか、もし溺れてしまったらどのような対処をすべきか知っておくと、万一のときに役立ちます。
今回ご紹介するのは、「おぼれ」に関するさまざまな情報です。こどもはプールや海、川などさまざまなシーンでおぼれる可能性があります。いざというときの対処法や予防法を知り、お風呂や水遊びなどを楽しみましょう。
【データ】こどもの水難事故件数
消費者庁の資料によると、14歳以下のこどもが溺れる死亡事故は5年間で466件。最も多いのが海や川での溺死で、189件です。次いで浴槽内が165件、プールが13件という結果になっています。
0~1歳のこどもは浴槽内で溺れることが多く、5歳以上の活発な年齢のこどもは屋外での「おぼれ」が多い傾向です。自宅でも外でも事故が多いだけでなく、年齢が大きくなっても水場での遊びには目を行き届かせることが大切なのがわかりますね。
こどもが溺れるとどうなる?
もしこどもが溺れてしまった場合、どのような反応を示すかご存じでしょうか。「おぼれ」による死亡事故が多いのは、こどもの溺れ方にある特徴があるからです。
ドラマのように「バシャバシャ」溺れたりはしない!
ドラマなどでこどもが溺れると、バシャバシャと暴れて助けを求めていますが、実際にこどもが溺れた場合に「バシャバシャ」とすることは少ないです。こどもは静かに溺れて沈んでいきます。
筆者の長男も1歳前のつかまり立ちが安定しない時期に浴槽でつかまり立ちをしていましたが、ほんの数秒目を離した隙に静かに浴槽に沈んでいったことがありました。
こどもが静かに溺れるのは、水のなかに沈んで溺れてしまった状況を理解できていないから、もしくは呼吸することに精一杯で声を出す余裕すらないからだといわれています。
静かに溺れるため気づきにくい
こどもは大人が思っている異常に静かに溺れてしまうので、溺れている状況に気づきにくいことが多いです。これが、溺死事故を増加させる原因となっています。
お風呂で大人が体を洗っているとき、浅いビニールプールで遊ばせているときも、ほんの少し目を離した隙にこどもが溺れてしまうケースは少なくありません。また、海や川、プールなどで1人で遊べる年齢になっても、できるだけ目を離さないでいないと気が溺れて沈んでいた、流されてしまっていたということにもなりかねないので注意が必要です。
水難事故に関する疑問を解決
ここからは、水難事故に関する情報をまとめました。「どれくらいの水位で溺れるのか」「何分くらいで溺死してしまうのか」など、多くの保護者の方が疑問に思うことにお答えしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
こどもは何センチの水で溺れる?
小さなこどもは水深10センチの水でも溺れることがあります。水が顔につくと何が起こったかわからず、パニックに陥ってしまい、そのまま溺れることもあるのでビニールプールや水を減らしたお風呂などで遊ばせる際も、じゅうぶんに注意が必要です。
命にかかわる「おぼれ」の時間は?
水に沈んでしまうと呼吸ができなくなるため、早く救助しなければ命に関わります。こどもが溺れてから死に至るまでの時間はこどもの年齢や飲み込んでしまった水の量によりさまざまですので、一概に「これくらい」とはいえません。
しかし、溺れている時間が長ければ長いほど死亡率や重篤な障害が残るリスクは高いです。実際、溺れている時間が5分未満の場合は障害が残らず命も助かることが多く、10分以上溺れていたこどもの9割以上は、重度の神経障害が残ったり、死亡したりしています。
自宅内でも水難事故は起こる?
自宅内で水難事故が最も多く起こる場所は、お風呂です。次いで水遊びに使うビニールプール、ほかにも浅く水の張った入れ物などでも、誤って顔を入れてしまったままパニック状態になると溺れる危険性があります。
自宅外で溺れるのはどんなとき?
屋外での「おぼれ」に注意したい場所は、海や川、プールです。夏場はこういった場所へ遊びに行くため特に注意が必要ですが、誤って川に転落してしまう、海辺で遊んでいて流されてしまうといったことは季節を問わず起こりかねないので、常に水場には注意が必要です。
こどもの水難事故を防ぐための2つのポイント
こどもの水難事故を防ぎ、溺死や「おぼれ」による身体への影響を防ぐには、どういった点に注意すればよいのでしょうか。大人が注意したいのは、以下の大きく2点です。
とにかく目を離さない
まずはとにかく目を離さないことです。お風呂やビニールプールでの遊びの最中はもちろん、プールや海、川などでも目の届く範囲で遊ばせ、常に注意を払いましょう。
お風呂で大人が体を洗うときには定期的に声をかけて確認をする、浴槽から出して待たせるといった工夫をすると、危険を回避しやすいです。
小さなこどもにはこういった対処をしている保護者の方が比較的多いですが、年齢が上がるにつれ「大丈夫だろう」という気持ちが大きくなり、ついつい目を離しがちになります。しかし、年齢が上がっても溺れる危険性は軽減されることはなく、むしろ活発になり目を離すことが増えれば増えるほど、溺死のリスクは高まります。
プールなどに一緒に出かける年齢のあいだは、一緒に行動する、行動範囲を制限してしっかりと目を離さずにいるということを意識しましょう。
室内では「水の張りっぱなし」を避ける
室内で注意したいのは「水の張りっぱなし」です。お風呂や水遊びの最中はしっかりと見ているのでよいでしょうが、浴槽に張りっぱなしのお湯に誤って転落してしまう、興味本位で顔を浸けて溺れてしまうという事故も少なくありません。
お風呂の残り湯を使うご家庭は早めに使用してお湯を抜く、こどもが浴槽などに入れないようゲートなどをつけるなどして対策をしましょう。
こどもが溺れたときの対処法
さまざまな対策をしていても、こどもが溺れない可能性は決してゼロではありません。万一こどもが溺れてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
最後に、こどもが溺れたときにとるべき行動について確認しましょう。
助け出したら意識を確認
まずは迅速に水場からこどもを引き上げ、意識の有無を確認します。話せる年齢のこどもは意識があれば、どこか不調がないか聞き出してください。話し方や目線に違和感がある、吐いたり震えたりと体調が明らかにおかしい場合は、こどもが「大丈夫」だといっていても、病院に行くなどの対応を考えましょう。
話すことのできないこどもは、より様子をよく確認することが大切です。
場合によっては119番通報をAEDの手配
意識がない場合にはすぐに119番通報をしてください。また、意識があるこどもも、前述のような様子が見られたら救急車を呼ぶか、病院に連絡して自力で連れていくことを検討しましょう。
意識がない場合には同時にAEDの手配も行います。1人ですべてのことをしようと思わず、必ず近くにいる方に助けを求め、「AEDを持ってきてください」とお願いしましょう。
水を吐かせるかどうかは様子を見て判断
こどもが溺れてしまったら「飲んだ水を吐きださせなければ」と真っ先に思う方が多いでしょう。しかし、水を吐かせるかどうかは、様子を見て判断することをおすすめします。
無理に水を吐かせようとすると、食べたものなども気道を逆流し、かえって気道をふさいでしまう可能性があるからです。意識がない場合、心拍が停止している場合にはまずは心肺蘇生法を優先するようにしましょう。
途中で水を吐きだした場合には、顔を横に向けて口を開けさせ、吐いたもので窒息しないようにするなどの対処をしてください。
事故を防ぎ、安全に水遊びを楽しもう
安全に水遊びを楽しむには「溺れるかもしれない」ということを前提に行動することが最も重要です。年齢の低いこどもはもちろん、ある程度大きくなったこどもも、こうした意識を持って行動するだけで、水難事故の可能性を大幅に低減させることができるでしょう。
最悪の事態を防ぎ、楽しく水遊びやお風呂の時間を過ごせるようにしてくださいね。