自然災害のなかでも、国内の幅広い地域に被害の可能性がある地震や大雨、暴風などは、どういった危険があるか知っている方が多いといえますが、大雪の際にどのような被害があるのかは、ご存じでしょうか。
雪による被害は大きく5つあり、けがや事故が特に起こりやすいのは除雪時です。雪の多い地域では、雪害防止のための準備は欠かせません。
今回は、雪害とは何か、被害の種類や雪害に備えてできることなどを解説します。
雪害とは「雪によって損害を受ける」こと
雪害は、その名の通り大雪や雪崩、また雪が降ったあとの除雪中にさまざまな被害を受けることを言います。また路面の凍結による事故も雪害の1つです。
雪害は地域住民だけでなく、冬の登山や観光、スキーなどで雪の多い地域へ足を運ぶ人にも被害を及ぼすことがあります。
雪害が起こりやすい地域
雪害が起こりやすいのは寒い冬の時期、12月から1月、2月くらいまでです。日本全国の幅広い地域で雪が降ることがありますが、雪害が多い地域として北海道や東北、北陸地方、長野県や岐阜県などが挙げられます。
なかでも山形県や新潟県、秋田県といった日本海側は、降雪量が多く、雪害の可能性が高い地域だといえるでしょう。
過去に起こった雪害
令和2年12月、新潟県の高速道路で大雪のためにおよそ1000台の車が立ち往生となったニュースは記憶に新しいですが、この他にも、雪により大きな被害は過去にもありました。
たとえば平成18年には、日本海側を中心に暴風を伴う大雪が降り続き、山形県や北海道などを中心に停電や断水、住居の損傷、除雪作業中の事故などが発生。負傷者2145名、死者は152名にのぼりました。
また、平成30年には関東甲信越、北陸地方などで大雪が降り、道路の通行止め、飛行機の欠便など交通系のトラブルに発展。物流も滞ったことにより、食料品や燃料などが不足しました。
注意!雪により起こる5つの被害
雪害、と一言でいっても被害の種類は大きく5つに分けられます。
雪崩(なだれ)
雪崩(なだれ)は山など斜面に積もった雪が崩れ落ち、被害が及ぶものです。雪崩には「表層雪崩」と「全層雪崩」の2種類があり、表層雪崩は古い雪の上に積もった新しい雪が滑り落ちることをいいます。
表層雪崩の雪の速度は時速100~200㎞ほどといわれており、広い範囲に被害が及ぶので注意が必要です。
一方の全層雪崩は雪が解ける時期に積もっている雪の全体が滑り落ちるもので、時速40~80㎞ほどだといわれています。
どちらの雪崩も発生してから避難をするのは難しいため、天気予報などをよく確認しておくことが大切です。
積雪害
積雪害は、長時間降り続いた雪で、道路や線路などが埋まってしまうことをいいます。
雪が積もっていることで交通網がうまく機能しないだけでなく、雪の表面が凍結すると、スリップなどの事故にもつながるので大変危険です。
雪圧害
雪圧害は、雪が積もった重みにより、建物や木などが損傷することをいいます。雪の重さは雪質によっても異なりますが、1㎥あたり、およそ30~150㎏。凍った雪は300~500kgほどにもなるといわれています。
雪が降り続く場合は定期的に屋根の除雪をしないと、雪の重みで住居が倒壊する恐れがあるだけでなく、落ちた雪が通行人に直撃すると、大怪我や死亡の原因となるので注意が必要です。
風雪害
風雪害は、吹雪で視界が悪くなり事故などが起こることをいいます。吹雪のなかを歩く、運転すると、視界が真っ白になり方向や距離感が分からなくなることも。
こうした「ホワイトアウト」現象が起こった場合は衝突事故などを避けるために一旦立ち止まる、車を停車するなどして対応する必要があります。
着雪害
着雪害は、電線などに湿った雪が付着することをいいます。着雪害により起こる可能性があるトラブルは、電線の遮断や鉄道設備の故障などです。
鉄道設備に影響が及ぶと、電車が速度を落として運転をしなければならなくなるため、遅延も起こりやすくなります。
雪害に備えて日頃からできる対策
大雪によるトラブルが発生する恐れのある地域では、日頃から大雪への備えをしておくこと、大雪の際にできる対策を知っておくことが大切です。
防災バッグ、備蓄品の準備
万一自宅を離れるときにすぐに持ち出せる防災バッグ、自宅避難時に役立つ備蓄品などは、大雪だけでなく大雨や地震など、さまざまな自然災害に役立ちます。
防災バッグには最低3日分の食料や日用品、自宅には1週間程度しのげるような備蓄品を準備しておきましょう。
避難経路や避難場所の確認
大雪の被害が大きくなる可能性があり、避難場所へ行かなければいけないことも想定し、日頃から避難経路や避難場所の確認もしておきましょう。
ご家族がいる場合には、学校や職場にいる場合、どこへどのように避難するのか、お子さまを迎えに行くのは誰かなども日頃から話し合います。もしものときに連絡が行き違ったり自宅へ探しに戻ったりすることのないようにしておくことも大切です。
運転時の注意点も確認しておこう
大雪のときには運転をしないのがベストですが、運転中に雪害に巻き込まれる、何らかの理由で雪のなかを運転しなければならないということもあります。そんなときは以下のような対策をしながら、安全運転を心がけるようにしてください。
- スタッドレスタイヤにチェーンを装着して運転する
- 毛布やスコップ、防寒着などを車に入れておく
- ホワイトアウトで停止する際はハザードランプを点灯させる
- 雪で車が覆われたときは必ずエンジンを切る(一酸化炭素中毒を防ぐため)
- 急発進、急ブレーキはしない
歩行時の事故やケガにも注意
大雪のなかを歩いて避難する場合にも、事故やケガに注意する必要があります。坂道や横断歩道などは特に滑りやすいので気をつけましょう。雪のなかを歩くときは次のことを意識すると安全に移動ができます。
- 歩幅を狭くして歩く
- 足の裏全体をつけることを意識して歩く
- 万一転んでもすぐに手がつけるよう両手を空けておく
- 屋根からの落雪を避けるため屋根付近を避けて歩く
雪害は除雪作業中にも多い!除雪時の注意点は?
雪害による被害は、除雪作業中に多く起こることもあります。除雪は住居の損壊や交通事故などを防ぐために欠かせない作業ですが、何に注意して行えばよいのでしょうか。
除雪作業中に多いトラブル
除雪中に多く見られるトラブルには、次のようなものがあります。
- 屋根の除雪中に転落する
- 軒下の除雪中に屋根からの落雪が直撃する
- 除雪機の使用中に巻き込まれる
- 寒い場所での作業で心筋梗塞などが起こる
- 融雪槽などに転落する
除雪作業中の注意点
除雪作業中の事故を防ぐためには、以下の点に注意しましょう。
- 1人で作業をしない。家族や近所の人と必ず2人以上で行うこと
- 作業時には携帯電話を持っておく
- 除雪は屋根を優先し、落雪でのケガを防止する
- 屋根の除雪時ははしごを固定する
- 作業時には命綱やヘルメットなどを忘れない
- 除雪機の雪詰まり解消の際は必ずエンジンを切る
- 疲れたら休憩し、無理に続けない
雪害は深刻!積雪・除雪時の注意点を知り、安全な行動を
雪害は「雪崩」「積雪害」「雪圧害」「風雪害」「着雪害」の大きく5種類で、積雪中はもちろん、除雪中にも事故に巻き込まれる可能性があるため危険です。大雪の際には運転や歩行に注意する、事前に非常用アイテムの準備をしておくといったことを意識すると、もしものときにも落ち着いて行動できます。
日頃からできる備えや豪雪時の対処法について理解し、ご家族や地域の方々と情報の共有をすることも大切です。地域全体で防災意識を高め、安全に冬を越しましょう。