ライターの永野です!
海なし県・岐阜に住む私は、海とはあまり縁のない人生を送ってきました。現在も「日焼けをしたくない」という理由から海に近づくことはあまりありませんし、災害関連の記事を書いていると「水場は危険!」という思いが先行し、子どもたちが海や川に行くことには、前向きになれません。
そんな私は幼少の頃は「波浪警報」を「ハロー警報?なにそれ」と勘違いするタイプでした。また、「津波って大きい波と何が違うの?なんでそんな危険っていわれるの?」と思っていました。
時が流れ、起こった東日本大震災。当時の大きな津波の映像は、現在もさまざまな媒体で見ることができますし、当時も信じられないような光景に目を疑いました。そこでようやく「津波が危険」だと知り、津波のメカニズムを知ったのもその後だった記憶です。
海慣れしていない私はちょっと波が高いのを見たり、夜の海を間近で見たり、海の近くのホテルや旅館に行ったりするだけでも恐怖なのですが…。これまでの地球の歴史のなかで、どれくらい大きな津波が起こったのかは気になるところです。
そこで今回は、「歴史に残る最大の津波」をテーマに、いろいろと調べてみました。日本、そして世界で起こった大きな津波について、情報をお届けします。
津波の高さと「遡上高(そじょうこう)」
津波の最大記録について解説する前に、そもそも「津波の高さ」とはどこで判断されるのかが気になりました。津波の歴史を調べてみると、20メートル、30メートルを超える記録もありますが、「30メートルの波が襲ってくる…?」と考えるとなんとなく非現実的な気がします。
よく調べていくと、どうやら津波は波の高さと遡上高(そじょうこう)の2種類があるようです。
津波の高さの測り方
※気象庁ホームページより
津波の高さは、津波がない状態(平常潮位といいます)から、どれくらい海面が上昇したかを表した数値です。気象庁ホームページにあった画像を引用させていただきましたが、上図を見ると一目でわかるのではないでしょうか。
地震などが起こると津波の高さも予想されますが、これは海岸線での値を示しています。「津波 最大」などのワードで検索すると、「100メートルを超える巨大津波!」のような内容も多く出てきますが、これは波の高さではなく、後述する「遡上高」を指しているようです。
遡上高(そじょうこう)とは
遡上高は、津波が海抜何メートルの高さまで達したのかを表すものです。津波は平地だけでなく、斜面も駆け上がり、陸地に甚大な被害を及ぼします。波が引いたあとも、斜面や崖には浸水の痕跡が残るので、これを調査して最大到達地点を測るそうです。
日本の津波は紀元前から起こっていた!
津波は自然災害の一種で、その歴史も古いです。日本では紀元前から起こっていたという記録もあるほどで、長年、海の近くで暮らす人々の生活に被害を及ぼしてきました。紀元前・紀元後の日本の津波の歴史について、見てみましょう。
紀元前の津波の歴史
津波の記録は、なんと紀元前4000年頃のものと思われるものから残っています。宮城県気仙沼市の大谷海岸には、紀元前3500年頃の鍵テフラ(火山灰)があり、その下に巨大津波の跡が発見されました。
また気仙沼市の大谷海岸には、紀元前1500年頃にも非常に大きな津波が起こった可能性が高いとされる跡があり、紀元前1000年頃の巨大津波の跡もあります。このほか、紀元前100年頃には仙台付近で巨大津波、紀元前後には南海トラフ超巨大地震が原因と考えられる巨大津波が広範囲を襲ったことがわかっています。
奈良時代以降の津波の歴史
奈良時代以降も、日本国内では多くの津波の被害が記録されています。「日本書紀」「太平記」のような歴史的書物にもその記録は残っており、江戸時代の宝永地震では、伊豆半島から九州までの広範囲にわたり、死者は20,000人を超えました。
ほかにも地震に伴う津波はおよそ2000年の歴史のなかで多く発生しており、常に身近な脅威として存在していたことがわかります。
【津波の歴史】日本で起こった最大の津波
歴史のなかで起こった津波について、具体的な記録を見ていきましょう。まずは、日本で起こった最大の津波についてです。
最大は1771年の「明和の大津波」
日本国内で歴史に残る最大の津波というと、1771年の「明和の大津波」が挙げられます。これは1771年4月24日(明和8年3月10日)の午前8時頃、現在の沖縄県石垣島南東沖40kmほどの場所で発生した地震によるものです。
地震による被害は一部だったものの、石垣島を巨大な津波が襲います。その高さは遡上高85.4メートルともいわれ、しかも第二波・第三波も襲ってきたことが、被害をより大きくしました。津波による死者・行方不明者は11,861名。琉球地方では歴史上最悪の大惨事になったといわれています。
しかし、昨今の科学的分析によると、実際の遡上高は30~40メートルほどだったともいわれています。それでも日本の歴史のなかで10本の指には入る記録ですので、巨大津波であることには変わりありません。
過去の大きな津波と被災状況
日本の歴史に残る津波とその被災状況について、以下にまとめました。
発生日 | 遡上高 | 被災状況 | |
明和の大津波 | 1770年4月24日 | 85m | 死者・行方不明者12,000人。日本、そして琉球史上最大とされているが諸説あり |
島原大変肥後迷惑 | 1792年5月21日 | 57m | 火山性地震による津波。地震・津波による死者・行方不明者は15,000人を超えた |
東日本大震災 | 2011年3月11日 | 40.1m | 津波の高さも9.3m以上と国内観測史上最大。地震・津波による死者・行方不明者は13,000人を超えた |
大宝地震大津波 | 701年頃 | 40m | 京都府宮津市の記念碑に津波到達に関する記録あり。詳しい被災状況は不明 |
明治三陸沖地震津波 | 1896年6月15日 | 38.2m | 岩手県を中心に、2万人以上の死者・行方不明者が発生 |
北海道南西沖地震 | 1993年7月12日 | 30m | 大津波警報が早めに発令されたが、奥尻町青苗地区が壊滅。死者・行方不明者は201人 |
30m以上も斜面を駆け上がる波の威力を考えると、周辺地域の被害も深刻なことがわかるでしょう。
【津波の歴史】世界最大の津波は「リツヤ湾大津波」
日本でも歴史に残る大きな津波はいくつかありますが、世界でも同等、それ以上の巨大津波が過去に発生しています。世界最大の津波、そして世界で起こったさまざまな津波について解説します。
リツヤ湾大津波とは
世界最大の津波は、アメリカ合衆国で起こったリツヤ湾大津波です。これは、1958年7月9日、アラスカ州のリツヤ湾で発生したもので、リツヤ湾の斜面が地震の影響で崩落。海中に土砂や氷塊がなだれ込んだことにより、大波が起こりました。
リツヤ湾大津波の記録について調べて見ると、「波の高さ524m」とされているのがほとんどです。「遡上高じゃなくて波の高さ!?」と困惑しましたが、Wikipediaにあった画像を見てみると、どういった状況なのかがわかるのではないでしょうか。
土砂や氷塊が落ちた衝撃で、津波が発生。1350m先の対岸斜面を524m分ごっそりと持っていった、という感じのようです。津波が斜面を登るというより、表現が難しいですが「ガバッ」っと大きな津波がクレーンのように削る、というイメージでしょうか…?となると、やはり遡上高ではなく「波の高さ」が正しそうですね。
ちなみにリツヤ湾では過去にも120年のあいだに5回も巨大な津波が発生していて、うち2回は100mを超えたとのこと。しかし、これだけ大きな津波が発生しても、まだまだ未開発な土地で足を踏み入れる人も少ないため、死者や行方不明者は限りなくゼロに近いそうです。
世界の歴史に残る大きな津波と被災状況
リツヤ湾大津波を含め、世界で発生した大津波の歴史を見てみましょう。
発生日 | 遡上高 | 被災状況 | |
リツヤ湾大津波(アメリカ) | 1958年7月9日 | 524m(波高) | およそ9000万トンの斜面崩落により起こった巨大津波。死者は2名 |
セントヘレンズ山噴火の火山津波(アメリカ) | 1980年5月18日 | 260m | 火山噴火により崩落した土砂がスピリット湖へ流れ込み、津波が発生。噴火により標高が400m減少 |
バイオントダム災害(イタリア) | 1963年10月9日 | 250m | 記録的豪雨により近くの山が地すべり。土砂の影響で津波が発生し、ダム近くの集落に被害が及んだ |
ミノア噴火の火山津波(ギリシャ) | 紀元前1628年頃 | 90m | 地球の歴史上最大規模の噴火の1つとされる噴火の影響で、巨大津波が発生。ミノア文明が滅んだ原因の1つとされている |
アラスカ地震の津波(アメリカ) | 1964年3月27日 | 67m | 地震による死者は131名。各地に経済的な被害を及ぼし、津波はカナダやハワイ、日本、メキシコなどにも到達 |
クラカタウ噴火の火山津波(インドネシア) | 1883年8月26~28日 | 46m | 爆発的な大噴火により発生した津波。多くの村を破壊。噴火と津波による死者は36,417名とされている |
スマトラ沖地震の津波(インドネシア) | 2004年12月26日 | 34m | 数回にわたりインド洋沿岸を津波が襲い、被害者は23万人にも及んだ。観測史上最悪の津波被害とされている |
規模や被災状況などが考えられない数字のものもありますが、地震や噴火、そして斜面の崩落などが津波という大きな二次災害を引き起こすことがわかりますね。
【今後の地震と津波】南海トラフ地震の津波予想
日本では過去にも大きな地震や津波が起こっていますが、今後も南海トラフ地震や首都直下地震といった大地震の発生が危惧されています。海の近くで地震が起これば、大きな津波が発生する確率も上がるため、地震はもちろん津波にもじゅうぶん注意したいところです。
最囲碁に、南海トラフ地震における津波の予想について解説します。
南海トラフ地震で津波はどうなる?
政府の中央防災会議では、南海トラフ巨大地震により、関東地方から九州地方に欠けての太平洋沿岸で、10mを超える大津波が起こると想定しているそうです。静岡県の伊豆半島や周辺の離島は、満潮時の津波の高さが20mを超えるとの予想もあり、そうなった場合の被害は深刻でしょう。
津波が起こったらどうする?
津波が起こったらできるだけ高い場所に、迅速に避難することが求められます。海岸近くにいる人は海岸からすぐに離れること、避難場所は海岸から遠い高台などがベストですが、難しい場合は頑丈な建物の上層階でもよいでしょう。
災害が起こった場合はできるだけまとまって、決まった避難所などへ行くのがよいとされています。しかし、津波のときは「自分の命を優先し、バラバラでもいいから近くの高台へ逃げること」という教訓もあるので、とにかく安全を確保できる場所へ行ってから、家族や知人の安否確認をするようにしましょう。
津波への日頃からの対策
津波に対する日頃の備えとしてできることは、基本的にはほかの災害と同じです。備蓄や非常時の持ち出し袋を用意しておくこと、津波がどういうものか知っておくこと、避難所や避難経路を確認しておくことなどを、家族や地域の方と行いましょう。
前述の通り、津波はとにかく早く安全な場所に行くことが求められます。決まった避難所以外にも、通勤・通学の途中で津波が起こったらどこに行けばよいかなど、さまざまな状況を想定した避難の練習をするのも、1つの対策になるのではないでしょうか。
津波は低くても危険!正しい知識で安全に避難を
今回は、歴史に残る最大の津波についてまとめました。巨大津波は甚大な被害を及ぼす恐ろしいものですが、津波は高さ0.2~0.3mほどでも流れに巻き込まれてしまうといわれています。高さが1メートルを超えれば木造住宅が破壊される、命の危険に関わるなどの危険もあるため「1メートルくらいなら大丈夫だろう」と決して侮ってはいけません。
津波に関する正しい知識はもちろん、津波対策や津波が起こった場合の行動についてもしっかりと理解し、もしものときに備えましょう。
編集後記
私は内陸なので、ここで生活している限り津波の被害を受けることはありません。また、以前に土砂災害ハザードマップも調べましたが、盆地にある住宅街のど真ん中ともいえる場所に建っている我が家は、土砂災害の被害に遭うこともないでしょう。
しかし、何度かお話ししてるかと思いますが、家の目の前には小さな川があります。この川はこれまで氾濫したことがないといわれているものの、川幅が狭いので水位がすぐに上がり、一度は手を伸ばしたら触れるんじゃないかというところまで水がきました。
危険な場所には近づかないこと、その場に留まるのが最善出ない場合は安全な場所に逃げることは、津波に関わらず、どういった災害の場合も同様です。間もなく、梅雨や台風、大雨の季節がまたやってきます。水害が起こらないことを願いながら、もしものときにはどうしたらよいのかを、日々考えながら生活していきたいところです。
参考サイト
・気象庁「南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」
・観測史上最大の津波はなんと524m!リツヤ湾大津波 1958年の出来事
・気象庁「津波について」
・Wikipedia「リツヤ湾大津波」
・Wikipedia「歴史的な津波の一覧」
・史上最大・最悪の津波ランキングTOP10