大きな地震が起きた後「怖かった‥」と安心していられません。なぜなら、その地震より大きな地震が迫っているかもしれないのです。
今回は、過去に起きた2つの大地震をもとに「前震・本震・余震」について解説します。さらに、地震発生の3つのパターン、本震・余震に備えてチェックしたいポイントを実体験をふまえてお伝えします。
日本各地で大地震の発生が予想されている今、地震への備えをあらためて見直すキッカケとして、ぜひご覧ください。
前震・本震・余震|前震は必ずあるとは限らない
「前震」とは、本震の前に発生した地震のことです。ですが、その地震が前震かどうかは、地震直後にはわかりません。また、前震が発生せず本震が起こることもあり、むしろこのようなパターンが多く発生しています。
では、なぜ前震についてお伝えするかと言うと、『「この地震は前震かもしれない」と思うことで、次に起こるかもしれない本震・余震に備えることができる』と思うためです。
では、「前震・本震・余震」について確認してみましょう。
前震・本震・余震とは?
前震または本震は、地震発生直後に判断できるものではありません。一連の地震活動が続いたなかで、結果として「最も震度が大きな地震」を本震、「本震の前に発生した地震」を前震というように判断されるのです。
余震は「本震のあとに起こる地震」であり、本震の発生直後が最も多く、時間とともに少なくなっていきます。
前震があったとされる大地震
東日本大震災をもたらした地震を「東北地方太平洋沖地震」と言います。この地震(マグニチュード9.0、最大震度7)は2011年3月11日に発生しましたが、2日前の3月9日にマグニチュード7.3、最大震度5弱の地震が発生し、55㎝の津波も起きました。
学説によっては、この地震を東北地方太平洋沖地震の「前震」と位置づけているものもあります。
さらに、2016年4月16日に発生した熊本地震(マグニチュード6.5、最大震度7)でも前震があったとされています。
2日前の4月14日、マグニチュード6.5、そして再び最大震度7という大きな地震が発生したのです。九州地方で初めて観測される最大震度7という非常に大きな地震が、短期間で2度も発生したのです。
政府の組織である地震本部(正式名称:地震調査研究推進本部)では、前震を次のように解説しています。
前震は、規模も小さく数も少ない場合が多いですが、かなり多数発生して被害を及ぼすこともあります。また、前震は本震の直前~数日前に発生することが多いですが、一ヶ月以上前から発生することもあります
※地震調査研究推進本部地震調査委員会 「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方 概要」
地震の規模には大小あることをふまえれば、前震であってもその規模に差があるのは当然と言えるでしょう。
日本は地震が多いため、特に規模が小さい場合は「また地震だ」とあまり気に留めないこともあるかもしれません。ですが、前震かもしれないと考えて日頃の備えを確認することも大切です。
前震・本震・余震の関係|地震発生3つのパターン
地震の発生には、以下の3パターンあるとされています。
◆地震発生のパターン
① 本震ー余震型
前震がなく、いきなり大きな地震が発生し、その後それよりも小さな地震が起こるパターンです。地震発生のなかでは、もっとも多いとされています。
②前震ー本震ー余震型
①の「本震ー余震型」が起こる前に、本震よりも規模が小さい地震(前震)が発生しているパターンです。
③群発的な地震活動型
前震・本震・余震といったハッキリした区別はないものの、特定の地域で地震が繰り返し起こっている地震のことです。火山の周辺で起こることが多いものの、明確な関連性は示されていません。
気象庁のサイトでは、震度1以上の地震が発生した地域を地図上で確認することができます。震源の深さを色別、地震の規模を丸の大きさで表しているため、ひと目で地震の状況を把握することが可能です。
さらに、震源地ごとの「地震観測回数」と「地震規模の最大」が一覧表で示されているため、どの地域でどのくらい地震が頻発しているかを知ることもできます。
では次に、過去に発生した2つの大きな地震から「余震」について見てみましょう。
「余震」言葉のイメージが被害を拡大|熊本地震
2016年4月に発生した熊本地震は、日本における「地震発生直後の注意喚起の仕方」に大きな変化をもたらすものとなりました。
熊本地震の発生以前は、次のように呼びかけられていました
「1週間程度、最初の大きな地震より一回り小さい余震に注意。」
※地震調査研究推進本部地震調査委員会 「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方 概要」
しかし、2016年(平成28年)8月19日地震本部地震調査委員会は次のように見直すことを発表したのです。
「最初の大地震と同程度の地震に注意」
※地震調査研究推進本部地震調査委員会 「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方 概要」
その背景には、
・本震ー余震型の判定条件が妥当でなくなった。
・「余震」という言葉が、より強い揺れは生じないと受け取られた。
・余震確率値が、通常生活の感覚からすると、かなり低い確率(安心情報)と受け取られた。
※地震調査研究推進本部地震調査委員会 「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方 概要」
という課題があったとされています。
熊本地震では、最初に最大震度7を観測した4月14日に、自宅がダメージを受けたものの避難所には行かず生活し続けたことで、4月16日の地震で命を落としてしまった方がいるのです。
私たちは「次は余震だから、これ以上大きな地震はこないだろう」という誤った認識を、もう持ってはいけないのです。
10年後に発生した余震|東日本大震災
2021年3月20日宮城県沖で震度5強の地震が発生しました。このとき気象庁は「(東日本大震災をもたらした)東北地方太平洋沖地震の余震と考えられる」と発表しました。本震から10年経っても余震があるということに、人々は驚きと不安を覚えたのです。
しかし、東北沖では地震が頻繁に発生しており、余震と判断することが難しくなっているとして、同年4月1日以降、東北沖で発生する地震を余震と発表することは取りやめています。
本震・余震に備えてチェックしておきたいポイント
私は東日本大震災の「前震」だったと言われる、2011年3月9日の地震の大きさを今でも覚えています。ですが、その時は「怖かった」で終えてしまったのです。
この経験の中から、本震に備えて最低限チェックしておきたいと思われるポイントと、震災の時あってよかった物をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
本震・余震に備えチェックしておきたいポイント
●自転車のタイヤはパンクしていないか・・自転車は避難の手段としても使用できますし、物資などの運搬時にも便利に使うことができます。タイヤの空気が足りているか、チェックしておきましょう。
●車のガソリン補充・・東日本大震災では、ガソリンを買うために長蛇の列ができました。購入できればよいほうで、ガソリンスタンドでも底をつき、しばらく購入できない状況がありました。大きな地震の後には人々の防災意識が高まり、ガソリンスタンドも混みがちなので、「半分になったら補充する」など普段から意識しておくと、いざという時に助かるでしょう。
震災時、あって助かったもの
●お風呂の残り湯・・お風呂の残り湯はトイレに使うことができます。飲み物は備蓄の水のほか、ジュース類でも取ることができますが、トイレの水は確保が大変です。もちろん、備蓄トイレを準備しておくと良いのですが、数が不足したり使い慣れずにストレスを感じる可能性も。残り湯と備蓄トイレを使い分けするのも良いですね。
※追記:下水道管の破損など状況によっては、トイレに水を流すことを控えたほうが良い場合もあります。
●硬貨・・地震発生直後スーパーは開いていなくても、自動販売機で飲み物を買うことができます。時間が経つと売り切れるのはもちろんなのですが、釣銭切れも起こり得るので多めに準備しておくと良いでしょう。
●石油ストーブ(灯油)・・寒い季節には、石油ストーブがあるととても助かります。予備の灯油はあるか、乾電池は使える状態かも合わせて確認しておくと良いでしょう。
ここでは、食料品・生活用品以外でできる備えやチェックポイントをお伝えしました。
もちろん、このほかにも大切なことがたくさんあります。
たとえば「家具の配置」。家具の移動が必要な場合もあるため簡単にはできない対策かもしれません。だからこそ、事前にしっかり確認しておきたいポイントです。
この防災新聞では、さまざまな点から地震への備えをお伝えしていますので、ぜひご活用くださいね。
※追記:下記の記事もぜひご覧ください。
【参考文献】
地震本部「用語集」https://www.jishin.go.jp/resource/terms/
地震本部地震調査委員会「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方」https://www.jishin.go.jp/main/yosoku_info/gaiyo.pdf
Wikipedia「東日本大震災の前震・本震・余震の記録」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%8C%97%E5%9C%B0%E6%96%B9%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87%E3%81%AE%E5%89%8D%E9%9C%87%E3%83%BB%E6%9C%AC%E9%9C%87%E3%83%BB%E4%BD%99%E9%9C%87%E3%81%AE%E8%A8%98%E9%8C%B2
朝日新聞デジタル「東日本大震災の余震」発表取りやめ 明確な判断困難に https://www.asahi.com/articles/ASP4136H8P3VUTIL03Y.html
(以上)