住宅の性能と性能レベルを知り、希望どおりに設計・建築しているか評価してもらえる「住宅性能表示制度」。それは、住宅を購入するときのメニュー表のようなものです。
この記事では、制度を利用することで得られるメリットと、対象となる住宅の性能10分野と性能レベルの一例を解説します。
安全で安心して生活できる住まいのために、この制度を活用してみませんか?
住宅性能表示制度とは家の仕様を客観的に表示・評価してもらえる制度
住宅性能表示制度とは、①耐震性など住宅の性能レベルが数値で示されており、希望の性能が適切に反映されているかどうか②プロにチェックしてもらうことができる制度です。
たとえば、自動車を購入するとき、あなたはどういった基準で選びますか?ガソリン車か電気自動車か、または燃費はどれくらいかなど、車の仕様をもとに好みに応じた車を選ぶのではないでしょうか?
これと同じことが、住宅性能表示制度をつかうことで可能になるのです。
マイホームを注文住宅で建てる場合を想定して、さらに詳しくお伝えします。
家の性能をどの程度求めるか基準をもとに選択できる
あなたがマイホームに求める条件は何でしょう。耐震性能やシックハウス対策など、住宅の性能を示す項目はいろいろありますね。
住宅性能表示制度を利用することで「何に重きを置いた住宅を建てるか」が決めやすくなります。
住宅性能表示制度では、住宅の性能を10分野に分けて示しています(具体的な項目については後述します)。
さらに、その性能を「どの程度まで」求めるかを、示された基準をもとに選択することが可能になります(一つしか基準がない分野もあります)。
希望どおりの性能レベルかどうか設計図面と建築現場でチェックしてもらえる
住宅性能表示制度では、自分が求めた性能と性能レベルが、適切に反映されているかを知る機会が大きく分けて2度あります。それは「設計図面の段階」と「建築中および完了時」です。
希望の性能と性能レベルが設計図面に反映されているか
住宅性能表示制度を使うと、設計図面に反映されているかどうか(「設計住宅性能評価」と言います)を、プロの目でチェックしてもらうことができます。
設計図面では、間取りなど簡単な点は私たちでもわかりますが、耐震や断熱性能などは簡単にわからないですよね。
住宅性能表示制度を使うことで、この点もしっかりチェックしてもらうことが可能です。
希望どおりに建築されているか
「建築中および完了時」のチェック(「建設住宅性能評価」と言います)は、一般的に4回おこなわれます。
建築中は、楽しみな反面、適切に建てられているかと気になることも出てくるでしょう。そのような時に、住宅性能表示制度を利用していると、私たちに代わってプロがそれをチェックしてくれます。
紛争トラブルに対応
建築中および完了時のチェック(建設住宅性能評価)を取得することで、さらにメリットがあります。
それは、評価を受けた住宅に関してトラブルが起きた場合、各地の弁護士会(=指定住宅紛争処理機関)に紛争処理を申請できることです(手数料は1件1万円)。
住宅を建てた後にもこのようなメリットがあるのは嬉しいですね。
誰がチェックしてくれるの?費用は?
では、これらのチェックは誰がおこなうのでしょうか。
第三者が公平に評価する
住宅の性能と性能レベルをチェックするのは、法律にもとづいた評価方法および表示をおこなう第三者機関(=登録住宅性能評価機関)です。
下記のサイトから、各地域の機関を検索することができます。
◆住宅性能評価・表示協会「登録住宅性能評価機関の検索」 https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/shintiku/05.html
利用料は業者によって違う
住宅性能評価を依頼するための費用は、各機関ごとに異なります。そのため、10万円台の場合もあれば50万円程かかるなど、住宅の規模によっても異なります。
少しでも費用をおさえたいところですが、住宅性能表示制度を利用することでお得な点も。
省エネ、耐震性等に優れた住宅では、住宅ローン金利の引き下げ制度を利用できたり、耐震性能の等級によって地震保険料が割引になったりします。制度の利用を申し込むときには、担当の方へ確認してみると良いですね。
評価対象になる性能10分野と基準を解説
それでは、チェックされる住宅の性能10分野(うち6分野はオプション)を、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「住まいの安心は10分野のモノサシではかります」もとに解説します。
対象は10分野で合計32項目あるため、それぞれの分野において比較的わかりやすいと思われる項目のみを取り上げてお伝えします。
注文住宅の場合は、これらの10分野の中から、どれをどの程度まで求めるのか決めることで、理想のマイホームを建てることができますね。一方、既存の住宅であれば、この10分野にもとづいてその住宅の客観的な評価を知ることができます。
1.地震等に対する強さ|構造の安定
住宅性能表示制度の利用を申し込むと、必ず評価される項目(必須評価項目)です。
柱や主要な壁、基礎など構造躯体の部分における、損傷防止と倒壊等防止について評価しています。
・耐震等級(等級1~3)
地震に対する倒壊、崩壊等のしにくさを3段階で示しています。
◇関連記事 「これからマイホームを建てる人は必読!耐震性能は耐震等級を見るだけで十分?!家を購入する前に知っておきたい4つのポイント」https://bousai.nishinippon.co.jp/1879/#index_id8全
2.火災に対する安全性|火災時の安全
安全に避難脱出ができるか、外壁などが火に強いかどうかを評価しています。
・感知警報装置設置等級(等級1~4)
火災の発生を早く知るための感知器と警報装置の設置状況を示しています。
・耐火等級(開口部:等級1~3)
隣家などで火災が発生した時の外壁等の耐火性を示しています。
なお、火事を起こさない、つまり「火事の原因となる出火を防ぐ」ことは、住宅の性能として捉えることが難しいため、評価対象にはなっていません。
3.柱や土台等の耐久性|劣化の軽減
住宅性能表示制度の利用を申し込むと、必ず評価される項目(必須評価項目)です。
住宅の材料の劣化を軽減するための対策が、どの程度講じられているかを評価しています。
・劣化対策等級(等級1~3)
等級1 ・・・建築基準法の規定を満たしている
等級2 ・・・2世代(※)まで伸長するための対策が講じられている ※1世代、25年から30年
等級3 ・・・3世代まで伸長するための対策が講じられている
4.配管の掃除や補修のしやすさ|維持管理・更新への配慮
住宅性能表示制度の利用を申し込むと、必ず評価される項目(必須評価項目)です。
柱などの耐用期間が長い部分に対して、配管や内外装などの比較的、耐用期間が短い部分が対象です。
日常の維持管理を簡単にするための対策の程度、万が一故障したときの補修のしやすさなどを評価します。
・維持管理対策等級(等級1~3:戸建ての場合)
等級1 ・・・等級1および2以外
等級2 ・・・基本的な措置
等級3 ・・・特に配慮した措置
等級が高いほど、配管の掃除や補修がしやすくなります。
5.省エネルギー対策|温熱環境・エネルギー消費量
住宅性能表示制度の利用を申し込むと、必ず評価される項目(必須評価項目)です。
暖房冷房を効果的に使うための省エネルギーや、太陽光発電などの対策を評価します。
・温熱環境(耐熱等性能等級:等級1~4)
暖房器具につかう省エネルギー対策の程度を示しています。
6.シックハウス対策・換気|空気環境
ホルムアルデヒドなど化学物質の濃度は、気温や外気の気流など多様な要因で変動するため、ここでは建材の選定と換気対策について評価しています。
・ホルムアルデヒド対策(内装及び天井裏等:等級1~3)
等級は、日本工業規格(JIS)日本農林規格(JAS)の基準と連携しており、等級が高いほどホルムアルデヒドの発散量が少なくなります。
7.窓の免責|光・視環境
窓の開口部面積と位置について、どの程度配慮されているかを評価しています。
窓の面積が大きいことは、より多くの光を採り入れたり解放感がある反面、暖冷房エネルギーの使用料や地震時の構造の不安定性などの課題があります。
・単純開口率
床面積に対する開口部面積の割合を「%以上」で示しています。
8.遮音対策|音環境
主に共同住宅の場合の評価項目で、足音や騒音などの伝わりにくさを評価します。
9.高齢者や障がい者への配慮|高齢者等への配慮
段差をなくすなどの「移動時の安全性の確保」と「介助のし易さ」について評価しています。
・高齢者等配慮対策等級(専用部分:等級1~5)
等級は、次の4点の対策を組み合わせて、その手厚さの程度によって評価されます。
a.「 垂直移動の負担を減らす」ための対策
b.「水平移動の負担を軽減」するための対策
c.「脱衣、入浴などの姿勢変化の負担を軽減」するための対策
d.「転落事故を軽減」するための対策
介助を容易にするための対策は、等級3以上に求められています。
10.防犯対策
住宅への侵入は手口が巧妙化しており、何か一つだけの対策では難しい現状もありますが、この制度では玄関ドアや窓といった外部開口部の侵入防止対策について評価しています。
・開口部の侵入防止対策
階数や開口部の種類(玄関ドア、窓など)ごとに、防犯対策部品を使用しているかどうかを表示します。
希望の性能を盛り込んだオーダーメイドの安心住宅
大きな買い物となるマイホームの購入。一度建てたら、なかなか建て直しも難しいですね。
住宅性能表示制度の評価対象となる性能は、安全で安心した生活のために必要なものです。制度を利用することで、家の性能を客観的に知り、希望の性能レベルが適切に反映されているか知ることができます。
安全で安心して生活できる住まいのために、事前にできる備えとして制度を活用するのも良いのではないでしょうか。
【参考文献】
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「住宅性能表示制度について」https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「確かな性能・安心の住まいづくりをしませんか?」170106-03_評価協会様 (mlit.go.jp)
(以上)